今回は『あの戦い』、その前編です。
最強の騎士は、誰だ。
第二十九話
例によって例のごとく、今日は魔王様に書類渡して報告する日である。
いつも通りダンタリオン家について、いつも通り魔王様の城へ……
「今日は違う」
そうなのか、ミオ?
「そう。グレモリー領に行く」
「グレモリー家……ルシファーさまの実家、でしたか」
経験の浅い鈴音が頑張って思い出すようにして呟く。
「そう、そっちに書類を持っていく」
なるほど。
「やあ、いつも済まないね、ミオ・ダンタリオン君」
「……これが仕事ですので」
魔王サーゼクス・ルシファー様は凄まじくフランクだった。原作知ってたから俺は驚きが少ないけど、他の皆はかなり驚いている。
……と。
見ると、奥で紅の髪を持つ少女が恥ずかしそうに俯いて……ああ、リアス・グレモリーか。こっち来てたのね。
他の眷属達も揃っている。みんな興味深そうにこっちを見ていた。
話が終わったあと、いきなりサーゼクスさまがこっち向いた。
「君が凄まじい剣技を誇ると噂の騎士、立花剣太君かな?」
「……魔王様に名を覚えて頂けるとは光栄の極み」
「なに、君はいろいろ噂になっているからね。……とある貴族の娘さんを愛人にすると既に宣言して、相手からも受け入れられているそうじゃないか」
その瞬間、凄まじく冷たい視線が後ろから何本も突き刺さった。うん、もういつものことだから気にしない。気にしないんだから。
……ってあれ? 前からも感じるんだけど………
少しだけ見てみると、木場じゃない方の男子……噂の赤龍帝にして我等が原作主人公、兵藤一誠が血の涙を流してこちらを殺気立った目で睨んできていた。
「あ、その、それには事情が……」
「安心したまえ、わかっているさ。私の妻も境遇は少し近いからね」
「は、はあ……」
何となく頷く。妻……グレイフィアさま、だったか。確かもとは旧魔王派だったんだっけ?
「と、話がそれたね。ちょうどここにもう一人、若手悪魔の眷属の騎士として名を挙げているものがいる。木場祐斗君だ」
木場は黙って頭を下げた。
「少し彼から聞いたのだが、いずれ試合をしようという話になっていたのだったね?」
「あ、はい、まあ」
「ここでやってみないかな? 私個人としても興味がある。若手最強の騎士は誰か……ね」
………っ!
「リアス、ミオ君、どうだろうか?」
「問題ありません。私の騎士はいつでも大丈夫です」
っておいミオ! 即答かよ! 信頼してくれているのは嬉しいけどさ!
「魔王様がそうおっしゃるのでしたら、断る理由がありませんわ。祐斗、やれるわね?」
「はい!」
リアス・グレモリーさんの言葉に木場祐斗も前に出て頷く。
………ふむ。ここで聖魔剣の力を見極める。相手にこちらを相当な脅威と見なさせることが出来れば、恐らくレーティングゲームの時、作戦も練りやすくなるはずだ。やって損はない。
静かに、だが気迫を込めて、俺と木場の視線が交叉する。
そして、サーゼクス様が頷いた。
「では、私の前で若手眷属の中でも名高き騎士達の剣技、見せてくれ」
「承知」
「はっ!」
魔王様の言葉に、俺達は一言のみを返した。これ以上は言葉ではなく、剣で見せるべきものだ。
Side 兵藤一誠
俺達はグレモリーのお城の地下の広いトレーニングルームに移していた。
ここで木場と相手の……立花剣太が戦うことになった。
あいつ、さっきはただのイケメンで、女にもてる敵だと思ってたけど、それだけじゃないんだよな。試合の映像を少し見た。
俺が苦戦した匙だけじゃなく、三人を相手に無傷で、たった二分で勝利してみせた。しかも終わらせる時は一瞬だ。
木場自身、「ここまで出来るかどうかはわからない、彼の剣技は卓越している」と厳しい表情で言っていた。
そして、「彼の剣の影にはとてつもない量の修練が見える」……と。
あいつも俺やサイラオーグさんと同じ努力型って奴なのかもな。修練の時間は俺よりも遥かに長いんだろうけど。
「剣太さん、頑張ってくださいね。私の師匠なんですから!」
「まあ、やれるだけやってみるさ、リリィ。簡単に負けるつもりはないよ」
「そう言いつつ、勝つつもりでいるだろう?」
「まあね、負けるよか勝ちたいし。負ける相手かもしれないけど、勝てない相手でもなさそうだから。わかるだろ、セリア?」
「私の背の君ですもの、それくらいの勢いでなければ」
「鈴音……あ、あはははは……。おい、ちょっとお前ら視線が怖いんだが!?」
「新参者に妻の座を譲るつもりはない」
「同感、ですね」
「同じく、です。負けません!」
「というかそう考えると同居歴長い私は一番有利のはずじゃない?」
「「「「「「「……………」」」」」」」
「おい、ミオ、ティナ、エリーゼ、それにフィーナ! なんでこんなところで女の戦いを始めてるんだよ!? 後にしてくれ後に!」
………やっぱりあいつ、敵だー!くっそー、モテ野郎め、地獄に堕ちろ!
俺は地獄……冥界で血の涙を流した。
俺達はやや遠目の位置から戦いを見ることになっている。
隣にはダンタリオン家の皆さんが立っていた。
視線の先には……向かい合った両者。
木場が鋭いオーラを纏っていくが……
立花のそれは段違いだった。
「……ゾっとするほどに冷たく鋭いオーラだ。オーラだけでも相当な強者とわかる。パワータイプの私では一瞬でやられるほどの技量を持っているのだろうな」
ゼノヴィアが目を鋭くし、低い声で呟く。
「……くよ、
そう呟き、立花の手に一本の、純白の刀が現れる。
『これは……』
ドライグが驚愕の声を上げる。
「どうした、ドライグ?」
『妙なオーラだ……。恐らく炎や氷、闇のような普通の属性の魔剣ではないぞ。それに……』
「それに?」
『内包されている力の量が尋常ではない。恐らく、木場が生み出す普通の魔剣の数倍だ。あれなら聖魔剣にも匹敵しうるぞ』
「なんですって………!?」
部長……俺の主さま、リアス・グレモリーも驚きの声を上げる。
一方で、ダンタリオン家の皆さんは平然としていた!
「これがあいつにとっての普通なのかよ………!?」
そして、木場も答えるように、両手に一本ずつ、聖魔剣を生み出し、鋭い目で視線を交わす。
そのまま、両者はしばらく動かなかった。何をやっているんだ…?
「ねぇ、あの二人何してるのさ、クルアッハ?」
ダンタリオン眷属の兵士の一人が、自分の左腕に問う。そこには俺のものとよく似た神器が出現していた!
『クルアッハだと……!』
その声にドライグはまたも驚愕の声。あっちの兵士の宝玉が鈍く輝いた。
『ああ……久しいな、ドライグ。儂は意識も完膚なきまでに閉じ込められて千年以上も眠っていたよ』
「ドライグ、知り合いか?」
『
「大きな事件……?」
『その話はあとで良かろう? 儂も理性を取り戻していることだしな。それで裕美、それについては儂よりもそこな『騎士』に問うた方がいいのではないかな?』
あっさりとその龍……クルアッハは話を変えた。
「そう? じゃあリリィ、わかる?」
その問いに向こうのもう一人の騎士はおずおずと答える。
「恐らくですが……『先読み』をしているんだと思います」
「『先読み』?」
「相手の斬撃の軌道がどう来るか……というのを読みあうんです。こう攻めたらこう来る、だからそれにはこう返して……と。詰め将棋のように、勝利の道筋を捜して。私はまだ経験が浅いのでそこまでわかるわけではないんですが……」
なるほど、お互い高速での戦いだ。そういうずっと先の予測とかも必要なんだろう。
「だが、それも終わったようだ。……始まるぞ」
ゼノヴィアが視線を一切外さずに呟き、
「リアス・グレモリー眷属『騎士』、木場祐斗! 参る!」
「ミオ・ダンタリオン眷属『騎士』、立花剣太! 来ませい!」
互いに名乗りあい、二人は……
俺には見えない、とんでもない速度で地を駆け、激突した。
イッセーが血の涙を流す描写、若干少なかったでしょうか?後半でもあるとは思いますが……。
ついに出せた刀、雪片。さすがに元ネタ通りの力は発揮しません。それだと消滅とかぶります。ただある程度使える剣であり、コカビエル戦のフラグとして必要でした。次回その属性は出ます。
それにしても…これはどうでもいいことなのかもしれませんが、ISとハイスクールD×Dって面白い共通点があるんですよね。赤が増幅、白が減少。まあ当然いろいろ差異はありますが、偶然とはいえここが共通してるのは面白いな、と思います。何か由来でもあるんでしょうか。
ああ、それと。一番最後の口上は完璧に狙ってます。