その12 折れた翼
「ごめんなさい、ごめんなさい………!」
無数にある病室、その一つでシャリオ・フィニーノは涙しながら謝罪していた。
「留守を預かってたのに、六課を、守れなくて…………!」
泣きじゃくるシャーリーをフェイトはそっと抱きしめた。
「シャーリーのせいじゃないよ、泣かないで」
アルト・クラエッタも沈痛な面持ちで言葉を継ぐ。
「それにヴィヴィオとレーヴェのことも……なのはさんや、ご両親になんて謝っていいか………!」
シャーリーの泣き声がその場に重くのしかかっていた。
別の一室。
「無理すんな、酷い怪我だったんだぞ」
ヴィータはシャマルが起き上がろうとするのを制したが、シャマルは首を振って起き上がった。
「平気よ。ザフィーラに比べれば私の怪我は軽いもの」
二人が見つめる先……ザフィーラが包帯を全身に巻かれて横になっていた。
「ザフィーラは盾になって私を守ってくれた」
「あたしの方も……リインが守ってくれた。リインとユニゾンしてなかったら死んでたかもしんねえ」
「マリーさんから連絡を受けたわ。リインちゃんは今夜にも目を覚ますって」
「うん……」
「ただ……ザフィーラは完治まで時間がかかるだろうって。ヴァイス君も………峠を越えたとはいえ、当分は………」
「ああ……でも……」
ヴィータはさらに表情を苦くする。
「ええ……。情けないわね……六課に所属してない子が一番の大怪我だなんて……」
「あいつ、負けるとわかってて時間稼ぎのために戦ったってさ……。騎士になるつもりはねえとか言ってたくせに、あたし達よりよっぽど騎士らしいじゃねえか………!」
どん、とヴィータは自身が座る椅子に拳を振り下ろし、それっきり、その部屋は沈黙に包まれた。
さらに別の一室。扉にはこう書いてある。
『レオンハルト・ブランデンブルク 意識不明』
フォワード陣はその中に入っていた。中ではレーヴェの家族が全員、彼の寝顔を見て沈黙していた。
「申し訳ありません、私達が、しっかりしていなかったせいで……!」
ティアナの声に、じっと息子の顔を見ていたルドルフ・ブランデンブルクはゆっくりと振り返った。目元がやや赤い。
「……謝る必要などありません。これはこいつの選択の結果。こちらとしては愚息が迷惑をかけたことを謝罪したいほどです」
「そんな……!」
「迷惑だなんて……!」
キャロとエリオが反論の声を上げる。目を真っ赤に腫らしたルイーゼが微笑む。
「……君達がエリオ君とキャロちゃん? 弟から聞いたよ。『歳の近い友達が六課と関わって何人も出来た』って」
「「っ………!」」
目元こそ普通なものの、顔がやや憔悴していたアーダルベルトも頷く。
「こいつのことを心配してくれてありがとう。ご覧の通りのバカな弟だが、今後も仲良くしてくれると助かるよ」
「「「「もちろんです!」」」」
自然と、声を揃えた。
出て行こうとした時、ほのかに緋色の弾丸をあしらったネックレス……『トロイメライ』が瞬いた。
「……ねえ君達、ロイのこと、しばらく連れて行ってあげてくれないかしら。六課の皆に伝えたいことがあるって、主……息子に頼まれたって言っていたの」
「……わかりました。お預かりします」
ソフィーの言葉に頷いて、ティアナが受け取ろうとする。だが、スバルが制し、自分で受け取った。
「必ず、絶対に伝えますから!」
まっすぐ顔を見て告げた。それに対しソフィーは優しく微笑む。
「ええ、よろしくね」
スバルには一瞬、死んだ自分の母親の顔がその微笑みと重なって見えた。
そこから遥か遠く、ジェイル・スカリエッティのラボの一画。
「ああ、あっぁああああああ!レーヴェえええええ!ママぁああああ!」
拒絶し、助けを求めて泣きわめくヴィヴィオに戦闘機人の4番、クアットロはニヤニヤと笑いながらディスプレイを表示してみせた。
「ほうら陛下〜、あなたを守ろうとしたせいでこの子は死んじゃったんですよー」
そこに写っていたのは血だまりに沈むレーヴェだった。バリアジャケットも今まで見たどのときよりもボロボロで、腕はあり得ない方向に曲がっている。
「…………ぇ…………」
その惨状に、ヴィヴィオは一瞬声を失った。
「ふふふ、あなたがおとなしく出て来れば、こんなことにはならなかったでしょうに………可哀相な子」
「ぁ、ぁあ………」
「ひょっとしたら次はママもこうなるかもしれませんねー?」
「う、あ、ああ………」
「まあ、そうならないようにする方法もありますがー」
「…………」
しゃくり上げるヴィヴィオに対し、スカリエッティが言葉を継いだ。
「ヴィヴィオ、君が私の最高傑作になればいいのだよ………!」
「…………っぁあああああああああああああああ!」
母を思い、一番の友を思い、少女は苦痛に絶叫した。
