更新遅れてすみません。これからこういうことが何回かあるかもです。
レーティングゲーム編です。今回は前中後編になるかも。
第二十一話
かくして数日後。
俺たちのレーティングゲームの日となった。
この前と同じくミーティングを開始する。もっとも、大体の対策はグレモリーとシトリーが戦っている間に組んであるのだが。
ミオが口を開く。
「一番警戒されてるのは多分剣太のはず」
「まあ弱いとはいえ『王』を一人で軽ーく倒しちまったからな」
俺も認める。
「なら、どうやって剣太さんを倒すかを相手は考えますよね」
「放置してたら危険だもんね」
エリーゼと裕美が意見を出した。その後次々と皆が意見を出した。
「剣太は基本スタンドプレーが多かったような気がするし、チームでなんとかしようとするかも?」
「でもそうなると私達をどうするのかの対策がありますよね……」
「先に他……私達を削るっていう考えもあるよ」
「でもそうしたら剣太を足止めする存在が必要だよね」
「カウンターも割れちゃってるし」
「私に女王を当てようとしても、こっちが気づいているから無駄だろうしな」
「そもそもこの前と違ってこっちの方が人数が一人多いのよね、割り振りも考えなきゃ」
そこで取り敢えず俺が自分の役回りを告げる。
「前言ったようにカウンター対策が何とかなる俺が女王を狙う」
すると考え込みながらアイカが言う。
「恐らくあの神器持ちの『兵士』さん達がそれを邪魔しようとするだろうね」
「なら、私達がなんとかする」
兵士二人が手を上げる。
「戦車は私が担当する。ニンニク等、吸血鬼由来の弱点はほぼ克服済みだしな」
セリアも答えた。するとリリィが指折りして数えて、
「じゃあ、残ったアタッカーの私は騎士担当ですね」
「残りの私達は支援及び僧侶の相手、だね」
「そう」
フィーナの言葉をミオが肯定する。
「まあ、ここから先は場所次第かな」
「フィールドに行ってから決めますか」
全員が頷きあった。そして魔方陣の上に立つ。
……俺たちは忘れていた。
こちらが相手をそれぞれの相手を都合のいいように自分たちで決めている一方で、彼らも自分にとって有利な相手をどうにかぶつけようとするであろうことを。
カウンターが割れていてもパワーキャラをぶつけるためには、どうすればいいのかを相手が考えていないはずは無いということを。
そして………、
魔方陣が輝き、俺たちはゲーム場の存在する異空間にジャンプした。
ジャンプして到着したのは………とある西洋の城を思わせる場所だった。
豪華で、しかし下品ではない装飾に覆われている。
その城の一角に俺たちはいた。
建物の中なのでよくわからないが、窓の奥に大きな建物が見える。
「ここは………?」
「…………一度、来たことがあるような……」
ミオがそんな感じなら、誰もわかんないな。こんな城は知らん。
その時、上から拡声器と思われるものによる声が聞こえて来た。
『皆さま、このたびはシトリー家、ダンタリオン家の「レーティングゲーム」の審判役を担う事となりました、ルシファー眷属『女王』のグレイフィアでございます』
グレモリー家vsシトリー家の時と同じか、と考えつつ、話に耳を傾ける。
『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。さっそくですが、今回のバトルフィールドは我が主、サーゼクス・ルシファーの城の一つをゲームのフィールドとして異空間にご用意いたしました』
なるほど、やっぱり今回もお互い地理を知らない同士か。
長期戦も想定されているかもしれないが、そこまで広くもないし、短期決戦方式だろう。
『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。ソーナさまの本陣が西館4階、ミオさまの本陣が東館4階となります。「兵士」の方は「プロモーション」をする際、相手の本陣まで赴いてください』
「プロモーション」か。今回は想定した方がいいんだろうな。
『回復品である「フェニックスの涙」は今回両チームに一つずつ支給されます。なお、作戦を練る時間は三十分です。この時間内での相手との接触は禁じられております。ゲーム開始は三十分後に予定しております。それでは、作戦時間です』
とりあえず、俺が口火を切った。
「この前と同じく全員まとまって行くか、それとも分散か、だな」
「恐らく、まとまって来たときのために一網打尽の策ぐらいは用意してるはず。今回もこの前と同じ策で行く」
「この前と違って、今回は俺が陽動か?」
俺がミオに尋ねた。
「……違う。一対一で王を倒せるのはあなただけ。水で攻撃する相手だから、単純な物理攻撃が基本のセリアだと相性が悪い」
「………確かにな」
セリアも試合の終盤を思い出しているのか、宙を睨みながら肯定する。
「逆に超少数で電撃的にやる。セリアと兵士二人が正面から突撃。足止めをしている間にあなたが行く。もし、この作戦がそこまで読まれてた場合は、残った私とフィーナとティナとセリア、リリィが動く」
「二重の策………安全対策ですか。一対一なら不利でも五人がかりなら何とかなりそうですね」
リリィも頷いた。
「そうなった場合私達は……最善が『倒して駆けつける』で最低でも『相手の足止め』ですね」
