非常に遅れて申し訳ありません。話自体は出来てたのですが出すタイミングを見失ってしまい………。
まあこれが一番完結に近いわけですし、出来ればどんどん書いていけたらいいなーと思っております。
第三十話
Side 木場祐斗
ギィインギィンギンギンギン!
くっ………凄い斬撃だ。
僕は二刀で挑んでいるのに、一刀の立花君に押されている。
その上、強度で勝っているはずの聖魔剣を相手に刃こぼれも見せないほどに彼の魔剣……白い刀は強靭だ。
けど、それだけじゃない。何かがおかしい……
斬り合いに集中しつつも、僕は彼の剣と僕の剣のオーラをよく見る。
何故か彼の刀の刃のところだけ、僕の聖魔剣のオーラが弱まっている………?しかも、剣と刀がぶつかる時だけ彼の刀のオーラは強まっているような……。
この属性って、まさか………!
「オーラ無効化属性!?」
「惜しいですが違います。オーラ全てを無効化するよりも、刃と刃のぶつかるところだけ、オーラを『分断』しただけですよ。それがこの剣『
……………っ!
それはつまり、この状況においては禁手に至ってるかどうかは関係なくなるということ!
ここでぶつかるのは本当に剣技と剣技!
………でも。
「君はその効果を僕の剣と衝突する時しか発動させていない。つまり、それだけ消耗が激しいってことだ!」
消滅属性ほどではないものの、やはり相当体力を使うのだろう。持久戦に持ち込めば僕の勝ち………!
「そいつはどうでしょう?」
彼はニヤリと笑みを浮かべて見せた。
Side end
ギンギャンギギギギギギッギギ!
鍔迫り合いをしながら俺は笑った。
「消耗が激しい、ね。なるほど。確かに普通の属性……炎や氷とかに比べれば何倍も消耗は激しいですよ。けど……一つ忘れていませんか?」
「………何?」
木場が疑問と焦りの表情を浮かべる。
「俺は常に一本の剣に力を集中させます。つまり、その剣しか生み出さないのですから、その剣の強度、威力、消耗の効率等はあなたの聖魔剣と同格にすらなりうる。……あなたの剣だって三日も持つわけじゃないんでしょう? せいぜい一日か二日ってところですか」
「……っ!」
そこまで読まれてたとは、って驚いてる表情じゃないな。だが焦りが少し剣に出た。そこでできたわずかな隙に攻撃を押し込む。
……勿論、聖魔の融合したオーラという非常に珍しく、かつ強力なものを切り裂く以上、下手な聖剣よりもオーラを斬るのに力を持っていかれるのだが、そんな不利になるようなことは口にしない。
「それともう一個。分かってるんじゃないですか? 持久戦になったら困るのは
以前のレーティングゲームで使ってみせたはずだ。そして、恐らく彼は記録映像でそれを見ている。
一端飛び退り、鞘のない状態で居合いの体勢に入る。木場さんの顔が険しくなる。
……もう、聖魔剣の構造で弱いところは発見済みだ。そのためにある程度斬撃を弱めていた。今だけの戦い方よりも将来に繋がる戦い方の方が重要だしな。
「この効果のおかげで、今この時は、あなたの剣も俺の剣も同じ『ただの剣』だ。……次々と聖魔剣を砕かれればその分あなたも消耗するでしょう?」
Side 兵藤一誠
………おいおいおい。
さっきまでの剣戟、俺の目には霞んで見えた。はっきり言って剣先が見えない。木場の姿がぶれて次々と攻撃を繰り出してるのに、立花は一本の剣だけでそれをいなし、押してすらいた。
「そう、燕返しからの顕殺交叉。あなたは燕よりも早いかどうかは知りませんが、この最速の剣、躱せますか?」
その上で、余裕めいた態度を見せている。
「アザゼル先生の言ってたことがようやく分かった気分だぜ……」
「『禁手に至っていなくてもゲームに勝った例はある』、だったかしら」
「剣技では間違いなく立花剣太は木場の上を行っている。木場は禁手に至ったとはいえ、相手に有利な土俵に持ち込まれれば窮するのは当然だ」
俺の呟きに部長が答えた。ゼノヴィアも険しい顔だ。
一方、ダンタリオン家の方もじっと見守っている。この勝負、俺達が思っているほど二人の剣技に差はないのだろうか……?
