その14 想いを受け継ぐ者達-StrikerS-2
次元航行艦アースラ、そのミーティングルーム。
「フェイトさん!」
キャロの声にフェイトは振り返った。
「あの……」
「……別グループになっちゃったね。ごめんね、私、いつも大切な時に二人の側にいてあげられなくて」
申し訳なさそうなフェイトに二人は首を振った。
「そんな、こっちは大丈夫です!」
「私達には大事な約束が、ありますから……。でもフェイトさん、一人でスカリエッティのところになんて心配で」
心配そうな二人にフェイトは微笑みかけ、優しく肩を抱いた。
「緊急事態のためにシグナムには地上に残ってもらいたいし、アコース査察官やシスターシャッハも一緒だよ。一人じゃない。それに私も、あの子と約束したから」
「「あ………」」
「二人とも頑張って。絶対無茶とかしないんだよ」
「はい……」
「……それは、フェイトさんもです」
”でも………、アレを見たら、無茶してでもなんとかしようと思っちゃいます”
頭の中で、エリオは念話とすることもなくそう呟いた。
出撃前、スバルはなのはと向き合っていた。
「……なのはさん」
「スバル……」
「ヴィヴィオのこと、お願いします。あたしはギン姉を……!」
励まし、ではない。励まされるつもりもない。
ただ、お互いの決意の確認をするために。
「うん、わかってる。あんなボロボロになって私達がいない間必死に戦ってくれたレーヴェ君の頼みも背負ってるから。だから大丈夫」
「あたしも後を頼まれましたから。だからあたしはあたしのやれることを……しっかりやってきます!」
「うん、私も私のやるべきことをしっかりやってくる。お互い、頑張ろ!」
なのはは柔らかく拳を握って、スバルの前に突き出す。
「はい!」
スバルは頷き、その拳に己の拳を柔らかくぶつけた。
スカリエッティのラボ。フェイトはガジェットを一匹切り倒し、シャッハの方を振り返る。
「ありがとうございます、シスターシャッハ。お二人の調査のおかげで迷わず進めます」
その言葉にシャッハはふわりと微笑んだ。
「探査はロッサの専門です。この子達が頑張ってくれました。それに……」
無限の猟犬、その一匹を撫でてからシャッハはぐっと拳を握りしめる。
「私個人としてもスカリエッティ一味には思うところがあるので」
「………彼、ですか」
「ええ、あの子が必死に守ろうとしたもの、そのすべてを、倒れたあの子の代わりに取り戻す。……このまま奥へ、スカリエッティの居場所まで!」
「はい!」
とある廃ビルの中。ティアナは戦闘機人に閉じ込められ、包囲される中一人歯噛みをしていた。
「ハチマキとコンビで半人前、四人でどうにか一人前のへっぽこガンナーが仲間と引き離された気分はどうっすかー?」
「チンク姉の痛さと悔しさ、ハチマキの代わりにお前に返してやる!」
(………上等じゃない。返したい痛さと悔しさなら私達だって持ってんのよ。とはいえ……)
ボロボロになった少年の姿を思い出す。レアスキルに奢らず、必死で努力していた姿には親近感を覚えていた。
が、それを頭から振り払う。
(スバル、ライトニング。ちょっと作戦変更………)
聖王のゆりかご内部。大まかな見取り図を見てヴィータは即座になのはに言った。
「アタシが駆動炉に回る。お前はさっさとヴィヴィオを助けて来い」
「でも………」
躊躇いを見せるなのはに、ヴィータは念を押すように言った。
「アイツとの約束、忘れてねえだろう? アタシだって後を頼まれた。やるべきことはやるさ。お前との約束をあいつは果たそうとしたんだ。その義理はしっかり通せ」
「……うん、わかった」
「……なんだ、もっと心配して反対するかと思った」
普段は頑固ななのはが割と素直に頷いたのでヴィータは肩透かしを食らったように感じた。
なのはは少し不満そうに、不安そうに反論した。
「心配だよ! でも、みんなあの子との約束を胸に持ってる。私はヴィータちゃんだけじゃなくて、ヴィータちゃんの約束も信じる。だから気をつけて、絶対、すぐに合流だよ!」
「ったりめーだ!」
ティアナは、不意打ちしてきた三人目の戦闘機人の攻撃を受け、足に怪我を負った。
今は瓦礫の陰に隠れ潜んでいる。
(よりによって、足……それに戦闘機人三機、ガジェットまで……)
悲惨な状況に諦めてしまいそうになる。
(これは、無理かな……)
でも、
『大丈夫だよ、ティアなら出来るって!』
いつもの、パートナーの声を思い出す。
『すごいなあ、あんな射撃、俺には出来そうにないや』
努力家の少年の声も。
『ティア強いもん!』
『後、頼みます……』
(そうだ、スバルもギンガさんを取り戻そうと戦っている。……何より、こんな状況、あの子に比べればなんでもない!)
彼はデバイスが完成していなかった。年齢もエリオ達より若く、訓練も十分と言えるほどやったわけじゃない。レアスキルだってほとんど使えなかった。
(そんな状況であの子は二人を相手に立ち回ってみせた。アタシは……!)
「そこをどいてもらおう」
ユニゾンを済ませたゼストを前にシグナムは言葉を紡ぐ。
「……一人の年端もいかぬ少年に『後を頼まれ』ました。彼は先日の戦いで必死で戦い、その結果倒れた。誇りと覚悟を胸に抱いて」
『私たちはそんな戦いをさせてはならないはずでした。なのに不甲斐無い結果しか出せなかったのです。……だからここできっちり名誉挽回するです。……それに何より』
シグナムとユニゾンしたリインフォースが言葉を切り、シグナムはレヴァンティンを構え、じっとゼストを見据える。
「先に倒れたものの志を継ぐは騎士の役目。……行きます」
空に爆炎の花が咲く。
次元航行艦アースラ、そのミーティングルーム。
「フェイトさん!」
キャロの声にフェイトは振り返った。
「あの……」
「……別グループになっちゃったね。ごめんね、私、いつも大切な時に二人の側にいてあげられなくて」
申し訳なさそうなフェイトに二人は首を振った。
「そんな、こっちは大丈夫です!」
「私達には大事な約束が、ありますから……。でもフェイトさん、一人でスカリエッティのところになんて心配で」
心配そうな二人にフェイトは微笑みかけ、優しく肩を抱いた。
「緊急事態のためにシグナムには地上に残ってもらいたいし、アコース査察官やシスターシャッハも一緒だよ。一人じゃない。それに私も、あの子と約束したから」
「「あ………」」
「二人とも頑張って。絶対無茶とかしないんだよ」
「はい……」
「……それは、フェイトさんもです」
”でも………、アレを見たら、無茶してでもなんとかしようと思っちゃいます”
頭の中で、エリオは念話とすることもなくそう呟いた。
出撃前、スバルはなのはと向き合っていた。
「……なのはさん」
「スバル……」
「ヴィヴィオのこと、お願いします。あたしはギン姉を……!」
励まし、ではない。励まされるつもりもない。
ただ、お互いの決意の確認をするために。
「うん、わかってる。あんなボロボロになって私達がいない間必死に戦ってくれたレーヴェ君の頼みも背負ってるから。だから大丈夫」
「あたしも後を頼まれましたから。だからあたしはあたしのやれることを……しっかりやってきます!」
「うん、私も私のやるべきことをしっかりやってくる。お互い、頑張ろ!」
なのはは柔らかく拳を握って、スバルの前に突き出す。
「はい!」
スバルは頷き、その拳に己の拳を柔らかくぶつけた。
スカリエッティのラボ。フェイトはガジェットを一匹切り倒し、シャッハの方を振り返る。
「ありがとうございます、シスターシャッハ。お二人の調査のおかげで迷わず進めます」
その言葉にシャッハはふわりと微笑んだ。
「探査はロッサの専門です。この子達が頑張ってくれました。それに……」
無限の猟犬、その一匹を撫でてからシャッハはぐっと拳を握りしめる。
「私個人としてもスカリエッティ一味には思うところがあるので」
「………彼、ですか」
