感想の返信ですが……えーと、一言。
「彼女」が追加されたときは………。
……すいません、ちょっと言葉がでません。恐怖で。……大丈夫です、人死にとかは流石に出ませんから。きっと。
………理由はどうあれ、最終的にDSAAのバトルが激しくなるのは良いことだよ!うん!
……本気で思うんですが、少なくともレーヴェはこれ以上ヒロイン増やしたらいろいろと危ないような……。
まあそんな未来に爆弾を抱えたレーヴェ、今を必死に戦っております。彼に正気は、もとい勝機はあるのでしょうか。
その59 突き立てる牙
Side ジェクト・ヴァゼック
「どう? 何かわかった?」
「ああ……あいつ、剣士だ」
魔力弾を放つときは、狙うポイントごとを眺める射撃魔導師特有の見方をしている。
だが、移動の際の視点の動かし方がまさに斬撃の軌跡を追うように一直線。
槍であれば突きを強く意識しがちで、取り回しも違うので歩法も変わるし、何より相手との距離の取り方が違う。
「武器を失った……わけじゃねえな。隠してやがる」
恐らく、俺とのリーチの差、威力の差を意識した結果なんだろう。
『手の内なんて言う程のものはない』……か。いや、間違っちゃいねえか。手そのものが違う。
「なら、引きずり出すだけだ」
「ふうん。頑張ってね」
「言われるまでもねえよ」
射撃は本来それほど得意じゃねえんだろう。なら、このまま押しつぶせば、音を上げて本来の武器を出すかもしれねえ。
…………そう思ってしまった事が、致命的な油断だったと俺は後で悟る事になる。
Side end
「大丈夫ですか?」
「まあね、今の所は。全部ほぼ避ける事と見る事に費やしたからダメージは少ないよ」
ディードと会話を交わしながら、俺は自分の身体の調子を確かめる。
たぶん、ライフなどの身体的状況は第1ラウンド開始時とほとんど変わっていない。
だから、ここから先は集めたデータで勝負を決めなきゃならない。
あっちはともかく、こっちはスタミナでの不利を抱えている。
だから……次ラウンド中に、勝負を決める。
「勝つにしろ負けるにしろ、次の第2ラウンドで決まると思う」
「策はあるんですか?」
「一応出来た。……まあ、ギャンブルだけどね」
呟いて、双銃のマガジンを取り出す。カートリッジを詰め直しながら、相手の魔力の流れを思い出す。
「あの人、素の身体能力が高いとか、防御力があるってだけじゃない。通常の魔力による身体強化がとんでもないレベルになってる。多分、体内の魔力の流れ……
「射砲撃で倒れるわけにはいかない」という、彼の言葉を思い出す。それで記憶の中から見つけ出したのは、去年のDSAA、都市本戦決勝戦。恐らく、去年の敗北……エリック・P・スタインバーグの放つ大火力に飲み込まれた事から、自分に厳しい修練を課してきたのだろう。
そんな俺の推測にディードは黙って頷き、話の続きを促してきた。
「ただ、勿論それだけじゃ精々バリアジャケットがいつもある程度硬いだけになってしまう。だから、攻撃を受けるときは局所的にある程度魔力を集中させて、局所的に極小のラウンドシールドを展開するようにして受け流す。防いだらすぐまた全体の魔力バランスを整える……それを繰り返す事であれだけの堅牢さを誇っている。………ただ、完璧じゃない。数とか展開範囲には限界がある」
だから、そこを狙う。
俺の無言の宣言にディードは頷き、
「ですが、出来る限り無茶な真似は控えてください。……どうも、そういう行動に走りがちだとの話を陛下達から良く聞きますので」
「一応断っておくが、やりたくてやってる訳じゃないぞ? やらなきゃ勝てないだけだ。多分今回も同じ事になるんだろうな」
不安そうな表情に苦笑して、俺は再び試合会場に登る。
この戦いの終着点…………第2ラウンドが、俺を待っている。
『さあ、第2ラウンドが始まりました!』
開始早々に俺は切り札を切った。
「『我は鋼なり』『鋼故に怯まず』『鋼故に惑わず』『一度敵に逢うては一切合財の躊躇なく』」
弾丸を放ち、距離を必死で稼ぎながら言葉を紡ぐ。けれど、身体を淡い魔力光が包む事はない。
第二段階は後少しの所で未完成なままなのだ。
「『これを討ち滅ぼす凶器なり』」
だが、とりあえずは第一段階でも十分に価値はある。
頭が冷える。冷静に、攻撃の軌跡を予測する。時間制限もあるし、早めにケリをつけなければならない。
「ちっ……!」
ジェクトさんは俺の狙いがより正確になった事に苛立ち、舌打ちする。2丁拳銃の時間差射撃、完全には防ぎ切らせない。
策の切り替えか、ステップを左右に踏む。足で掻き回すつもりだ。それに合わせて俺の弾丸も狙いが散りがちになる。
どうやら相手はそれを見越していたようで、
「ッ!」
一気に突っ込んできた。回避されないように狙う範囲を拡散させるが、彼は避けようともしない。結果、いくつもの弾丸が当たりもせずに通り過ぎて行く。
(特攻か……!)
「っらああああああッ!」
そのまま、一撃。左の、回し蹴り。
腕で防ぐ事も出来ず、防御魔法を展開する。
即座に破られ、脇に、入った。
「ぐ……!」
『おおっと、ココでジェクト選手の強烈な一撃ッ! このまま勝負は決まってしまうのか!?』
実況が、うるさい。耳からシャットアウトする。
激痛が走ったものの……なんとか、
ジェクト・ヴァゼック
LP15000→13500
クラッシュエミュレート:軽度火傷
レオンハルト・ブランデンブルク
LP15000→6000
ボディ蓄積ダメージ:70%
クラッシュエミュレート:右肋骨6~10番骨折
Side ジェクト・ヴァゼック
……おかしい。
剣は結局この期に及んでも抜かれなかった。防御魔法が展開されたものの、俺の
そこにも違和感を感じたが、何より問題なのはヤツが攻撃を受けた後。
普通なら吹き飛ぶはずだ。衝撃を少しでも殺すためにそういった行動をとるのが普通だし、それ位の判断をする実力をヤツは当然のように備えている。なにより、そんな実力を持っていなくても、これを受けたヤツは大抵ボールのように吹き飛んだ。……アイツは、スタインバーグは数メートル、後ろにずり下がりつつも防ぎやがったが。
だがそんな例外になるほど、ヤツの……レオンハルト・ブランデンブルクの防御力は高くないし、体重も吹き飛ばないほど重い訳じゃあない。
どんな仕掛けを使いやがった……?
そのままやつの全身を注意して見ようとして、……………驚愕した。
「オイオイ、なんだよそりゃ……!?」
……ああ、それならば確かに吹き飛ばないだろうさ。だが、単純に動かないようにしただけなら、自らダメージを増やしただけだ。
一体何が狙い………ッ!
「がぁっ!」
後頭部をゆらす衝撃と、カウンターの形でこちらに巻き付いた鎖に、俺は疑問の答えを悟った。
Side end
攻撃の軌跡を予測する。
それは相手は勿論、自分自身にも言える事。
だから、これだって使える。
魔力弾の反射板を生み出し、当たらなかった弾丸を跳ね返して相手に当てる。
狙いは相手の防御の薄い場所。集中した防御を発動させにくい、見えていない急所。
すなわち、
同時に自分に
左手の拳銃を側頭部に突きつけ、引き金を引く。
更に右手の拳銃を顔面……口の部分に叩き付け、口腔内に銃口を突っ込み、連射。
「ご、がぁアアアアッ!」
呻き声を無視して引き金を引き続ける。
だが、不意に異音がした。
「んン、ぎイイイイイイッ!」
金属が砕ける、独特の音がした。………マジ、かよ。
こいつ、突っ込んだ右手の銃の銃身を、歯で無理矢理に噛み砕きやがった………ッ!
魔力で強化してたんだろうが、それでもどんだけ強いんだよ………!?
俺の驚愕と同時に、バインドも砕ける。
視界が定まらないまま放たれた拳をどうにか避け、俺は距離を取った。その間に敵は口の中にあった銃身を血とともに吐き捨てる。
こっちも右手の武器を失ったが、相手は間違いなく、重度……少なくとも中度の脳震盪。
だが、彼はまだ倒れない。宣言通り、射砲撃では倒れない……!
立ったまま、どうにか体勢を整えようとしている。
あっちもふらふらだが、正直こっちも限界だ。
ジェクト・ヴァゼック
LP13500→5300
クラッシュエミュレート:重度火傷(口腔内を含む)、重度脳震盪
このまま一気に勝負を決める………!
そう考えていた矢先。
「おおおおおおおおおォ…………………ラぁアアアアアァッ!」
咆哮とともに相手の方から突っ込んできた。
なら、ここで決着をつける!
右手の銃の残骸を投げつけるが、大したダメージになっていないどころか、時間稼ぎにもならない。
空気を引き裂き、唸りを上げる右拳が迫る。
至近距離においてミッド最強を誇ると言われた男の利き腕による、
だが、状態が万全じゃない。威力も格段に落ちているはず……!
推測しつつ俺はその攻撃を逸らさず………、あえて左の
「…………ッ!」
あまりの激痛に声が出ない。
左の上腕骨が確実に折れた。恐らく粉砕骨折だろう。更に肩の不快な感覚から恐らく脱臼した。
しかもこの感覚……御神流の徹を受けたときに近い。浸透打撃、ゼロ・インパクトというやつか。
だが、打撃に打撃で……それも硬い肘で返した以上、相手の拳くらいは最低でも砕けているに違いない。
戦闘に特化した思考が痛みを塗りつぶす。どうにか身をひねり、押し込むようにして脇を抜ける。外れた肩をいれる時間も惜しい。
空いている右手で剣の柄を逆手に引き抜き魔力刃を形成。
狙うは首、致命箇所の頸動脈!
……だが。
「……読んでたぜ」
ふてぶてしく呟く男の、左手首で遮られた。食い込んではいるが、断ち斬れない……!
「じゃあな、楽しかったぜ」
剣を完全に止めて、後ろ回し蹴りの体勢を整えつつ笑う漢に俺は……
「ええ、俺もです」
ぞぶり、と肉を貫く音。
「は………?」
疑問の声を上げたジェクト・ヴァゼックは俯いた。ココからは見えないけどおそらくは見ているのだろう。
自分の心臓を貫く、緋色の魔力刃を。
その魔力刃は右手の剣のものじゃない。右手の剣は押さえ込まれたままだ。
壊れた左手では腕を上げる事すら出来ないだろう。
それは俺の
ガリューの生体武装。あれを参考にして、腕の部分だけじゃなく、様々な所で魔力刃を発生させられるようにしていたのだ。
そして、魔力刃が突き刺さったのなら、やる事は決まっている。
「桜花狂咲」
『Blade Burst』
刃が爆発とともに砕け散り、破片が深く突き刺さってからまた爆発する。
「………クソ」
まだ倒れないのか!? 声を聞いた瞬間に戦慄した。
「最後の最期で、油断、しちまったぜ」
……どうやら、最後の力で振り絞った言葉だったようだ。
大音を立て、気高き狼のような漢が、倒れた。
不意に、喧噪が戻ってくる。肉体の限界がきたから鉄血転化が自動的に解除されたのだ。
『……お、大番狂わせが起こりましたっ! 予想を覆し、勝ったのは大会初出場のルーキー、レオンハルト・ブランデンブルクッ!』
……勝った。だが、思っていた程の嬉しさは、ない。
激痛に顔をしかめ、息を切らしたまま、自分の惨状を見る。
「……反省、点が、多すぎるな」
最小限の被害で最大限の効果を。誰もが考える当たり前の心理。
けど俺が考えた中じゃ、これが多分現時点で最小限の被害。
右側に直撃した蹴りで肋骨は折れ、身体の
最後の拳を肘で迎撃して、左腕はほぼ完全に崩壊。
「まだまだ、未熟、か」
呟いて、俺は激痛に耐えて保っていた意識を手放した。
レオンハルト・ブランデンブルク
LP5500→350
ボディ蓄積ダメージ:75%
クラッシュエミュレート:右肋骨6~10番骨折、左上腕骨粉砕骨折、左肩脱臼
ジェクト・ヴァゼック
LP5300→0
クラッシュエミュレート:重度火傷(体内を含む)、重度脳震盪、心臓破裂
これにてこの戦いは終了です。熱いバトルだったと思っていただければ幸いです。
レーヴェは勝利のためならいつでも捨て身、何でもやります。
口の中に銃口突っ込むとか拳銃を噛み砕くとかその辺りで男特有の「野蛮さ」「荒々しさ」みたいなものを表現出来ていれば……なんて思っていましたり。
主人公の銃の新技も出ましたし。懐かしい言葉と「最近聞いたな」と思うような言葉が連続できたと思った方もいらっしゃるでしょうが。
格闘も一応新技、あると言えばあるのですが……詳しくはまた後々に。
しかし……
心・臓・破・裂。
いや、普通に死ぬでしょう。それにしてもなんで頭の悪い感じがするのか……。
一応病気、心筋梗塞等と深く関わる死因として現代にも存在するはずなのに、胡散臭く見えてしまうのは私の心が澱んでいるからなのでしょうか。……いえ、相手の倒し方として、の問題なのでしょう。きっと。
それにしたってこいつをどう倒せば良いのか作った後でかなり悩みました。
頑丈だし攻撃力高いし、スピードにはある程度ついて行けるし。書いた本人が言うのもおかしいですが、チートかと。
複合の由来はまあ見抜いた方も多いのでしょうね。わりかし少ないなー、と自分でも思いましたし。
「ファイナルファンタジーX」より、主人公ティーダの父親、ジェクト。DFF、DDFFで「究極のインファイター」という属性を与えられていたので。
最後の「キング・オブ・インファイト」は彼のEXバースト「キング・オブ・ザ・ブリッツ」から。あっちの方が岩投げてぶつけたりいろいろ豪快でしたが。
「英雄伝説 空の軌跡」より「不動」の名を持つA級遊撃士ジン・ヴァゼックとその兄弟子で結社の執行者となっている殺人拳の使い手「痩せ狼」ヴァルター。技の大部分がヴァルターのものですね。ジンの要素は……龍神功とか入れたらエグイ事になるなー、と思いつつも入れちゃいました。技名は出してないですけどあの防御がそれです。
近距離パワー型のインファイターでまとめてみました。
本当は某魔法先生に登場する公式チートも入れたかったのですが、あれ入れたら完全に手を付けられないので今回は諦めました。
さて、次回は後日談+次の戦いへ……といった感じになる予定です。
なろうの活動報告でも書きましたが、就職活動がそろそろ本格的にヤバいので、更新は遅れるかもです。