今回は作戦編。意外な場所が戦場になりましたり。
第十三話
ティレイアさんについては後で話すという事で皆に渋々納得してもらった。正直、冷や汗が止まらなかった。
冥界、旧首都ルシファードの地下にある、ゲーム場へ移動する魔方陣の上に全員が乗る。
と、ミオの兄上………確か、リオロスさま………が声をかけて来た。ちなみにミオの父さんは公務で忙しいそうだ。母さんもその手伝いをしているらしい。どんだけ激務なんだ。
「初のレーティングゲームだ。緊張するのは当たり前だが冷静にいけよ。この戦いで多くを学んでこい」
「………はい、兄上」
ミオが答える。
ティレイアさんは集団から少し離れたところで俺をじっと見つめていた。
笑いかけると、こくり、と頷かれた。
そして………、
魔方陣が輝き、俺たちはゲーム場の存在する異空間にジャンプした。
ジャンプして到着したのは………とある峡谷と思われる場所だった。
切り立った崖の各所に大きな横穴が開いている。
その崖の一角に俺たちはいた。
目の前には深い谷底がある。なにも対策せずに落ちたら死ぬな、これ。
周りをよく見回してみると、目の前、恐らく一キロほど奥に雪原地帯があった。ゲリラ戦にならなければ、主な戦場はそこだろう。
さらにその奥に本陣があるようだ。
「ここは………?」
「…………私もよく知らない」
ミオがそうなら、誰もわかんないな。
その時、上から拡声器と思われるものによる声が聞こえて来た。
『皆さま、このたびはサレオス家、ダンタリオン家の「レーティングゲーム」の審判役を担う事となりました、ルシファー眷属『女王』のグレイフィアでございます』
え? なんでこの戦いの審判に魔王様の眷属が出てくるのさ?
「………若手同士の戦い。それだけ重視してる」
なるほど。ミオの言葉に納得しつつ、話に耳を傾ける。
『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。さっそくですが、今回のバトルフィールドは最上級悪魔の一人、タンニーンさまの領地の一部、ドラゴンの峡谷をゲームのフィールドとして異空間にご用意いたしました』
なるほど、お互い地理を知らない同士か。
かなりの広範囲。長期戦も想定されているかもしれないが、食料とかが近くにない事をみると、短期決戦方式だろう。
『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。エスピーナさまの本陣が西の崖の頂上、ミオさまの本陣が東の崖の頂上となります。「兵士」の方は「プロモーション」をする際、相手の本陣まで赴いてください』
まあこの崖の高さを見ると、無理に近いから、お互い「プロモーション」はほぼ無しかな。
『なお、作戦を練る時間は三十分です。この時間内での相手との接触は禁じられております。ゲーム開始は三十分後に予定しております。それでは、作戦時間です』
アナウンス後、すぐに俺たちは集まった。
「………屋外戦、けど多分短期決戦方式」
集まった俺たちに、手元の図面を見せながらミオは言った。俺は答える。
「ああ、作戦時間を先に決めていた事からもそれはわかるな」
「どこで戦う事になると思う?」
「……自分の陣地への誘いあいになって共倒れになる事は避けなきゃいけないから、主戦場は多分雪原地帯」
「不利ならば少しずつ相手を自陣に誘導、かな」
セリアの問いに、ミオとアイカが答えた。
「それと、場所を考えるとプロモーションは恐らく不可能ですね」
「ええ、お互いに、ね」
エリーゼと裕美が頷きあう。そこに俺が励まし……というかプラス要素を入れる。
「けどまあ、それ以外を考えたら多分俺たちに損はあまり無いはずだ」
「こっちは翼で飛行できるメンバーが多いし、高火力の遠距離からの射砲撃も充実してる」
「強襲能力高いのもいるし」
「相手は近接で強いけど、全体的に機動力はそんなに高くなさそう」
フィーナにティナ、リリィがそれに続く。
「………でも油断は禁物。悲観論で備え、楽観論で行動せよ」
「了解。じゃあ具体的な作戦だけど……」
その後、フィーナと俺、そしてリリィが敵側に回り込んで雪原で相手の後ろから強襲、
セリア、裕美、エリーゼ、アイカが陽動、
ティナとミオは遠距離攻撃による支援
となった。
逆に回り込まれて気づかない事が無いように、全体を俯瞰できる遠距離二人組の位置と、回り込むのに相手に気づかれにくいルートを考えた。
そしてリラックス時間となる前に少し聞く。
「崩れたりしそうな崖は?こちらの武器にも、相手のトラップにもなりうる」
「………フィーナ、ティナ、お願い」
「はいはーい、少し見て来る」
数分後………
「何個かあったよ。地図にそのポイント記録しといた」
「………ありがとう」
場所をチェックして、やっと戦闘前のリラックスタイム。
なのに、なぜか他の女子達がよって来た。
「今、さっきの事話せる?」
フィーナの問い。ティレイアさんの事だろう。俺は正直に言う。
「ごめん、多分時間足りなくなる」
「…………そう。でも、これだけは覚えておいて」
まっすぐに俺を見て一言。
「私はどんなときでもあなたの味方、あなたの側を決して離れないわ」
「同じく、ですね」
「無論だ」
ティナとセリアも頷く。
「わ、私も、この力を嫌っていた私を変えてくれた人ですから、その……」
「私の事を救ってくれた人。戦い方を教えてくれる人ですから」
「………学校で最初に話しかけてくれた人。いつも話をしていて楽しい」
エリーゼやリリィ、ミオも言う。そして締めくくるようにフィーナが、
「だから」
すごむような、目が笑っていない笑顔で一言。みんな似たような表情をしている。
「さっきの事、後で絶対吐いてもらうから」
「…………はい」
女って怖い。
……時間だ。再び拡声器の声が流れる。
『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は四時間の短期決戦方式を採用しております。それでは、ゲームスタートです』
予想通りか。
全員、耳に通信機のイヤホンマイクをつける。
「………絶対に負けない。叩き潰す」
『はい(ああ)!』
ミオの言葉に全員が頷き、当初の作戦通りに行動し始めた。
作戦通り、敵に最初に当たったのは、セリアたち陽動チームだった。
ただ、相手は恐らく王の護衛以外一丸となって雪原に突っ込んで来た。もっと分散すると思っていたのに!
パワーと突進力だけで何とかなると思ってやがる………!
「なんとかしのげ! 俺たちも急ぐ!」
「わかっている!」
俺たちの最初のレーティングゲームは、ハプニングから始まった。
戦場は、ドラマガで出て来た、人型悪魔がギリギリ住めるドラゴンの巣でした。
途中結構5巻の文章を使わさせていただきました。
戦闘はここから前編。
次回主人公空気回。
その次で活躍するから見捨てないであげてください。
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします。