第92話 原作との違い
俺は最近の日課である学院長との雑談をしながら過ごしていた。
いやぁ結構聞いてて面白い話多いんだよ?
伊達に歳食ってないよね。
「でな、そこで儂は……「学院長!」なんじゃツルベール君、今いいとこじゃったのに……」
「そんなことよりも、大変なんです!
後私はコルベールです!
あぁ、レッド先生もここにいたのですね?」
「それでどうかしたんですか?」
「そうですよ! 中庭で決闘を行おうとしている生徒がいるのです!!」
おぉついに来たか……って誰が決闘するんだ?
ギーシュはないだろうしなぁ。
「なんじゃ、何処の馬鹿息子が力を持て余したんじゃ?」
「一人はヴィリエ・ド・ロレーヌと……」
「フムフム、彼はプライドが高いからのう……で相手は誰じゃ?」
「そ、それがミスヴァリエールの使い魔なんです」
「ほぉ……それは少々不味いのぅ。
コルベール君、眠りの鐘の使用許可を出す。
万が一片方が大きな怪我をしそうになった場合、強制的に止めるのじゃ!」
「分かりました!」
そう言ってコルベール先生は、学院長室から走って出て行った。
それにしても……。
「大きな怪我をしそうになった場合……ですか。
俺の記憶が正しければ、決闘は校則違反じゃありませんでしたか?」
「ホッホッホッホ、確かにそうじゃの。
じゃが……あのヴァリエールの使い魔のルーンが気になるのでな」
「ガンダールヴですか……」
「知っておったのか!?」
「いえ、コルベール先生が……」
「相変わらず身内には口が軽いのぅ。
そうじゃ、もし彼が本物のガンダールヴならばここで負けることはないじゃろう」
「ですが、もし違った場合彼は大怪我どころでは済まないのではないですか?」
俺としてもガンダールヴの能力があるから大丈夫だとは思うんだけど、不安がないわけじゃないからな。
俺がそう言うとオスマンは小さく笑い、俺に言った。
「そのためにコルベール君を現場に行かせたんじゃよ。
彼ならどちらかが大怪我する前に決闘を中断できるじゃろうしの」
「そうですか……信頼していらっしゃるんですね」
「彼も結構重い過去を背負ってるからの……」
少し空気が重くなったが、それも短い間だった。
遠見の鏡に二人の青年が向かい合っているのが映ると、俺と学院長はそっちに集中し始めた。
「確かヴィリエ君は風のラインメイジじゃったな」
「そうですが実戦経験はありませんし、慢心も見えます」
「まぁお主の弟子たち以外にそこまで求めるのは酷じゃないかの?」
「タバサはともかく、ギーシュも若干甘さがありますけどね」
「お主は本当に19歳か?」
「失礼ですね!
そんなことよりも始まりますよ?」
もう鏡の中では今にも戦闘が始まりそうな雰囲気がプンプンしていた。
お? ギーシュが何か喋ってるな……。
「ギーシュ君は一体何を言っているのかのぅ。
ホ? ヴィリエ君が何か怒っておるの」
「まぁヴィリエ君は沸点が低いですからね。
あ、ギーシュがサイト君に剣を渡した」
「素手じゃ無理じゃろうしのぅ……」
でも剣をもった瞬間にヴィリエが勝てる可能性が一気に下がったわけだが……。
なんかサイト君も剣を持った瞬間に何か戸惑っていたようだけど、今はヴィリエを強い眼差しで睨みつけている。
「そう言えば彼らって何で決闘しているんですかね?」
「さぁ、儂にも分からんが、多分使い魔君がヴィリエ君の癪に障る事でも言ったんじゃろ?」
あぁ、あり得る。
まだサイト君は貴族に対する口調が荒いからな。
「お、始まった様じゃな」
「ヴィリエ君が何か喋ってますね……まぁ恐らく平民がどうとか言っているんでしょうけど」
「どうも生徒たちの平民蔑視が目立つのぅ。
まぁ親がそうならそうなってしまうのも仕方がないのぅ」
「そうですね……悲しいことですが。
あ、ヴィリエがサイト君に向けて魔法を使いましたね」
「エアハンマーじゃな……まぁあれなら当たっても大きな怪我はせんじゃろ」
まぁそうなんだけど……先ず当たらないんじゃないか?
あぁやっぱり避けた。
「速いな……(素の俺とどっちが早いかな?)」
「………彼は本当に唯の平民か?」
「歩き方とか剣の構え方から見ると素人ですけど……動きの速さや剣速だけは一流ですね」
鏡に映っているのは、一気に接近したサイト君に杖を真っ二つにされて茫然としているヴィリエの姿だった。
「勝負あった様じゃの……。
周りにいる生徒達も信じられんものを見たような顔をしておるの」
「それはそうでしょう。
普通の平民がラインメイジを圧倒したのですから」
そう言えばルイズ嬢の姿が見えないんだが……あ、今来た。
シエスタも一緒か。
シエスタが呼んできたんだろうなぁ。
「お主の妹分は随分とお怒りじゃの?」
「……彼女は素直じゃありませんからね。
多分危険な行為をして心配掛けたことに怒っているのでしょう」
「……お主少しイライラしてないか?」
そんなことは……多分ない。
多分………。
「それにしても、恐らく彼がガンダールヴであることは明らかじゃな」
「そうですね、剣を振る時にルーンが光っていましたし……。
王宮に報告はしますか?」
「まさか、王宮の連中にそんな報告をしたら使い潰されるのが関の山じゃろう」
「そうですね、じゃあ後でコルベール先生にも内密にすることを伝えてくださいね?
俺は彼らのところにお説教にいってきます」
「程々にの」
さぁてと一応表面上怒っておかないと、決闘は一応校則違反だからな。
それにしてもヴィリエはこれで二回目なんだが、親も呆れるだろう。
まぁ自業自得ってことで。
次回は違う目線で。