さて、今回はティナチーム(仮称)編。
なんとか今月中に更新できました。ギリギリですが。
最近ドラゴンマガジンの原作の短編でクロウ・クルワッハが別の二つ名で出てましたね。
こっちの二次だとグレートレッドと同じで何個も呼び名があって、実は神器になってたって感じでいきます。なんかこういう設定変更が最近多いような……?
第三十三話
Side ルティナベール
結界内である程度距離をとり、私達は上級堕天使……ロルマーレと対峙した。
傲然と彼は私達を見下す。
「ふん、上級堕天使たるこのロルマーレの手を煩わせおって」
前衛を担当するエリーゼと裕美、セリアが前に出るが、それには目もくれずにロルマーレは、
「消え失せるがいい!」
私に向かって光の槍を放った。
一瞬身がすくむ。しかし、
「させません!」
禁手化したエリーゼがマントを翻す。光の槍が何処かへと消え去り、ロルマーレの真下から現れた。
「小癪な!」
ロルマーレは光の槍に気づいて即座に防御をするが、その間に三人はすでに接敵していた。
堕天使は舌打ちする。
「ち、邪魔しよって……!」
……大丈夫だ。仲間が私を助けてくれる。ならば私もそれに答えよう。
「ふぅ………」
精神を集中。左手に魔力、右手に光力を宿し、その密度を徐々に上げていく。
Side end
Side 七街裕美
「何をするつもりだ……?」
ロルマーレが眉を寄せて、
「どこを見ているっ!」
その隙にセリアが襲い掛かる。純粋な真祖ゆえに発揮される、飛びぬけた怪力を持つ彼女の足が鞭のようにしなり、ロルマーレを蹴り飛ばす。防御陣は張っていたものの、かなりの衝撃を受けたはず。
「くっ……!」
苦い顔をしたロルマーレがこちらに光の槍を放つが、そこは遠距離対策が完璧なエリーゼが見事に防ぐ。
「
『Boost!』
その後ろから力を引き上げた私は一気にロルマーレに近づく。
「なにっ!?」
ロルマーレの腕を両手で思いっきり掴んだ。
右手に鉤爪が現れて輝く!
『Bind!!』
相手の動きが鈍くなる。さらにダメ押し!
見せるわよ、修行の末の新技!
「クルアッハ!」
『承知!』
『
両腕の篭手が蒼く染まり、
一瞬、蒼い光が強く輝いた。バチッという音がほぼ同時に聞こえる。
「がぁっ!」
ロルマーレは体を激しく痙攣させた。
「龍の雷のお味はいかが?」
……
その食らった存在の力が、神器の中で眠っていた。私が使えるようになったのは、
鉤爪の力で動きを鈍らされ、さらにダメージを底上げされた状態で雷を受けて、ロルマーレはまともに動けないようだった。
「さあ…………締めはあんたに任せるよ、ティナ」
Side end
Side ルティナベール
「ありがとうございます、皆さん……」
呟き、そして限界まで圧縮した光力と魔力を、合成する。
凄まじい圧力だけど、うまく融合させて……。
目の前にあるのは無色で透明、禍々しくも神々しい力の塊。見えないけれど、そこの部分で空間が歪んでいるし、何より直接的に感じることが出来る。
だって、これは私の力だから。
その力の塊に手を伸ばし、弓……洋弓の形に変化させる。
同じ力で矢を形成し、洋弓に番える。
見えざる矢を向けられたロルマーレの顔が凍りついた。
「馬鹿な、貴様は中級堕天使だったはず! なぜそのような力を持っているのだ!」
「元が中級だからこそ、必死で修行したのよ」
私の命を救ってくれた人を助けるために。
思い切り洋弓を引き絞る。
「
口の中で呟き、握っていた弓の弦を………離した。
「馬鹿な、わ、私が、上級堕天使たるこの私が元中級の悪魔ごときに敗れるだと!? 馬鹿な、バカなぁあああああああ!」
矢が虚空を貫き……、
喚く上級堕天使を一瞬で跡形も無く消し飛ばす。
そのまま矢は雲をも吹き飛ばし、遥か彼方へと消えた。
「私だけであなたを倒したわけじゃないわ。皆がいたから、倒せたのよ」
ロルマーレの言葉に対し、もう聞こえないと知りつつも私は静かに答えた。
その後すぐに皆がこちらにやってきた。
「ティナさん! 凄かったですよ!」
「ふふ、ありがとう」
エリーゼが瞳をキラキラさせてこちらを見てくるので、私は苦笑して頭を撫でた。
「ほら、他のみんなの支援に行かないと」
「はい、でもどうしますか……?」
裕美が呆れた様子でたしなめるとエリーゼは離れた。が、その発言に皆は押し黙ってしまう。
「……うーむ、戦略を考える者がこのチームに一人もいないというのを忘れていたな」
セリアが腕を組んで唸る。
「どうしよっか? 一端ミオの所に行って指示を仰ぐ?」
皆で顔を見合わせていると、少し遠くから声が聞こえた。
「その必要は無いよー!」
アイカがこちらに飛んできたのだ。
「ずいぶんと早く片付けたね」
「うん。で、これからどうしようって。そっちはどうなってるの?」
その言葉にアイカはすぐに答えた。
「防戦一方だけど、剣太がことごとくコカビエルの攻撃を斬ってる。ほとんど一対一みたいになっているから援護って言っても回復とか強化とかのサポートしか出来なくて、それで一端こっちの様子見に来たんだけど」
セリアがその言葉に眉を寄せる。
「……ミオの言葉によれば、アイカは出来ればこっちの指揮ではなかったか?」
「だってあんた達は結構楽そうだったから大丈夫かなって。リリィのほうが結構大変なのかな。だからね」
アイカは凄まじいお気楽な答えを返した後、一瞬で「女王」の顔になって指示を出した。
「ティナとエリーゼは私と一緒に剣太の方、セリアと裕美はリリィの方を助けに行って」
「「「「了解っ!」」」」
全員が唱和する。
私達はすぐに翼を開き、おのおのの目的地へと飛び立った。
……剣太。
待っててね。もうすぐ助けに行くから。
もうすぐ、みんな、助けに来るから!
ティナはまさかのメド……いや、何も言うまい。
裕美がパワーアップをしていく裏主人公になりつつありそうで怖い今日この頃。いや、問題ないのかも?
さて、次回はリリィチーム編です。