その13 想いを受け継ぐ者達-StrikerS-1
『すみません、なのはさん、六課の皆。後、頼みます……』
次の日、スバルの手で八神はやて部隊長に渡されたレーヴェのデバイス『トロイメライ』が記録していた映像は、その後すぐに六課スタッフ全員が見ることとなった。
………傷つき、倒れ、それでも立ち上がり、ボロボロになって捨て身の一撃を放つ、その少年の姿は見た者全ての心を抉った。
「…………完成させてたんだな、あいつ……」
ぽつりと、ヴィータは呟く。それに対しシグナムは頷きを返した。
「…………ああ、私が教えた炎熱変換も見事に使いこなしていた」
「お姫様ほっぽり出して逃げられない、せめて一太刀……完全に騎士の言葉だ」
「ああ、私達以上にな……」
画面を見つめている二人にとってそれ以上の言葉は無粋なものでしかなかった。
ここから先は己の力を持って示すもの。
決死の覚悟に騎士が答えるのは当然のことなのだから。
「無茶し過ぎだよ。それに………、謝る必要なんて、ないのにね……。私がお願いしたせいなのに……」
なのはは強がって苦笑したが、目に光るものがあった。
「そうだね。でも、ヴィヴィオを助けにいく理由が一つ増えた」
フェイトの言葉になのははしっかり頷いた。
「……うん。レーヴェ君に頼まれたんだ。……あの子の代わりに私たちが助け出す。………絶対に」
二人の決意に答えるように、彼女達の愛機が瞬いた。
必死で友を思う、その心を背負い、母は再び戦場を目指す。愛娘を取り戻すために。
「ガリューについてたあの血、レーヴェのものだったんだ………」
「……エリオ君」
キャロが心配そうにエリオを見つめる。若き槍騎士は拳を固く固く握りしめていた。
「もっと、僕たちが早く着いていれば………!」
「……そうだね。でも……」
言葉を続けようとするキャロをエリオは手で制した。
「……わかってるよ、今更言ってもどうにもならないってことは。ただ、不甲斐ないってだけ」
「うん。……レーヴェ君、戦闘データあらかじめ作っておくようにロイに頼んでたんだって」
「後でしっかり確認しよう。彼の必死の攻撃を、無駄にしないために」
「………うん!」
二人の目に宿るその決意は、今までで一番堅いものだった。
自分たちを純粋に認めてくれる、初めての『普通の』友達。
彼の戦場を引き継ぐために、若き召喚師と槍騎士は力を磨く。
「……この攻撃、あたしのディバインバスターを参考にしてるんだって。レーヴェが言ってた」
最後の一撃を見て、スバルが口にする。それに対し、ティアナはただ、頷いた。
「………そう」
「酷いなあ……あの模擬戦の時、レアスキル使ってなかったなんて」
おどけたように言うスバルにティアナは苦笑する。
「まだ完璧には制御できない、ホントの隠し球……そう言ってたわ」
だが、二人の中で本当にくすぶっているものはそんな言葉では、なかった。
「………託され、ちゃったね」
ぽつり、とスバルが呟く。静かにティアナは肯定した。
「………ええ、そうね」
「レーヴェは何かが出来る限り、決して諦めなかった。だからあたし達は……」
「……わかってるわよ。あんな私達の半分しか生きてないような子に覚悟見せられたらね」
「「………絶対に、負けられない………!」」
姉を奪われた少女。その決意は、姉を奪い返し、目覚める少年を笑顔で迎えるために。
平凡なる少女。その覚悟は、先に倒れた少年の努力を否定させないために。
隊に星の名を冠する少女達はその輝きを今は胸に秘めていた。
「部隊長失格やな……民間人に怪我させるなんて」
はやてはため息をついた。心配そうに、励ますように、リインフォースツヴァイは見つめる。
「でもはやてちゃん……」
「わかってるよ、あの子の独断専行やったことは。それでも、そもそもそんな行動をとらせようと思わせないくらいのことが出来な、あかんかったはずなんや」
「……はいです……」
戦闘のデータを入れたレオンハルトのデバイスのデータの中には、「これは自分の勝手な行動であり、六課の人間は一切関係ない」という内容の念書があった。
しかし、彼も彼の両親もどうこう言う気が一切ないとはいえ、非難を浴び、もしこれが原因で査問にでもかけられたなら、六課が一年を待たずに解散することになる可能性はまだある。この事件をどうにかすればまた話は変わってくるのだろうが。
「せやけど………、情けない話やけど、これで皆に火が点いた。ううん、ただでさえ消えてなかった火が、静かにより強まった、かな」
彼女の目に諦めは欠片もない。それは、少年の願いを打ち消してしまうものだから。
「……ええ」
「こうなったらうちの部隊員はもう誰にも止められへん。命を弄び、人を代えの利く人形扱いする研究者に、総出で『人間の、思いの強さ』、見せつけたろうな」
「………はいです!」
夜天の主は己の失敗を悔やみつつも前に進むことをやめない。
それが、先に倒れた少年に対し、今出来る一番のことだから。
その決意に、祝福の風は主を支えることでもって応える。
予言の結果は変わらず。
だが、一人の少年の小さな、潰された抵抗が歴史をわずかに変えていく。
それは『外』から見れば大した違いではないかもしれないけれど。
きっと、彼らにとっては大きな違いだった。
頽 れた一人の少年の想いを受け継ぐように。
星も、雷光も輝きを増し。
長き架け橋もその堅固さを増していく。
『なのはさん、六課の皆。後、頼みます』
「任せて。ヴィヴィオは絶対、私が助け出す!」
「当然だろ。しっかりぶっ飛ばしてきてやる」
「勿論だよ。絶対、全部、取り戻すから」
「頼まれなくても、やってみせるわよ。ここで終わらせるつもりはないわ!」
「うん、頼まれた。安心して、今は眠ってて」
「ああ、任せろ。騎士の言葉に二言はない」
「大丈夫。君の頑張り、絶対に無駄にはしない……!」
「友達の頼みだもん、勿論引き受けるよ!」
「安心し、ここで終わるつもりはないから……!」
「えっへん、リインにお任せなのですよ!」
「わかってる。君の分も、ヴァイス先輩の分も、がんばるよ」
「私は、皆のサポートしか出来ないけど、だからこそ絶対にそれだけは完璧にやってみせる……!」
舞台より少年は鮮烈な結末でもって一時退場する。
だがその影響は舞台に残る。
似て非なる逆転劇、その一幕をご覧あれ。
『すみません、なのはさん、六課の皆。後、頼みます……』
次の日、スバルの手で八神はやて部隊長に渡されたレーヴェのデバイス『トロイメライ』が記録していた映像は、その後すぐに六課スタッフ全員が見ることとなった。
………傷つき、倒れ、それでも立ち上がり、ボロボロになって捨て身の一撃を放つ、その少年の姿は見た者全ての心を抉った。
「…………完成させてたんだな、あいつ……」
ぽつりと、ヴィータは呟く。それに対しシグナムは頷きを返した。
「…………ああ、私が教えた炎熱変換も見事に使いこなしていた」
「お姫様ほっぽり出して逃げられない、せめて一太刀……完全に騎士の言葉だ」
「ああ、私達以上にな……」
画面を見つめている二人にとってそれ以上の言葉は無粋なものでしかなかった。
ここから先は己の力を持って示すもの。
決死の覚悟に騎士が答えるのは当然のことなのだから。
「無茶し過ぎだよ。それに………、謝る必要なんて、ないのにね……。私がお願いしたせいなのに……」
なのはは強がって苦笑したが、目に光るものがあった。
「そうだね。でも、ヴィヴィオを助けにいく理由が一つ増えた」
フェイトの言葉になのははしっかり頷いた。
「……うん。レーヴェ君に頼まれたんだ。……あの子の代わりに私たちが助け出す。………絶対に」
二人の決意に答えるように、彼女達の愛機が瞬いた。
必死で友を思う、その心を背負い、母は再び戦場を目指す。愛娘を取り戻すために。
「ガリューについてたあの血、レーヴェのものだったんだ………」
「……エリオ君」
キャロが心配そうにエリオを見つめる。若き槍騎士は拳を固く固く握りしめていた。
「もっと、僕たちが早く着いていれば………!」
「……そうだね。でも……」
言葉を続けようとするキャロをエリオは手で制した。
「……わかってるよ、今更言ってもどうにもならないってことは。ただ、不甲斐ないってだけ」
「うん。……レーヴェ君、戦闘データあらかじめ作っておくようにロイに頼んでたんだって」
