第86話 ファーストコンタクト
朝マルトーさんの所に行く途中、そこには俺の妹分と昨日呼び出された異世界の青年がいた。
あぁ原作始まったんだなぁって改めて実感させてくれる光景だな。
とりあえず周りからの視線を集めまくっている二人に声を掛けるために俺は歩きだす。
「どうしたんだ?」
「兄様!! こいつ、私が分けてあげた朝食を断ったのよ!!」
「だってコイツ床に皿を置いてそこで食えって言うんだぜ?
こんなに席が余ってるって言うのに酷いと思わないか?」
あぁそっか……床においてある皿はそう言うことか……。
サイト君はまだ貴族が平民に対してどの様な対応をするか分かってないからなぁ。
とりあえず厨房に連れていくか。
「ルイズ嬢、少し彼を借りてもいいかい?」
「何処でも連れて行って!!」
「それじゃあ君、少し着いて来てくれるかな?」
「あ、はい」
原作でも厨房のお世話になってたから大丈夫だろ。
俺は元々それが目的だったしな。
「ところでアンタ、アイツに兄様とか呼ばれてたけど……兄妹の躾位しっかりしてくれよ」
「何かあったのかい?」
「そうなんだよ! いきなりこんなとこに呼び出して、夜は藁で眠らせる。
そしてさっきのこと……もうなんなんだよ!」
「ルイズ嬢も大変なんだよ。
言っちゃ悪いかもしれないけど、人間を召喚するなんて思わなかっただろうしね。
それに貴族は平民を下に見るのが普通なんだよ。
君は貴族ではないだろ?」
「確かに違うけど……」
「ルイズ嬢はいい子だから、感情的にならないで言えば聞いてくれると思うよ?
とりあえず食事に関しては今から行くところでもらえるはずだから、そこで食べるといい」
そうして俺とサイト君は厨房の中へと入って行った。
そこにはいつも通り忙しそうに料理を作るコックたちが一生懸命働いている。
「マルトーさん! この子に賄いを分けてあげてくれないか?」
「おぉ! 誰かと思えば我らの恩師じゃねぇか!」
「その呼び名は勘弁してくださいって言ってるじゃないですか」
「がっはっはっは! いいじゃねぇか!
それでどうしたって?」
「この子に賄いを分けてくれませんか?」
「おぉどうしたんだ坊主!
見かけねぇ顔だな……」
「彼は昨日ルイズ嬢に召喚された使い魔ですよ」
「ほぉ、あの嬢ちゃんか……相変わらず変わってんなぁ。
それでなんで賄いを分けてほしいんだ?」
「流石に食堂で堂々と食事すると他の生徒が騒ぎだしそうなので……」
「それもそうだな……よし、飯はここで食ってきな!
最高に美味い飯食わしてやるぜ?」
「サンキュー……えーっと?」
「マルトーだ! ここのコック長やってるマルトーだ」
「サンキュー、マルトーさん!
俺の名前は才人、平賀才人だ」
これでサイト君の食事問題は解決したな。
それじゃあついでにお仕事でもしますか!
「マルトーさん、いつも通りここにある壊れた調理器具直しておくよ?」
「何時もすまねぇな、レッド!」
「いつも美味しい食事を御馳走になってますからね」
「今度いい酒御馳走するぜ!」
「それは楽しみだ」
「シエスタ! サイトに飯持ってきてくれ!」
「はい、今持っていきます」
そんな声を聞きながら俺は厨房を後にした。
今日の授業は後ろに使い魔達がいる。
やっぱりこうやってみると壮観だな……。
「今日も授業を始めようと思うけど、その前に皆さん使い魔召喚の儀お疲れさまでした。
皆さん一人一人個性豊かな子を呼びだしたようですね」
俺の言葉で喜ぶ子もいれば、顔を微妙に顰める顔もあった。
因みに一番顔を顰めたのはルイズ嬢だった。
「‘爆発’のルイズ! お前爆発で脅してその平民連れてきたんじゃないだろうな!」
「黙りなさいよ‘風邪っぴき’のマリコルヌ!」
「ぼ、僕は‘風上’のマルコリヌだ!!」
この展開俺デジャブを感じるんだけど……。
まぁ流石に口に土詰めるのはどうかと思うから、注意だけにしておくか。
「二人とも静かにしなさい。
授業中なので、邪魔になりますよ?」
「‘爆発’の癖に生意気な!」
「‘風邪っぴき’は部屋で寝てなさいよ!!」
「……コンデンセイション」
俺は二人の頭上に水を出しぶっ掛けた。
「キャッ!」「うわっ!」
「頭は冷えたかな?
とりあえず授業を続けさせてもらうよ」
二人は一旦視線を交わして、若干膨れながら顔を背けた。
「今日は水に関する幻獣について話していこうと思う。
このクラスにも何人か水に関する使い魔を召喚した人がいるみたいですね」
俺は教室を見渡した。
モンモンも原作通り凄い色の蛙を召喚したようだ。
……あれ毒ありそうだよね。
「とりあえずここにいる水の使い魔の特性から行きますか」
俺はそれから幻獣の特性や、もし敵対した場合の対処法等を説明していった。
途中俺の使い魔に関して質問してきた子がいたが、ゴーレムと大きくは変わらないと言っておいた。
その言葉を聞いて「え!?」と声を上げたのが五人いたが……。
それに関してはスルーすることにした。
時折サイト君がルイズに質問して、その度ルイズ嬢が苛立つという現象が起こってたけど。
そう言えば……ギーシュとサイトの決闘ってどうなるんだろうか?
今のギーシュは浮気なんかしないし……でもあれがないとサイトがガンダールヴって言うことに気が付かないかもしれない。
どうしたもんか……。