その16 想いを受け継ぐ者達-StrikerS-4
スカリエッティによって赤い檻に囚われたフェイトは、画面の先で迷いなく、エリオ達が紫の少女を見据えるのを見た。
(もう、こんなに成長してたんだな……それに比べて私は……)
無駄な思考を打ち消すように頭を振り、キーワードを紡ぐ。
「ライオット!」
同時に赤い檻を、ザンバーの時よりも小柄な剣で斬り払う。そのままフェイトはさらにフォームチェンジへ。
「バルディッシュ、オーバードライブ……真・ソニックフォーム」
装甲を極限まで薄くし、機動性を高めたバリアジャケットを身にまとう。
金色の魔力エネルギーのコードで繋がった二刀を静かに構える。
意外そうに眉を上げ、あざ笑うように、絶望させるようにスカリエッティは言う。
「いいのかね? ずいぶんと消耗が激しいようだが。私を捕らえても、私の娘達の中にあるクローンは残るのだよ? たとえ君が私達を殺せても君はここで足止めだ」
だが、その挑発にフェイトはただ静かに一言呟くだけだった。
「……一つ、忘れていた」
「何をだね?」
興味深げに問うスカリエッティ。その目に宿る感情は明らかに「好奇」だ。
「皆、約束を胸に抱いている。その約束を果たすために成すべきことを成そうとしている。フォワード陣を見て安心した。……私がなのは達を助けに行けなくても、あの子達が行ってくれる。だからまずは」
一瞬の閃光。
「な、はや………」
超高速で近づいたフェイトはトーレを一瞬で斬り捨てる。さらに、
「トーレ!」
動揺しているセッテも装備ごと切り裂いた。二人の戦闘機人が倒れるのを一瞥し、右手で握る剣をスカリエッティに向ける。
「私も私の成すべきことをさっさと終わらせる。全てはそれからだ」
だが臆した風でもなく。敗北の直前にあっても無限の欲望は余裕を崩さない。
「ほう、私と似ている君がどうしてそう言う結論に至ったのか興味があるね。約束とはいった……」
「戯言は」
再び一瞬の閃光。スカリエッティの目の前に踏み込み、防ぐことも許さずに二刀で一瞬で切り裂きながら横を通り過ぎる。
「拘置所でたっぷり聞いてあげます」
崩れ落ちるスカリエッティの後ろで淡々と言葉を続ける。
「広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティ。あなたを逮捕します」
駆動炉の正面に、血まみれの赤い影。
ヴィータは古代ベルカ式の魔法陣を展開し、荒い息をつく。
「はぁッ、アイゼン、まだ、やれるよな?」
『Ja』
力強い肯定の返事。その言葉に笑みを浮かべる。ヴィータはもう一度自らのデバイス、鉄の伯爵 を強く握りしめる。
「アタシは、まだ動ける。ここでこいつをぶち壊して、この船、止めて、なのはも、はやてもっ……守らなきゃなんねえんだッ………! アイツに、後を頼まれたんだ………! それが出来なきゃ、騎士の、矜持が廃るんだよぉッ!」
ボロボロの愛機を振り上げ、巨大な結晶の形をした駆動炉を睨みつけ、鉄槌の騎士は咆哮する。
「いくぞアイゼンッ!」
『explosion!』
カートリッジを3発ロードし,
「ぶち、抜けェェええええええええ!」
全力でグラーフアイゼンを振り下ろした。
「ママとずっと、一緒に居たい………! でも、わたしのせいでレーヴェは死んじゃって……」
素直な気持ちを吐き出したものの、ヴィヴィオは深い後悔の言葉とともに攻撃を繰り出す。
放つのは以前、そのレオンハルトがスバルとの戦いで見せた光速回転蹴り だ。
「死んでないよ! 大怪我して今も眠ってるけど、生きてるしきっともうすぐ目を覚ます!」
どうにかそれをラウンドシールドで逸らし、なのははさらに声を張り上げる。
「でも……」
躊躇うヴィヴィオに、なのはは静かに告げる。レオンハルトの思いを。
「……レーヴェ君ね、意識を失う寸前に私達に『後を頼む』って言ってたんだよ? 怪我して、それでもお姫様 を放り出して逃げたくなくて。倒れるまでヴィヴィオのことをきっと一番に考えてた」
「っ…………!」
息を詰めたヴィヴィオは驚愕しつつも攻撃をやめない。右手を手刀の形として繰り出すのはディバインセイバー……またもレオンハルトの技だ。
「それとも、………もうレーヴェ君に会いたくない?」
プロテクションで防ぎつつ、その防御の障壁を挟んで相対するヴィヴィオの目をしっかりと見て、なのはは問いかける。
その言葉にヴィヴィオは必死で頭を振った。
「そんなわけない、そんなわけ、ないよ………!」