と思っていると、
「ダメね……多分負けることはないなんて考えてる一方で、怪我してほしくないなんて考えてる」
青色の髪の女性……向こうの『僧侶』がため息をつく。
「しょうがないでしょう。私も剣太様の強さは存じていますが、やはり不安になります」
「………惚れた女として当然の反応」
亜麻色の髪の女性……『兵士』と、黒髪の『王』の女性もこくこく頷いてる。
…………クソ、モテ野郎め………! ただ心配されてるだけかよ……!
「木場ァアアあああああ! そんな奴ぶっ飛ばせぇエエエエエ!」
思わず俺は声を張り上げていた。
それを聞いたからか、木場の頬にわずかに笑みが浮かぶ。
「………上、等…………!」
呟き、あいつは持っていた二本の聖魔剣を構え直す。
「正面から、受けるつもりかよ………!」
Side end
………ふーん。
赤龍帝、兵藤一誠の言葉に木場さんの焦りが消えた。迷いなく、彼は俺を見つめている。一挙手一投足も見逃さない、そんな風に。
……当たり前のことを再確認させられた気分、という奴なのだろうか。
やはり、グレモリー眷属の精神的な柱は赤龍帝。彼をどうにかしない限り、いずれ来る戦いで勝利は掴めない。
………でもそれは後で考えること。
今は彼を……彼の聖魔剣を斬ることに、集中する。
自らを一本の刀としてイメージ。
刀身は冷たく、鋭いが、その中にあるのは凄まじい熱と、鍛冶師達の熱意、覚悟だ。
そう、頭は冷たく、鏡のように世界を映す、波一つ立っていない透き通った泉のように思考を澄み渡らせ、
そして、心はどこまでも、マグマよりも、太陽の熱よりも熱く………!
(……………………今!)
気配も感じさせない踏み込み、そして右へと薙ぐ鋭い一閃!
ガギギィン!
恐らく、今までの人生……悪魔生の中で一番と言える斬撃だった。
だが、木場さんは剣を折られながらもなんとか防いでいた。
(逃がしは、しないっ…………!)
返す刀でもう一太刀浴びせようとした時、木場さんは呟いた。
「聖魔剣よ、………咲き誇れ」
直後、俺から見て木場さんの右側に聖魔剣の柱が生えていた。
同時に右手に新たに生み出した聖魔剣がこちらに迫る。
どうする、…………禁手を使うか?
頭の中での自問を即座に振り払う。後のレーティングゲームの為にここまで使わなかったのだ。ここでの勝利のためだけに優位性を捨てるのはアホらしすぎる。
「しゃら、くさい!」
まとめて聖魔剣の柱を叩き斬る!
「らぁあああああああ!」
「やぁあああああああ!」
俺の『雪片』が聖魔剣の柱を斬り破りながら木場さんの首筋へと迫る。
同時に、木場さんの右手が握る聖魔剣が俺の首筋へと迫り…………
「それまで!」
審判………サーゼクスさまの声が響く。
俺達二人は、互いに相手の首筋に剣を突きつけあった状態で停まっていた。
「両者引き分け、だね」
「………ありがとうございました」
「………こちらこそ」
お互いに礼をする。木場さんは少し複雑な表情をしていた。最後の一撃でわかったのかもしれない。
最初、俺が彼の剣筋を知るために少しだけ手を抜いていたことを。
……それに俺は自分の禁手を見せていない。使い勝手が悪いし、ここで使っているのを見られて弱点でも探られたら後が大変だ。
これらの点については後悔していない。個人の事情よりチームを優先する。それだけだ。
「ふふ、この決着はいずれレーティングゲームの時に、かな? 楽しみにしてるよ」
「「はっ!」」
俺達は同時に頭を垂れ、そこでこの試合はお開きとなった。
……にしても雪片、相当使えたな。相手が強いオーラの持ち主でそれを防御に使っていても、ある程度の消耗を覚悟すれば刃が必ず通るということが分かったのは大きな収穫だった。
……このときの雪片の実戦使用での収穫が、後の戦いで大きな意味を持つことを、当時の俺達は知るはずもなかった。
とまあ、こんな結果になりました、と。全力でやってりゃ間違いなく剣太の勝ちです。しかし、今回はあくまで前哨戦。次も剣太が木場の相手とは限りませんし、データを得るためにはある程度手加減をして剣筋を見極める必要が会ったんですな。赤龍帝は無理でもこっちならいけますし。
次回、堕天使現る。
更新はちょっと遅くなりそうです。