第73話 友からの共闘依頼
久しぶりにテリーから手紙が来た。
なんだかんだ言って卒業してから殆ど連絡取ってなかったから、とても驚いた。
そんな学院時代の相棒の手紙に何が書いてあったかって言うと、どうやら領内に出てきた魔獣を倒すのに協力してほしいという話。
一応報酬も出るらしいし、久しぶりにテリーとも会いたい。
そんな軽い考えで俺はテリーの手紙に返答した。
そのことを両親に話しても反対は特になく、俺は馬車でボガード領へと向かうことに。
「それにしても、テリーが手を焼く魔獣か……バジリスクより弱いといいなぁ」
「ジ!」
アイガは微妙に弱気な俺を見て、自身の胸を拳で軽く叩いた。
「ハハハ、そうだな!お前もいるから大丈夫だよな!」
「ジジジ!」
ボガード領に着いた俺を、テリーは嬉しそうに出迎えてくれた。
「久しぶりだなレッド!」
「久しぶり!」
「今回はいきなり呼び出して悪かったな……でもちょっと俺の手だけじゃ足りなくてな」
「テリーだけじゃ無理な魔獣か……何なんだ?」
「それについては俺の家で説明する。
俺に着いてきてくれ」
テリーは自分が乗ってきた馬に乗りなおして、馬を走らせた。
俺もそれに倣い、馬車を走らせてテリーの後を追う。
そうしてしばらく走らせていると、大きな屋敷が見えてくるとそこでテリーの馬が停止して、俺に向き直った。
「ここが俺の家だ」
「いい家だなぁ」
「よせやい。
馬車はそこに止めといてくれれば、帰りまで責任を持って預かる。
それじゃあ客間までついてきてくれ。
そこで今回の件について説明する」
「わかった。 アイガはどうする?」
俺がそう聞くと、アイガは馬車の横に立ち、話しが終わるまで待ってくれるようだ。
俺はアイガの肩を軽く叩き、「ありがとう」と一言だけ告げた。
テリーにボガード邸の中を軽く案内された後、客間へと連れて行かれた俺。
そこには強面の40代位の男性が一人、目を瞑りながら待っていた。
「親父! レッドを連れてきたぞ!」
「あぁ……君がレッド君か?」
親父?……あぁテリーが超えたがっている父親ってこの人か。
「はい、僕がレッド・ド・ドリュウズです」
「俺はジェフ・デューク・ド・ボガード。
コイツの父親だ。
コイツから色々話は聞いている」
ジェフさんはテリーの頭を少し強めに撫でながら俺に視線を向けた。
渋いなぁ……テリーもこうなるのか?
「……不躾ですがどんなお話をお聞きに?」
「君が家の息子たちに特殊な戦い方を教えたり、君の使い魔のことを馬鹿にした貴族と決闘したこととか……色々と 面白い話を聞かせてもらったよ」
「テリー……後で少し話があるから、時間を取ってくれ」
「レ、レッド!少し待ってくれ!
今はそれどころじゃないだろ!?」
「(後で覚えてろよ? キュルケに口を滑らした件のこともあるから、ネタ技の実験台になってもらうからな!)
それもそうですね……結局今回僕に手を貸してもらいたい事って何ですか?」
そう切り出すとジェフさんとテリーは先ほどまでの表情を引き締め、真剣な顔になった。
おいおい、なんだこの空気は?
「君は優れた土メイジらしいね」
「え? 一応トライアングルではありますけど……」
「クラスのことじゃない。
君の実戦経験のことだ。」
「……一応はぐれオーク2体、山賊2人、父さんと一緒でしたがバジリスクも倒しました」
「レッド凄ぇな!」
「君の実戦経験は理解した。
それに君は水のトライアングルでもあると聞いている」
「お前水の魔法も使えたのか!?
でも学院の時は一度も使ってなかったじゃねぇか!」
あぁテリーに話してなかったっけ?
ならテリーが知らなくてもしょうがないな……学院に通ってた時は土しか使ってなかったしね。
結局そのせいでギトーに絡まれたような気がするけど!
「あの時は実戦レベルで使えるものでもなかったし、前も言ったかもしれないけど、僕目立つの嫌いだからさ……水はここぞって言う時の切り札にしようかなって思って」
「確かに誰にも知られていない自分のもう一つの属性と言うのは、切り札に成りえるな」
「賛同いただいて嬉しいですねジェフさん」
「この件が片付いたら是非手合わせをしてほしいくらいだ」
……この人バトルマニアか?!
テリーが勝てないってことは大分強いだろ。
それは遠慮したいな。
っていうかテリーもそんな不機嫌そうな顔するなよ……反応に困るじゃないか。
俺がテリーの表情に苦笑いをしているとジェフさんが一つ溜息をついてテリーに諭すように語りかける。
「テリー……別にレッド君はお前に隠したくて隠していた訳じゃない。
切り札は他の人に知られると切り札足り得なくなってしまう。
だから隠していたんだ」
「分かってる……分かってるさ!
でも何で親父が知ってるんだよ?」
「あぁ、それは彼が今学院で水の魔法教師をしているからだよ。」
「はぁ?! レッド、お前教師なんてやってたのか!?」
「まだ一年も経ってないけどね?
それにミスト先生が教師辞めちゃったから、穴埋めの臨時教師だよ」
「そっか、あの先生辞めちまったのか。
それにしてもレッドが教師か……結構似合うな!」
まぁテリーとアンディに格闘技と魔法の講義もどきしてたしな。
そう言えばアンディがいないな……。
「ありがとう。 ところでアンディは?」
「あぁあいつなら、マイのところに行ってて今はいない。
それに今回の件は少し手に余るだろうから、呼び出してない」
「そっか……でその肝心な件っていうのは何なんだい?」
俺がそう聞くと、ジェフさんが机の上にあった紙を俺の方に滑らせる。
どうやら何かの報告書の様だ。
「これに書いてあるから読んでみてくれ」
「……確認されているだけでも火竜の成体五頭?!」
「そうだ……俺と息子は共に火のメイジ。
少し相性が悪くて五体は厳しい。
俺の方でも知り合いに協力を仰いでみたんだが、知り合いの手錬も火のメイジが多くてな。
息子に駄目元で話を聞いてみると、君の名前が出てきたから協力を頼みたいと思ってな」
「流石に一人で五頭は無理ですね」
まぁ手段を選ばなければやれるんだけど、流石に一人でやったことがバレると今以上に目立つって言うか、国に目をつけられそうだ。
「それは流石に放り投げ過ぎだろう。
私とテリーで三頭受け持つ。
出来れば二頭の足止めを頼めないだろうか?
こちらが三頭倒したら、直ぐにそちらに向かうので、それまで堪えてくれるだけいい。」
二頭の足どめなら大丈夫だけど、ここは……有名なセリフで返しておこうかな?
一度言ってみたかったんだよね。
「それは構いませんが、別に倒してしまってもいいのでしょう?」