プロテクションに食い込んだ魔力刃が砕け指向性の爆発を起こす。
なのははバリアジャケットをボロボロにしつつも後ろに回避してダメージを軽減させた。
距離をとった状態でレイジングハートを構えなおす。
「じゃあ、帰ろう? 皆の、ところに!」
「…………うん。ママ、助けて…………!」
涙声のヴィヴィオに、決意を宿した表情でなのはは頷く。
「助けるよ……! いつだって、どんな時だって!」
スカリエッティのラボではクアットロのスイッチ起動により崩落が始まっていた。
中にいるフェイトは、「脱出を!」と心配をするシャッハを制した。
「こちらで崩落を止めます。シャーリー!」
『はい! お任せください、あの子との約束にかけて、絶対止めてみせます!……え、トロイメライ、手伝ってくれるの?』
レオンハルトのデバイス「夢想 」はデータ提供の後、「主に代わって見守りたい」と希望したためにアースラの艦橋部にいたのだ。
『演算能力には自信があります。主に代わって手伝いをさせて頂ければ』
『……ありがとう!』
ディスプレイの向こうで交わされる会話を耳にして、フェイトはキーボードを叩きながら笑みを浮かべた。
ちなみに二分後。
『データ解析、完了。パスコード発見。シャーリーさん、見事なお手際です』
『ってホントに速度はやっ! もっと時間かかると思ってたのに!』
『主の私へのこだわりは尋常ではないので。それにこれは、むしろ効率のいいプログラムを組んだあなたの成果です』
『……ありがとう』
すぐに崩落は止まることになる。天井のヒビも崩れるほどのものとはならなかった。
最深部から離脱するとき。
スバルはウイングロードを駆けながら提案した。
「明日皆でお見舞いにいきましょう!」
誰のことを指してるかは皆すぐにわかった。ほとんど全員が顔を綻ばせる。
「ええな、それ。全員揃って、ってわけにはいかへんやろけど、出来るだけスケジュールやりくりしてみるわ」
「ありがとうございます!」
「あ………」
声を出そうとして躊躇うヴィヴィオになのはが微笑みかける。
「ヴィヴィオも、ね?」
こくり、とヴィヴィオは頷いた。
「………うん」
スバルたちによるゆりかご内のメンバー救出完了時、ゆりかごの軌道ポイント到着まで残り一時間38分。
正史 よりもわずかに早いその時間の差は、一人の少年の決死の戦いを見た者達の士気の差の現れであろう。
かくて事件は収束し。
少年が目を覚ましたのはその三日後のことだった。
スカリエッティによって赤い檻に囚われたフェイトは、画面の先で迷いなく、エリオ達が紫の少女を見据えるのを見た。
(もう、こんなに成長してたんだな……それに比べて私は……)
無駄な思考を打ち消すように頭を振り、キーワードを紡ぐ。
「ライオット!」
同時に赤い檻を、ザンバーの時よりも小柄な剣で斬り払う。そのままフェイトはさらにフォームチェンジへ。
「バルディッシュ、オーバードライブ……真・ソニックフォーム」
装甲を極限まで薄くし、機動性を高めたバリアジャケットを身にまとう。
金色の魔力エネルギーのコードで繋がった二刀を静かに構える。
意外そうに眉を上げ、あざ笑うように、絶望させるようにスカリエッティは言う。
「いいのかね? ずいぶんと消耗が激しいようだが。私を捕らえても、私の娘達の中にあるクローンは残るのだよ? たとえ君が私達を殺せても君はここで足止めだ」
だが、その挑発にフェイトはただ静かに一言呟くだけだった。
「……一つ、忘れていた」
「何をだね?」
興味深げに問うスカリエッティ。その目に宿る感情は明らかに「好奇」だ。
「皆、約束を胸に抱いている。その約束を果たすために成すべきことを成そうとしている。フォワード陣を見て安心した。……私がなのは達を助けに行けなくても、あの子達が行ってくれる。だからまずは」
一瞬の閃光。
「な、はや………」
超高速で近づいたフェイトはトーレを一瞬で斬り捨てる。さらに、
「トーレ!」
動揺しているセッテも装備ごと切り裂いた。二人の戦闘機人が倒れるのを一瞥し、右手で握る剣をスカリエッティに向ける。
「私も私の成すべきことをさっさと終わらせる。全てはそれからだ」
だが臆した風でもなく。敗北の直前にあっても無限の欲望は余裕を崩さない。
「ほう、私と似ている君がどうしてそう言う結論に至ったのか興味があるね。約束とはいった……」
「戯言は」
再び一瞬の閃光。スカリエッティの目の前に踏み込み、防ぐことも許さずに二刀で一瞬で切り裂きながら横を通り過ぎる。
「拘置所でたっぷり聞いてあげます」
崩れ落ちるスカリエッティの後ろで淡々と言葉を続ける。
「広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティ。あなたを逮捕します」
駆動炉の正面に、血まみれの赤い影。
ヴィータは古代ベルカ式の魔法陣を展開し、荒い息をつく。
「はぁッ、アイゼン、まだ、やれるよな?」
『Ja』
力強い肯定の返事。その言葉に笑みを浮かべる。ヴィータはもう一度自らのデバイス、
「アタシは、まだ動ける。ここでこいつをぶち壊して、この船、止めて、なのはも、はやてもっ……守らなきゃなんねえんだッ………! アイツに、後を頼まれたんだ………! それが出来なきゃ、騎士の、矜持が廃るんだよぉッ!」
ボロボロの愛機を振り上げ、巨大な結晶の形をした駆動炉を睨みつけ、鉄槌の騎士は咆哮する。
「いくぞアイゼンッ!」
『explosion!』
カートリッジを3発ロードし,
「ぶち、抜けェェええええええええ!」
全力でグラーフアイゼンを振り下ろした。
「ママとずっと、一緒に居たい………! でも、わたしのせいでレーヴェは死んじゃって……」
素直な気持ちを吐き出したものの、ヴィヴィオは深い後悔の言葉とともに攻撃を繰り出す。
放つのは以前、そのレオンハルトがスバルとの戦いで見せた
「死んでないよ! 大怪我して今も眠ってるけど、生きてるしきっともうすぐ目を覚ます!」
どうにかそれをラウンドシールドで逸らし、なのははさらに声を張り上げる。
「でも……」
躊躇うヴィヴィオに、なのはは静かに告げる。レオンハルトの思いを。
「……レーヴェ君ね、意識を失う寸前に私達に『後を頼む』って言ってたんだよ? 怪我して、それでも
「っ…………!」
息を詰めたヴィヴィオは驚愕しつつも攻撃をやめない。右手を手刀の形として繰り出すのはディバインセイバー……またもレオンハルトの技だ。
「それとも、………もうレーヴェ君に会いたくない?」
プロテクションで防ぎつつ、その防御の障壁を挟んで相対するヴィヴィオの目をしっかりと見て、なのはは問いかける。
その言葉にヴィヴィオは必死で頭を振った。
「そんなわけない、そんなわけ、ないよ………!」
プロテクションに食い込んだ魔力刃が砕け指向性の爆発を起こす。
なのははバリアジャケットをボロボロにしつつも後ろに回避してダメージを軽減させた。
距離をとった状態でレイジングハートを構えなおす。
「じゃあ、帰ろう? 皆の、ところに!」
「…………うん。ママ、助けて…………!」
涙声のヴィヴィオに、決意を宿した表情でなのはは頷く。
「助けるよ……! いつだって、どんな時だって!」
スカリエッティのラボではクアットロのスイッチ起動により崩落が始まっていた。
中にいるフェイトは、「脱出を!」と心配をするシャッハを制した。
「こちらで崩落を止めます。シャーリー!」
『はい! お任せください、あの子との約束にかけて、絶対止めてみせます!……え、トロイメライ、手伝ってくれるの?』
レオンハルトのデバイス「
『演算能力には自信があります。主に代わって手伝いをさせて頂ければ』
『……ありがとう!』
ディスプレイの向こうで交わされる会話を耳にして、フェイトはキーボードを叩きながら笑みを浮かべた。
ちなみに二分後。
『データ解析、完了。パスコード発見。シャーリーさん、見事なお手際です』
『ってホントに速度はやっ! もっと時間かかると思ってたのに!』
『主の私へのこだわりは尋常ではないので。それにこれは、むしろ効率のいいプログラムを組んだあなたの成果です』
『……ありがとう』
すぐに崩落は止まることになる。天井のヒビも崩れるほどのものとはならなかった。
最深部から離脱するとき。
スバルはウイングロードを駆けながら提案した。
「明日皆でお見舞いにいきましょう!」
誰のことを指してるかは皆すぐにわかった。ほとんど全員が顔を綻ばせる。
「ええな、それ。全員揃って、ってわけにはいかへんやろけど、出来るだけスケジュールやりくりしてみるわ」
「ありがとうございます!」
「あ………」
声を出そうとして躊躇うヴィヴィオになのはが微笑みかける。
「ヴィヴィオも、ね?」
こくり、とヴィヴィオは頷いた。
「………うん」
スバルたちによるゆりかご内のメンバー救出完了時、ゆりかごの軌道ポイント到着まで残り一時間38分。
かくて事件は収束し。
少年が目を覚ましたのはその三日後のことだった。