さて、感想返しを少し。
>ジム3さん
今回大体の面々は出てきます。ただ、彼女にバレる事は心配しなくても良いかと。ええ、修行中ですから。
>ビーフンさん
彼女はこのDSAA編が終わった後に姿を見せます。わりとこれが終わった後は本編まで駆け足なので。
>羊羽さん
熱くなる、はずです。熱さ的には今回はとろ火から中火へ。次回で一気に大火力になりますが。
というわけで、獅子と狼の戦いが始まります。その裏で実はもう一つの戦いが……?
その58 堅牢なる毛皮
いよいよ今日はエリートクラス3回戦。………言ってしまってはなんだが、あっさりと1、2回戦は突破してしまった。
これまで見せたのは
残ってる手札は格闘、双剣、奥義、それに………
控え室で考え込んでいる所に知った声がかかった。
「師匠、見に来たよー」
「……シャンテか。もう客席に行ったのかと思ったぞ」
「いやいやいやいや! ………あの中に入れる程の勇気はあたしにはないよ」
「?」
露骨に目を逸らして汗をダラダラ流すシャンテに首を傾げる。
「あ、何でもない。それで、勝てそう?」
「対策はしてきたが分からん。手の内を知っている度合いではこっちが当然上。でも相手だって奥の手はあるだろうし、なにより経験の差が大きい。まああえて言うなら」
「あえて言うなら?」
「相性は、
「………は?」
お、そろそろ出番だ。
椅子から立ち上がり、扉を開ける。
「じゃあ行ってくる」
「あ、うん………?」
よくわからない返事に少し違和感を覚えつつ。
俺は会場に入って行った。
「………へ? 相性が、最悪……?」
控え室に呆然とするシャンテを残したまま。
side 高町なのは
わたしは同僚のヴィータちゃんと一緒に頭を抱えていた。
「ヴィータちゃん、ヴィヴィオがものすっごく怖いんだけど…」
かつてのJS事件で戦った時の聖王モードよりもずっと怖い。
ちなみにフェイトちゃんやはやてちゃん、六課の元フォワードメンバーの皆は別のところでガタガタ震えている。シグナムさんも平気そうに見えて冷や汗をかいているようだ。
「ああ、ウチのミウラもすげえ怖えー…。あいつら、初対面だよな? まるで不倶戴天の宿敵かなんかに会ったみてーなんだが」
「でも二人とも笑顔なんだよね。…目が全く笑ってないけど」
わたし達が戦々恐々とするなか、表面上はにこやかにヴィヴィオ達は会話を始めた。
「始めまして、高町ヴィヴィオです! レーヴェからお話は聞いてます。ミウラさん、ですよね? よろしくお願いします!」
「はい、ボクがミウラ・リナルディです! ヴィヴィオさんのこと、ボクもレーヴェから聞いてます。『可愛い
「そうですかー。わたしもミウラさんのこと、聞いてますよ? 仲の良い
「あははははははは……」
「えへへへへへへへ……」
凄く、怖い。
「早く試合、始まらないかな……」
「同意する。わりとマジで」
side end
試合会場に入ると、シード故か入る実況の声。そして大きな歓声。
……あまり気にしない方が、いい。プレッシャーを感じていたら、相手に間違いなく潰される。
『ブルーコーナーから登場するのは初出場のルーキー、
そんなわけあるか。無傷も初撃も今回は絶対に不可能だろう。
実況に内心で突っ込みつつ、見据える先には見覚えのある顔。
今日は前のようなスーツじゃなくて、バイクのライダーが着るような形のバリアジャケットだった。
『レッドコーナーからは前大会で都市本戦準優勝、まぎれもない優勝候補の一角、泰斗流、ジェクト・ヴァゼック! 強靭な拳が今回も唸りを上げるのか!?』
ステージの真ん中で、相手を待つ。
悠然とやってきたジェクトさんは、こちらを見てニヤリと前と同じような笑みを浮かべた。
「…よお。やっぱりお前が来たか」
「あれだけ期待されたら、頑張るしかないでしょう?」
「ハ、相変わらず手の内をほとんど見せねえ癖に、頑張るとはよく言ったもんだぜ」
嬉しそうな顔で毒づく相手に、ただ苦笑を返す。
彼我の距離はざっと5m。ダッシュしてきたら間違いなく瞬時に詰められる。
さて、どうするか。
意識を研ぎすます。両手を腰にやった状態で待つ。
『さあ、今ゴングが鳴り』
ました、と言い終わる前に俺は総計5発目の弾丸を放っていた。フライングギリギリの抜銃術。狙いは急所なんかじゃない、下半身、足の部分だ。
一気に距離を詰められる前に、まず足を潰す………!
連射しながらもバック走で後退。更に距離をあけ……られない!
(まずいっ!)
射撃をものともせずに殴り掛かってくるのを、横に全力でジャンプしてギリギリで回避。肩を擦ったときの風圧だけで寒気がした。
「嘘だろ……効いてないのかよ」
「いや? 多少は効いてるさ。だがな」
「今年の俺は、射砲撃で簡単に倒れちゃダメなんだよ」
寒気がした。
半ば本能に衝き動かされて腕をクロス、拳を銃把で受け止める。同時に緩衝のために後ろへ跳ぶ。
痛みと同時に左腕でいやな音がしたが、感触から多分折れてはいない。
そのまま吹き飛ばされ、壁に叩き付け……られてたまるか!
『Sonic move short action』
少しだけ発動した
足が壁につく。全身のバネで衝撃を吸収し、跳躍。
笑みを浮かべた相手に銃弾をこれでもかと浴びせるが、そこまでダメージを与えている様子でもない。
着地する前にカートリッジを補給するべく、空になったマガジンを落とし、そのままそのマガジンを缶蹴りの缶の様に相手の方へとまとめて蹴り跳ばす。勿論避けられる、が、カートリッジがないとはいえ俺のデバイスの一部だ。
『Burst』
魔力を仕込んで爆発させた。狭い空間で放出されたエネルギーが行き場を求め、マガジンが内側から砕け散る。
「グッ……!?」
転生前にいた地球のベトナム戦争の話をおぼろげながら思い出す。手榴弾を作れなかったゲリラ兵は爆弾を入れた箱に大量のフェンスとかで侵入防止用に使うような棘を大量に詰め込み、それを使って米兵を殺した事もあるとか。
まさにそれに近い状態、ジェクトさんに爆風と破片が大量に突き刺さる。……まあ、DSAAのルールでは問題あるまい、床持ち上げて投げ飛ばしても良いんだから。
その間に俺は、コートの内側に入れてあるマガジンを銃把の部分に突っ込んで
鋭い相手の眼光を睨み返し、改めて銃を構える。
…………やっぱり
ジェクト・ヴァゼック
LP15000→13000
クラッシュエミュレート:軽度火傷、中度出血
レオンハルト・ブランデンブルク
LP15000→13200
クラッシュエミュレート:左腕部打撲
Side 高町なのは
どうにか第1ラウンドが終了した。
試合が始まって安心したのもつかの間、今度は試合の内容にハラハラしてしまった。
「苦戦してるね……」
「ああ……」
ヴィータちゃんも難しい顔をして試合を見ている。
「やっぱり、そんなにまずいんですか? 師匠、相性は最悪って言ってましたけど……」
シスターシャッハの隣に座ってたシャンテが不安そうに言った。
シスターシャッハも厳しい顔で答える。
「彼の本来の武器……双剣や格闘を使おうとすると、相手の高威力な攻撃も容易くなります」
練習相手になったスバルも不安そうな顔だった。
「相手はパワー型………。でも、スピードで掻き回すにしても絶対的な経験の差……技量の差が邪魔をしますよね」
フェイトちゃんが頷く。
「それにスピード型は動く分スタミナの消耗が激しい。年齢を鑑みると、レーヴェがどんなに鍛えていても、相手のジェクト君より先に絶対にバテちゃう」
「だから射撃なんでしょうけど………、そもそもレーヴェの射撃適性は高くない。しかもあれだけの叩き込んでいるのに大したダメージがないなんてとんでもない打たれ強さじゃ、このままだとジリ貧」
ティアナの言葉は完全に正しかった。
「じゃ、じゃあどうすれば……!」
「一撃必倒」
ヴィヴィオの切羽詰まったような声に対し、ギンガが断言した。
「強力な一撃を急所に叩き込む。それしかない」
「それでも相手の硬いのは間違いないし、相手もそれを分かってるんじゃねーか?」
もう、ヴィータちゃんってば、皆を不安にさせないでよー。
「……いえ、案外大丈夫かもしれません」
「ほう。どうしてそう思う?」
エリオの反論にシグナムさんが興味を持った。
「レーヴェは多分、この第1ラウンドで、最初に射撃がほとんど効いてないのを
「映像じゃ分からない所とかがあったってことかな……?」
「『相手を良く見ろ』。そう言えばレーヴェ、しょっちゅう言ってた……」
キャロとミウラちゃんが呟く。その目線の先には目を鋭くしたレーヴェの姿。
第2ラウンドが、始まる。
文中の某所、裏の声を表すとこんな感じ。
ミウラ「妹みたいに扱われてるくせに調子のってんじゃねーよ」
ヴィヴィオ「へえ、修行仲間扱いは妹より上なのかな?かな?」
…………女性怖い。マジで怖い。
まあそんな恐怖はさておき、次回でこの戦いは終了します。
彼らは何を犠牲にして何を得るのでしょうか……なんて、意味深な問いかけで後書きを終わらせてみたり。