いわゆる一種の解決編です。
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします。
九話
『…ごめんなさい、守れなかった……』
まるで泣きそうな声で謝るナタルさんに、俺はこう答えるしか無かった。
「しょうがないですよ、相手が一枚上手だったってだけの事です。俺の方もやれるだけのことはやってみますよ」
『……うん、わかった。こっちもできることが無いか探してみるわね』
少し元気が出たようで、さっきよりも強い意志をその言葉に感じた。
「さて、と……」
取り敢えず、大統領に電話をかけよう。俺の頼みで、なおかつ「
Side ナターシャ・ファイルス
(今の私にできること……!)
それを果たすべく、私はモンド・グロッソの会場へと向かっていた。イーリには、効果があるかどうかはわからないが、近くでの聞き込みを頼んでいる。
目指すのは
当然のことながら、女性の警備の人に止められた。名と用件を名乗る。
「ナターシャ・ファイルス、アメリカ代表候補だった者で、彼女の弟である一夏君の親友、桜井和人のアメリカでの友人よ。一夏君のことで大至急話さなきゃならないことができたの。通してもらえるかしら?」
少々お待ち下さい、と言って警備員が奥へと向かう。
彼女が戻ってくるまでの時間はたまらなくなるほど長く感じた。
Side end
Side 織斑千冬
コンコン。
ノックの音がしたので「入れ」と声をかけた。「失礼します」という声とともに私より二歳ほど年下だろうか、金髪の美女…おそらく彼女がナターシャ・ファイルスだろう…が入ってきた。
「それで、一夏についての火急の用件とは何だ?」
自分でも無愛想な声だと思うが、これが地なので仕方が無い。
だが、そんなことを全く気にもしていない様子で、彼女は真剣な表情で、真剣な声で言った。
「ブリュンヒルデ。時間がないので、単刀直入に言わせていただきます」
私にとって、最悪の事態の発生を……告げた。
「一夏君は、恐らくですが、拉致されました。多分、ホテルから……」
その言葉は、どんな戦いの状況よりも私を戦慄させた。
「なんだと………!?」
Side end
CIAが一夏の捕われている場所を特定した。どうやら要塞化している研究所のようで、外には防衛用の兵器があるらしい。ホライズンの出撃許可も得たので、すぐにナタルさんに連絡を取り、居場所を特定したこと、千冬さんの援護に向かうことを伝えてもらう。
どうやら原作通り居場所の特定は一歩ドイツが先んじたようだが、こちらの援護についても了承してもらえたらしい。
ちなみに、俺が出るというのは秘密にしてある。もし、万が一、一夏に知られると絶対にあいつはそれを負い目に感じるからだ。
準備は既に済んでいた。キャノピーに乗り込み、システムを立ち上げる。
「システムオールグリーン。YF-2『ホライズン』、出撃する……!」
さあ、
「俺の親友を、返してもらうぞ………!」
Side 織斑千冬
アメリカからの支援を承諾した後、私は即座にISを纏い、一夏が捕われている研究所へと向かっていた。
と、後ろに大きな物体が現れたとハイパーセンサーが告げる。
「なんだ……?」
振り返ってみるとそこには従来の戦闘機と似たような形をした戦闘機がいた。ナターシャ・ファイルスが役に立つと自信を持って告げていたので、おそらくただの戦闘機では無いのだろう。
…と、その戦闘機から通信が入る。即座に通信を受けると
『織斑千冬さんですね?こちらはIS支援可変戦闘機部隊『アインヘリヤル』所属のテストパイロット、ミラード・アップル中尉です』
「ああ、そうだ」
『ある程度の露払いはこちらでしますので、あなたは弟君を助けにいく事だけ考えて下さい』
「わかった、感謝する」
『……ご武運を』
「……そちらも」
通信を終了すると同時に、その戦闘機が前に出た。一気に加速し、研究所の上空に飛びこむ。
そして、防衛兵器が火を噴く前に、
ミサイルポットを召喚し無数のミサイルを発射した。
「な…なん……だと…?」
バカな、量子変換はISしか使えないはず!
だがそんな私の常識を打ち崩すかのように、その戦闘機はミサイルポットを再量子化し、両翼の付け根に呼び出したレーザー機銃と底部に呼び出したガンポッドで、ミサイルによる攻撃後にまだ残っていた防衛兵器をなぎ払う。そして、突如足を生やし、急上昇していった。
(……考えている暇はない。)
今は一夏を救出する事だけを考える。
無事でいろよ、一夏……!
Side end
……結局、あの後一夏の救出には成功したらしい。
また、ドイツで一年教官をやったあとに、アメリカでも短期ではあるが教導してくれる事になったようだ。
一夏も最初はショックを強く受けていたようだが、すぐに持ち直したらしい。さすが俺の親友。
ま、何はともあれ、
「これにて一件落着…かな?」
ラウラにひっぱたかれる云々の問題はあいつに任せて気にしない事にした。
…このとき俺が『ミラード・アップル』を名乗った事が、後日、千冬さんが来た時に大騒ぎの元になるのだが、それはまた別の話である。
今回はVFのバトルでの活躍、描写は薄めです。介入して、亡国機業と千冬の記憶に残したかったという要素が強かったし、千冬が一夏を助けにいくという描写は崩したくなかったので。
ペットネームまだまだ募集中ですよ!