第74話 火竜退治
あの後作戦について話した後、馬車に乗って火竜のいる山へと向かっているのだが、今馬車の中は大分カオスになっている。
「自我のあるゴーレムなんて本当に珍しいな」
「親父、アイガって名前があるんだから名前で呼んでやれよ」
「おぉスマンスマン、それにしてもこの子がバジリスクを強引に抑えつけるだけの力があるとは……本当に見た目は当てにならないな!」
ジェフさんは本当にアイガが気になって仕方がないようだ。
アイガのことを触ったり、テリーに話を聞いてみたり、俺に話を聞いてみたりと興味は尽きないようだ。
こんなテンションになったのには理由があって、テリーがバジリスクと戦った時の話を聞きたがったので話していると、アイガが暴れているバジリスクを無理矢理押さえこんでいたという話をしたところで、ジェフさんが俺に近寄ってきて「このゴーレムが!?」と言ってきたのが始まりだ。
そして話を聞いていたテリーもアイガの能力の高さに驚いているようだった。
テリーの前でアイガは戦闘したことなかったからなぁ。
そんなこんなで今は若干興奮したジェフさんと微妙に凹んだテリーが目の前にいるわけだ。
こんなんで大丈夫なんだろうか?
でもどうやらそんな考えは杞憂に過ぎなかったようだ。
目的地に近づけば近づくほどボガード親子の口数は減っていき、顔からは笑みが消えていく。
流石に火竜五頭に三人+一体で対抗しようって言うんだから当然か。
体長6メートル以上の空飛ぶ蜥蜴が、火を吐きながら五匹飛んでくると思えばこの緊張感は理解してもらえるだろう。
そんな静かに集中している俺達だったが、ジェフさんが最後の作戦確認のために口を開いた。
「もう一度作戦を確認するぞ?
先ずレッド君が二頭の火竜に魔法を放って群れから離す。
俺とテリーは残りの三頭を素早く倒してレッド君の加勢に向かう。
これが大まかな作戦内容だ」
「分かっています」「分かってる」
「そろそろ目的の山の入口だ。
そこからは歩いて巣を探す。
山に入ってからは何時火竜が現れてもおかしくない。
気を抜くなよ?」
「「了解」」
山に着いてからも殆ど喋ることもなく黙々と山を登ることになった。
火竜は山の高い場所に巣を作る。
それに基本的巣にいる場合が多い。
しかし狩りに出てきてないとも限らない。
その場合先ほどの作戦は変更される。
一頭から三頭が狩りに出てきている場合は三人で一気に倒す。
それ以上なら先ほどの作戦通り、二頭を俺が引きつけて倒す。
そういった単純な作戦。
「あの洞窟が怪しいな……周囲に不自然に欠けた岩がある。
恐らくあそこが火竜の巣だろう」
「あの中に火竜がいるのか。 腕が鳴るな」
「あんまり一人で突っ込まない様に。
幾らテリーでも火竜に噛まれたら食いちぎられるよ?」
「それにしてもこの洞窟の大きさなら二頭同時に出てくることは無いな……。
なら一頭ずつ倒して言った方が良さそうだ。
よし、作戦変更!
一頭ずつ出てきた順に倒していくぞ!」
ジェフさんの作戦変更の言葉を聞き、俺は火竜の顎の強さをテリーに説明すると、先に進んだジェフさんの後を追った。
目の前にあるのは高さ6メートル位の大きな穴。
奥は暗くて見えないが何かの呼吸音が響いてくる。
やっぱりここが火竜の巣か……。
ボガード親子も呼吸音が聞こえることから、ここが巣であることを確信したようだ。
「それじゃあ開幕の一発は俺が撃とう」
「火竜を引っ張り出せる位派手なの頼むよ?」
「OK!」
テリーは杖を取りだして、前に構える。
そうして杖の先を洞窟の奥へと向けた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ! フレイムゥゲイザァーーーーーーー!!!!」
テリーの渾身の魔法が洞窟へと放たれる。
洞窟の奥の方で火柱が上がり、洞窟内が明るく輝く。
中では火竜の声と思われる咆哮が聞こえてくる。
どうやら洞窟から出てくるようだ。
「ここからが本番だぞ……行けるかテリー?」
「当り前だぜ親父!」
「レッド君達はどうだい?」
俺達? そんなのは言うまでもない!
俺とアイガは一回目を合わせて頷く。
「もちろん大丈夫ですよ!」
「ジ!」
ドンドン近づいてくる足音。
咆哮も大きくなってきた。
いよいよか……。
俺は杖を前に出し、何時でも攻撃できるように準備した。
ボガード親子も同じだ。
アイガも拳を前に構えている。
さぁいつでも来い!
そうして準備が完了した数秒後。
洞窟の中から炎が襲ってきた。
「アースウォール!
……長続きはしませんので、攻撃の用意をしてください!」
俺は全員の前に土の分厚い壁を作り出した。
それぞれが出てくる火竜に魔法を放つ準備をする。
そうしている間に火を吐きながら火竜の一頭目が洞窟から出てきた。
「デカイな……でも負けねぇ!
食らえ! フレイムボール!」
テリーの魔法は上手い具合にブレスを吐いている口に直撃し、ブレスが止まった。
よし今のうちだ!!
「各自散開して、洞窟を囲むように並べ!」
「OK!」「了解!」「ジ!」
俺達は散開して洞窟を取り囲んだ。
さぁここからが本番だ!!