ある意味後日談の続き。そして四巻編はこの後から。
十九話
帰ってきた後、嫌になるような知らせを聞いた。
アラクネがあのときの混乱に乗じた亡国機業に盗まれたらしい。
以前の愛機を奪われたイーリは相当悔しがっていた。見つけたらとっちめてやるそうだ。
一方でいいニュースもある。
俺の進言が効いたか、福音のコアの再利用計画はもう始まっているそうだ。
ナタルさんに約束した手前、俺も設計案を送ったところ、即で決定になった。
………天才の称号ってこういう時便利だよな。
さて、ナタルさんたっての願いで名前は変えてない。「銀の福音」のままだ。
武装はというと一点突破を基礎としたもので、翼部をエネルギー砲からエネルギーブレード「
また、紅椿の解析結果から、展開装甲をこっちでも使ってみようと考えた。長期戦を想定し、普段の『銀の竪琴』は閉じた状態………エネルギー節約型になっているが、展開をするとエネルギーを喰う代わりに防御攻撃可動範囲が広がるようにした。
こうして「銀の福音」は、近中距離を完全に制圧することが可能で、なおかつ遠距離攻撃の防御手段も存在する高速型の万能機に生まれ変わることとなった。………逆にこれ、どう勝てと?もしこれ暴走したら、間違いなくこの前の時よりもヤバいことになるんじゃ………。………まあ、いいか。
さて、計画が決定され、武装作成が開始されたときのことである。俺は計画確認の書類チェックのため自分の部屋に行こうとしていた。
「………カズ」
「あれ? どうしましたナタルさん?」
俺はナタルさんに呼び止められた。そういや査問委員会とかで会えなくて、あの事件以来まともに顔を合わせたのは今日が初めてだったな。
「今更だけど、ありがとう。あのとき私とあの子を助けてくれて」
「……救ったのは俺じゃないですよ」
間違いなく一夏達だ。俺は手伝っただけ。
「ううん。あなたがいなければ福音は凍結処理にされていたでしょう? もう一度空を飛ぶ機会を私とあの子に与えてくれたっていうのは、十分『救った』ことになるわ。………ありがとう」
ナタルさんは微笑んでいた。
「どういたしまして、ナタルさん」
しょうがないから俺もそう返した。するとナタルさんはいきなり不満そうな顔になった。
「もう。私がピンチだったときは私のこと名前で呼んでくれたのに……」
「必死でしたからよく覚えていませんが」
上手くごまかそうと試みるが、肩をつかまれ言われた。
「お願い、『ナタル』って呼んで。私、あなたにいつまでも距離をとられているように感じるのはイヤなの」
よく見ると、瞳が潤んでいた。すげえ可愛い。
「………ナタル。これでいい?」
「うん。ありがとう、カズ。これからもよろしくね」
「……ああ」
ちゅっ………
可愛さに負けて返答した俺の顔に急激にナタルの顔が近づいてきて………
唇が重なりあった。
「ん……」
ぴちゃぴちゃと音がする。舌を入れられているのだ。
「………ぷはぁ」
満足したらしきナタルの顔を俺は呆然と見た。
「……この前のお礼と、福音を新しく作ってくれることのお礼の分」
顔を赤らめながらナタルは笑い……
「I love you」
俺の耳元で囁いた。そして離れると、
「じゃあ、また明日ね!」
ナタルは手を振って去って行った。
………俺はその様子を呆然と見ていた。
……あれ、告白………だよな?
取り敢えず返答は保留にすることとして、研究所の方に向かう。
コアと武装の相性を確認するためだ。
キリカさんがやってきたので訊いてみる。どうやら、ナタルのことについては知らないようだ。
「調子はどんな感じですか?」
「かなりいいわよ。見てみる?」
実際適正値はかなりよかった。うん、これなら問題なさそうだ。
ふと思い立ち、コアを撫でてみる。挨拶でもするような気分で。
「これからよろしくな」
すると、何故か、コアは「ぺかー」と光りだした。反応しているのである。同時に大量の情報が頭に流れ込んできた。
………あ。忘れてた。俺にもISの操縦能力あるんだっけか。でもこのままIS学園に行くと第三世代VFが……そろそろいいデータが集まってきたのに………。
『エロ不注意ですね』
「どこがだ!?」
『女の子が乗るものの大事なところを触るなんて………』
「間違ってはいない、間違ってはいないんだが、卑猥な言い方をやめろ!貴様ホントに女性人格か!?」
エーネに突っ込みつつ、俺は忘れてたことを後悔し始めていたが、周りの連中はそんなことを気にせず大騒ぎ。
「コアが反応してる!?」
「二人めのISを使える男………!」
「それもあの子が………!」
「大至急、検査よ!」
こうして、俺はIS学園に行くことが決定し。
夏休みの間中、自分のISを作ることになった。
一応、操縦できるということを覚えていた時に書いた「自分専用のIS」の設計図があったのでそれを元に改良を加えつつ、作ることとする。早めに出来そうだ。二学期の始めにはなんとかIS学園に行けそう。
福音を借りればいい?あれは軍用。
福音の方はもう設計図とかについてもミーティングで説明済みだから、展開装甲の部分を俺がやればそれだけで完成するはず。
唯一の心残りがVF。俺無しで大丈夫かな………? ………エンジン周りとか。
ああそうだ、後で一夏に謝りの電話入れなきゃな………。「行くの夏休みよりも後になる」って。
というわけでようやく主人公がISに乗る日がやってきました。
非常にどうでもいいかもしれませんが、新兵器開発した本人がISに乗る、しかもこの時期にIS学園に行くってかなり珍しいのではないかと思っていましたり。
前々から予告していたオリISのネタ設定が次回……次々回?に明かされます。
……ええ、ネタです。それもかなりポピュラーな。でも戦闘はしっかりやるよ!
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします