つまるところ、堕天使襲来編のエピローグ。
第三十六話
『そうか………。手間をかけさせたな』
「え、ええ………」
アザゼルが申し訳なさそうに謝罪してくるのに対し、ミオは言葉を濁した。この人、堕天使の総督だから俺たちが倒したコカビエルの元上司でもあるんだよな………。
俺たちは他の敵がいないか確認した後、結界が解除されるのを待って魔王サーゼクス・ルシファー様に直接通信で連絡しているところだ。
…………「コカビエルと戦って倒した」という俺たちの言葉には、流石に絶句していたけど。
「………あの、リアスさまはご無事ですか? その、俺たちを倒した後にグレモリーを狙うみたいなことを仄めかしていたので………」
ちょっと思い出したので俺からも質問してみた。すると魔王様も複雑な表情になる。あれ、もしかして地雷踏んだ? 事件解決してるはずだから大丈夫だと思ったんだけど………。
『…………ディオドラ・アスタロトが旧魔王派へと裏切ったせいでかなり大変だったが、無事だよ。眷属達の中には結構大変な目にあった者もいたが……全員無事だ。心配してくれてありがとう』
「いえ………」
「ディオドラ・アスタロトが…………」
ミオが渋い表情になる。貴族の家に生まれた者として思う所があるのかもしれない。
『………とにかく、ご苦労だった。……しかしそうなるとコキュートスに侵入し、封印を解いた者がいることになるが』
「そっちは心当たりがあります」
今度はアイカが答えた。
「以前、鈴鹿の里で私たちの前に姿を見せた………」
その言葉で、アイツの姿が脳裏に蘇る。モードレッドを名乗った、あの剣士。戦の激化を喜ぶ狂戦士の姿が。
『反英雄チーム、か』
「はい。どうも彼らは私たちに狙いを定めているようで……」
アイカの言葉に対し、魔王様は熟考。
『なるほど。………申し訳ないが、そちらは君たちに任せることになってしまうかもしれない』
「……問題ありません。グレモリー眷属のように二つの精鋭に狙われる訳ではなく一対一ですから。それにこれは……彼らが私たちに売った
珍しくミオが長い言葉を言い切った。
『そうか………。眷属の皆も彼女を支えてやってくれ』
「は、はい!」
「勿論です」
エリーゼがあたふたして答えた後に俺がしっかりと返事をする。
それを見た魔王様がふっと満足そうな笑みを浮かべたのを最後に、通信が切れた。
Side サーゼクス・ルシファー
魔王城の一室。目の前に立っているアザゼルに真剣な目を向ける。
「………アザゼル」
「ああ、今確認がとれた」
私の問いに陰鬱な表情でアザゼルは答えた。
「コカビエルがいた場所は完全にもぬけの殻………氷を何らかの術式で溶かした形跡があるようだがどこの術式かもわからないように丁寧に痕跡が消されてるらしい。ただ、どこに封印したかについては堕天使だけでなく天使、悪魔にも通達済みだったから……」
「どこかの勢力の内通者か、あるいは………」
「単純に潜入、解凍か、だな。この場合はどっちでもヤバいんだが……」
内通者がいるのならばどこから情報が漏れているのかわからないという危険が。
そうでないなら相手の技量が凄まじく高いという危険が存在する。
「だがまあ、手負いとはいえコカビエルを倒したんだ。そこまで悲観する必要はないだろうさ。それでサーゼクス。グレモリーの方は木場、イッセー、朱乃を昇級させる。それはまあいい。それで、ダンタリオン眷属はどうするつもりだ?」
………彼らか。正直、彼らは申し分ない成績を残している。レーティングゲームでもその力は見せつけたし、鈴鹿の里での功績も大きい。
「少なくとも、立花君の上級までの昇級は確実だ。女王を務めるメフィストフェレス家の子もね。彼の弟子という『
「つーか、あれだろ? あの立花剣太ってヤツ、『おっぱいドラゴン』とは別の層に大人気だそうじゃねーか」
そこでアザゼルは少し口調を和らげた。どうやら仕事面の話はここまでらしい。
「ああ、やや年上の層……いわゆるティーンエイジャー辺りの層に人気のようだね。味方に優しく指導し笑い合い、敵には苛烈に剣を振るう……というのがポイントのようだ」
「木場はイッセーとセットになっちまってる部分があるからな。そう意味じゃああいうハードボイルドなイメージ……『強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない』を地でいく奴が主人公として成立する物語も人気はありそうだな。ま、本人はハーフボイルドがいいとこだが。……ダンタリオン家が企画しているらしいぞ?」
「む、そうか。こうしてはいられないな………!」
私たちは今後のおっぱいドラゴンの未来について話し合いつつ、廊下を歩いていった。
Side end
Side モードレッド
「くっく、あっははは! こうでなくてはね! 剣太君、君は予想通りの強者だった! 君たちこそ僕らの遊び相手にふさわしい!」
「ずいぶんと……ご満悦ね?」
黄金色の髪を持つ妖艶な女が僕にしなだれかかってきた。最近仲間になった子だ。
この子の力を借りて舞台はもっと楽しくなる!
「ああ、そうとも! これから楽しくなりそうだ!」
僕は笑顔で答える。そして心の中で呼びかけた。
(今度の遊び場は遥か西方だ。なに、心配はいらない。是が非でも来てもらうからね!)
Side end
原作で言う所の6巻が終了。
最後に怪しいのが出てきましたね。
次回からはさらにヤバいのと戦うことになりそうです。