第91話 任務を終えて
翌日、昨日の宴会で酔った勢いでヨシアとアイーシャの結婚式をしよう!ということになったため、今俺達は結婚式に参加している。
「おめでと〜!」
「幸せにしてやれよ!!」
「アイーシャを泣かせたら、その時は……」
村人と翼人から祝福の言葉をもらっている二人はとても幸せそうだ。
そんな二人を見ていると、その輪の中から村長が出てきて、こちらに近づいてきた。
「騎士様、怪我は大丈夫ですか?」
「幸い大きな怪我はなかったので……それにしても異なる種族の二人が愛し合って結ばれる。
とても素晴らしいことですね」
「村としてもあの二人が結婚するということは、とても良いことに繋がりました」
「というと?」
「私たちエギンハイム村一同は、翼人との共存を目指すことにしました。
元からライカ欅が絶対必要と言うわけでもないですから。
それに森を切り開かなくても、翼人たちがライカ欅を偶に持ってきてくれるといってくれました」
そうか……最もいい形で終幕を迎えたのか。
良かった。
「村長、一つ頼みごとがあるんですが……」
「はい、なんでしょうか?」
「あの竜のことなんですが、俺達が乗ってきた竜が暴れていたのを取り押さえたって言う事にしてもらえませんか?
流石に竜が消えたと報告するとまた派遣されて、要らぬ諍いが起こるかもしれませんので」
「そうですね、そういうことでしたら村人や翼人たちにも話を通しておきます」
これでもし怪しまれても何とかなるだろう。
さてと……。
「俺達は、そろそろ出ようと思います。
もうここに俺達は必要ないでしょうし……」
「それに用事もある」
「そうですか……もう少しゆっくりしてもらいたかったですが、急いでいるなら仕方がありませんね」
「それでは、仲良く暮らしてください」
「お気遣いありがとうございます」
こうして今回の件は完全に幕を閉じた。
タバサ達が報告している間に、俺はまた黒の鉄球団の溜まり場に足を運ぶ。
「おぅ! ヘイじゃねぇか!!」
「元気そうだな」
「お前こそ」
「今日は特に用はないんだが、待ち合わせまで時間が余ってな」
「おぅ、幾らでも時間潰して行けや。
そう言えば近くの村の翼人が村人と和解したっていう話聞いたか?」
「(情報が早いな)いや、初耳だな」
「亜人だからって排斥すんのは俺ァ可笑しいと思ってたんだよ。
だからよ、今回の話は正直めでてぇ!」
「そうだな、俺もそう思うよ」
俺はまたカウンターに座って、エールをちびちびと飲んだ。
やっぱり現代日本と違って、微妙な味だが……。
「そう言えばお前って幾つなんだ?」
「19だな」
「なんだと!? お前まだそんな歳だったのか?!」
「あぁ……言ってなかったか。
なんだ、若造に負けるのは気に食わないから再戦だとでも言うか?」
「ハッ! 俺を馬鹿にすんなよ?
負けたこたぁ事実だ。
そこに歳何か関係ねぇ!」
「そうか……疑って悪かったな」
まぁそう言うと思ってたんだけどな。
「それじゃあチャンは何歳なんだ?」
「あぁ? 俺の歳は28だ。」
「よ……予想より若かったな。」
「お前何歳だと思ってやがったんだ?!」
「いや、てっきり三十代後半位だと……」
俺の言葉を聞いて周りに居た団員は爆笑しだした。
やっぱり老けて見えるよなぁ……。
そんな中背の小さい猫背の男が近づいてきた。
「あんちゃんは、何処に住んでるんだ?」
「アンタは誰だ?」
「俺はチョイ。
この団の副団長務めてるんでヤンス」
オイオイ、今度はチョイ・ボンゲかよ。
この世界KOFキャラに似た奴多すぎんだろ。
「おぉこの間は丁度いなかったからな!
紹介するぜ。 コイツぁ、チョイ。 黒の鉄球団創立当初からの最古のメンバーだ。
因みに俺の相棒だ」
「ヤメロって照れるじゃねぇか」
「コイツの長所は速さを生かした連続攻撃だ。
ヘイでも防げねぇんじゃねぇか?」
「へぇ、それは頼りになる副団長だな」
「あんちゃんもあんま褒めんなって!」
チョイはどうやら褒められることに慣れてないようだ。
でも語尾にヤンスはやっぱり小物臭いな……。
その後しばらく三人で世間話をしていると、そろそろタバサ嬢が来る時間になった。
「そろそろ時間みたいだ。」
「おぉもうそんな時間か。
またいつでも来いよ?」
「いつでも来るでヤンス!」
「ありがとう!」
俺はしばらく会うことがないであろう二人に別れを告げて、待ち合わせ場所へと向かった。
結局学院に帰ってこれたのは、夜になってからだった。
途中シルフィがタバサに恋人の一人でも作れとか言って、一悶着あったが……それ以外には特に問題はなかった。
学院に着いた俺は取りあえず、タバサを部屋に送り届けてから自分の部屋に戻ろうとした。
「レッド」
「ん?」
「迷惑かけてごめんなさい」
「あぁ、気にするな……とは言えないけど、まぁ過ぎたことだ。
とりあえず今後は気をつけてくれよ?」
「……ありがとう」
「……今回は怪我がなくて良かった」
そう一言だけ言って部屋を出た。
その後俺は自分の部屋に戻って服を着替えて行く。
「ふぅ、やっとあの装備を外せたか。
やっぱりいつも通りの服の方が楽だな」
それにしても……先住魔法ってあんなもんだったのか。
いや、エルフの反射とかがヤバいだけなのか?
「今回はデメリットしかないと思ったんだけど、面白い人達と知り合いになれたのは良かったかな?」
まさかまだKOFキャラっぽい人と出会う機会があるとは……予想してなかったよ。
しかもマイナーな部類のキャラに似てる人達だったし、でも普通にいい人だったな。
いつかまた変装して会いに行こうかな……。
次のイベントは決闘か……。
ところでもうそろそろ100話に成りますが、記念に外伝でも書こうかなって思ってます。
こんなの書いて欲しいっていうものがあれば参考にしますので、何かあれば書いてください。