「ええ、あの子が必死に守ろうとしたもの、そのすべてを、倒れたあの子の代わりに取り戻す。……このまま奥へ、スカリエッティの居場所まで!」
「はい!」
とある廃ビルの中。ティアナは戦闘機人に閉じ込められ、包囲される中一人歯噛みをしていた。
「ハチマキとコンビで半人前、四人でどうにか一人前のへっぽこガンナーが仲間と引き離された気分はどうっすかー?」
「チンク姉の痛さと悔しさ、ハチマキの代わりにお前に返してやる!」
(………上等じゃない。返したい痛さと悔しさなら私達だって持ってんのよ。とはいえ……)
ボロボロになった少年の姿を思い出す。レアスキルに奢らず、必死で努力していた姿には親近感を覚えていた。
が、それを頭から振り払う。
(スバル、ライトニング。ちょっと作戦変更………)
聖王のゆりかご内部。大まかな見取り図を見てヴィータは即座になのはに言った。
「アタシが駆動炉に回る。お前はさっさとヴィヴィオを助けて来い」
「でも………」
躊躇いを見せるなのはに、ヴィータは念を押すように言った。
「アイツとの約束、忘れてねえだろう? アタシだって後を頼まれた。やるべきことはやるさ。お前との約束をあいつは果たそうとしたんだ。その義理はしっかり通せ」
「……うん、わかった」
「……なんだ、もっと心配して反対するかと思った」
普段は頑固ななのはが割と素直に頷いたのでヴィータは肩透かしを食らったように感じた。
なのはは少し不満そうに、不安そうに反論した。
「心配だよ! でも、みんなあの子との約束を胸に持ってる。私はヴィータちゃんだけじゃなくて、ヴィータちゃんの約束も信じる。だから気をつけて、絶対、すぐに合流だよ!」
「ったりめーだ!」
ティアナは、不意打ちしてきた三人目の戦闘機人の攻撃を受け、足に怪我を負った。
今は瓦礫の陰に隠れ潜んでいる。
(よりによって、足……それに戦闘機人三機、ガジェットまで……)
悲惨な状況に諦めてしまいそうになる。
(これは、無理かな……)
でも、
『大丈夫だよ、ティアなら出来るって!』
いつもの、パートナーの声を思い出す。
『すごいなあ、あんな射撃、俺には出来そうにないや』
努力家の少年の声も。
『ティア強いもん!』
『後、頼みます……』
(そうだ、スバルもギンガさんを取り戻そうと戦っている。……何より、こんな状況、あの子に比べればなんでもない!)
彼はデバイスが完成していなかった。年齢もエリオ達より若く、訓練も十分と言えるほどやったわけじゃない。レアスキルだってほとんど使えなかった。
(そんな状況であの子は二人を相手に立ち回ってみせた。アタシは……!)
「そこをどいてもらおう」
ユニゾンを済ませたゼストを前にシグナムは言葉を紡ぐ。
「……一人の年端もいかぬ少年に『後を頼まれ』ました。彼は先日の戦いで必死で戦い、その結果倒れた。誇りと覚悟を胸に抱いて」
『私たちはそんな戦いをさせてはならないはずでした。なのに不甲斐無い結果しか出せなかったのです。……だからここできっちり名誉挽回するです。……それに何より』
シグナムとユニゾンしたリインフォースが言葉を切り、シグナムはレヴァンティンを構え、じっとゼストを見据える。
「先に倒れたものの志を継ぐは騎士の役目。……行きます」
空に爆炎の花が咲く。