第81話 火竜装備到着
ある日授業を終えて部屋に帰ると、部屋の前に荷物が立て懸けてあった。
「ん? メモが……‘部屋にいらっしゃらなかったのでここに置いておきます byロングビル’」
良く盗られなかったな……まぁ中身何か分からないし、あくまで狙いは宝物庫だったから目立つようなことは控えてるのか?
っていうかなんなんだこれ?
微妙に重いんだけど……。
俺は部屋に入って、早速荷物を開けてみることにした。
「よいしょっと!
えっと何々?
あ〜防具屋さんに頼んだやつか」
そりゃ重いわな。
靴と手袋に鉄板入ってるし、ローブ自体も特注だからなぁ。
ロングビルさん大変だったかな?
今度お礼言っておこう。
そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「誰かな? 開いてるよ〜」
ドアを開いて入ってきたのはタバサ嬢とキュルケだった。
偶に話や授業のこと聞きに来るから、珍しくもないんだけど今日は何しにきたのかな?
「こんばんわ。
今日は何を聞きに来たのかな?」
「「こんばんわ」」
「今日は風の噂の真偽を確かめに来たんですけど……お忙しかったみたいね?」
「ん? あぁこれのこと?」
キュルケの視線をたどると、俺が開け掛けの荷物が目に入った。
まだ中身出してなかったなぁ。
「これは僕が注文していたローブ各種だよ。
ちょっといい素材が手に入ったから加工してもらったんだ」
「何々、面白そうじゃない!
見せて!」
「……気になる」
俺も中身気になってたし、出してみるか。
そうして箱から取り出したローブは俺の想像を右斜め上に突き進んだ。
「これは……凄いな(色んな意味で)」
「何これ!! すっごくカッコいいじゃない!!」
「………」
俺の想像では黒主軸で少し赤いラインが入ってる程度かなぁって思ったら、黒主軸位しか予想通りじゃない。
黒いローブの所々に赤く加工された火竜の牙や爪がついていて、左右の二の腕の部分に火竜の頭部を模した刺繍が施されており、その刺繍の竜の牙は本物の牙が使われている。
……これ目立ち過ぎるだろ。
タバサ嬢はこの明らかに隠密性が皆無のローブをジッと見ている。
「ローブがこれってことは……靴と手袋は……」
俺は箱の中から二つを取り出してみると、やっぱりそこには何処のRPGの装備だよこれっていうものが出てきた。
どちらも黒主軸になっているんだけど、所々に竜を模した何かがある。
手袋……っていうか手甲の手の甲の部分には竜の手を模した彫り物があり、拳の部分に爪がくっ付いていてメリケンサックみたくなっている。
靴の先端には短いけど三本の爪がくっついているし、脹脛の部分まで竜の鱗に見えるように加工された爪や牙が……これ全部付けたら厨二病っぽいかも。
「それにしても、どれも最高級品じゃない……もしかしてあの噂はやっぱりレッドなの?」
「そう言えば僕の部屋に来た理由が、噂の真偽がどうとか言ってたね。
どんな噂なんだい?」
「ゴーレムを連れた若いメイジが、仲間と一緒に火竜の成体を六頭も倒したって言う話」
……明らかに俺とボガード親子のことだな。
でも誰か見てたのか?
いや……馬車の中にあった火竜の首六本を町を通った時に見られた可能性が高いな。
「いや、違うよ?」
「でもこのローブに着いている装飾……火竜の物じゃないの?」
「僕は父さんと防具屋に行った時に、いい素材が手に入ったからって言われてこの装備一式を注文しただけ」
なんか手遅れかもしれないけど、とりあえずまだバレてないなら隠そう。
タバサがこっちをジッと見ているけど、まだ確証はないはずだ。
「そんなことより、もう数カ月もしたら二人も二年生だね」
「そうねぇ、意外と短く感じるものね」
「はたして二人はどんな使い魔を召喚するのかな?」
「私は珍しい子がいいわね!」「……何でもいい」
「珍しい子って言うのは君らしいけど、タバサ嬢の何でもいいって……」
「何が来ても長所はある。
だから何でもいい」
まぁ二人が何を召喚するか予想っていうか、知ってるんだけどね。
まだ確定してるわけじゃないけど、多分サラマンダーと風の韻竜を召喚するのだろう。
ルイズ嬢はまだ未確定だけど、サイト君が来たらどうしようかな……。
「……ド」
「(俺としては帰るのに協力してあげたいところだけど、流石に七万人突撃に参加とかになるとヤバい)」
「…ッド」
「(なんか既にさっきみたいな噂が流れている時点で、戦争になったらお声が掛かる気がするんだよなぁ)」
「レッド」
「(俺何処で道間違えたんだろう……平穏何処行った?)痛っ!」
俺が考え事に熱中していると、後頭部を鈍器で殴られたような衝撃が走った。
後ろを振り返ってみると、タバサ嬢が杖を構えていた。
「なんか頭が痛いんだけど……」
「そう」
あれ? なんか怒ってない?
会った当初に比べれば、表情豊かになったなぁ……まぁ僅かにだけど。
「レッドはアイガを召喚してどう思った?」
「僕? そうだなぁ……凄く嬉しかったなぁ」
「何故?」
「(う〜ん流石に捕まえたことないポケモンだったからって言うのが大きいんだけど……)
僕も何が召喚されても嬉しかったんだよ。
生涯の相棒になる相手が出来たら嬉しくない訳がないからね」
何とか納得してもらえたらしい。
そろそろ夜も遅くなってきたな。
「二人ともそろそろ夜も遅いから、部屋に帰った方がいいよ。
変な噂がたつのもなんだしね」
「あらぁ、私は別にかまわないわよぉ?」「もう少し話を聞きたい」
「キュルケには彼氏がいっぱいいるじゃないか……彼らに恨まれるのはちょっとね。
話ならいつでもできるから、また今度ね」
「意気地無しねぇ」「残念」
「それじゃあお休み」
「「お休みなさい」」
俺は二人を廊下まで送り、部屋に戻ってきた。
それにしても……。
「この装備一式どうしようかな……よし、いざという時に着よう」
俺はとりあえず仕舞い直して、クローゼットの中に入れた。
このローブを羽織る機会がないことを願いながら、俺はそっとクローゼットを閉めた。
ついに届いた厨二装備
滅多に着ませんが……