エリーゼも眉根を寄せて考える。
「それはこっちでも同じ、か。読まれてた場合何人でかかってくるのかわからねーが」
俺は呟いた。もし以前ミオが言っていた通り、相手が俺を危険視しているのなら、こっちに来るのもそれなりの面々だろう。
「見た感じだけど、剣太なら多分全員何とかなるでしょう?カウンターでも」
「……まあ、場合にもよるが、この前の試合で見た感じだけなら、な。他の力を隠し持ってる可能性とかもあるし」
フィーナの冗談めかした問いに俺は力無さげに答える。今は冗談だが、もしそうなったら非常に面倒だ。チームワークが崩れない相手は実にきつい。
「じゃあフィールドの方を考えてみようか。魔王の城というのは大抵トラップがあるものだけど……」
裕美が辺りを見回すが、ミオは首を振る。
「城と言っても、ここはあくまで歓迎とかのためのもの。あるとしたらせいぜい抜け道ぐ、ら、い……」
「それだー!」
アイカが叫んだ。
「抜け道ってこういうのだと東西館に続くのとか、裏手に出るのとか何パターンかあるはず!上手く使えば何手か先んじえるかも!」
「フィーナ、手伝って」
ティナが早速術式を展開する。フィーナが首を傾げた。
「なんで私?」
「声の反響で空洞を探すの。解析は私がやるわ」
「……わかった」
フィーナは大きく息を吸って、
「〜〜〜〜♪」
澄んだ声を出した。
ティナは素早く解析していく。
「予想通り……玉座の間に続いてる。多分同じのが西にもあるはず」
「じゃあ、俺がそれを使うか?」
「私達はあくまで予備。あなたに使ってもらう。駄目だったら私達が屋根から行く」
ミオの言葉に頷き、俺達は最後のリラックスタイムに入った。
俺は隠し扉からの経路を調べてニヤニヤしていた。こういうの前からやってみたかったんだよな!潜入作戦的なやつ!
「……楽しそう」
近づいて来たミオが声をかけて来た。
「男だからな。こういう
「……フィーナが寝静まっているのを見計らって自室でイヤホンつけてエロゲーをやるとか?」
「なぜそれを知っている………!」
俺は戦慄した。
……時間だ。
『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は二時間の短期決戦方式を採用しております。それでは、ゲームスタートです』
同じ短期決戦方式とはいえ、ずいぶんと短い!
ミオが告げる。
「作戦はさっき言った通り。階段降りて正面からセリア、エリーゼ、裕美。抜け道から玉座経由で剣太。残りはフォローと予備」
「歌を空間を超えて届けられるように術式組むから、ここからでも支援できるよ!」
フィーナの言葉に頷いて、俺達は広間から駆け出した。
薄暗い抜け道を早足で歩く。走って壁に顔をぶつけるとかアホな理由でダメージを浴びたくない。
抜け道から玉座に出ると即座に別の抜け道を探すが……どうやら隠し扉の場所は違うようだ。
諦めてそのまま西館へ………
と、そこに人影が見えた。
「っ! 予想よりも早い!」
舌打ちした男子学生には見覚えがある。……神器『黒い龍脈』を操る兵士、匙元士郎だ。
その後ろからさらに人影が。騎士と兵士がさらに一人ずつ現れた。
「思っていた以上に早いけど、予想通りね」
騎士の女性……巡、だったか?……が微笑む。
「ああ、作戦通りだ」
匙さんも頷く。そういやこの人達一年上だったよな。
「ここで彼を倒せば俺達の勝率は一気に上がり、相手の士気を落とせますね」
もう一人の兵士が決意に満ちた目で頷く。
知らず、唇の端がつり上がるのを感じた。こういうピンチは一網打尽のチャンスにもなりうる。
「こっちは期待外れのようですが、ね」
「……何を言っている? 数から見てもこちらが圧倒的に有利なはずだ」
匙さんが訝しげに問うた。……ここは、相手を挑発する方がいいだろうな。士気を上げただけの状態でチームワーク組んで挑まれると少し厄介だ。ある程度怒らせて、判断を鈍らせよう。
「……か?」
「え?」
「本気で、あなた達だけで俺を倒せると思っているんですか?」
「………なんだと」
「まあいいです。ここであなた方を倒せばその証明になるのでしょう? 元より、神滅具を持たずして神すら殺す強者を目指す身。 ここで龍王の欠片を斬るもまた一興」
「………お前…!」
「『俺を倒したければ眷属全員連れてくるべきだった』………それをあなた達の身に刻ませていただきます」
剣を構え、
「ミオ・ダンタリオン眷属、『騎士』立花剣太」
不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「手加減はしない。………死にたい奴から前へ出ろ」
「舐めんじゃねぇええええええ!!!!!」
匙さんの怒りの咆哮とともに戦いの火蓋は切られた。
最後辺り、かっこ良く、なおかつ相手を怒らせるようなセリフを意識して書いてみました。
ちなみに、最後の剣太のセリフ……元ネタ気づく人はいるのでしょうか?あれ、実は作者が一番最初にハマったもので、新刊出るのに一年かかるのが当たり前なことで有名なラノベなんですが………。
次回戦闘編です。申し訳ありませんが、また遅れてしまうかもしれません。
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします。