その11 今は誰? ここはいつ? 私はどこ?
目が覚めたら俺は芋虫になっていた。
………いや、修辞的表現って奴だぞ? 変身はしてない。林檎投げつけられて死んだりしない。
体全身にギプスと包帯がこれでもかと言わんばかりに巻き付けられていて、芋虫でなければミイラか蓑虫と言った有様である。
(知らない天井……じゃないな。この天井は………)
多分、聖王医療院。ヴィヴィオと最初に出会った場所だ。
この現状を見るに俺はラッキーなことに生きているのだろう。
となると、するべきことは情報収集だ。
包帯と呼吸器で口が凄く動かしづらいので念話を発動。
(おーい、ローイ。あの後スクラップになってなければ返事しろー)
(………幸い無事でしたが。目が覚めたのですね)
(ん。今初めてな。俺何日寝てたんだ?)
(………10日です)
(……………へ?)
(だから、10日です)
ちょっと待て、それだともうJS事件終わってるよな? 原作のままだと。
(ちなみに今、六課の皆はどうしてる? それとヴィヴィオは?)
(一部の方は怪我をして療養中ですが、皆無事です。ヴィヴィオ嬢は一時さらわれましたが、取り戻されて今では元気です)
(さらわれたって……、まあ助かったんならいいか)
………って、あれ?
(もしかして俺、六課メンバー含めて一番重傷だったり?)
(exactly )
………えーっと。
まあいいか。ここは後で考えよう。
よし、取り敢えず口の周りのの包帯が鬱陶しいからゆるめ………
「いっっっだぁあああああああ!」
緩めるために動かそうとした右腕に激痛が走る。ああそうだった。骨折してたっけ。
そして絶叫した瞬間に脇腹の傷にも思いっきり響いた。
「お、おぉ………………」
そのまま動きが封じられているせいでのたうち回ることも出来ないまま悶絶していると、
「れ、れー、ぇ…………?」
不意に涙声が聞こえた。
包帯に拘束されているので、ぎぎぎ、と言った感じで首を声がした方……右に動かす。
病室の扉の前には、体全身を何かにこらえるように震わせ、涙を一杯にためた緑と紅の虹彩異色 でこちらを見つめる幼女がいた。
口が動かせないので念話でメッセージを送ってみる。
(よお、今起きたんだ。口動かしにくいからさ、包帯緩めてくれないか?)
「…………っ」
とたとた。ぐいっ。
強引に包帯を引っ張られた。
「!……っつつつつ……。10日ぶりだな、ヴィヴィオ?」
「ばか !」
挨拶をしたら思いっきり怒鳴られた。………へ?
「あんな風にまもろうとされてもうれしくないよ! ………こんな、こんなボロボロになるくらいだったら、つれていかれるまでいっしょにいてくれたほうが、ヴィヴィオは………っ!」
泣いていた。顔をぐしゃぐしゃにしてヴィヴィオはぼろぼろ涙を流して泣いていた。
「………まあでも、結局その時も俺は戦っただろうけどな」
戦ってる様子を、ぼろぼろになる様子をヴィヴィオに見せなかったのは俺の打算とエゴだ。ヴィヴィオに技を見られないようにすることが一つ。シャーリーさん達に止められたくなかったのが一つ。もうひとつは、
………「自分のせいだ」なんて、ヴィヴィオに思ってほしくなかったから。
「ずっといっしょにいるって言ったのにぃ……、嘘つきぃ………!」
「………ごめんな」
右腕動かせないから、右側に座っているヴィヴィオの頭も撫でてやれないけど。
それでも精一杯の気持ちを込めて言った。
すると、ヴィヴィオはぐしぐし、と腕で強引に涙を拭き取り、
ぎゅ……
怪我のところに触らないようにおそるおそる抱きついてきた。
「……だいじょうぶ?」
「……まあ、なんとかな」
苦笑した。それくらいしか出来なかったし。
と、そこに……
「あ………、目、覚めたんだ。………良かった」
またドアの方を見るとなのはさんが立っていた。気の抜けたような笑みを浮かべている。
「おはようございます。いま愛機 から聞きましたけど、10日も寝てたんですね……」
「………そうだよ。六課関係者の中では一番のお寝坊さんだ」
「あ、あはははは……」
(ごめんね、私がレーヴェ君を呼ばなかったらこんなことにならなかったのに……)
俺が苦笑していると、なのはさんから念話が来た。ヴィヴィオには聞かせたくないんだろう。
あっさりと答えることにする。
(別に気にしなくていいですよ)
