第65話 レッドへの興味
突然ですが俺の二つ名が変わったようです。
正確に言うと変わっていたようだ。
その名も泥水。
………何で?
どうやら発信源はギトーらしい。
あの野郎……決闘の時に足の一本でも折っておけば良かった!!
今日は虚無の休日。
部屋でまったりしたり、アイガと戯れたりする日なわけなんだが……。
今俺は町にいたりする。
「何でこうなった……」
「どうかしたの?」
「?」
俺の休日に突如予定を入れたのはこの二人。
微熱のキュルケと雪風のタバサ。
俺の部屋に突然入ってきて、あの決闘の後に話していた美味しいケーキの店とやらに俺も一緒に行こうと引っ張り出されて今は馬の上。
「今日はなんで僕を連れてきたんですか?」
「あの時のお礼を思いつかなかったから、これをお礼にしようかと思うの。
嬉しいでしょ?
美女二人とダブルデートなんて普通できないわよ?」
「あぁ、うん……アリガトウゴザイマス」
確かに二人とも魅力的な女の子かもしれないけど、まだ恋愛対象ではないな……。
特にタバサ嬢は小動物に抱くような保護欲が沸く位だ。
キュルケもなんだかんだ言って、まだ高校生位だからな。
ちょっと背伸びしてる感じがする。
「ところでまだ聞いてなかったんだけど、ケーキは好き?」
「甘いものは割と好きかな?」
「そう! なら大丈夫ね!」
先ほどから喋らない子がいるが、タバサ嬢はキュルケの後ろに座ってキュルケの腰に抱きついている。
まぁ相乗りだからそうしないと危ないんだけど、なんかコアラみたいだ。
そんなことを思っていると、ふとタバサ嬢が口を開いた。
「ギトー先生に勝ったって本当?」
「そうだ! 聞いたわよ。
一応あんなのでもスクウェアなのにどうやって勝ったの!?」
「何処でそんな話を聞いたのかな?」
「コルベール先生の授業の時に誰かがレッド先生「僕のことはプライベートの時はレッドでいいよ」レッドが実力的に大丈夫なのか?という質問をしたんだけど、その時に言ってた」
別に話すなとは言ってなかったけど、授業で話すなよ。
コルベール先生なりに俺の評価を上げようとしてくれたんだろうけど……。
「……一応本当だよ」
「凄いわね!! どうやって勝ったの?」
「唯体勢崩して足元に泥沼作って、動けなくなっているうちに拘束して、杖奪って剣突き付けただけだよ」
「剣? レッドって剣使うの?」
「少しだけね。
攻撃用って言うか防御用なんだけど」
「防御用の剣って……」
キュルケとそんな会話をしていると、タバサ嬢が俺を見ていることに気付いた。
「どうかしたかい?」
「泥沼にハマっただけなら、フライで抜け出せる」
あぁ……あえてそこに関しては言わなかったのに聞いてくるか。
コルベール先生に聞かれると他にも色々言いそうだから教えるか。
「魔法を使う集中力を削ぐために、石を投げたんだよ」
「石!? そんなの……」
「まぁ、あんまり綺麗な戦い方とは言えないし、貴族としてはどうかと思うよね」
「でも効率的」
「………そうね、負けられない戦いなら手段を選べないものね」
意外と納得してくれたな……てっきり否定されると思ったんだけど。
まぁ嫌われないならそれはそれでいいや。
「でもそんな泥臭い戦い方するなんて、傭兵みたいね。
剣も使えるみたいだし」
「まぁ自領で魔獣退治とかもしてたからね。
躊躇してたら死んでしまう。
だから戦う時は相手の無力化を最優先に考えて、手段は二の次だったから手加減が苦手なんだよね」
「まだ18歳よね? それなのに魔獣退治の仕事やってたの?」
「家の領はそれほど戦力が揃ってるわけじゃないからね……必要に迫られてって感じかな?」
その言葉を聞いてタバサ嬢とキュルケも納得してくれたようだ。
でもまだ聞きたいことがある様だ。
なんだ?
「まだ何か聞きたそうだけど……答えられることなら答えるよ?」
「最近火のメイジの中で出世頭とも言える人がいるんだけど……ボガード家って知ってる?」
「テリーかぁ……最近会ってないな」
「やっぱり貴方だったのね! 彼の師匠って!!」
「…………何処でそれを?」
「学院に入る前にボガード家の開いたパーティに行ったのだけど、その時に酔った彼が言っていたの。
凄く誇らしげに「今の俺があるのは家族と相棒のおかげだ……まぁ師匠みたいな存在でもあったけどな」って!」
「何故その相棒が俺だと?」
「コルベール先生がレッドは在学してた時は一人の火のメイジと何時も一緒にいて、互いを高め合っていたって言ってたのよ。
それでレッドの在学記録を図書室で調べてみたら、テリーさんと同じクラスだったみたいじゃない!」
「(またコルベール先生か……今度何か仕返ししよう)
確かにテリーと一緒に朝練とかしてたけど、師匠って言うほどのことはしてないよ。
少し魔法の案を出したり、特殊な接近戦の練習をしただけ」
「なんだぁ、そうだったの?
てっきり実は火のメイジでもあるのかと思ってドキドキしたのに」
「特殊な接近戦……それはなに?」
「(これは隠しておこう……これに関してはボガード兄弟と両親以外知らないからな)それは内緒かな?
ある意味僕の切り札みたいなものだからね」
「そう………」
流石タバサ嬢。
これ以上聞いても聞き出せないことが分かってる様だ。
「お、そろそろ町が見えてきたみたいだ」
「そうね、私としてはもう少しレッドのことを知りたいけれど、続きはケーキを食べながらにしましょう」
まだ聞く気か……。
何処まで話すかなぁ。
はぐれオーク退治の話は大丈夫かな?
あとジェイクとの共闘も大丈夫だな。
そこら辺にしておこう。
その後は町のケーキ屋さんで、ケーキを摘まみながら雑談をして、休日の時間は過ぎていった。
キュルケの主人公評価がアップ
タバサの主人公の戦闘力と経験を上方修正
タバサ主人公に若干の興味。