第68.5話 鍛錬を覗く者
私がそれに気付いたのは偶々だった。
ドンという音と共に少し揺れた地面。
その振動の源を探ってみるとそこにはレッドとクラスメート?、そして石で出来たゴーレムがいた。
ゴーレムの近くにクレーターがあることから、あの音と揺れの原因はあのゴーレムだろう。
「人ぐらいの大きさで地面を揺らすほどの力を持つゴーレム?
そんなの聞いたことない……」
私はあのゴーレムを作り出したであろうレッドに、より興味が深まっていった。
用事は終わったようで、クラスメートが寮の方へと戻っていく。
しかしレッドはその場の後片付けをしてから、森の中へと入って行った。
「なんで森の中に?」
私は彼のことが気になったので、そのまま気付かれない様に後を追うと、少し開けたところで彼は立ち止った。
一瞬私のことがバレたのかと思ったが、深呼吸をしているだけのようだ。
「(何をするつもりなんだろうか?)」
そう疑問に思っていると、彼は拳を握り、見たことの無い構えをした。
次の瞬間私が見たのは暴力の嵐だった。
人間の急所と言われる場所を躊躇なく攻撃することを前提とした拳での連撃。
苛烈に拳を打ち込むレッドに容赦などなく、その姿は狂気的な動きをする鬼の様だった。
「(あんな攻撃をされたら何も出来ずに殴り殺される)」
私は初めて彼に恐怖を覚えた。
優しく生徒に授業をするレッド、キュルケを助けた時のレッド、そして一緒にケーキを食べた時のレッド。
そのどれとも違う彼がそこにはいた。
敵対した相手を容赦なく屠るであろう彼の姿が……。
しかし恐怖と同時に尊敬もした。
「(彼は恐らく人を殺めたことがある)」
何となくだがそう感じた。
しかし彼はそんなことをおくびにも出さずに、生意気な態度を取る生徒達にその力を微塵も振るうことは無い。
それどころか実習中なら守ろうとさえしてくれる。
彼のその在り方は、まるで勧善懲悪のヒーローの様だ。
実際は違うのかもしれない。
でも私にはそう見えた。
「(拳一つで人を壊すことが出来る力を持つ人間。
しかも彼は剣もそれなりに使えるといっていた。
ならもし私が彼と戦うことになったら……勝てる?
遠距離からの魔法攻撃? それとも奇襲?)」
頭をめぐる戦闘思考。
しかしそのどれもが成功するように思えて、失敗するようにも思える。
彼のことが分からない。
情報が足りなすぎる。
彼は、まるでビックリ箱だ。
その後も泥のゴーレムや、12体のゴーレムを作り出してそれを一体のゴーレムで壊すという謎の行動をしたり見ていて飽きなかった。
特にあのアイガというゴーレムの強さは目を見張るものがあった。
一撃の重さも、石の弾丸の速度も決して侮れるものではない。
「あのゴーレム、人を壊すことを目的とした体術、守りに特化した剣。
そのどれもが初めて見聞きするもので、どれもが私を驚かせる。
彼のことが知りたい。
何のためにその力をふるうのか知りたい」
私の様に任務を淡々とこなすためではないだろう。
虚無の日の様に、また彼の話を聞きたい。
気付けば私は彼のことを目で追うようになった。
あの実戦を想定した訓練を終えた彼が授業に向かったように、私も教室へと足を進める。
授業に来た彼は、いつも通り他の先生とは違う戦闘に関して役立つ知識を私たちに与えていく。
時には他の生徒が顔を顰める様な内容の授業をすることもあるけれど、それもいつか彼らのためになるだろう。
「タバサ? 最近レッドのことをよく見ているけどどうかしたの?
………もしかして恋?!」
「違う、でも気になる」
「ふ〜ん、そうなんだぁ」
キュルケは私を見ながら微笑ましいものを見るように笑っていた。
私は何故笑っているのか分からなかったから首を傾げたけど、キュルケはより笑みを深くした。
「今はそれでもいいと思うわ。
でももし気持ちに気付いたなら行動に移すのに躊躇しては駄目よ?
………あの爆発娘も好意を抱いてるみたいだし」
「……? わかった」
何を言いたいのかは分からなかったが、私のことを考えてくれているのは分かったから頭に入れておくことにした。
………とりあえず明日接近戦の訓練を付けてくれないか頼んでみよう。
縲のどれもが初めて見聞きするもので、どれもが私を驚かせる。
彼のことが知りたい。
何のためにその力をふるうのか知りたい」
私の様に任務を淡々とこなすためではないだろう。
虚無の日の様に、また彼の話を聞きたい。
気付けば私は彼のことを目で追うようになった。
あの実戦を想定した訓練を終えた彼が授業に向かったように、私も教室へと足を進める。
授業に来た彼は、いつも通り他の先生とは違う戦闘に関して役立つ知識を私たちに与えていく。
時には他の生徒が顔を顰める様な内容の授業をすることもあるけれど、それもいつか彼らのためになるだろう。
「タバサ? 最近レッドのことをよく見ているけどどうかしたの?
………もしかして恋?!」
「違う、でも気になる」
「ふ〜ん、そうなんだぁ」
キュルケは私を見ながら微笑ましいものを見るように笑っていた。
私は何故笑っているのか分からなかったから首を傾げたけど、キュルケはより笑みを深くした。
「今はそれでもいいと思うわ。
でももし気持ちに気付いたなら行動に移すのに躊躇しては駄目よ?
………あの爆発娘も好意を抱いてるみたいだし」
「……? わかった」
何を言いたいのかは分からなかったが、私のことを考えてくれているのは分かったから頭に入れておくことにした。
………とりあえず明日接近戦の訓練を付けてくれないか頼んでみよう。