その19 俺達の戦いはまだまだこれからだ!
JS事件以来、あまり大きな事件もなく、新暦75年の日々は過ぎていった。
聖王医療院に行ったとき、ヴィータさんが航空戦技教導隊に勧誘されてるのを偶然目にしたり、進路でフォワードメンバーが悩んでいるのを、とりあえず進学一本で決まっている俺は普通に眺めていた。
そうそう、進路といえば、やはりヴィヴィオは原作どおりウチの学校……すなわち聖ヒルデ魔法学院に通うつもりらしい。
カリムさんやシスターシャッハに進められたのもあるらしいが、一番の理由は
「レーヴェがいるから」
だそうだ。好かれていると喜ぶべきなのか、小さなときから依存しすぎじゃないかと心配するべきなのか。複雑な気分である。
……そういや、アインハルトと鉢合わせたらまずいかもな。どうにかしといたほうがいいのかな。
お見舞いのときは二人が来る時間帯もあって奇跡的に顔を合わせていないけど。
そして年が明け、俺も傷はすっかりよくなった。
アインハルトとの修練も再開している。リハビリ後復帰してから、なぜか試合で勝利することが多くなった。きっと死線を潜り抜けたことが大きな経験になっているのと、六課の皆にいろいろ教わっているのが大きいんだろう。この前のフィニッシュ・ブローはキャリバーショット……蹴りと拳の連携攻撃だった。スバルさんの得意とする連携技だ。
最近はティアナさんに二丁拳銃の扱いを少しだけ教えてもらっている。「あたしだってまだ教えてもらっている身だし、誘導弾を主に使うあたしじゃ直射弾のみのアンタには教えきれないこともあるけどね」と苦笑していたけれど。
独学もいいけどやっぱり誰かに教えてもらうというのは大事なのだと思う。
シスターシャッハとの訓練も再開している。これからフレームを作る愛機 のため、双剣の扱いも学んでいるところだ。
最近ロイのフレームの資金もたまり、製作を開始しつつ、とある開発を始めているところである。
名づけて「第五世代デバイス先行開発計画」。
読んで字のごとくなのだが、すさまじく簡単に言ってしまえば、Forceのときに出てきた第五世代のデバイス……魔力の完全循環や閉鎖型魔力刃などを特徴とした「AMFなどの影響を受けた魔力無効化状況でも魔法を使用でき、なおかつ魔力有効状況では更なる力を得ることができるデバイスを管理局よりも先に作っちまおうぜ」ということだ。……簡単じゃなかった。
魔力運用技術に長けてなければ使用は難しいというので、作るのも早いに越したことはない。そうすればそれだけ慣れるための時間も、改良するための時間も増える。
今はまだ理論段階だけど……うまくいけば三年後辺りにはどうにか試作くらいには漕ぎ着けているかもしれない。
……そして、新暦76年、4月28日。
俺はもう進級も終えて、初等科3年生として新しい日々を始めていたのだが。
始まる日々があれば当然終わる日々もある。
午前中で授業が終わる日だったため、放課後即座にいつも行っていた場所、明日からはもう二度と行く事がないであろう場所……六課隊舎に向かう。
そこでは六課が解散の日を迎えているはずだった。
ちょうど、はやてさんが解散の言葉を口にした後に着いたようで、皆が三々五々に散っていく中、どうにかなじみの面々……フォワードの皆を見つける。一次は時間的に無理だったが、二次会には誘われていたので、ついていくことになっていたし。
「あれ、みんなどっかに行くんですか?」
「うん、二次会前に練習場に集合だって。何するんだろうね?」
俺が分かっている事を聞くとスバルさんはあっさり答えてくれた。エリオがそれに応じて、
「さあ……? あ、レーヴェもいたら連れて来るように言われたよ?」
「……え、マジ?」
「うん、マジ」
平然と頷かれた。
それは要するに桜の木を吹き飛ばして焼き尽くす、あの 全力全壊の最後の模擬戦に付き合えということなのだろうか。だが、いや、しかし。
「……まあいっか」
死ぬような怪我をすることはまずあるまい。だったら今の自分の全力をぶつけるだけだ。
「おし、フォワード一同、整列!」
並んでいるのを、ヴィヴィオの横に立って眺める。
なのはさんが皆に言葉をかけていたのだが、
「さて、せっかくの卒業、せっかくの桜吹雪! 湿っぽいのはなしにしよう!」
……さて、始まりますよスーパー地獄タイム。
「ああ」
「「……?」」
シグナムさんが一歩前に出る。それを見てフェイトさんとヴィヴィオは首をかしげた。
「自分の相棒、連れてきてるだろうな?」
ヴィータさんがそう言いつつ自分の相棒 をセットアップしてみせる。
「「「「……え?」」」」
フォワードの皆も不思議そうな表情。うん、そりゃ即理解ってのは無理だわ。
フェイトさんも視線を少しさまよわせ、シグナムさんのほうへと向ける。
シグナムさんは平然とレヴァンティンを取り出して不思議そうに聞いた。
「なんだ、お前は聞いてなかったのか?」
「全力全開、手加減なし! 機動六課で最後の模擬戦!」
なのはさんがエクシードモードのレイジングハートを手に、フォワードの四人に告げると、彼女たちは顔を見合わせ、それから嬉しそうに、
「「「「……はい!」」」」
「全力全開って……聞いてませんよ!?」
フェイトさん戸惑いまくり。
「まあ、やらせてやれ。これも思い出だ」
シグナムさんもレヴァンティンを手に取っている。
単にあなたがやりたいだけでは……ないんですよね。そうですよね?