「後でしっかり確認しよう。彼の必死の攻撃を、無駄にしないために」
「………うん!」
二人の目に宿るその決意は、今までで一番堅いものだった。
自分たちを純粋に認めてくれる、初めての『普通の』友達。
彼の戦場を引き継ぐために、若き召喚師と槍騎士は力を磨く。
「……この攻撃、あたしのディバインバスターを参考にしてるんだって。レーヴェが言ってた」
最後の一撃を見て、スバルが口にする。それに対し、ティアナはただ、頷いた。
「………そう」
「酷いなあ……あの模擬戦の時、レアスキル使ってなかったなんて」
おどけたように言うスバルにティアナは苦笑する。
「まだ完璧には制御できない、ホントの隠し球……そう言ってたわ」
だが、二人の中で本当にくすぶっているものはそんな言葉では、なかった。
「………託され、ちゃったね」
ぽつり、とスバルが呟く。静かにティアナは肯定した。
「………ええ、そうね」
「レーヴェは何かが出来る限り、決して諦めなかった。だからあたし達は……」
「……わかってるわよ。あんな私達の半分しか生きてないような子に覚悟見せられたらね」
「「………絶対に、負けられない………!」」
姉を奪われた少女。その決意は、姉を奪い返し、目覚める少年を笑顔で迎えるために。
平凡なる少女。その覚悟は、先に倒れた少年の努力を否定させないために。
隊に星の名を冠する少女達はその輝きを今は胸に秘めていた。
「部隊長失格やな……民間人に怪我させるなんて」
はやてはため息をついた。心配そうに、励ますように、リインフォースツヴァイは見つめる。
「でもはやてちゃん……」
「わかってるよ、あの子の独断専行やったことは。それでも、そもそもそんな行動をとらせようと思わせないくらいのことが出来な、あかんかったはずなんや」
「……はいです……」
戦闘のデータを入れたレオンハルトのデバイスのデータの中には、「これは自分の勝手な行動であり、六課の人間は一切関係ない」という内容の念書があった。
しかし、彼も彼の両親もどうこう言う気が一切ないとはいえ、非難を浴び、もしこれが原因で査問にでもかけられたなら、六課が一年を待たずに解散することになる可能性はまだある。この事件をどうにかすればまた話は変わってくるのだろうが。
「せやけど………、情けない話やけど、これで皆に火が点いた。ううん、ただでさえ消えてなかった火が、静かにより強まった、かな」
彼女の目に諦めは欠片もない。それは、少年の願いを打ち消してしまうものだから。
「……ええ」
「こうなったらうちの部隊員はもう誰にも止められへん。命を弄び、人を代えの利く人形扱いする研究者に、総出で『人間の、思いの強さ』、見せつけたろうな」
「………はいです!」
夜天の主は己の失敗を悔やみつつも前に進むことをやめない。
それが、先に倒れた少年に対し、今出来る一番のことだから。
その決意に、祝福の風は主を支えることでもって応える。
予言の結果は変わらず。
だが、一人の少年の小さな、潰された抵抗が歴史をわずかに変えていく。
それは『外』から見れば大した違いではないかもしれないけれど。
きっと、彼らにとっては大きな違いだった。
星も、雷光も輝きを増し。
長き架け橋もその堅固さを増していく。
『なのはさん、六課の皆。後、頼みます』
「任せて。ヴィヴィオは絶対、私が助け出す!」
「当然だろ。しっかりぶっ飛ばしてきてやる」
「勿論だよ。絶対、全部、取り戻すから」
「頼まれなくても、やってみせるわよ。ここで終わらせるつもりはないわ!」
「うん、頼まれた。安心して、今は眠ってて」
「ああ、任せろ。騎士の言葉に二言はない」
「大丈夫。君の頑張り、絶対に無駄にはしない……!」
「友達の頼みだもん、勿論引き受けるよ!」
「安心し、ここで終わるつもりはないから……!」
「えっへん、リインにお任せなのですよ!」
「わかってる。君の分も、ヴァイス先輩の分も、がんばるよ」
「私は、皆のサポートしか出来ないけど、だからこそ絶対にそれだけは完璧にやってみせる……!」
舞台より少年は鮮烈な結末でもって一時退場する。
だがその影響は舞台に残る。
似て非なる逆転劇、その一幕をご覧あれ。