いつものように感想返信から。今回は同じような感想がいくつかあったのでそっちはまとめて答えたいと思います。
>黄金世代強すぎね?
その位のレベルの方がちょうどいいかなー……なんて思ってます。来年新しく登場する連中(もう準備済み)もまたヤバいですし。再来年? それは流石に考えてないですけど……。
>リア充多いな
人間関係用意しようと思ったらちょうどいいのが女子ばっかで………。アレの弟とか出したら参加者増えますし。
女子のうちの何人かは来年の女子の方で出るかもしれません。オリキャラ枠で。
>熱いバトルを期待
なけなしの文才を尽くして頑張ります。
>『0』さん
ああ、これもにじファンの所での説明が消えてましたっけ。レーヴェのレアスキルは正確には「フェイズタイムレス」になりますね。転移する際のラグが全くないのでForceのアイツとやり合った場合、転移の性能だけを見ればレーヴェに軍配が上がります。
さて、いよいよ初戦です。
え、狼はともかく獅子は化かしたりしない? 化かしますよ、ウチの獅子……レーヴェは。
それにしてもネタ分かった人も分からない人もいらっしゃるようで………。全部分かったという方も油断していたら実は勘違いだったという落とし穴があるかもしれないのでご注意を。
その57 獅子と狼の化かし合い
「なっ」
初手。
正拳突き一発で沈めようとした自分より背の高い相手の懐へ、労なく潜り込む。
少し跳躍。驚愕している相手の膝の裏あたりに右足を叩き込み、膝カックンの要領で体勢を崩す。同時に、
「え? うわあっ!」
顔面を引っ掴み、そのまま体重をかけて押す。
……
端的に言うと、
「がっ」
床に後頭部が直撃。俺の加重その他諸々で一発で相手は地に沈んだ。
この間、僅か3秒。
「し、Cリング、選考終了……。勝者、ゼッケン1027」
「まあ、こんなものか」
少々やりすぎた感は否めないが、まあ勝ったのでいいだろう。
気を失った相手と、彼の元へ走りよるコーチと思われる人物に目礼を済ませて、リングを去る。
「容赦ないですね……」
「それが礼儀じゃないか? 一応手加減もした」
ディードの引き気味な台詞にため息混じりに返して、荷物をまとめ始める。
こうして俺は、極めて手短に選考会を済ませた。
Side オリヴァルト・アスラシオン
僕はどうも釈然としなかった。
「どうしたの?」
「いや、相手がね……」
観戦のためにこちらに来ていたルーテシアの不思議そうな問いに頭を振った。
僕は射撃魔導師だ。相手は剣士。手の内を簡単に見せる必要もあるまいと思って、誘導弾だけでなんとかしようと思っていたのだが。
「まさか近接で勝ってしまうとは……」
開始直後に相手が剣で斬り掛かってきたのを左のヴェスで払って、右のフェネクスを喉に突きこみそのまま魔力弾を発射。
「ぐぇ」
カエルの潰れるような声を上げてあっさりと相手が倒れてしまった。
なんと言えばいいのか…………そう、お手軽すぎな気がしてならなかった。
「まあ良かったじゃない、勝てて」
ルーテシアが気楽に言うが、僕はそんな気分にはなれなかった。
「いや、気を抜いてしまいそうで」
「その心配はなさそうだぞ」
後ろから聞き慣れた声がして、僕は振り返った。
「レーヴェ?」
親友はアメジスト色の瞳を鋭くさせて、
「お前から5時の方向にいる連中。去年の入賞者達だ。相当やばい」
……!
振り返った瞬間、何となく分かった。
談笑している彼らの、こっちを見てもいないのに分かる強い戦意。鍛えられた身体、制御されている魔力。さっき戦ったような相手とは格が違う。
「けど、なのはさん達程じゃない」
自分自身を奮い立たせるように呟く。そうだ、彼らは強い。でも、今まで見た中で一番強い、わけじゃない。
「そうでないとな。………油断するなよ」
「そっちこそ」
ばし、と軽くハイタッチをして僕らはその日別れた。
ちなみにブロックが違うのでレーヴェとは本戦で会うことになる。
……絶対に、負けられない。
Side end
油断をするつもりはない……が、あのレベルの強豪と今すぐ戦う訳ではないのも事実だ。
そう思ったのは、スーパーノービス……一試合勝てばエリートクラス行きという試合の当日である。
目の前には、仰向けに倒れた敵の姿。
事前に俺の選考会での試合を見ていたらしく、うかつに懐に入らないように警戒していたようだったが、俺は別に懐でなければ攻撃出来ない訳じゃない。
あっさりと意識を飛ばしてしまい、TKO……テクニカルノックアウトの判定で勝利した。
これでエリートクラスに出場決定。
見たところ、三回戦まではシード枠と当たることもなさそうだ。
さて。リヴァは……ああ、やっぱり勝ってるな。
「じゃあ帰ろうか、ディード」
「はい」
出口へと足を向けて、
「……よお。見てたぜ、今の試合」
目の前に、一人の男が立っていた。
黒いスーツを崩しつつも粋に着こなし、片手をポケットに突っ込んでいる。片手がすぐには動かないはずなのに、その姿に隙が見いだせない。
「……どうも。ジェクト・ヴァゼックさんが俺なんかの試合を見ていたとは予想外でした。去年の大会で上位だったあなたから見れば期待外れでしょうが」
「いいや、
慎重に、丁寧に紡いだ言葉が否定される。
サングラス越しでも分かる、愉悦を含んだ鋭い目。彼は口角がつり上げて、獰猛な笑みを浮かべていた。
「これから先の戦いのために、少しでも対戦相手に与える情報を少なくして手の内を隠す。そのための一撃必倒だろう? 今の言葉も本心じゃない、ましてやただの謙遜なんかじゃあない、相手を油断させる為に言っている」
「………買い被り過ぎですよ。たかだか初等5年生のガキがそんな真似出来る訳ないじゃないですか」
言いつつも内心では舌打ちする。完全に意図を読まれている。
ここまで俺の事をきっちり見てくるとは……それも、スーパーノービスから確認されるとは。
ここから先の戦いでどこまで手の内を隠すか、しっかり考えないと。
「ハ。末恐ろしい5年生だ。……まあいい。お前との試合、楽しみにしているぜ」
「……まだそこまで勝ち上がれるとは限らないので保証はしかねますが」
「よく言うぜ、負ける気なんてない癖によ。……隠してる手の内も見させてもらうぞ。腕ずくでな」
凄みのある台詞。だが俺はそれに乗らず…受け流す。
「……手の内って言う程のものなんてありませんよ」
「フン、どうだかな」
俺の言葉を鼻で笑って、ジェクト・ヴァゼックは去っていった。
間違った事は言っていない。戦い方そのものが偽装なんだから。
「……厄介なのと当たったな」
思わず呟く。年下だからという理由で油断をしない。『一撃必倒の攻撃をしているという事はそれさえ突破すればいいということだ』なんて肯定的な解釈もしない。これを厄介といわずしてなんと言う。
「ディード。ノーヴェの予定、知っているか?」
「……ある程度なら、ですが」
「なら後で教えてくれ。ジェクト・ヴァゼックのデータを送るから見てもらいたいんだ。出来ればギンガさんやスバルさんからも意見が聞きたい」
「分かりました。私の方で姉に話は通しておきます」
「ありがとう、頼む」
俺が頭を下げると、ディードは微笑んだ。
「いいえ、私もやりたくてやっていますから」
「……そっか」
「レーヴェーッ!」
出口の方でヴィヴィオが笑顔で手を振っているのが見えた。
一山いくらのノリでやられた相手が哀れ。運が悪かったとしか言いようがありません。
さて、という訳で次回は激戦でございます。前後編くらいになる……かな?