(でも………)
(もしその場にいないで、ヴィヴィオがさらわれたって言う結果だけ残ったら、きっと凄く後悔していたと思います。だからいいんです)
やれるだけのことはしたのだから。おかげで罪悪感を感じずに済んだ。
(………そっか。ありがと)
と、さっきの笑みから一転。微笑んでいるがどう見たって目が笑ってなかった。ここからはヴィヴィオにも聞かせていい話らしい。
「……さて、まずはお説教かな。理由はわかるよね?」
「シャーリーさん達に嘘ついて勝手に抜け出たこと、勝手に戦闘したこと……ですか?」
「うん。巻き込まないようにって判断だったのかもしれないけど、あそこで動くべきじゃなかったよ。民間人が戦闘って時点で問題だし、戦うにしても敵が来た時に皆を一時的に退避させるとかやりようはあったはず。でもそれだけじゃないよ」
真顔になってこっちを見てきた。
「最後の技……捨て身のカウンターバインドに、フルドライブでの攻撃。教導官としてはっきり言わせてもらうと、制御が不安定なら両方命を削るようなもの。結果的に大ダメージを与えたけど、両方とも体が出来上がるまでは使用禁止ね」
「………はい」
深く頷いた。俺だって死にたいわけじゃない。ヤバい時には命だって賭けるってだけだ。本来ならヤバくないのが一番である。
「まあ、ヴィータちゃんからもお説教はあるだろうしここまでにしてあげる」
「………はい」
………頷く。
あるんだ。まだあるんだ………。うぅ。
「それでその……、俺が眠っている間に何があったんですか?」
「そうだね。じゃあとりあえず、あの日の結果からかな。………地上本部にいた私達のうち、スバルのお姉さんのギンガはさらわれて、スバルは大怪我。六課の襲撃の知らせを受けて急行した、副隊長を除くライトニングの三人も、フェイト隊長は足止めを受けて、エリオとキャロは敵戦闘機人と戦って撃墜 された。そこから復帰してる間にヴィヴィオはさらわれたみたいだね。キャロが『召喚師と血まみれの人型召喚獣を見た』って言ってたから」
ああ、返り血か。俺の。
「それで、その次の日………」
なのはさんは静かに語り始めた。
目が覚めたら俺は芋虫になっていた。
………いや、修辞的表現って奴だぞ? 変身はしてない。林檎投げつけられて死んだりしない。
体全身にギプスと包帯がこれでもかと言わんばかりに巻き付けられていて、芋虫でなければミイラか蓑虫と言った有様である。
(知らない天井……じゃないな。この天井は………)
多分、聖王医療院。ヴィヴィオと最初に出会った場所だ。
この現状を見るに俺はラッキーなことに生きているのだろう。
となると、するべきことは情報収集だ。
包帯と呼吸器で口が凄く動かしづらいので念話を発動。
(おーい、ローイ。あの後スクラップになってなければ返事しろー)
(………幸い無事でしたが。目が覚めたのですね)
(ん。今初めてな。俺何日寝てたんだ?)
(………10日です)
(……………へ?)
(だから、10日です)
ちょっと待て、それだともうJS事件終わってるよな? 原作のままだと。
(ちなみに今、六課の皆はどうしてる? それとヴィヴィオは?)
(一部の方は怪我をして療養中ですが、皆無事です。ヴィヴィオ嬢は一時さらわれましたが、取り戻されて今では元気です)
(さらわれたって……、まあ助かったんならいいか)
………って、あれ?
(もしかして俺、六課メンバー含めて一番重傷だったり?)
(
………えーっと。
まあいいか。ここは後で考えよう。
よし、取り敢えず口の周りのの包帯が鬱陶しいからゆるめ………
「いっっっだぁあああああああ!」
緩めるために動かそうとした右腕に激痛が走る。ああそうだった。骨折してたっけ。
そして絶叫した瞬間に脇腹の傷にも思いっきり響いた。
「お、おぉ………………」
そのまま動きが封じられているせいでのたうち回ることも出来ないまま悶絶していると、
「れ、れー、ぇ…………?」
不意に涙声が聞こえた。
包帯に拘束されているので、ぎぎぎ、と言った感じで首を声がした方……右に動かす。
病室の扉の前には、体全身を何かにこらえるように震わせ、涙を一杯にためた緑と紅の
口が動かせないので念話でメッセージを送ってみる。
(よお、今起きたんだ。口動かしにくいからさ、包帯緩めてくれないか?)
