………シリアス編に入れませんでした。
というわけでコメディ編がまだ続きます。今回はのほほんさんとの絡み。
IS8巻、1月も発売しないそうですね。打ち切りなんて話も2ちゃんであるのが結構心配なのですが……。
三十四話
涙目でトイレから出る。
展示をやっている所のようだった。大方生徒の大半が部活で忙しいから交代でできる楽なものということで選ばれたのだろう。
受付担当と思われる、眼鏡をかけて本を読みふけっていた少女は変なところから入ってきたメイドをぎょっとして見ていたが、
そのままその教室を出て、やや早足で離脱。怪しまれない程度に速やかに教室に戻ったのだった。
更衣室で普通の制服に着替えてから、のほほんさんの所へ。
「ごめん、待った?」
「ううん〜、今来たとこー」
デートの待ちあわせじゃないんだからその返答はない。まあ待たせてしまったことを気にしないでくれるようだからこっちも普通にスルーするけど。
こちらは完全にノープラン。流されるままにのほほんさんといろいろ見て回る。
まずはお隣の中華喫茶。
頭にシニョンをくっつけたウェイトレス……名前とかは言うまでもないだろう……は俺の顔を見て凄まじく嫌そうな顔をしたが、まあメイド服で入るよりかはましだと思ったのだろう。
「二名様ご案内ー」
と一言告げてさっさと姿を消した。
「胡麻団子うまうま〜♪」
「うん、外はかりっとしてるし中は柔らかめ、餡の量も完璧。さすがだな、鈴………!」
「ふん、当然よ」
そんな感じで次。料理部。
「おでん、おいし〜。はふはふ」
「うん、出汁もいいし。大根とかも美味しいねー」
「デュノアさんと織斑君と違ってかなりほんわかしたカップルねー」
苦笑気味の部長さんにあっさりと答える。
「もう生徒会でこの空気に慣れちゃいましたから」
「そうだね〜」
頷き合う。
『……つまんないです』
「は?」
エーネの発言に目が点になった。
『普通、ここでおでんと言ったらあなたが卵を無理矢理口に押し込まれるのが普通でしょうに』
「ちょっと待て、そのネタはないからな!? いや、本当に!」
なんとか倶楽部の真似は俺にはハードすぎる。
「さくらんー、はい、あ〜ん」
うん、昼休みとか生徒会室にいると時折こうやってくるからもう慣れた。そのまま何となく口を開けつつそっちを見る。
「あー、うん。あ〜んって熱ぅっ! た、卵だと!?」
「これが普通なんでしょぉ〜?」
予想外の攻撃に涙目だった俺はかろうじて抗議した。
「騙されちゃだめだよ布仏さん! いや、マジで! ここで君がエーネとグルだったら俺の平安はいろんな意味で反転する!」
「グルりと替わるんだねー。グルメだけに。なんちゃってなんちゃって」
…………。
『…………』
「うわ〜、おりむーが言いそうな言葉だねー」
料理部部長の発言に思わず無言になった俺たちの感情を、のほほんさんが代弁してくれた。
まだまだ続く。茶道部。
「抹茶が美味いねえ……」
一口、飲んでほぅっと息をつく。
「和菓子もおいしいよ〜」
のほほんさんも一口ぱくりと食べてにっこり。
「……なんか、茶道部の私たちよりもなじんでない?」
「いや、でもあれはなんていうか…」
「熟年のカップルというか……」
「むしろ……老夫婦?」
そんな後ろの会話には一切気づかず。俺たちは和やかな時間を過ごした。
さらに綿飴屋。
「いっただきまぁす。はむ」
「あ、そんな風に食べると口の辺りがべとべとに」
「べとべとさんだね〜?」
「……なんて突っ込めばいいんだろう」
微妙にというか大幅にというか、違う。いろんな意味で。
ちなみに少しづつ親指と人差し指と中指でつまんで食べる綿飴で一番べとべとしないで食べる方法だと聞いたことがある。
「とりあえずほら、ティッシュ」
「ありがと〜。…あれ、くっついちゃったー」
「……ぶふっ」
ティッシュがくっついて、季節外れのサンタクロースのひげのようになっていた。
そんでもってたこ焼き屋。
「……あれ、これタコが入ってない」
『ではただの”焼き”ですね』
「あ〜。これタコ二つあるー」
「……持っていかれた」
「とーかこーかんじゃないけどね〜」
「………っていうか、食い過ぎだろ! 回ってんの食べ物系ばっかじゃねーか!」
『遅いですよツッコミが』
エーネの冷たい声も今回は甘んじて受け入れざるを得ない。何せあの後、焼きそば、ポップコーン、焼きとうもろこしにクレープと食いまくった末のツッコミなのだ。またポッキー地獄が待っている可能性が高いのに食い過ぎたと後悔しつつある。
つーかのほほんさんの胃袋はどーなってんだ。
「そういえば〜、そろそろ戻らなきゃならない時間じゃないー?」
「おっとそうだった。うん、戻らないとな」
『……確か先ほど、「べ、別にここからずっと休憩でもいいよ?」とか言われてませんでした?』
「俺のログには残ってないな」
ええ、俺が勝利を確定させてずーんと落ち込むヒロイン達を見て引き気味になっていた少女の言葉など、何も残っていませんよ?
さて、そんな訳で、
「私は帰ってきましたっ!」
『帰ってこないで!』
曰く、まだ休憩時間の差額分が残っているらしい。一夏は俺と同時で休憩を取る前に弾と会うために途中休憩を挟んだのに、俺はなかったからだそうだ。「もうセシリア達のライフが0寸前だから」という本音も透けて見えたけど。
……「本音が透けて見える」って、のほほんさんの本名を知ってるとエロい言葉に聞こえなくもない。
『いやらしいですね。死ねばいいのに』
「本音を読むなぁ!」
『……つくづくいやらしいですね』
「………おまえこそ凄くいやらしい性格してるな!」
『褒めても何も出ませんよ』
「褒めとらんわ!」
……「いやらしい」を褒め言葉扱いするってどうなんだろう。
……にしても、どうしようか。のほほんさんはまた生徒会の仕事らしいし……。
「窓の外からこんにちは! 楯無おねーさんだよー!」
「……その発想はなかった」
教室の窓から会長が顔を出していた。どこに張り付いてんだろう。パンツ丸見えじゃね?
「スパッツだから恥ずかしくないもん」
「…そうですか」
「それでね、生徒会の出し物のことなんだけど」
「ああ、俺はシンデレラ役ですよね」
俺が笑顔で質問すると、ぱたぱたと手を横に振って笑顔で会長は否定した。
「いやいや、私がそこまで全女子の心を抉りたい訳ないじゃない」
いや、全員じゃないだろう。ないない。
「あなたのハートはかけらも傷ついてないと思うんですけど」
「いやね、人を緑の服ばっかり着ている勇者みたいに言わないでちょうだい。少しは傷ついてるわよ。そうね、四分の一くらい?」
なんでそのネタなのか。
「まあそれはともかくあなたはシンデレラ役じゃないわ」
「え、てことは王子ですか。追っかけられるのは一夏だけで十分なんじゃないですか?」
というか、今日のメイドを見て俺と同室になりたがる奴は相当アレだと思う。
「ううん、王子でもないの。あなたと本音に頼むのは『従者』。王子を手助けして逃がすのを手伝ったり場を盛り上げたりする役割よ。生徒会役員だから、ね」
「なるほど……」
会長とのほほんさんの姉の虚さんが参加しないのは運営的な意味もあるんだろう。
しかしこれは、助けると称していろいろ面白おかしく一夏をいじる合法的なチャンスだ。IS学園は法の外だからなんか使い方間違ってる気もしなくはないが、まあそこはいいだろう。
「了解しました!」
「参加はフリーエントリーメンバーが参加してからだから、準備して、時間になったら一夏くんを追いかけること」
「はーい!」
ふふふ、楽しくなってきた………!
………このとき俺は、テンションUPのあまり原作でこの後何が起きていたかをすっかり忘れていた。
……おい、忘れるなよ転生者。
そんなわけでようやく次回学園祭編も最終局面に突入。
亡国機業とバトルです!
ええ、シリアスにします、しますとも!
………とか言って「結局ギャグになってしまいました」ってオチが怖い………。