第68話 訓練の結果
ギーシュとアイガの模擬戦が始まった。
ギーシュの初手でワルキューレを5体作り出し、アイガを取り囲む。
「僕のワルキューレ達! アイガ君を一斉攻撃だ!!」
「………ジ」
いやぁ……それは流石にアイガ舐めすぎだろ。
アイガは地面に拳を叩きつけ、砂埃を舞わせて視界を遮った。
視界が悪くなりギーシュからはアイガの姿が見えなくなったが、それに構わずワルキューレ達を突貫させる。
しかし突撃させて一秒も経たない内にガンッという音が鳴ってこちらに何かが飛んできた。
それはひしゃげて元の形が分からなくなった青銅の塊だった。
「な!? ぼ……僕のワルキューレが?!」
「……ギーシュ君、それはアイガを甘く見過ぎだよ。
あんな見た目してるけど、それなりに動きは速いんだよ?」
また一つ青銅の塊が飛んでくる。
「だからあんな抽象的な指示じゃアイガは捕らえきれない」
砂埃がなくなり視界がはっきりしてきたが………アイガの周りには何もなかった。
「え? 僕のワルキューレ達は?!」
「アイガの周りを良く見てみれば分かるよ」
「ま、まさかあの青い板は………」
アイガの周りの地面には青い板状の金属が3枚転がっていた。
………アームハンマーか?
なんにせよギーシュのゴーレムは全滅、アイガは無傷。
「勝負有りだね。
明日はもっといい勝負になるといいね。」
「明日?」
「そう、模擬戦はこれから一日一回訓練の最後にやることにするからね?
でも賞品があった方がやる気でるかな?
じゃあもしアイガの身体を少しでも削れたら、モンモランシーを紹介しよう」
「!? ということはアイガ君との模擬戦に勝たなければ紹介はしてくれないと?」
「う〜ん、紹介してもいいんだけど強くなってからの方が印象強いと思うよ?」
「そ……それもそうですね!!
頑張ります!!」
……今度から鉄壁は外してあげよう。
このままだとちょっと厳しいからね。
頑張れギーシュ君。
「さて、そろそろギーシュ君は部屋に帰って授業の準備をした方がいいかな?」
「もうそんな時間ですか……」
「明日もこの位の時間に来てくれればいいから、また明日ね?」
「はい! ありがとうございました!」
そう言ってギーシュは俺に一礼して寮へと戻って行った。
俺はその場に残って後片付けをし、そのまま今度は自分の用事を終わらせるために森の中に入っていく。
「さてここからは俺自身の訓練タイムだ。
とりあえず今日は空手の型と魔法の訓練を少しやろう」
俺は先ず大きく深呼吸をした。
俺の言う空手の型と言うのは実践的なコンビネーションのことだ。
打ち上げや打ちおろし、肘打ち、裏拳などを組み合わせることで相手に反撃をする間を与えないようにしたつもり……まぁ実践じゃあんまり使った事無いんだけどね。
一応俺は現状このコンビネーションを4分続けることが出来る。
「今日は4分5セットにしよう」
鳩尾に向けた裏拳から顔への裏打ち、そして金的への鉄鎚、側頭部への肘打ち、最後に顔への手刀。
コレをひたすら繰り返し続ける
そして4分が経過したところで、手を止めて深呼吸をした。
「よし、問題ないな。
じゃあ次は魔法の訓練だな。
そう言えばクリエイトゴーレムってあんま使ったことなかったなぁ。
これから使う機会が増えるかもしれないし、少し試しておくか」
ギーシュとのゴーレム戦とか、良い訓練に成りそうだ。
先ず俺は水と土で泥のゴーレムを作ってみた。
「………維持するのが大変だなぁ。
しかも動きは普通のゴーレムより遅いし」
足で歩くというよりも、這って動くに近いな………。
でもそれでこそ出来ることもある。
「腕を伸ばせ」
その言葉に応じてゴーレムは6メートルほど腕を伸ばして手を握ったり開いたりしている。
これは使い方次第では中々面白いことが出来るんじゃないか?
「手の中に小石を詰め込んで、思いっきり振りかぶれ」
指示通りに動くゴーレムは、地面に手を付けてズズズという音と共に小石を手の中に詰め込んでいく。
そして腕を思いっきり振りかぶる。
そのまま全力で腕を振り下ろすと、埋め込まれた石が手の中から凄いスピードで飛び出していく。
無数の小石が木にめり込んでいく様は、まるで散弾銃の様だった。
「これは……想像以上だな」
「ジ……」
流石に木をへし折るまではいかないけれど、木の中ごろまでめり込んだ小石は、もし人に当たったら見るに堪えない状態にしてしまうだろう。
とりあえず実験は済んだので、ゴーレムを地面に戻す。
俺は次にアイガの見た目を模したゴーレムを作れる限り作った。
そして出来たゴーレムの数は12体。
「……これは怖いな」
目の前にいるのは伝説のポケモンもどきが12体並んでいるんだよ?
これが全部本物だったらヤバすぎる。
ところでさっきからアイガがプルプルしてるんだけど、どうかしたんだろうか………。
「あ……アイガ?」
「ジーーーーーーーーーー!!」
突然アイガがゴーレムに突貫した。
殴り、蹴り、撃ち、ドンドンとゴーレムは唯の石に戻っていく。
全てを壊し終えたアイガは俺に向かって胸を張った。
「ジ!!」
「……あぁ、凄いね」
もうあのゴーレム作るのやめよう。
なんかアイガが凄い暴れる。
俺は周囲を見渡してため息をついた。
「はぁ……木に被害がなかったからまだマシか」
「ジ?」
俺はとりあえず地面に出来たクレータやら何やらを、錬金で直していく。
全てを直し終わったときにはもう授業直前だった。
「ヤバい!!急ぐぞアイガ!!」
「ジ!!」
時間に余裕がないことに気付いた俺とアイガは学院に向けて走り出す。
クオリティが低い気がするよ………ごめんなさい
とりあえずごめんなさい