ヤバいです。結構更新が危うい感じに……。
毎日連載が止まっても週三以上は書くつもりです。
今回は修行の準備編。
第十八話
さて、修行である。まずはアルマロスさんがダンタリオン家の居城で説明を開始した。
「さて、それぞれ異なる面に特化している以上、それぞれ異なる訓練をしていただきます。まずはセリアーナさん」
「うん? うむ……」
訝しげにセリアは首をひねっていた。
「どうしたのですか? 何か気になることでも?」
「いや、グレモリー眷属の一人、どこかで見かけたことがあったような気がしたのだが……。まあいい、説明を頼む」
頭の中の靄を振り払うように首を振り、セリアはアルマロスさんに説明を求める。
「はい。前回のレーテイングゲームにおいてセリアーナさんはヴァンパイアの能力を有効活用していませんでしたね」
「ああ、霧になる、コウモリに化ける、影に身を潜める、か?」
「ええ、その通りです。なぜ使わなかったのですか?」
「私は真祖、それもハイ・デイライトウォーカーなのでな、陰に潜む必要がそもそも存在しない。それ故にその能力を元々持ち合わせていないのだ。前二つは苦手だというのが大きい。変化するなら全身しか出来ないのだ。部分的に変化させるということが出来ないのでな、攻撃力が一番強い実体の状態で戦うしかなかった」
「なるほど、ではその部分変化能力を鍛えてもらいます。ヴァンパイアは接点が元々少なく、データもあまり集まっていないので、半分手探りの訓練となりますが、よろしいですか?」
「勿論だ」
「場所を指定し、渡した練習プログラムを一通りこなしてもらいます。時折データを取りに行かせていただきますので」
「わかった」
セリアが頷いた。それを見てアルマロスさんは今度は裕美とエリーゼの方に向き直る。
「あなた達には堕天使の研究所で訓練をしていただきます。覚醒はしたのですから、一切の代償無しで禁手を長期的に使えるようになることと、以前言ったような能力応用を学んでもらいます。調べてみたところ、現在、負担が大き過ぎて生命力も費やしてしまっていましたし、まだ上を目指す方法はありますから」
「「はい!」」
兵士二人はそろって頷いた。
「フィーナさん」
「はい」
今度はフィーナの方に話が行った。
「以前の修行の様子を見せてもらいましたが、声を使った能力については順調のようです。はっきり言ってサポートとしてはこのまま力を磨けばさらに伸びるでしょう」
「ありがとうございます」
「しかし、サポートの歌を歌っている間は無防備になってしまいます。すぐに曲を衝撃波に変えるわけにもいきませんから。無論、護衛を当てるというのもありですが、それでもある程度自衛は出来るようにしておきたい。………ですから、あなたには無詠唱の魔法を歌いながら放てるようになってもらいます」
「相手を出来る限り近づけさせないようにする……ですか?」
「その通り、理解が早くて助かります」
アルマロスさんは満足げに頷いた。
「ティナ」
「は、はい!」
前の上司部下の関係のせいか少し緊張している。アルマロスさんは苦笑した。
「そんなに固くならなくてもいいですよ。……まあいいです。修行で聖と魔の融合を試しているのは知っています。かなり難しいかもしれませんが、聖と魔のバランスが崩れ、聖魔剣のようなものが作られている今、不可能なことではないはずです。………サンプルとして貰ってきた聖魔剣を見せて参考としてもらいますので、あなたも兵士二人と共に研究所に来てもらいます」
「わかりました!」
大きくティナが首を縦に振った。
「アイカさん」
「ん、なんだい?」
「あなたの場合は、ミオさんの面倒を見るために女王の駒になったのでしたね?」
「そうだよ、この子人付き合い苦手だし、フォローしようと思って。まあ私の家は珍しく家族が多い方で、継承権がかなり低かったのもあるしね」
「実際データを見させてもらいましたが、能力はかなりきれいにまとまっています。あなたの場合は全体的な能力の底上げと、得意とする幻術の修練を行ってもらいます。プログラムは後で渡しますね」
「はいはい」
アイカが手をひらひらと振る。そしてアルマロスさんの目は我等が主に向いた。
「ミオさん」
「うん」
「あなたは元々の家の職もあってかなりレーティングゲームをご存知なのでしたね?」
「そう」
「ですからそちらは少しだけ優先順位を下げます。あなたの場合、高魔力で、なおかつ検索した本から魔力を引き出して攻撃、防御、支援を行うのですね?」
こくり、とミオは頷いた。
「しかしデータを見るに、パワー………体力が徹底的に足りません。そちらの方を体の動かし方とともに学んでもらうことが優先です。ある程度は王も動けないと駄目ですから。それともうひとつは、主力となる本の検索速度を上げることでしょう。出来る限り速度を上げることで次々と様々な手が打てるようになります。こっちもメニューを用意しておきました」
