今回の文章、長い、長いよ。でも切れない。
ストックなしでの更新に明日はあるのか……!
第十話
さて、リリィの短期眷属体験が始まった次の日。
俺は学校で頭を抱える事になった。
「セリアーナ・ヴラディだ。よろしく頼む」
「フィーナ・シンクラヴィアです!よろしく!」
「ルティナベール・ビョルンストライドです。いろいろ至らぬ点もありますが、よろしくお願いします」
な ん で キ サ マ ラ 学 校 に 来 て ん だ よ !
「質問ー。好きな人はいますか?」
「「「はい(ああ)そこに」」」
一斉に視線がこちらへ向く。
どないせいっちゅうねん。
「社会勉強のためだってさ。ふだん剣太が通っている高校にも興味があったから、行ってみたいってミオに言ったら、行くために勉強教えてくれて、ある程度のレベルに達したからってことで編入させてもらえたの」
「なんで俺に言わなかったんだ?」
「びっくりさせたかったからです」
「ひょっとして迷惑……だったか?」
少し不安そうな目で三人は俺を見る。理由がふざけてたら『迷惑じゃないと思ってたのか!?』って訊くつもりだったけど……、
「いや、別に。ただ注目浴びているのが居心地悪いだけ」
「注目?どうしてあなたが注目を浴びるの?」
「お前ら揃いもそろって美少女だからさ、それを囲っているように見える俺に対して軽蔑の視線が……」
「「「……美少女………」」」
後半の言葉は無視かよ貴様ら。
そんなハプニングもあったりしたが、基本的に問題はなかった。
週末に屋敷を訪ねてみるとティナが顔を出した。
言うのを忘れていたが、ミオの眷属となって以来、ティナとセリアはこちらに住んでいる。家族に内緒で女の子三人と同居とか厳しすぎるのだ。せいぜい一人。
フィーナにも勧めてみたが、泣いて抵抗されたので諦めた。
そのときには内外から反対の声がこっちに一斉に向けられた。凄くつらかった。
それはさておき、近くを歩き回っていると目標を発見。
「よおリリィ。元気か?」
「はい」
「なんかあったら我慢しないで言っていいぞ」
「あ、いえ、大丈夫です。みんなとてもよくして下さいますし……剣を作るのも戦う訓練の時だけなので」
「そっか。ならいいけど」
「その、もうすぐ決めます」
「別に焦んないでいいぞ」
「そういう訳ではないです。もう、ここの人たちがいい人だって言うのは十分わかってますから」
「そっか……」
多分、最後の一押しというのが足りないんだろう。だから選択の決定に対してためらいを覚えてしまう。
幸か不幸か、次の日にそれは起きた。
……なんか毎度毎度思うけどさ、どんだけ事件大量発生なんだよ!俺は原作主人公みたいに力をひき寄せる特質なんてもってないのにー!
屋敷で書類仕事をしていると、突如として辺り一帯が結界に閉ざされた。
「堕天使の術式です!」
ティナの声だ。元堕天使が言うのだ、間違いないだろう。
ふむ、追いつかれた、か。
「どうするミオ?」
「私とアイカ、兵士二人でリリィを保護。他の皆は迎撃」
「了解」
俺たちが会話していると、リリィは申し訳なさそうな顔をして謝ってきた。
「ご、ごめんなさい!私のせいで……」
「別に、仲間ってそんなもんじゃないのか?なあ?」
「そうだね、迷惑かけてかけられて」
「お互いに頼りあう事でやっていく」
俺の問いにアイカや裕美が即答した。
「だから、心配するな」
ぽん、と頭に手を置き、笑いかけてやると、リリィは涙目でこっくりと頷いた。……破壊力凄いな、この顔。危うく萌え死ぬ所だった。
「結界内だし今回は遠慮しなくていい」というミオの許しがあったので、今回は純粋に破壊力の高いやつでいくか。
「眠りを解け。地を奔れ。冠を我が頭に。……神を殺せ」
取り出したバスタードソード「
行くぞ、フラン。
(やっと出番ですね!頑張りますよー!)
Side リリィ・カーライゼル
逃げ道がないということを想定して外に出る事になった。ミオさんによると「根城を壊されても嫌だし、何人か誘い出して倒せるかも」という事らしい。
「大丈夫よ、剣太って凄く強いもの」
「手合わせで一回も勝てないですもんね……悪魔としての経験はこっちが上のはずなのに」
「女王でランクとしても上のはずの私も二勝二敗だしねー」
「……人間の時点で中級堕天使数体を平然と相手取ってた」
ミオさん達は気楽そうに言う。エリーゼの神器で影から影へと転移できるようになったらしいし(もっと早く少年漫画いろいろ読んどけばよかった、と言っていた。)逃げの一手も可能なので、そこまで心配はないらしい。
けど、私は……頼ってばかりだ。頼られた時にちゃんと助ける事が出来るかどうかわからない。私は、弱いから。
強く、なりたい。仲間を助けるために、支えるために。初めてそう強く思った。
すると、突然力がわき上がって来た。そして私の内側から光があふれて来る。
同時にある光景が目に映った。
これは……、私が覚えていない、孤児となる前の記憶?
神器によって再生されているの……!?
血まみれの男女の姿が目に映る。この人達……私のお父さんとお母さん……?
『……この子は強い子だ』
『ええ、だからこそ危うい』
『神器については隠しきれないだろう。でも君から受け継いだ力は』
『そうね、隠し通すわ。この子が力を望む時まで』
『英雄になれる力と、戦乙女の力……』
『どうか、力に溺れないで。』
『どんなに辛くても、幸せをきっと見つけてくれ』
『あなたともう一緒にいれないのは残念だけど』
『冥府で、僕たちは君の幸せを祈っている』
………お父さん、お母さん…………!
「「「「リリィ!?」」」」
ふと気がつくと私はもといた場所に立っていた。
「どうしたの?急に魔力があふれたと思ったら……」
「涙流してて……」
「……心配した」
「大丈夫ー?」
心配そうに私の顔を覗き込む四人。
「大丈夫、です。少し、昔を思い出せただけですから」
そう、それに、この力の使い方も。
「ミオさん」
「……何?」
「私、騎士になります」
「……わかった。じゃあ後で」
「はい!」
敵がやって来た。恐らく剣太さん達を抜けて来たのだろう。
まだ、転生してないけど。これは私の初陣だ。
まず、北欧の術式を頭に思い浮かべ、それを解き放つ。
かなり大きい魔方陣が一瞬で浮かび上がり、そして、魔術の槍が雨のように敵に降り注いだ。
「これは、北欧の魔術?」
「母がヴァルキリーだったんです。さっき思い出しました」
今の術式をくぐり抜けて、堕天使が何体か迫って来る。
光の槍を、エリーゼが瞬時に展開した闇夜の大盾で飲み込み、反射する。
堕天使が思わぬ反撃を受けて戸惑った所で私達が飛びかかった。
眷属となる可能性があるので、駒の説明を受けた時の話だけど、女王は騎士のスピード、僧侶の魔力、戦車のパワー全てを兼ね備えているらしい。一方、兵士は最弱とされているが、敵地で『プロモーション』を宣言する事で一時的に他の駒の特質を得る事が出来る。つまり女王、戦車、騎士、僧侶のどれかになれるのだ。
私は騎士に適性があるって言われたから、騎士になるつもりだ。
女王のアイカさんが幻術で相手を惑わす。混乱している所を戦車にプロモーションし、攻防を集中して上げた裕美さんが数体を殴り飛ばす。
私は……北欧魔術を自分の聖剣にかけて擬似的な
「ここに来たれ全てを焼き尽くす炎!人在りし世界を黄昏に沈めんとする黒き神の御手に在りし破滅の劫火!」
いつも、剣太さんがやっていた、イメージと集中するための呪文。それを自分なりにやってみる!
「顕現せよ
剣太さんと違い、北欧魔術を大量に上乗せしたので、黒炎の波剣を遥かに上回る火力を誇る剣を生み出した。
「退避して下さい!」
私の一言を聞いて、こっちを見た二人が顔をひきつらせた。
「うわ、すご……!」
「お言葉に甘えさせてもらうよ!」
すぐさま退避したのを確認し、そのまま振りかぶった炎剣を頭上から振り下ろす!
「やぁぁあああああああああ!」
一瞬で大爆発が起き、全てを完全に灰にした。
「はあ、はあ、はあ」
けど、これはきつい。一発使うだけでほぼ全ての力が持っていかれる。
……剣太さんと一緒に要修行、かな。
そこに後続がやって来た。そんなに沢山いるの………!?
「……よく頑張った」
「え?」
気づくと、ミオさんが私の頭を撫でていた。
「……ミオ、さん……?」
「……部下が頑張ったんだから私も頑張らないと」
ミオさんは呟き、
「……検索を始める」
右腕を軽く振りかぶり右に薙ぐように振る。
「キーワード『戦略規模』、『攻撃魔術』、『冷気』」
無数の半透明の本がミオさんの周りを飛び交う。
「……発見」
ミオさんは一冊の本を手に取り、ふわりと浮かび上がらせる。
「『ヘルの祭祀書』を起動、抜粋」
彼女の周りを、私の使った魔術によく似た魔方陣が囲み始める。
「
瞬間、迫って来ていた敵全てが完全に凍り付いた。
「凄い……」
私の呟きに得意そうにミオさんは胸を張り、言った。
「これが私の全力全開」
……これでもうこっちは大丈夫だろう。
剣太さん、フィーナさん、ティナさん、セリアさん……無事に帰って来て下さい。
Side end
「あいよ了解、こっちは余裕ですよ、っと!」
目の前の堕天使を袈裟懸けに叩き切る。
「どうしたケンタ?急に上を向いて、っふん!」
セリアは目の前の敵を蹴り一発で遥か彼方まで吹き飛ばす。最近「身の程を知れ」っていうのが決め台詞として気に入ってるらしい。
「いや、なんか電波がな」
「電波?」
本当に余裕だった。俺とセリアが攻撃を担当し、ティナはフィーナの保護、そしてフィ−ナは
「〜〜〜〜♪」
歌を歌う事で俺たちの力をブーストしていた。セイレーンならではの技だろう。癒しの歌とかも歌えるとか。
……にしてもアニソンでいいのかよ?俺と一緒に見てたアニメのオープニングテーマだぞこれ。確かそう、犬耳の国に召喚されたハーフの男の子が勇者になって活躍する話。
「埒が開かないな」
「まあ数は減らしたがこうもわらわら来ると鬱陶しい。一匹見つけたら十匹。まるでGだ」
「あの、一応私もとは同族なのでそんなにひどい事言わないで下さいます!?」
セリアの最後の一言にティナは涙目で叫んだ、
「ケリ、つけるか」
「頼む」
(フラン、大丈夫か?)
(マスターが悪魔になって以来、こちらに来る力も増えてるので余裕ですよー!)
素早く全員で固まる。それを見て勘違いしたのか一人の堕天使が嘲笑した。
「はっ!とうとう諦めたか!」
「ああ、貴様ら一匹一匹を丁寧に駆除するのをな。纏めてやる」
「だからセリアやめてってば!」
ティナの悲鳴を無視して俺は唱え始めた。
「大地に眠る破壊の力、ここに煌めき荘厳なる意志を示せ!」
魔剣解放、『
ズガアアアアアアアアアアアアアアアア!
大地が割れ、あわてて堕天使が飛んで回避した所を、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!
地面を突き破って出て来た水晶の柱で貫いた。
「串刺しか……エグイな」
「「「やった本人が言わない!」」」
こうしてリリィを追っていた堕天使は一人残らず殲滅され、ハーフヴァルキリーのリリィは晴れて悪魔に転生し騎士の駒を得た。
後に『聖魔の双剣』と俺とともに呼ばれる事になる彼女は、今ははにかんで笑っていた。
余談であるが。
「転校生を紹介するぞー」
「リリィ・カーライゼルです!好きな人は立花剣太さんです。よろしくお願いします」
「またかあああああああああああああ!」
どいつもこいつも俺に破滅でも味あわせたいのだろうか?
なんかいろいろネタを突っ込みました。なのにレーヴァテインの詠唱はオリジナル。レーヴァテインは消耗が凄まじいので今後ほとんど出てきません。
次回、初めてのレーティングゲームへ。
そうそう、今回の魔剣のイメージは『フラン』つながりで零の軌跡の『フラン・シーカー』です。
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします。
闇夜の大盾と龍の手の禁手、新しい妖怪についてはもうアンケート締め切っちゃいましたけど、聖剣創造のアンケートは継続中ですよー!よろしくお願いします!