三話
さて、取り敢えずはヴァージニア州マクレーンの本社に行き、CEOに挨拶しなければ。
……ちょっと考えてみたらおかしいと思うんだけど。なんで本社ビルの正面にCIAの本庁があるのかな?かな?確かラングレーにあるんじゃなかったっけ?我らがエダ姉さんがそう言ってた気がする。
「この前移ったんだ」
「そうなんですか。しかしCEOもなかなかやりますね、『私たちは探られて痛い腹など持ち合わせていない』ってことですか?」
「ふっ、まあそういうことだ」
ダンディな笑みを見せたのはS&BのCEO、エドワード・フォッカー氏。金髪で、顔は今流行のチョイ悪親父。逞しい体がスーツ姿からも見て取れる。元パイロットなんだそうだ。名字にSもBもつかないのは何でとか訊いたら負けなのだろう、多分。
「さて、君のくれたデータは読ませてもらったよ。まさに革新的、あのドクター・シノノノクラスの天才だ、君は。大いに君の成果に期待しているよ」
「ありがとうございます、必ずや、CEOが『すばらしい』と感嘆されるような成果を挙げて見せましょう」
大仰な動作で一礼し、俺は研究所へと向かった。
まあさすがに専用の研究所をくれるとかは無理だったようで、ISの研究所を増築して使わせてもらうことになった。さて、所長に挨拶しなければ……って
「ここ、どこ…?」
道に迷った。
いつの間にか案内の黒服さんもいないし。どうしよう……?
途方に暮れていたその時、後ろから声がかかった。
「ハイ、お嬢ちゃん、こんなところでどうしたの?」
「俺は男だー!」
速攻で振り返ってキレた。早乙女アルトの気分が分かった瞬間だった。今までも女男とか呼ばれたりしたことはあったが、ガチで間違えられたのは久しぶりだった。
「ごめんね、髪の毛きれいで長くして括ってるから勘違いしちゃった。それで、どうしたの?」
苦笑しつつ謝るのは金髪の美女だ。あれ、この人どこかで見たことあるような…?
「髪は母の趣味です。そして単刀直入に言わせてもらうと道に迷いました」
「ふーん、あなたのお母さんいいセンスね、じゃなくて、なら案内してあげる。どこに行きたいの?」
「所長室です」
ピシッ……と千冬さんと同年代と思われる女性はいきなり凍りつき、ついでガタガタ体を震わせ始めた。
「ま、まさか所長、とうとうショタに目覚め…」
「人を変態扱いするな馬鹿者」
話していた女性の背中に、冷たい女性の透き通った声がかかる。後ろを覗き込んでみると、そこには野暮ったい服の上に白衣を着た鋭い目つきの黒髪の女性がいた。
「しょ、所長!」
「とっとと訓練に戻れ、休憩時間はとっくに過ぎているぞ、ファイルス訓練生 」
「は、はい!すぐ戻ります!」
あーなるほど、ナターシャ・ファイルスか。確か原作では第三世代IS『銀の福音』のテストパイロットだった人だよな。結構できる女の人って感じが原作からは見えたけど、これは山田先生レベルの駄目っぷりじゃね?
っと、『所長』と呼ばれていた女性がこちらに振り返った。
「ここの所長のグレイス・ノームだ。よろしく頼むぞ、カズト・サクライ研究室長」
……ネーミングに神の悪意を感じるがまあいい。こちらも「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「早速だが、君の研究室に案内しよう」
そうして案内された先では、30を超える研究員がいた。なるほど、これは期待されたものだ。
「ここで君は研究をすることになる。研究員はこき使ってやってくれて構わん。君の成果に期待する」
「はい、絶対に成果を出してみせます」
この台詞、今日で二回目だよ。さっさと成果出して、言わないで済むように、否、「私を誰だと思っているのかね?」とか「こんなこともあろうかと!」とか言えるように頑張ろう。
…あれ、それってただのマッドじゃね?
さて、取り敢えずはヴァージニア州マクレーンの本社に行き、CEOに挨拶しなければ。
……ちょっと考えてみたらおかしいと思うんだけど。なんで本社ビルの正面にCIAの本庁があるのかな?かな?確かラングレーにあるんじゃなかったっけ?我らがエダ姉さんがそう言ってた気がする。
「この前移ったんだ」
「そうなんですか。しかしCEOもなかなかやりますね、『私たちは探られて痛い腹など持ち合わせていない』ってことですか?」
「ふっ、まあそういうことだ」
ダンディな笑みを見せたのはS&BのCEO、エドワード・フォッカー氏。金髪で、顔は今流行のチョイ悪親父。逞しい体がスーツ姿からも見て取れる。元パイロットなんだそうだ。名字にSもBもつかないのは何でとか訊いたら負けなのだろう、多分。
「さて、君のくれたデータは読ませてもらったよ。まさに革新的、あのドクター・シノノノクラスの天才だ、君は。大いに君の成果に期待しているよ」
「ありがとうございます、必ずや、CEOが『すばらしい』と感嘆されるような成果を挙げて見せましょう」
大仰な動作で一礼し、俺は研究所へと向かった。
まあさすがに専用の研究所をくれるとかは無理だったようで、ISの研究所を増築して使わせてもらうことになった。さて、所長に挨拶しなければ……って
「ここ、どこ…?」
道に迷った。
いつの間にか案内の黒服さんもいないし。どうしよう……?
途方に暮れていたその時、後ろから声がかかった。
「ハイ、お嬢ちゃん、こんなところでどうしたの?」
「俺は男だー!」
速攻で振り返ってキレた。早乙女アルトの気分が分かった瞬間だった。今までも女男とか呼ばれたりしたことはあったが、ガチで間違えられたのは久しぶりだった。
「ごめんね、髪の毛きれいで長くして括ってるから勘違いしちゃった。それで、どうしたの?」
苦笑しつつ謝るのは金髪の美女だ。あれ、この人どこかで見たことあるような…?
「髪は母の趣味です。そして単刀直入に言わせてもらうと道に迷いました」
「ふーん、あなたのお母さんいいセンスね、じゃなくて、なら案内してあげる。どこに行きたいの?」
「所長室です」
ピシッ……と千冬さんと同年代と思われる女性はいきなり凍りつき、ついでガタガタ体を震わせ始めた。
「ま、まさか所長、とうとうショタに目覚め…」
「人を変態扱いするな馬鹿者」
話していた女性の背中に、冷たい女性の透き通った声がかかる。後ろを覗き込んでみると、そこには野暮ったい服の上に白衣を着た鋭い目つきの黒髪の女性がいた。
「しょ、所長!」
「とっとと訓練に戻れ、休憩時間はとっくに過ぎているぞ、
「は、はい!すぐ戻ります!」
あーなるほど、ナターシャ・ファイルスか。確か原作では第三世代IS『銀の福音』のテストパイロットだった人だよな。結構できる女の人って感じが原作からは見えたけど、これは山田先生レベルの駄目っぷりじゃね?
っと、『所長』と呼ばれていた女性がこちらに振り返った。
「ここの所長のグレイス・ノームだ。よろしく頼むぞ、カズト・サクライ研究室長」
……ネーミングに神の悪意を感じるがまあいい。こちらも「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「早速だが、君の研究室に案内しよう」
そうして案内された先では、30を超える研究員がいた。なるほど、これは期待されたものだ。
「ここで君は研究をすることになる。研究員はこき使ってやってくれて構わん。君の成果に期待する」
「はい、絶対に成果を出してみせます」
この台詞、今日で二回目だよ。さっさと成果出して、言わないで済むように、否、「私を誰だと思っているのかね?」とか「こんなこともあろうかと!」とか言えるように頑張ろう。
…あれ、それってただのマッドじゃね?