「…………っ」
とたとた。ぐいっ。
強引に包帯を引っ張られた。
「!……っつつつつ……。10日ぶりだな、ヴィヴィオ?」
「
挨拶をしたら思いっきり怒鳴られた。………へ?
「あんな風にまもろうとされてもうれしくないよ! ………こんな、こんなボロボロになるくらいだったら、つれていかれるまでいっしょにいてくれたほうが、ヴィヴィオは………っ!」
泣いていた。顔をぐしゃぐしゃにしてヴィヴィオはぼろぼろ涙を流して泣いていた。
「………まあでも、結局その時も俺は戦っただろうけどな」
戦ってる様子を、ぼろぼろになる様子をヴィヴィオに見せなかったのは俺の打算とエゴだ。ヴィヴィオに技を見られないようにすることが一つ。シャーリーさん達に止められたくなかったのが一つ。もうひとつは、
………「自分のせいだ」なんて、ヴィヴィオに思ってほしくなかったから。
「ずっといっしょにいるって言ったのにぃ……、嘘つきぃ………!」
「………ごめんな」
右腕動かせないから、右側に座っているヴィヴィオの頭も撫でてやれないけど。
それでも精一杯の気持ちを込めて言った。
すると、ヴィヴィオはぐしぐし、と腕で強引に涙を拭き取り、
ぎゅ……
怪我のところに触らないようにおそるおそる抱きついてきた。
「……だいじょうぶ?」
「……まあ、なんとかな」
苦笑した。それくらいしか出来なかったし。
と、そこに……
「あ………、目、覚めたんだ。………良かった」
またドアの方を見るとなのはさんが立っていた。気の抜けたような笑みを浮かべている。
「おはようございます。いま
「………そうだよ。六課関係者の中では一番のお寝坊さんだ」
「あ、あはははは……」
(ごめんね、私がレーヴェ君を呼ばなかったらこんなことにならなかったのに……)
俺が苦笑していると、なのはさんから念話が来た。ヴィヴィオには聞かせたくないんだろう。
あっさりと答えることにする。
(別に気にしなくていいですよ)
(でも………)
(もしその場にいないで、ヴィヴィオがさらわれたって言う結果だけ残ったら、きっと凄く後悔していたと思います。だからいいんです)
やれるだけのことはしたのだから。おかげで罪悪感を感じずに済んだ。
(………そっか。ありがと)
と、さっきの笑みから一転。微笑んでいるがどう見たって目が笑ってなかった。ここからはヴィヴィオにも聞かせていい話らしい。
「……さて、まずはお説教かな。理由はわかるよね?」
「シャーリーさん達に嘘ついて勝手に抜け出たこと、勝手に戦闘したこと……ですか?」
「うん。巻き込まないようにって判断だったのかもしれないけど、あそこで動くべきじゃなかったよ。民間人が戦闘って時点で問題だし、戦うにしても敵が来た時に皆を一時的に退避させるとかやりようはあったはず。でもそれだけじゃないよ」
真顔になってこっちを見てきた。
「最後の技……捨て身のカウンターバインドに、フルドライブでの攻撃。教導官としてはっきり言わせてもらうと、制御が不安定なら両方命を削るようなもの。結果的に大ダメージを与えたけど、両方とも体が出来上がるまでは使用禁止ね」
「………はい」
深く頷いた。俺だって死にたいわけじゃない。ヤバい時には命だって賭けるってだけだ。本来ならヤバくないのが一番である。
「まあ、ヴィータちゃんからもお説教はあるだろうしここまでにしてあげる」
「………はい」
………頷く。
あるんだ。まだあるんだ………。うぅ。
「それでその……、俺が眠っている間に何があったんですか?」
「そうだね。じゃあとりあえず、あの日の結果からかな。………地上本部にいた私達のうち、スバルのお姉さんのギンガはさらわれて、スバルは大怪我。六課の襲撃の知らせを受けて急行した、副隊長を除くライトニングの三人も、フェイト隊長は足止めを受けて、エリオとキャロは敵戦闘機人と戦って
ああ、返り血か。俺の。
「それで、その次の日………」
なのはさんは静かに語り始めた。