今回は短め。日常編が主なパートになります。
第二十七話
「ふぁあぁああ……」
起きて一つ大欠伸。
今日は平日、新学期三日目だ。
「おはようございます、剣太さま」
「…………おはよ」
ベッドから起きあがると正座して三つ指ついた鈴音が深々と礼をしていたので、取り敢えず手を上げて言葉を返す。
『内縁の妻である以上、お側でお仕えするが務め』と譲らなかったので、こっちの方に住んでいる。角は術で隠しているようだ。
この前親が帰ってきたんだが、『将を射んとすれば』と言わんばかりの他の少女達を押しのけて、両親にこっちに住むことを承諾してもらっていた。
「典型的な大和撫子って感じですてきだと思う」
と母が言っていたのに照れていた。
それ以来、家でフィーナと張り合い続けている。
料理を交代で作ってどっちがいいかとか
お風呂でお背中流しましょうかとか
帰ってきたら「鈴音にしますか、鈴音にしますか、それともわ・た・し」とか
夜伽をとか……おっとノクターン化を防ぐためにこの話はここまでだ。ちなみにまだ俺は清い体である。理性ってすげえ。
とりあえず「お手伝いしましょうか」とか頬を紅く染めて言っている鈴音を外に放り出し、制服に着替える。
「おはよ、フィーナ」
「……おはよー。今朝はいいお目覚めみたいね?」
「馬鹿言え、心臓に悪い。お前も鈴音もどうしてあんな真似したがるんだか……」
「………寝顔が可愛いんだもん」
なんか言っていたが俺には何も聞こえない。
朝食を三人で済ませ、さっさと家を出る。
ちなみに現在時間は六時。朝練を見えないように結界を張った学校でこなしてから授業と言うのが基本だ。リリィの剣術の面倒も見なきゃならないしな。最近は鈴音の方も見るようになった。
学校に向かう途中でいつものメンバーと合流。
「おはよ」
「おはよう」
「おはようございます」
「ん、おはよう」
「……おはよう」
その後朝練を済ませ、教室へ向かう。
「よ! ハーレム野郎」
ゴン!
「殴るぞ」
「殴ってから言うな………」
自業自得な感じで頭を抑えているこいつは藤宮蓮司。顔はいいのに中身は残念というアレなやつだ。わかりやすく言うと春原だ。
「コミケ、どうだった?」
「あれ、今回行ってないのか?」
「ああ、帰省とかぶっちまった」
なるほど。
その後もいろいろ話をしていると、藤宮はふと思い出したように問うた。
「そういや誰と出るんだ?」
「あん? 何にだよ?」
「体育祭の二人三脚」
………その一言の瞬間、大量の視線が突き刺さった気がするが、俺は冷や汗をかきつつスルー。
「いや、そっちは今回はパスするつもり。パン食い競走に参加するよ」
「……チッ、このヘタレが」
うるさい余計なお世話だこの野郎。
授業が終わった後いつも通りミオの屋敷へ。
「……平和ですねー」
「そうだなー………」
書類仕事をしつつ、リリィがのんびりと呟いていたので俺もそう返す。
方々で小競り合いがある割に、こっちに応援要請とかは来ないし、襲撃も無い。
ああ、そうそう。今度レーティングゲームをやる相手、ゼファードルの予定だったんだが、あいつの心がサイラオーグにずたずたにされて復帰できなくなったので、今回は試合はお預けだそうだ。
グレモリーとアスタロトの試合は記録映像で見ることになるらしい。
アルマロスさん? あの人は結婚して
あのときの皆の目……キラキラしてた一方でなんか怖かった。
「とはいえ、なべて世はこともなし、か、って痛!」
「……それ、元は神への祈りの台詞」
ミオのツッコミが頭痛で苦しむ俺の耳に届いた。ああ、そう言えば悪魔が神にお祈りとかするとダメージ喰らうんだっけか。
Side モードレッド
ここは地獄の最下層、氷結地獄のコキュートス。
「ヘルヘイムでの環境対応魔術を知っている君がいてくれて助かったよ。それを応用すればいいんだからな」
「ふふ、存分に感謝しなさい」
妖艶に笑む女。僕たちの仲間だ。
「それにしても、お前も性格が悪いな。『こんなもの』を当て馬に使うとは」
呆れたように大男……呂布が言う。
「なに、彼らならきっと乗り切るだろう。倒せなければ、彼らもその程度の連中だったてことさ」
「勢力争いもこれで結構やりやすくなるでしょうし、曹操も許可していたから問題は無いですし、ね」
淡々と告げるのはフードをかぶった男…彼も僕の仲間の一人だ。
「俺はバカだから、お前に任せる」
投げやりに言うのは呂布を上回る大男だ。
「………これが最終試験だよ、立花剣太……そして、ミオ・ダンタリオンと眷属の諸君」
見上げた先にいるのは苦悶の顔のまま凍り付いている、漆黒の片翼を持つ男。
「それじゃあ……、『コカビエル』の解凍を始めるわよ」
ここまで俺達を導いてくれた彼女と、フードをかぶった彼が魔方陣を展開した。
このイベント、実は話の骨組みを考えていた時点で思いついていましたり。
次回、上級堕天使との戦いが始まります。多分。ひょっとしたら次々回かも。