「………わかった」
運動嫌いのミオは絶望した表情で渋々頷いた。
(明日から毎日筋肉痛だな。頑張れ、ミオ)
そう俺が考えていると、最後にアルマロスさんは俺とリリィを見た。
「最後に……剣系神器の二人ですが」
「「はい」」
「最近現れた魔剣創造の禁手……聖魔剣もイレギュラーなものですし、聖剣創造も禁手のデータはありません。リリィさんはともかく、剣太さんはいつ禁手に至ってもおかしくないのですが………。とりあえず、剣系神器の使い方は教えます。属性の開発等はご自身でやっていらっしゃるようですから、そちらと絡めて考えてやっていってください。リリィさんの北欧魔術については教科書を渡します」
剣系神器の使い方、か。堕天使は神器のエキスパートだもんな。納得して頷く。
「剣術の方は……」
「あ、私はケンタさんに教わっていますので、ケンタさんの修行に付き合う形になります」
リリィが手を上げてそう言うと、なんかこっちへの視線が鋭くなった。
おい、ただの修行だぞ。お前らが想定してるようなことは多分無いから。
「なるほど、では剣太さんは?」
「こういうときは型の反復と実戦形式での訓練が基本だから、辺境行って強い魔獣とか探して戦ってくる感じですね。もちろん、期日にはちゃんと帰って来るし、定期的に連絡を入れるつもりです」
「わかりました、ではその形で。あとで強い魔獣の居場所等をチェックした地図を渡します。宿等も出来る限り便宜を図りましょう」
「ありがとうございます」
きっちり一礼した。
Side ティレイア・アガリアレプト
恒例の行事が終わり、今はダンタリオン家の居城にいることだろう。
こういう時に押していかなければ。冥界にいるのだ、ひょっとしたら父上、母上、兄上にも会わせられるかもしれない。
本気で訴えたら、皆「まずは人柄を見る」と言っていた。技量は認めていたし、爵位とかはあまり意識していなかったようだ。それにあの時怒ったのもポイントが高かったらしい。
通信をかけてみる。
「ミオ・ダンタリオン嬢眷属の立花剣太をお願いしたい」
しばらくすると、彼が出た。
『ティレイアさん、どうしたんですか?』
「好きな人の顔を見たいという以外に理由がいるかな?」
微笑みかけると、顔を赤らめた。見ていて楽しい。
そのまますこしそっぽを向きながら訊いてくる。
『それで用件はなんです? もう顔は見たでしょう?』
「ああ、実は」
少しだけ深呼吸をして、間を置いてから私は言った。
「私の家に冥界にいる間に来てみないか? 両親も兄も君に会いたがってるんだ」
かなり覚悟がいる質問だった。
「……どうだろう?」
『……折角のお誘いですけど』
彼は首を振った。
「そうか。……理由を聞いても?」
『実は明日から修行の予定でして、辺境に行って強い魔獣と戦って戦闘経験を積もうかな、と』
「……辺境?」
『ええ、地図をもらってましてそこまで転送魔方陣等も用いて行って、戦ってこようと思っています。弟子のリリィと一緒に』
「………参考までに地図を見せてもらっても?」
興奮が少し抑えきれない。ひょっとしたらこれはチャンスかもしれない。一人少女がつくが、それでもいつもに比べれば全然障害にならない。
『えーと、これです』
見せてもらった地図は私に取って最高の知らせと同義のものだった。
「……拠点はどうするのかな?」
『アルマロスさんが出来る限り融通してくれるそうですけど……』
「眷属悪魔だから舐めてかかる者も多い、か」
『……ええ』
「そこで、再度提案だ。私の居城にこないか?」
『……え? ですから』
「アガリアレプトの爵位はね、
同様の地図を呼び出し、一点を指し示す。
そこは、周りに目的の魔獣がかなりいるところだった。
『これは………!』
「どうだろう? 悪い提案ではないと思うのだが……」
これで目的を果たせる上、修行中の滞在場所はほとんど我が家だ。私にとっても彼にとっても一石二鳥だろう。
『ご両親の許可は大丈夫ですか?もう一人いますけど』
「それぐらいなら大丈夫だ。私が説得する」
『……アルマロスさんと主に訊いてきます』
しばらくしてから戻ってきた。
『OKだそうです。……ミオが凄く怖いオーラを発していましたけど』
「さて、なんでだろうな?」
おもわずくすくす笑ってしまった。
「じゃあ、また明日。……待っているよ」
『……はい』
通信が切れた後、私はしばらく一人で狂喜乱舞していた。
…………メイドにその様子を見られ、大変恥ずかしい思いをしたのは秘密である。
Side end
というわけでアガリアレプト家に行くことが決定しました。
次回は修行中の様子と、アガリアレプト家の様子を書きます。
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします。