アンケートのご意見、ありがとうございました。とりあえず決定しましたので前のやつは締め切ります。
また次のアンケートがすぐにありますよ。詳しくはあとがきをご覧あれ。
第九話
冥界に行く事になった。
普段は郵便を使って送るため、報告書を渡すためではないらしい。日本の悪魔の縄張りについての定期報告だそうだ。
「一応、全部の報告書に目を通しているから、異常な点がなかったかとか他の勢力の状況についても伝えるんだ」
とアイカは言っていた。
……なぜ名字で呼ばないのかと言うと、「仲間だから全員を名前で呼ぶようにしろ」と全員から言われたからだ。
地下鉄の階としてはとても深すぎる場所に、駅ビルのエレベーターの隠しボタンを押す事で入る。
扉を開けた先、閑散とした駅にあったのは奇妙な列車だった。ダンタリオン家の所有列車だそうな。
それに乗って、冥界に入る。
……なんというか、「トンネルを抜けたらそこは冥界でした」という感じだった。
堕天使の領域との境の辺りにダンタリオン領はあった。危険な場所なので、魔王様達から信頼されていると見ていいのだろう、多分。
だが魔王様は旧首都ルシファードの方で会われるらしいので、着いてすぐ、そこに行く事になった。
「報告ってどれぐらいかかるものなんですか?」
悪魔の領域だから、俺も敬語である。
「普段はそんなにかからない……でも堕天使の内部分裂とか、禍の団についての報告をしなきゃいけないからかなり長引く可能性がある」
「護衛としてずっと付いていた方が?それとも魔王様の方に任せて待っていた方がよろしいですか?」
「待ってて」
「御意」
という訳で、俺はいつでも戦えるように剣の型を練習していた。他の連中もそれぞれのやり方で暇をつぶしていたようだ。
二時間ほどして、疲れたような顔をしてミオが戻って来た。
「帰る」
「承知。どうでした、会議?」
「『わかった、今後こちらでも調べてみる』って魔王様が言うまでずっと紛糾しっぱなし。会議は踊るされど進まず」
マジで声まで疲れきっていた。どんだけ無能なのがいるのかって話だな。
さっさとダンタリオン領に戻ることにする。
屋敷に着くと、ミオに似た男性が俺たちを出迎えてくれた。古参の皆が膝をつくので、俺たちもそれにあわせて膝をつく。
「ミオ、よく帰って来た」
「ただ今戻りました、リオロス兄さま」
「そっちにいる四人がお前の新しい眷属か?」
「はい。騎士の剣太、僧侶のフィーナとティナ、戦車のセリアーナです」
「そうか」
こちらに顔を向ける。
「顔を上げてくれ」
言葉に従って、ミオの兄の顔を見る。微笑んでいた。
「ようこそダンタリオン家へ。私たちは君たちを歓迎する。……ミオを支えてあげてくれ」
「「「「はい!」」」」
グレモリー家は情愛が深く下僕も大事にし、フェニックス家は下僕を馬鹿にしていた。ダンタリオン家は前者側だったようで安心した。
……のだが、次の日の日曜日、またしても俺は巻き込まれる事になる。
次の日は学校もないので冥界のダンタリオン領で泊まっていき、朝起きて散歩していると、一人の少女がぶつかって来た。
「ご、ごめんなさい!」
そういいながらまた駆け出していく赤い髪の少女。その横顔には恐怖が刻まれていた。何かから逃げて来たようだ。
とそのとき、少女が逃げて来た方向から、男が二人走って来た。
ん?こいつら………
「今ここを走っていた女のガキを見なかったか?」
「見たけど……その前に質問いいか?」
「聞いてるのはこちらだ、さっさと話せ!」
質問を無視したので、こっちも問いを無視し返す。
「なんで堕天使がこんなとこに来てるんだ?不法侵入……いや、領土侵犯になるぞ」
「な、きさ…」
「そういうの俺の場合は勘が鋭くて大体わかるんだよな。何なら、ここで羽根だしてみるか?」
「……くっ!」
堕天使達はこちらを睨みつけ、舌打ちしたあとにきびすを返して去っていった。
ここで捕らえるというのもありと言えばありだが、それよりも悪魔の領土に侵入してまであの少女を追っていた事の方が気になる。
騎士の持ち前のスピードを生かし、少女が去った方向を追いかけると、すぐに息をついている少女を見つけた。
「よお」
近づいて話しかけると凄い勢いで警戒された。
「何の用ですか」
「あの堕天使達は追い払ったぞ」
一瞬で少女の表情が驚愕に変わった。
「『なんでそれを』って顔だな。まあいい、事情を聞きたい。ミオ・ダンタリオン眷属の立花剣太だ。一緒に来てもらえないか」
「……わかりました」
『偶然堕天使領から逃げて来た少女を保護した』ということで彼女を連れてダンタリオン家に帰ろうとしたが、もう俺たちが帰る時間だった。事情を話すと、『その子人間みたいだし一緒に連れて帰ってから考える』とミオは即で判断した。
で、元の屋敷に着いてから事情を詳しく聞くとこういう事らしい。
少女の名はリリィ・カーライゼル。孤児で、神器『
「帰る場所もないけど、あの場所にいるのも嫌だった」らしい。
で、追跡され、俺に助けられ今に至る、と。
「ふむ……。みんな、どうすればいいと思う?」
アイカが俺たちに意見を求める。
取り敢えず考えていた事を口にしてみた。
「選択肢は多分二つ。児童養護施設……孤児院に入れるか、俺たちの仲間として転生させるか。でも孤児院に行かせたらそこを嗅ぎ付けられた堕天使にまた連れて行かれる可能性がある。一方、俺たちの方でも、戦いはあるし、そういった場合にはその力を使ってもらう事になる可能性だってある。どっちにしても能力は使わなくちゃならないけど、まあ多分こっちの方が待遇はいい」
「なら……」
「けど!」
リリィが言いかけたのを遮る。
「やっぱりいろいろ見てみて、駄目だったっていう場合も考えないといけない。だから、とりあえずここで生活してもらって、仲間になる場合はどうやって過ごすかを見てもらった方がいいと思う。眷属にするんだったらミオもリリィの事を詳しく把握していた方がいいしな」
「……一理あるね」
アイカが頷き、ミオに顔を向けると、
「同感。そうする」
ミオもすぐに決めていた。
「ということでリリィ?『短期眷属体験』、受ける?」
「はい!」
赤い髪の少女はしっかりと頷いた。
聖剣創造の登場回でした。
さて、アンケートですが、予想している方もいらっしゃるでしょうが、聖剣創造の禁手です。大量の聖剣の集合体を生き物とするというもの以外でお願いします。
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします。