第78話 漢を目指す男対ゴーレム六体
微妙に濃いイベントがあった夏休みも終わり、学院に戻ってきた俺を待っていたのは講義、そしてタバサ嬢とギーシュの訓練だった。
どうやら夏休み中も頑張ってたらしく、少しではあるが二人とも進歩していた。
「そう言えばギーシュ君、モンモランシ嬢とはどうだ?」
「……まだデートに誘えてません」
「まだ誘ってないのか!?」
夏休みに入る前に紹介したから、てっきり遠乗りくらいには誘えていると思ったが……大分奥手だな。
原作ギーシュは何処へ行ったのやら。
「タバサ嬢は夏休みどうだった」
「……忙しかった」
「そっか、忙しかったか」
任務かな……まぁ俺も夏休み微妙に忙しかったけど。
はたして何をやってきたのやら。
聞くわけにもいかないから、流すしかないな。
「よし、二人とも夏休みで鈍ることもなく寧ろ冴えている。
ということで新しい訓練にしようか」
「やっとアイガ君に勝てる様になったと言うのに……」「………楽しみ」
「(正反対の反応だな。)まぁやること自体は大して変わらない。
少しだけ実戦的になるだけだよ。
二人には順番に僕の作ったゴーレムと戦ってもらう。
僕は今から六体のゴーレムを作る。
そのうち一体に角を付けるのでそいつをメイジと見立て、そいつを時間内に倒せたら訓練終了。
但し一撃でも攻撃を受けたらその場で負け。
制限時間は五分とする。
分かったかな?」
「分かりました」「分かった」
「じゃあ先ずはギーシュから」
俺はギーシュの前にアイガもどきを六体作り出した。
因みに今ここにアイガはいないため、前みたいなことは起こらない。
「ア、アイガ君がいっぱい……」
「見た目だけだから大丈夫! アイガよりもかなり弱いから、もしかしたら楽かもしれないよ?」
まぁ、まだギーシュは多人数戦をやったことがないからなぁ。
それに今まで散々ワルキューレを叩き潰してきたアイガに似たゴーレムが六体も出てくればそりゃ引くか。
でもそんな気構えじゃ勝てるもんも勝てなくなる。
少し発破掛けるか?
「それとも諦めるかい? 僕としてはどちらを選んでもかまわない。
しかし今のままでマルギッテさんに勝てるなどと甘い考えを持つのは、お勧めできないかな。
今ギーシュ君に与えられた選択肢は、訓練を止めてモンモランシ嬢を諦めるか、訓練を続けて力をつけるかの二択しかない。
さぁ君はどちらを選ぶ!!」
「………やります。
ここで諦めるのは彼女にも失礼だ!
僕の思いが薄っぺらなものじゃないと認めさせるだけの力をつけてから、彼女のお母さんに会いに行くんだ!」
「よし、じゃあ早速いこうか!
因みにゴーレムに剣とかは持たせないから、殴る蹴る投げる位しかしない。
でも石の塊に殴られたらどうなるか……分かるよね?」
「……はい」
「僕も一応秘薬を持ってきてはいるけど、頭とかは自分で守ってね?
頭は狙う気ないけど、何かあったら大変だから気をつけてね?」
ギーシュの顔がまた少し青くなったけど、今度は弱気を吐くこともなくゴーレムをしっかり見ている。
そうだ、それでいい。
相手を観察しろ、弱点が有るなら把握しろ。
相手の情報を少しでも多く手に入れることで勝敗が分かれることもある。
「それでは今から五分で角付きを倒せばギーシュ君の勝ち。
じゃあ………始め!」
「先手必勝、ブレット!」
他の五体に目を向けることもなく、角付きに石の弾丸を飛ばす。
直撃した石の弾丸は、アイガもどきを壊すことなく……胸の一部を欠けさせるだけで地面に落ちてしまった。
しかしそれを読んでいたかのように、ギーシュは追撃を加える。
「アースハンド」
「あぁ……倒したね」
「ですよね」
確かに倒したな、足を掴んで引っ張った訳だから、そりゃあ倒れるわ。
でも俺が言っていた倒すって言うのは……。
「でもこの倒すじゃないんだよなぁ。
破壊してくれないと訓練で勝ちにはならないよ?」
「やっぱりですか?」
ギーシュは少し恥ずかしそうに頬を掻く。
そして再び真剣な顔になると、転んだゴーレムの周りに集まっているゴーレム達に目を向けた。
「やっぱり威圧感が大きいですね。
でも負けられない!
仕切り直しといきましょうか!!」
ギーシュはそう言うとワルキューレを呼び出し、角付き以外に突撃させていった。
やはり石のゴーレムより動きが速いな……。
そしてワルキューレに混ざって、ギーシュ本人も突っ込んできている。
「(それは……悪手じゃないか?
ギーシュ君に岩を砕く力が有るのだろうか?)
さぁここからどう出る!」
ギーシュはワルキューレ達を犠牲にすることで角付きに接近する機会を得た。
アイガもどきも自身の拳が届く範囲にギーシュがきた瞬間に拳を振りおろしたが、ギーシュはそこでバックステップして拳を避ける。
地面に叩きつけた拳の所為で砂埃が舞い、ギーシュを見失った角付き(俺操作)は辺りを見回したが、ギーシュは見つからない。
ここは王道通り後ろに来るかもしれないと思って裏拳を放たせた。
予想通り後ろで剣を突き刺そうと立っていたギーシュも、流石にこの攻撃は読めなかったようだ。
なんとか防御は間に合ったが、ギーシュの手に持っていた剣は真ん中辺りから折れ、数メートル吹っ飛ばされた。
「ここでタイムアップだ。
ギーシュ君、今回は残念だったね。
でも後少しだったから意外とすぐに出来るかもしれない」
「ゲホ、でも少し悔しいですね」
俺は倒れているギーシュに手を貸して立たせる。
それにしてもフェイントっていうか戦闘の駆け引きが上手になったな。
夏休み中に兄弟に鍛えてもらったのかな?
なんにせよこの時点で原作で最初にサイトが戦った時よりも強くなっているのは確かだろう。
「さぁ次はタバサ嬢の番だ」
「分かった」
彼女を相手にするならギーシュを相手にするよりも気合入れないと、訓練にならないかもしれないな。
ギーシュの時に手を抜いたわけではないけれど、より一層の気構えが必要だ。
実戦経験の数なら下手すれば俺より多いだろう。
そして俺はゴーレム戦に慣れてない。
だから全力でいこう!
後少しで一つのボックスがレベル100で埋まるw
なんとかモンハンが出るまでに埋めたいな。
……卒研ェ