「もう……ヴィータ、なのは!」
「堅いこと言うな、せっかくリミッターも取れたんだしよ。お、そうだ。レーヴェ、お前も参加するだろ?」
ヴィータさんはニヤリと口角を吊り上げてフェイトさんに答えた後、こっちに向き直った。
「え、いいんですか?」
まさかなーと思ってたけど。
「おう、お前も立派な六課メンバーだろ? フォワード陣の方、行ってきな」
……そう言われるとやっぱ嬉しいな。
「はい、ヴィータ副隊長 !」
俺の返事に「わかってるじゃねーか」とヴィータさんはさらに笑みを深めた。
フェイトさんは戸惑う一方である。
「えぇっ……!?」
「心配ないない、皆強いんだから!」
「でも危ないよ! ね、レーヴェ!?」
なのはさんへの反論にフェイトさんはこっちを巻き込んできた。仕方がないので、
「あの、なのはさん、とりあえずいいですか」
「うん、なに?」
やっぱり反対してくれるんだ、と安堵したフェイトさんを横目に見つつ。
「桜はさすがに模擬戦の時は消しときましょう。シグナムさんや俺の炎熱やら、エリオの電気攻撃やらが当たると火事になりかねませんから確かに危険ですし、何より樹がかわいそうです」
「あ、確かにそうだね。始める前に設定しておくよ」
「え、そっちなの!?」
ため息をつくフェイトさんを尻目に俺はフォワード陣のほうへ。
「あの、よろしくお願いします」
「うん、がんばろ!」
「全力で行くわよ!」
スバルさん達は笑顔で答えてくれた。
俺は集団戦が初めてなので遊撃が基本らしい。
「フェイトさんも、お願いします!」
「がんばって勝ちます!」
エリオとキャロはフェイトさんに参加するよう頼んでいた。
「あぁ、もぉ……」
フェイトさんは額に手を当て苦笑する。それを横にいたヴィヴィオが励ました。
「がんばって!」
その後こっちにぶんぶん腕を振ってくる。うむうむ、可愛いやつだ。
「さて、行くか。トロイメライ」
『I'm ready. Set Up』
体が成人状態に変身する。黒のインナーとズボン、その上に羽織るコートは変わらないままだ。
変化したのは腰の部分。
ベルトをした腰の両側にホルスターが付けられ、そこに入れられたのは一丁ずつ、計二丁の拳銃型デバイスだ。拳銃のタイプとしてはオートマチック、というのが正しいだろう。
銃身の長さは大体15cm。なのはさんたちが使うものより口径がやや小さい9ミリのカートリッジがそれぞれ15発ずつ入る。グリップには骸骨と二本の交差する曲刀 の紋が刻まれている。
さらにその後ろ、ベルトのところからぶら下がっている剣帯に一本ずつ剣の柄のようなものがぶら下がっている。
刀身の部分を魔力刃で構成するので、今は柄のみだ。刀身の部分は両刃で、フェイトさんのライオットのやや寸詰まりな感じである。
だが今は、拳を構える。取り出す武器は状況次第だけど、今一番扱いに慣れているのは格闘なのだから。
そして。
「それでは!……レディー、ゴー!」
俺達はこの模擬戦を精一杯戦い、楽しみ、この日々をかみ締めた。
その結果は、その場にいた皆だけの秘密だ。
JS事件以来、あまり大きな事件もなく、新暦75年の日々は過ぎていった。
聖王医療院に行ったとき、ヴィータさんが航空戦技教導隊に勧誘されてるのを偶然目にしたり、進路でフォワードメンバーが悩んでいるのを、とりあえず進学一本で決まっている俺は普通に眺めていた。
そうそう、進路といえば、やはりヴィヴィオは原作どおりウチの学校……すなわち聖ヒルデ魔法学院に通うつもりらしい。
カリムさんやシスターシャッハに進められたのもあるらしいが、一番の理由は
「レーヴェがいるから」
だそうだ。好かれていると喜ぶべきなのか、小さなときから依存しすぎじゃないかと心配するべきなのか。複雑な気分である。
……そういや、アインハルトと鉢合わせたらまずいかもな。どうにかしといたほうがいいのかな。
お見舞いのときは二人が来る時間帯もあって奇跡的に顔を合わせていないけど。
そして年が明け、俺も傷はすっかりよくなった。