「ごめんなさい、ごめんなさい………!」
無数にある病室、その一つでシャリオ・フィニーノは涙しながら謝罪していた。
「留守を預かってたのに、六課を、守れなくて…………!」
泣きじゃくるシャーリーをフェイトはそっと抱きしめた。
「シャーリーのせいじゃないよ、泣かないで」
アルト・クラエッタも沈痛な面持ちで言葉を継ぐ。
「それにヴィヴィオとレーヴェのことも……なのはさんや、ご両親になんて謝っていいか………!」
シャーリーの泣き声がその場に重くのしかかっていた。
別の一室。
「無理すんな、酷い怪我だったんだぞ」
ヴィータはシャマルが起き上がろうとするのを制したが、シャマルは首を振って起き上がった。
「平気よ。ザフィーラに比べれば私の怪我は軽いもの」
二人が見つめる先……ザフィーラが包帯を全身に巻かれて横になっていた。
「ザフィーラは盾になって私を守ってくれた」
「あたしの方も……リインが守ってくれた。リインとユニゾンしてなかったら死んでたかもしんねえ」
「マリーさんから連絡を受けたわ。リインちゃんは今夜にも目を覚ますって」
「うん……」
「ただ……ザフィーラは完治まで時間がかかるだろうって。ヴァイス君も………峠を越えたとはいえ、当分は………」
「ああ……でも……」
ヴィータはさらに表情を苦くする。
「ええ……。情けないわね……六課に所属してない子が一番の大怪我だなんて……」
「あいつ、負けるとわかってて時間稼ぎのために戦ったってさ……。騎士になるつもりはねえとか言ってたくせに、あたし達よりよっぽど騎士らしいじゃねえか………!」
どん、とヴィータは自身が座る椅子に拳を振り下ろし、それっきり、その部屋は沈黙に包まれた。
さらに別の一室。扉にはこう書いてある。
『レオンハルト・ブランデンブルク 意識不明』
フォワード陣はその中に入っていた。中ではレーヴェの家族が全員、彼の寝顔を見て沈黙していた。
「申し訳ありません、私達が、しっかりしていなかったせいで……!」
ティアナの声に、じっと息子の顔を見ていたルドルフ・ブランデンブルクはゆっくりと振り返った。目元がやや赤い。
「……謝る必要などありません。これはこいつの選択の結果。こちらとしては愚息が迷惑をかけたことを謝罪したいほどです」
「そんな……!」
「迷惑だなんて……!」
キャロとエリオが反論の声を上げる。目を真っ赤に腫らしたルイーゼが微笑む。
「……君達がエリオ君とキャロちゃん? 弟から聞いたよ。『歳の近い友達が六課と関わって何人も出来た』って」
「「っ………!」」
目元こそ普通なものの、顔がやや憔悴していたアーダルベルトも頷く。
「こいつのことを心配してくれてありがとう。ご覧の通りのバカな弟だが、今後も仲良くしてくれると助かるよ」
「「「「もちろんです!」」」」
自然と、声を揃えた。
出て行こうとした時、ほのかに緋色の弾丸をあしらったネックレス……『トロイメライ』が瞬いた。
「……ねえ君達、ロイのこと、しばらく連れて行ってあげてくれないかしら。六課の皆に伝えたいことがあるって、主……息子に頼まれたって言っていたの」
「……わかりました。お預かりします」
ソフィーの言葉に頷いて、ティアナが受け取ろうとする。だが、スバルが制し、自分で受け取った。
「必ず、絶対に伝えますから!」
まっすぐ顔を見て告げた。それに対しソフィーは優しく微笑む。
「ええ、よろしくね」
スバルには一瞬、死んだ自分の母親の顔がその微笑みと重なって見えた。
そこから遥か遠く、ジェイル・スカリエッティのラボの一画。
「ああ、あっぁああああああ!レーヴェえええええ!ママぁああああ!」
拒絶し、助けを求めて泣きわめくヴィヴィオに戦闘機人の4番、クアットロはニヤニヤと笑いながらディスプレイを表示してみせた。
「ほうら陛下〜、あなたを守ろうとしたせいでこの子は死んじゃったんですよー」
そこに写っていたのは血だまりに沈むレーヴェだった。バリアジャケットも今まで見たどのときよりもボロボロで、腕はあり得ない方向に曲がっている。
「…………ぇ…………」
その惨状に、ヴィヴィオは一瞬声を失った。
「ふふふ、あなたがおとなしく出て来れば、こんなことにはならなかったでしょうに………可哀相な子」
「ぁ、ぁあ………」
「ひょっとしたら次はママもこうなるかもしれませんねー?」
「う、あ、ああ………」
「まあ、そうならないようにする方法もありますがー」
「…………」
しゃくり上げるヴィヴィオに対し、スカリエッティが言葉を継いだ。
「ヴィヴィオ、君が私の最高傑作になればいいのだよ………!」
「…………っぁあああああああああああああああ!」
母を思い、一番の友を思い、少女は苦痛に絶叫した。