就職活動が無事終わりました。4月からSEです。
こ、今回は感想返しは流石に溜まりすぎてちょっと……いや自分のせいなんですが。じ、次回はちゃんとやります!
その60 ただ、彼らを殺すためだけの刃
目が覚めたらベッドの上だった。
でもって一番最初に見たのは眼帯をつけた男だった。
「よ」
「………師匠?」
起き上がりまじまじと見る。表に出るのをあまり好んでなかったのに。一体どうして……?
「おう、試合見てたぜ」
「…すみません、無様を晒しました」
謝罪するが帰ってきたのは苦笑のみだった。
「いやあ、むしろ俺は驚きなんだがな…よく勝ったもんだ」
「……戦い方について説教でもしにきたのかと思いましたが?」
「ばぁか、んな真似するか。単純に賞賛に来ただけだ。俺たちの流派の目的からすれば間違っちゃいねえしよ」
鼻で笑った師匠の言葉が妙に気になったのでおうむ返しに聞いてみる。
「目的……ですか?」
「言ってなかったか? 俺の師匠の受け売りなんだがな、無名流ってのは古代ベルカの時代から歴史の闇に紛れて存在してたんだよ。暗殺技として、な。ただ普通の暗殺技と違ったのは、狙う対象が特殊だったってことだ」
「対象…?」
「
一瞬だけ頭の中が凍り付く。三人程の顔が脳裏に浮かんでは消えた。
「聖王、覇王、冥王、雷帝とかな。…あいつらは、普通じゃなかった。それはお前も知ってるだろう?」
その通り。無限書庫の司書として、そしてヴィヴィオやイクス、彼女の友人として。俺はそこらへんの事前知識は所有している。
「何代にも渡る遺伝子操作……生まれる前から兵器としての強化と調整を行ってきた」
その結果がヴィヴィオや彼女に発現している虹彩異色であり、「聖王の鎧」や「マリアージュの製造」といったレアスキル。あるいは現代まで受け継がれる記憶ということになる。
スカリエッティが生み出した……否、完成させた戦闘機人の雛形も古代ベルカの産物であることも考えると、戦乱の狂気が窺える。
「それ故にこの流派のモットーは『一人一殺』。死んでも相手の命を刈り取れってわけだ。そう言う意味じゃ左腕を捨てて心臓を狙ったお前の判断は悪くはねえよ。……ま、部屋の外で待ってる教官殿や嬢ちゃん達は別意見だろうがな?」
いいじゃねえか、死ぬ訳でもあるまいし。
のんびりそう言ってから、師匠は立ち上がった。
「調子戻ったらまた練習だ。鉄血転化の完全習得、早くした方が良いだろ?…は、これ言うためだけに来たってのに十分話し込んじまったな」
「はい、ありがとうございます!」
俺の返事に笑みを浮かべ、扉を開けて出て行った。
「じゃあな」
「師匠! 師匠は師匠の師匠と何を話してたんですか?」
「師匠多すぎてわかりづらい」
シャンテの質問を補足するようになのはさんが言葉をつけたした。
「何か流派に関する話で、基本的に秘密にしなきゃならないから……って言ってたけど」
……恐らく、会話のないように横やりを入れられる可能性を嫌った師匠の方便だろう。そうならそうと予め言っておいてほしかったんだが。
「まあ今回の戦いに関してアドバイスをちょっと。詳しくは説明出来ないけど」
「ふうん……」
なのはさんが首をひねり、ため息をついた。
「正直、『無茶は良くない』って叱ろうかなって考えたんだけど……」
「逆に『無茶しないで勝つ』方法がほとんど浮かばなくてな。そうなるとあれは取りうる最善策だったてことになるし、無責任にどうこう言う訳にもいかねーっていう状態だ」
ヴィータさんがしかめ面をして言った。
「俺だって、無茶しないで勝てるなら勝ちたいですけどね……実力差があり過ぎました」
「けど出来れば無茶しないでほしい……かな。あんな無茶ばかりじゃこっちの寿命が縮んじゃうよ」
「悪いな、ミウラ」
ぽんぽん、とオレンジ色の髪に右手を乗せる。くすぐったそうにミウラは目を細めた。
「むう……。でも、心配はしてもちゃんと応援するから」
「ん、サンキュな、ヴィヴィオ。……リヴァ、お前は勝ち上がったか?」
「勿論。まだ合成も見せてないよ」
膨れっ面をしたヴィヴィオの頭を治った左手で撫でつつ、リヴァに確認。まあ、当然と言えば当然か。都市本戦の上位ランカーか、それと同クラス化け物以外には苦戦はほとんどない。
「次が問題なんだよね……」
ルーテシアがため息をついた。
四回戦の相手が……なんというか、知り合いである。
「ベル兄さん絶対にサプライズ狙いだろこれ……」
リヴァの相手はギルさん………ギルバート・アウリオン。
聖王教会騎士団、金羊隊所属の騎士。つまり、兄さんの部下。デバイスの整備も何回かしたことがある。
でも、兄さんとは同期だし、実質同僚。兄さんが六課のフォワードでのティアナさんの役割を担っていると言えばわかりやすいか?
更に言えば、ほぼ全員が似たような実力……つまり俺と五分。
「まあ、なんとかするさ。君の方は?」
「……士官学校生が来た」
「ああ……なら、安心だね」
教えられていることを知っているから、対処もわかりやすいのである。士官学校のOGであるメガーヌさんとか、カリキュラムを当然把握している教導官のヴィータさんになのはさんがいる。彼女達にある程度用いる戦術関連を聞いておけば良いし、聞けなくても、試合を見る限り、正当派の………もっと言ってしまえば普通の優秀な射撃魔導師だ。
「油断する気はないが、クロノさんやなのはさん、ティアナさんの射砲撃に比べれば、な」
彼に敗北した人々の敗因は「崩せなかった」の一言に尽きる。安定してペースを保ち自分のスタイルを貫き続ける。それはとても大切だろう。
だが、俺から見ればそこまででもない。問題は相手がこっちをどこまで分析しているか……というのと。
「しかし、トロイメライは大丈夫なのかい?」
「………銃は次は一丁だけだな」
そう、デバイスが完璧じゃない、って所だ。流石に噛みちぎられたのを一週間で修復は無理がありすぎる。
さてこの状況でどこまで手の内を見せるか……。
「ま、なんとかするさ。それに……少なくとも、これで予選でジェクトさん以上にヤバい人には会うことはないだろうからな」
これは確信している。実際、そろそろもうエリートクラスも4回戦。あと2戦程で本戦出場者は決定する。そこに上がって来た出場者は一応全員チェックしたものの、脅威となりそうなのはほぼ0。それぞれの戦術が出そろってきているが故に、対策も立てやすくなっている。………勿論、俺のように手の内を隠している可能性などもあるから油断は禁物だが。
「実際、君も僕もくじ運は良かったね。難敵が少なくて済んだ。………まあ、強者と戦えなくて残念な気はするけど」
「まあ都市本戦に期待をかけよう。……足下をすくわれるなよ?」
「誰が?」
唇の端を吊り上げて、リヴァは部屋を去る。……ま、アイツなら大丈夫か。
「じゃ、帰るか」
「「うん!」」
ヴィヴィオとミウラに声をかけると二人が声を揃えた。
「ねね、今夜ウチでご飯食べよ! 祝勝パーティーしたい!」
「な、ならうちの方が……!」
「いや、都市本戦出場も決定してないのに気が早すぎだろ。……それに今日はちょっと兄さんに聞きたいことがあるからな」
なんでギルさんの出場を隠してたのか。
…………ホントにただの単純なサプライズ狙いだったら白兎隊の人たちをけしかけてやる。
Side オリヴァルト・アスラシオン
さて、僕の試合の日だ。
いつもの様にヴェスとフェンに声をかける。
「準備は良いかい」
『当然!』
『そちらは大丈夫ですか?』
やる気満々な声に苦笑する。
「勿論ばっちりだよ。じゃ、行こうか」
エリートクラスも4回戦までくると歓声が大きい。まあ、プレッシャーにはならないけど。
相手のギルバート・アウリオンさんは現代だと珍しいタイプの騎士甲冑……
「……ふ。まさか、君とここで戦うことになるとはな」
「こっちの台詞ですよ。勝つのに必死で、出場してることに途中まで気づきませんでした」
「『必死』、か。……いや、戦えばわかる話か。では、始めよう」
こちらの杖と向こうの剣を交差させて向き合う。それぞれの
そして一定の距離を取り……
「おおおおおおッ!」
「……ッ!」
ゴングが鳴り響いた瞬間、ギルさんは盾を構えて突貫してきた。同時に迎撃の魔力弾を解き放つ。
さあ、開幕だ。
Side end
………さて、どうするか。
目の前で俺を睨みつける魔導師……アリスト・アルテッツァさんというらしい……を見ながら考える。どうやらかなり警戒されているようだ。まあ、当然か。
相手だってこっちの予習はしてくる訳で、遠近両方まともにこなす俺がどういう攻撃をしてくるにせよ警戒はするだろう。
………こっちは年下なんだから侮ってくれると勝ちやすくていいんだけど、流石にそれは無理っぽい。
というか、俺を見る目に若干の恐怖が混じっている気がする。年下に怯えないでほしい。
ジェクトさんとの試合そんなにヤバかったか……?
戦いの火蓋が切って落とされる。
次回はリヴァメイン。レーヴェ?えーと……薄刀「針」ってご存知ですか?
今見ると結構プロット杜撰だなあと思いつつ、それでもここからあの修羅場周りを大幅改変してたら更にお待たせすることになりそうなので、このまま書き続けます。……リハビリ中で卒論ヤバイので更新速度はお察しください。
本当に卒論がきっつい……クリスマスに資料もって発表、更に第一稿提出なのに、3万字書かなきゃならないのを7千字しかやってないです。え?恋人と過ごす時間? 大丈夫です、どうせ画面の中にしかいません(