アインハルトとの修練も再開している。リハビリ後復帰してから、なぜか試合で勝利することが多くなった。きっと死線を潜り抜けたことが大きな経験になっているのと、六課の皆にいろいろ教わっているのが大きいんだろう。この前のフィニッシュ・ブローはキャリバーショット……蹴りと拳の連携攻撃だった。スバルさんの得意とする連携技だ。
最近はティアナさんに二丁拳銃の扱いを少しだけ教えてもらっている。「あたしだってまだ教えてもらっている身だし、誘導弾を主に使うあたしじゃ直射弾のみのアンタには教えきれないこともあるけどね」と苦笑していたけれど。
独学もいいけどやっぱり誰かに教えてもらうというのは大事なのだと思う。
シスターシャッハとの訓練も再開している。これからフレームを作る
最近ロイのフレームの資金もたまり、製作を開始しつつ、とある開発を始めているところである。
名づけて「第五世代デバイス先行開発計画」。
読んで字のごとくなのだが、すさまじく簡単に言ってしまえば、Forceのときに出てきた第五世代のデバイス……魔力の完全循環や閉鎖型魔力刃などを特徴とした「AMFなどの影響を受けた魔力無効化状況でも魔法を使用でき、なおかつ魔力有効状況では更なる力を得ることができるデバイスを管理局よりも先に作っちまおうぜ」ということだ。……簡単じゃなかった。
魔力運用技術に長けてなければ使用は難しいというので、作るのも早いに越したことはない。そうすればそれだけ慣れるための時間も、改良するための時間も増える。
今はまだ理論段階だけど……うまくいけば三年後辺りにはどうにか試作くらいには漕ぎ着けているかもしれない。
……そして、新暦76年、4月28日。
俺はもう進級も終えて、初等科3年生として新しい日々を始めていたのだが。
始まる日々があれば当然終わる日々もある。
午前中で授業が終わる日だったため、放課後即座にいつも行っていた場所、明日からはもう二度と行く事がないであろう場所……六課隊舎に向かう。
そこでは六課が解散の日を迎えているはずだった。
ちょうど、はやてさんが解散の言葉を口にした後に着いたようで、皆が三々五々に散っていく中、どうにかなじみの面々……フォワードの皆を見つける。一次は時間的に無理だったが、二次会には誘われていたので、ついていくことになっていたし。
「あれ、みんなどっかに行くんですか?」
「うん、二次会前に練習場に集合だって。何するんだろうね?」
俺が分かっている事を聞くとスバルさんはあっさり答えてくれた。エリオがそれに応じて、
「さあ……? あ、レーヴェもいたら連れて来るように言われたよ?」
「……え、マジ?」
「うん、マジ」
平然と頷かれた。
それは要するに桜の木を吹き飛ばして焼き尽くす、
「……まあいっか」
死ぬような怪我をすることはまずあるまい。だったら今の自分の全力をぶつけるだけだ。
「おし、フォワード一同、整列!」
並んでいるのを、ヴィヴィオの横に立って眺める。
なのはさんが皆に言葉をかけていたのだが、
「さて、せっかくの卒業、せっかくの桜吹雪! 湿っぽいのはなしにしよう!」
……さて、始まりますよスーパー地獄タイム。
「ああ」
「「……?」」
シグナムさんが一歩前に出る。それを見てフェイトさんとヴィヴィオは首をかしげた。
「自分の相棒、連れてきてるだろうな?」
ヴィータさんがそう言いつつ
「「「「……え?」」」」
フォワードの皆も不思議そうな表情。うん、そりゃ即理解ってのは無理だわ。
フェイトさんも視線を少しさまよわせ、シグナムさんのほうへと向ける。
シグナムさんは平然とレヴァンティンを取り出して不思議そうに聞いた。
「なんだ、お前は聞いてなかったのか?」
「全力全開、手加減なし! 機動六課で最後の模擬戦!」
なのはさんがエクシードモードのレイジングハートを手に、フォワードの四人に告げると、彼女たちは顔を見合わせ、それから嬉しそうに、
「「「「……はい!」」」」
「全力全開って……聞いてませんよ!?」
フェイトさん戸惑いまくり。
「まあ、やらせてやれ。これも思い出だ」
シグナムさんもレヴァンティンを手に取っている。
単にあなたがやりたいだけでは……ないんですよね。そうですよね?
「もう……ヴィータ、なのは!」
「堅いこと言うな、せっかくリミッターも取れたんだしよ。お、そうだ。レーヴェ、お前も参加するだろ?」
ヴィータさんはニヤリと口角を吊り上げてフェイトさんに答えた後、こっちに向き直った。
「え、いいんですか?」
まさかなーと思ってたけど。
「おう、お前も立派な六課メンバーだろ? フォワード陣の方、行ってきな」
……そう言われるとやっぱ嬉しいな。
「はい、ヴィータ
俺の返事に「わかってるじゃねーか」とヴィータさんはさらに笑みを深めた。
フェイトさんは戸惑う一方である。
「えぇっ……!?」
「心配ないない、皆強いんだから!」
「でも危ないよ! ね、レーヴェ!?」
なのはさんへの反論にフェイトさんはこっちを巻き込んできた。仕方がないので、
「あの、なのはさん、とりあえずいいですか」
「うん、なに?」
やっぱり反対してくれるんだ、と安堵したフェイトさんを横目に見つつ。
「桜はさすがに模擬戦の時は消しときましょう。シグナムさんや俺の炎熱やら、エリオの電気攻撃やらが当たると火事になりかねませんから確かに危険ですし、何より樹がかわいそうです」
「あ、確かにそうだね。始める前に設定しておくよ」
「え、そっちなの!?」
ため息をつくフェイトさんを尻目に俺はフォワード陣のほうへ。
「あの、よろしくお願いします」
「うん、がんばろ!」
「全力で行くわよ!」
スバルさん達は笑顔で答えてくれた。
俺は集団戦が初めてなので遊撃が基本らしい。
「フェイトさんも、お願いします!」
「がんばって勝ちます!」
エリオとキャロはフェイトさんに参加するよう頼んでいた。
「あぁ、もぉ……」
フェイトさんは額に手を当て苦笑する。それを横にいたヴィヴィオが励ました。
「がんばって!」
その後こっちにぶんぶん腕を振ってくる。うむうむ、可愛いやつだ。
「さて、行くか。トロイメライ」
『I'm ready. Set Up』
体が成人状態に変身する。黒のインナーとズボン、その上に羽織るコートは変わらないままだ。
変化したのは腰の部分。
ベルトをした腰の両側にホルスターが付けられ、そこに入れられたのは一丁ずつ、計二丁の拳銃型デバイスだ。拳銃のタイプとしてはオートマチック、というのが正しいだろう。
銃身の長さは大体15cm。なのはさんたちが使うものより口径がやや小さい9ミリのカートリッジがそれぞれ15発ずつ入る。グリップには骸骨と二本の交差する
さらにその後ろ、ベルトのところからぶら下がっている剣帯に一本ずつ剣の柄のようなものがぶら下がっている。
刀身の部分を魔力刃で構成するので、今は柄のみだ。刀身の部分は両刃で、フェイトさんのライオットのやや寸詰まりな感じである。
だが今は、拳を構える。取り出す武器は状況次第だけど、今一番扱いに慣れているのは格闘なのだから。
そして。
「それでは!……レディー、ゴー!」
俺達はこの模擬戦を精一杯戦い、楽しみ、この日々をかみ締めた。
その結果は、その場にいた皆だけの秘密だ。