主人公2歳。
今回は主人公が自分の不甲斐なさ(言葉を上手く発せない)を感じる話かな?
03話 滑舌(かつぜつ)を良くするには早口言葉が良いらしい
「はじめまちゅて。わちゃし、て・つえ・・え・・・。てるぷすとーけちゃくしのば、べぇ、ばるむろーと・しゅてるん・ふりーどりひ・ふぉん・あんはるつ・てるぷすとーです。きょうはきていたーきありあとーござーます。」
俺は前世の名前と比べてあまりにも長い自分の名前をあまり回らない舌で発しながらペコリと頭を下げた。
「きゅーけです。ありがとーござーます。」
俺の隣でキュルケも頭を下げている。
俺達は目の前いるたくさんの大人たちに向って挨拶をした。
正直、こんなに大勢の人数相手に挨拶をしたことは無いのでかなり緊張していて動きがぎこちないのが自分でも分かった。
しかしキュルケの方が姉であるのに俺の方が先に挨拶をして、しかもフルネームを言わないといけないのはちょっと不公平ではないのかと思ったが、これも家を継ぐ長子の役割の一つと割りきった。
因みに長子というのは最初に生まれた男子のことでキュルケの他にも年上の姉がいるが女子は長子という考えから除外されているので長男である俺が長子ということになる。
「おお。しっかりした子だな。どういたしまして。二人ともお誕生日おめでとう。」
俺達の前に身なりの良い貴族のおじさんがやってきて俺達に挨拶をした後、隣に立ってる父さんに話しかけていた。
「本当にしっかりした子達だ。うちの息子などもう4つになるのにまだ満足に挨拶も言えんというのに。ツェルプストー辺境伯は良いお子さんをお持ちになりましたな。」
「いえいえ。とんでもない。それにそちらのお子さんはすでに魔法の練習を始めたそうではありませんか。将来有望ですな。」
「いやいや。まだ始めたばかりで杖との契約もできていないようですがね。」
「謙遜なさるな。杖との契約は・・・
「そんな。そちらは何歳から・・・
父さんが話しかけてきた貴族のおじさんと互いの子供について褒め合いを始めた。
(はあ・・・話が長い。)
俺は父さんと挨拶に来た貴族のおじさんとのやり取りを聞き流しながら、これまでのことを振り返っていた。
俺がツェルプストー家に生まれて2年の月日が流れていた。
この2年間はいろんな意味で大変だった。
生まれたばかりの時は頭ははっきりしているのに体をまともに動かせなかったり、食事はこっちの世界には哺乳瓶というものがないのか母さんの母乳だし、しかも母さんはかなりの美人さんなのでかなり恥ずかしいと思ったり、でも次第に慣れて、いつしか(あ。この人、俺のお母さんなんだ。)って思えるようになった。
そしておむつ換えが一番大変だった。
こっちのおむつは布製(しかしかなり肌触りが良いので結構いいものを使っていると思われる。)なので、水分は吸収し切らないのでお尻が蒸れて気持ち悪くなるし、そのことを伝えようにも方法が泣くし、換えられてる最中は現実を直視できないくらい恥ずかしいやら情けないやらで・・・また泣いちゃいました。
この記憶は黒歴史として早めに忘れられるように頑張りたいです。
そうそう、俺にはどうやら母さんが三人いるみたいなんだよね。
ハルケギニアは一夫多妻制だったのか・・・知らなかったな、二次創作の中だけの設定かと思ってた。
まあ、一応地球でも一夫多妻制は今でもあるところではあるからな。
・・・で、俺の実の母さんと他に2人の母さんがいるんだけど、外見は実の母さんはオレンジ色っぽい髪と瞳の色で色白の肌をしていて、あとの二人が燃えるような赤い髪と瞳で褐色の肌をもっていることがわかった。
もちろんみんな美人さんです。
性格はまだ把握しきっていないが、他の二人の母親も自分の子供のように接してくれることはこれまでのことで分かった。
そうそうキュルケは双子の姉になるんだけど、他にも3人の姉がいるんだよね。
3人の母さんにそれぞれの子供らしい。
キュルケを含め4人とも可愛く、外見はみんな燃えるような赤い髪と瞳で褐色の肌なんだよね。
父さんの外見が燃えるような赤い髪と瞳で褐色の肌だからかな。
俺はというと燃えるような赤い髪とオレジン色の瞳に日本人みたいな肌の色をしています。
両親が美男美女なので外見はイケメンになるはず。
ガッカリ王子みたいにならないように努力しよう!
因みに俺の名前をちゃんと言うと『ヴァルムロート・シュテルン・フリードリヒ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー』っていう名前になる。
最初のヴァルムロートっていうのが俺の名前で、意味は俺の瞳の色が母さんと同じオレンジ色だからヴァルム(暖かい)ロート(赤色)っていうことらしい。
そして今日は俺とキュルケが2歳になったので初めて大々的な誕生会を開くことになった。
その際に数日前から母さん達に挨拶の練習をやらされた。
体は2歳だが、頭はもう25+2歳なので覚えるのは簡単だったんだが、一つ問題が生じた。
それは2歳でいろいろ言葉がしゃべれるようになっても、まだ口の発育が十分ではないために、
「キュルケ、ヴァルムロート。こんにちは。って言ってごらんなさい。」
母さん達が初めに手本となる言葉を言って、それから俺達に復唱させるように言葉の練習をしているのだが。
「こにゃーちゃー。」
(舌が全然まわらん。)
「ちゃー。」
俺の場合は分かっていても舌がちゃんと動かないので上手く発音出来ず、キュルケも一生懸命やっているようだが母さんではなく俺の真似をしているのか俺よりも言葉になっていなかった。
「ありがとうございます。は?」
「あーがとーごぜーます。」
(思ったように声にならん。いままで気にしてなかったけど、まずいかな?)
「あーが・・・ます!」
今度は御礼の言葉を発したがさっきの挨拶よりも長くなっているので満足に発音出来るわけもなかった。
「ふふ。仕方ないわね。次頑張ろうか。」
母さん達はそんな俺達にニコニコしながら言葉の練習をしていた。
「ヴァルは結構ちゃんと言えてるな。キュルケは元気があっていいぞ。」
「かわいいわね〜。」
そう言いながら母さん達は俺とキュルケの頭を撫で回したり、ホッペタをぷにぷにした。
(それでいいのか?母さんたち。まあ、2歳だしいいのかな。)
俺とキュルケはされるがままだ。
しかもキュルケはそれをやられることを喜んでいるようだ。
ちなにみ『ヴァル』は俺の名前『ヴァルムロート』の略でニックネームみたいなものだ。
そんなこんなで当日を迎えたわけだが、結構な数の人が来ていて驚いた。
いつもはただ広いだけのパーティーホールに今日は歩くのもやっとという位に人が入っている。
父さん辺境伯とか言われてたけど貴族としての位は結構高いのかな。
大かた挨拶も終わった頃、キュルケがうとうとし始めたので俺は父さんに声をかけた。
「ちちーえ。もーねむくなってきまーた。きゅーけもねむそー。」
キュルケを純粋に心配していたが、あわよくばこの場からキュルケと一緒に俺も抜け出せるかもという思いもあった。
「うん。もうそんな時間か。よく頑張ったな。えらかったぞ。ヴァルムロート、キュルケ。」
父さんはキュルケが眠気で半分目が閉じかけている所を見て、俺達の頭に手を置いて「よく頑張ったな」と褒めてくれた。
「あい。」
(はいっていえないのかよ、俺ェ・・・。)
父さんの言葉に返事をするも、自分の舌っ足らずさに少し嫌気が指していた。
「誰か、ヴァルムロートとキュルケを寝室に。」
「はい。かしこまりました。いきましょう。ヴァルムロート様。キュルケ様はこちらへ。」
父さんが声をかけると後ろに控えていたメイドさんが来て、今にも眠ってしまいそうなキュルケを抱きかかえた。
「頼む。」
父さんがそう言うとメイドさんは俺を連れて、パーティー会場から出ていった。
後ろでは父さんが集まった人達に何かいっているようだった。
恐らく俺達が退出したことで今日の誕生会を終了するとでも言っているのだろう。
キュルケを抱きかかえたメイドさんと一緒に寝室(俺とキュルケ用)に行って、着替えさせてもらい、布団の中に潜り込んだ。
キュルケももぞもぞと布団の中に入ってきた。
「おやすみなさいませ。ヴァルムロート様、キュルケ様。」
一緒に来たメイドさんがきちんと布団をかけて、部屋から出て行った。
「おやしゅみ、きゅーけ。」
俺はキュルケにお休みの挨拶をして、寒くないようにキュルケの布団をかけ直した。
「おやしゅみ、ばる。あーがと。」
キュルケがそういうと俺の方を向いたまま、まぶたを閉じた。
「ん。」
俺は小さく返事をしてから、同じように俺もキュルケの方を向いてまぶたを閉じた。
「・・・すう。すう。」
キュルケの寝息を聞きながら、早く滑舌(かつぜつ)を良くしなければなどを考えつつ、俺の意識はどんどん途切れて行った。
なぜかとてもいい夢を見た気がした。
読んで頂きありがとうございます。
ここも描写と少し追加した程度で特に変更は無いですね。
ご意見・ご感想があれば良ければ書いてみてください。