その40 高町ヴィヴィオの聖王試験
ミッドチルダに帰ってきてから1ヶ月。
今日はとある資格試験の日である。
「じゃあ行ってくるね!」
「うん、行ってらっしゃい」
「頑張ってね!」
「はーい!」
ヴィヴィオが頷く。
そう、今日は本局で行われる、無限書庫司書資格の試験日なのだ。
試験会場へ向かうのをなのはさん、フェイトさんと見送るために来た訳である。
「ヴィヴィオ」
「ん、何、レーヴェ?」
振り向いたヴィヴィオに最後の確認として問いかけてみる。
「在るべき本は?」
「在るべき所に!」
「資料の検索、捜索は?」
「迅速かつ的確に!」
「ハラオウン提督は?」
「
はきはきと答えるヴィヴィオ。うん、これなら安心だな。
「あはは、最後の質問が………」
「クロノ………」
なのはさんとフェイトさんが苦笑する。
後日、ヴィヴィオに敵視されてはかなわんということでクロノ提督の資料請求が減って司書達は大喜びするのだが、それはまた別の話である。
「よし、じゃあ頑張れ。大丈夫だ、勉強はたっぷりしてきた。自信を持って行ってこい」
「うん!」
にっこりと笑みを浮かべ、ヴィヴィオは俺達に背を向けて試験会場へと歩き出した。
今は朝9時。試験時間は2時間。結果発表はその3時間後………つまり5時間後だ。
実際、受験者はそんなに多くないので即日発表が出来るのである。
「さて、じゃあ俺も帰ります」
「うん、夕方から合格おめでとうパーティーやるから来てね!」
「ええ、もちろん。では、また後で」
なのはさんの言葉に笑顔で頷き、俺はミッドへと戻る転送ポートへと向かった。
ミッドに戻った後、レールウェイを用いて聖王教会に向かう。
ルーテシアとのデバイス作成で思ったのだが、やはり一人だとかなり時間がかかる。ルーテシアもガリューやインゼクト、メガーヌさんにすこし手伝ってもらっているらしいし。
しかし、助手をわざわざ雇うほどでもないというか、そうなると人件費が半端ない。というかガキの助手やってくれそうな人とかいないだろう。
そんな訳で、デバイス作成をサポートしてくれるデバイスを作ることにした。
ユニゾンデバイスに近い、サポート用の
将来的にはこの研究から介護用のデバイスとか作れると人の役にも立っていいかなー、などとも考えている。
無機の義手義足などの構造の研究、ユニゾンデバイスのデータに、戦闘機人の肉体構造。そういった物を全て研究の範囲内に組み込み、ようやく、設計図を引きはじめる段階まで来た。
ユニゾンデバイスも戦闘機人も女性体のデータしかないから、このデバイスも女性体になる。
コアの作成とAIの構築、さらにコアユニットから全身各部への運動情報伝達、ある程度の自己修復機能、緊急時の判断なども考えつつ、さらにメンテナンスが出来るだけ容易になるように慎重に設計図を引いては引き直し、引いては引き直しを繰り返す。
っと、結構時間が経ったな。昼は一応食べたけど、それ以外はずっと設計図とにらめっこしていた。
「ふう………」
しかし設計図は完成した。次はプログラムだ。最低限の自衛用のプログラムは載せるとはいえ、戦闘をすることは恐らくほぼないから、トロイメライの物とは若干構成が異なるし………っと、通信か。
時計を見ればもう14時。試験の合格発表の時間だ。
通信はおそらくヴィヴィオからだろう。
即座にディスプレイを展開。予想通りの顔が映る。
「どうだった?」
一応聞くが、満面の笑みから結果は明らかだった。
「合格!」
「うん、おめでとう………まああんだけ勉強したんだ。そりゃ合格するさ」
「うん、満点取れた!」
…………そりゃまた。流石にそこまでは予想してなかった。
「すげえな。良くやった」
「ありがと、レーヴェのおかげだよ!」
「どういたしまして、でもまあお前が努力した成果だ」
俺の賞賛にヴィヴィオは少し照れくさいのか頬をかく。
「………うん! あ、ママが『パーティーは時間通りにやるから予定通りに来てね』だって!」
「了解、絶対行くって伝えといてくれ。じゃあ、また後でな」
「うん、また後で!」
通信を切り、設計図を確認する。コアのクリスタル、間接を含む基礎骨格に耐久力の在る皮膚部ラバー。動きがより自然になるように体のバネたる筋肉を構成。よし、問題はないな。
ディスプレイを閉じ、照明を落とす。
部屋を出て鍵を閉めた所で、ばったりシスターシャッハに会った。
「あら、ごきげんよう」
「こんにちは」
挨拶をきっちり返すと、鍵を閉めた所なのがわかったのか問いかけてきた。
「今からお帰りになるのですか?」
「ええ。………そうだ、セインとオットーとディードがどこにいるかご存知ですか?」
どうせだったら皆で一緒に行った方が楽しいだろう。
「あら、何かあるのですか?」
「ええ、実は…………」
ヴィヴィオの合格祝いのパーティをやるのだと言うと、シスターシャッハは嬉しそうな顔をした。
「まあ。確かにそれならにぎやかな方がいいですね。私もカリムも仕事ゆえ行けませんが、『おめでとう』と言っていたと伝えておいてください。今度いらっしゃった時にはいつもより盛大にお茶の用意をしておきますね」
「はい。ヴィヴィオも喜ぶと思います」
場所を教えてもらった後、一礼して立ち去ろうとしたところで呼び止められた。
「あ、それと……………今度お願いしたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「………? はい、俺に出来ることなら」
「そうですか、ありがとうございます」
………何を頼まれるんだろう。無茶ぶりじゃないと思うけど………。
その後三人を発見、合流して高町家へと向かった。
『ヴィヴィオ(陛下)、司書資格合格おめでとうー!』
パンッとクラッカーの音とともにパーティーが始まった。うわ、結構いるな。あ、でも司書長はいない。多分今度入る人の登録作業とかがあるのだろう。
と、主賓がこっちにやってきた。
「えへへー。これからよろしくね、レオンハルト先輩?」
「ま、せいぜいこき使ってやるさ、高町ヴィヴィオ後輩」
いたずらっぽく笑う
………っと、そういえば。
「ヴィヴィオ、お前今ノーヴェに
「え? うん…………」
「今度見せてみな。最近見てなかったし、出来具合によっては技とか教えるかも」
「ホント!?」
あと、実はヴィヴィオに最適(多分)なオリジナルな技とかも思いついていたりする。まあそれはノーヴェと相談しつつになるだろうけどな。
さて、ヴィヴィオはどれくらい強くなってるかな………。