16話 一狩り行こうぜ!
「ヴァルムロートよ、今度のオーク鬼の討伐に付いてきなさい。」
ヴァリエール家との交渉という大きな出来事から数週間は特に目立ったこともなく、魔法の練習や剣の特訓を行う毎日を過ごしていた。
そんなある日の朝、皆で朝食を摂っていると父さんが突然そう切り出した。
領地に現れて被害を出すオーク鬼などに対して討伐を行うのもその領地を収める貴族の仕事の一つだ。
これまでも年に何回か父さんが討伐に出向いていたことは知っていたが、俺を誘うことは無かった。
今日もただ討伐に行ってくるという報告だけかと思っていたのだが、どういう訳か俺にも付いて来いと言ってきた。
「・・・はい?」
そんな俺は突然のことで間の抜けた返事を父さんに返していた。
「はっきり返事をしなさい。この間ヴァリエールに啖呵を切った時はもっと勢いが良かったぞ!」
カトレアさんを助けた時のことを言っているのだろうか?
あの時は一刻も争う状況だったし、勢いに任せて言っていたところも多かったからな。
それともその後のカトレアさんの治療を引き受けた所だろうか?
あれは元々裏の目的として行おうとしていたことだからある程度の心構えが出来ていたからな・・・まあ、予想外の事もあったが、今はその問題もクリアされている。
そんなことを考えなから俺は慌ててちゃんと返事をした。
「は、はい!わかりました!」
「よろしい。」
俺の返事に父さんは満足そうに頷いている。
しかし俺にはどうして突然父さんがそんなことを言い出したのか分からなかったので聞いてみることにした。
「・・・それで父さん、なんでいきなりオーク鬼討伐するなんて話になっているのですか?」
俺はこの前のヴァリエール家との交渉の後から家族のことを少し砕けて呼ぶようになっていた。
・・・いや、強制させている、と言うべきか。
この間うっかり両親のことを“父さん”“母さん”と言ってしまってから、母さん達はこの言い方を気にいってしまい、父さんも「家族しかいない時は私のことを“父さん”と呼んでもいいぞ。」と言った。
それを聞いた姉さん達も「お父様お母様達だけなんてずるい!私たちももっと気さくな感じで呼んでよ。ねえ、ヴァル?」とか言ったので“姉さん”と呼ぶことになっていた。
「うむ。お前もそろそろ11だ。少し早いかもしれんがこの前の堂々とした振る舞いやメイジのランクもラインになっているので、そろそろ“実戦”というものを経験した方がいいと思ってな。」
「なるほど、そういうことですか。」
つまりこれは一種の大人への第一歩、成人式みたいなものと言うわけか。
前世の成人式は二十歳に行うものだから早いように思えるけど、昔の日本の成人式である元服は中学生位の年齢でやっていたはずだからそんなに早いわけでもないか。
「ちょうど領地内の村から“オーク鬼を近くの森で見た”という報告があり、調べさせたところ、その村の森にオーク鬼が十数匹の群れがいることが分かったので討伐することに決めたのだ。」
討伐対象はオーク鬼らしい。
オーク鬼はモンスターの中でも個体数が多い分類に入り、その分人に被害を加える回数も多いと以前本に書いてあった。
ただ強さは普通の人の精々二、三倍位らしいのでちゃんと対処すれば怖い相手ではないらしいので父さんも俺の最初の討伐対象としては最適だと考えたのだろう。
「なるほど。・・・そのオーク鬼は元々そこにいたのではないのですか?」
「いや、前にその村に視察に行った時はそのような報告はなかった。おそらくどこからか群れで移動してきたのだろう。」
「食糧でも探して移動してきたのでしょうか?」
オーク鬼に限らず、大抵の動物やモンスターはある程度自身の縄張りのようなものがあるのであまり大きな移動はないのだが時折今回のように食料を求めて別の場所に移動することがあるということも本に書いてあったな。
因みに本の名前は“動物・モンスター図鑑 〜ゲルマニアにおける生き物たち〜”で、イラスト入りで分かりやすく動物やモンスターについて書いてあった。
・・・まあ、家畜にされている動物を除くほとんどの動物、モンスターの生態における詳細は不明とも書いてあったが。
「おそらくな。このままだと村に被害が出るのは確実だろう。」
「それは急がなければいけませんね!それで何時出発するのですか?」
「明日だ。」
俺は今すぐにでもその村に向けて出発するのかと思っていたので明日と聞いて、少し拍子抜けした。
「明日ですか?もっと早い方がいいのでは?」
「討伐にいく兵士を選んだり、移動の間の食糧などの準備をする時間が必要なのだ。」
話が進むにつれて俺の横に座っているキュルケがどんどん不機嫌になっていくのが分かる。
そろそろ爆発するかな?と思っていると案の定、キュルケが声を発した。
「お父様!私は連れて行ってはもらえないのですか!?私もダーリンと同じくラインメイジですよ。私だけ仲間はずれにするのはどうかと思いますわ!」
「た、確かに今回はキュルケを仲間はずれにしているだろう。しかし、実戦となればたかがオーク鬼といえ何が起きるか分からないのだ。そこに実戦に不慣れなものがいると全体の戦力が落ちる。だから、キュルケを連れていくのはヴァルムロードが実戦をある程度こなしてからだな。」
「でも!」
父さんの言葉に食い下がろうとするキュルケに母さんが声をかけた。
「キュルケ、今回はお父さんの言う通りよ。確かにキュルケはラインメイジで強さとしては申し分ないと思うけど、本当に実践では何があるか分からないのよ。もしキュルケのせいでヴァルに何かあったら嫌でしょう?」
「・・・はい。」
「キュルケに何があってもヴァルが何とかしてくれるようになるまでちょっと待ちましょうね。」
「・・・分かりました。今回は諦めるわ。」
そう言ったキュルケの顔は残念そうだったが、父さんはほっと胸を撫で下ろしていたようだ。
それから一日経った。
日が登ってからそんなに時間が経っていない時に俺は討伐に向かう為に玄関の前にいた。
玄関前に俺と父さんが乗る馬車が止まっており、さらに家の外の道に三台の馬車が止まっている。
キュルケ達が俺と父さんを見送る為に集まっていた。
「それじゃあ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
「頑張ってね。」
「気を付けてね。」
「ヴァル、初陣だからって緊張しすぎないでね。」
「怪我するなよ。」
「お土産よろしく。」
「お父様、そのうち絶対に一緒に連れて行ってね!」
「分かった、分かった。では、行ってくる。」
母さんや姉さんやキュルケ達に見送られながら家を出発した。
討伐に行くのは俺と父さんを含めた15人で、うち10人が剣士で5人がメイジという編成になった。
その中にはレイルド先生やカズハット兵士長もいた。
兵士長はシュヴァリエなので申し分ないし、先生はすべての系統を扱うことの出来るオールマイティなメイジなので少数精鋭でいくときには欠かせない存在なのだろうと思った。
その村には途中の町で一泊して、次の日の昼過ぎに着いた。
村は200人ほど住んでいるようだったが最近オーク鬼が近くに出るようになったせいかあまり活気があるとは言えない様子だった。
村の向こう側に森が見えるので恐らくあそこにオーク鬼が出るのだろう。
村に着いたら村長が出迎えてくれて、今の現状を詳しく話してくれた。
それによると、まだオーク鬼による村人の被害はまだ出てないようだがオーク鬼が出るせいで森に狩りや山菜採りなどができずに困っているということだった。
そして村にある宿屋の1階の食事をするスペースを借りて作戦会議をした。
まあ、作戦と言っても明日の朝に森に入り、数人が先行してオーク鬼の居場所を突き止める。
ただし、オーク鬼が見つかっても見つからなくても偵察は帰りも含めて30分で一度隊に戻ることを決めた。
30分経っても戻らない場合は問題発生とみなし、救助に向かう手筈となっている。
そしてオーク鬼が集まっているところを見つけたら、気付かれないように風下から接近し、まずメイジが魔法を放って先制攻撃をする。
その時に討ち漏らしたオーク鬼を剣士と一緒に倒していくというものだった。
つまり今回の俺の役割は後ろから魔法を放てばいい、固定砲台のようなものだな。
その日はそれで終わり、俺と父さんは村長の家で寝ることになった。
いつも寝ている時間よりは早い位だったが明日は朝が早いのでそうそうに寝るように父さんに言われたので俺はベッドに横になった。
ただ明日の事を考えるとまるで耳の奥に心臓があるようにドクンドクンと脈打つ音が大きく聞こえていた。
「・・・じゃあ、父さん。お休みなさい。」
「ああ、お休み。明日は早いぞ。ちゃんと寝ておけよ。」
そういうと父さんは部屋を明るく灯していたロウソクの火を消した。
真っ暗な部屋の天井を見ながら父さんの言葉に返事を返した。
「はい。でも、緊張して眠れるかな?」
「誰でも最初はそんなものだ。そのうちに慣れるさ。」
「そんなものかな?」
「そんなものだ。しかし、寝不足で魔法の威力が落ちることがないように、無理にでも寝ておけよ。どうしても眠れないのだったら水メイジに『スリープ・クラウド』を頼むか?」
「いやそこまではいいよ、父さん。今度こそ、お休みなさい。」
「お休み。」
目をつぶり、羊の数を数えた。
千匹までいったらやっぱり水メイジに頼もうかと考えていたが、移動の疲れの為かいつの間にか寝ていた。
空がすこし明るくなってきた頃、俺は自然と目を覚ましていた。
おそらく緊張のせいで眠りが浅くなっていたのだろう。
部屋の外からはすでに起きている人がいるらしくパンの焼けるいい匂いがしていた。
俺はベットから起きて、服を着替えて部屋の外に出て行った。
「あ、おはようございます。ヴァルムロート様。今朝食の準備をしておりますので、少々お待ちください。」
「分かりました。おはようございます、父上、もう起きていたのですか。」
「おはよう、ヴァルムロート。もうそろそろ誰かに起こしに行かせようと思っていたところだ。」
「そうですか。朝食を食べたらすぐにでも森に行くのですか?」
「ああ、オーク鬼は早朝は集まって寝ていることが多いからな。」
「そこを一網打尽にするということですね!」
オーク鬼は夜行性ではないが眠いときに寝て、お腹が減ったら食べるなど本能に従って生きてるのでこういう早朝は眠っていることがほとんどらしい。
因みに夜襲をかけてもよさそうなのだが森の中は足場が悪いので夜に移動したり、戦ったりするのは危険だし、そもそも松明やら『ライト』の魔法で明かりを出すとそれがオーク鬼に接近を知られる可能性も高い。
オーク鬼が寝ていて、かつ日があるので足元が見える早朝が討伐に適していると昨日聞いた。
「そうだ!だから、素早く朝食をすましたら、すぐに森に入るぞ。」
「はい!」
運ばれて来たパンとスープを口にかきこむように手早く食べた。
昨日は宿に泊まったレイルド先生やカズハット兵士長達と合流して、早速森に入って行った。
足の速い兵士数人がそれぞれ偵察に出てからまだ20分くらいしか経っていないが、1人の兵士が戻ってきて、オーク鬼が集まっている場所を見つけたと報告してきた。
他に偵察に出でいた兵士もそれから10分くらいしたら、全員戻ってきた。
匂いで気付かれないように風下から報告があった場所に行くと、少し森の中の少し開けたところにオーク鬼が17匹眠っていた。
俺にとって初めてのオーク鬼討伐が始まった。
「『ウォーター・シールド』」
まず水メイジが『ウォーター・シールド』をオーク鬼がいる場所の向こう側に発生させた。
これはオーク鬼の逃げ場を奪う壁と火の系統魔法から森を守る壁の2つの意味があると作戦会議の時に聞いた。
そして、すぐに俺と父さんを含む4人のメイジによる攻撃が始まった。
「「「「『フレイム・ボール』」」」」
当然現れた水の壁と飛んでくる火の玉にオーク鬼達は半数がすでに息絶えていたようだった。
風下にいるのでオーク鬼の焼けるくさい臭いが漂ってきて、少し気分が悪くなった。
「「「「「「「グオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」」」」
しかし、残り半数はうまい具合に魔法をやりすごしたり、仲間のオーク鬼を盾にして、こっちへと雄たけび迫ってきた。
「迎え撃てー!!」
「「「「「うおおおおおお!」」」」」
父さんの掛け声とともに今まで待機していた兵士達が一斉にオーク鬼に向かって行った。
オーク鬼の大きさは約2メイルあり、さらに手に大きな棍棒のようなものを持っており、まともに1対1で戦えば、いくら戦い慣れしている兵士であっても苦戦するだろう。
しかし、今はオーク鬼1匹に対し1〜2人の兵士で動きを止め、もう1人でトドメを刺すといった感じで、順調にオーク鬼の数を減らしていった。
そんな光景を戦闘の後衛から見ていた俺はすっかりこの“実戦”が終わったと思っていた。
「・・・これで終わりかな?」
そんな言葉を口にして、始まるまではかなり緊張していたが終わってみると大したことは無かったなと思っていた。
まだ目の前では兵士がオーク鬼と戦っていたが、俺の役割はないので完全に気を抜いていた。
その時、後ろでガサッと草の擦れる音が聞こえ、次の瞬間、「グオオオオオオ!!」という雄たけびと共に俺のすぐ横の地面に棍棒が振り下ろされていた。
「え?」
俺が棍棒を見るとその地面に叩きつけられていた棍棒はそのまま俺に向ってきた。
俺はとっさに左腕で体をガードしたが、その衝撃で2〜3メイル飛ばされて地面をごろごろと転がった。
「いってぇ・・・な、なんだ!?」
いきなりのことで頭が混乱していたが、ガードした腕がひどく痛かったが折れてはいないようだ。
俺がヨロヨロと立ち上がろうとしたとき、父さんが叫んでいた。
「ヴァルムロート!逃げろ!まだオーク鬼がいたんだ!」
俺が顔を上げてオーク鬼を確認したのと、父さんのこの声を聞いたのはほぼ同時だった。
俺とこのオーク鬼の距離は俺が吹っ飛ばされた2〜3メイルしかなかった。
オーク鬼は近くで見るととても大きく感じた。
・・・まあ、実際に倍くらいの大きさがあるのだが。
そんな中、父さんや他のメイジ達の方を見ると父さんたちも新たに現れたオーク鬼の対処に追われていた。
兵士達はいまだ他のオーク鬼と戦っており、すぐに援護に来れるようではなかった。
俺は杖を構えてスペルを唱えた。
「『ブレイド』!」
その次の瞬間にオーク鬼が俺に向かって横殴りに棍棒を振った。
棍棒から逃げるように横飛びをしながら『ブレイド』でガードしたので、なんとか直撃は避けられたが、それでもまた数メイル後ろに飛ばされて、着地するときに足を挫き、尻もちをついてしまった。
「いつっ!・・・って、うわぁ!」
そんな俺にオーク鬼は容赦なく襲いかかってきた。
俺の頭をかち割らんと大きく振り下ろした棍棒を転がって避けて、オーク鬼の横っ腹を『ブレイド』で切りつけた。
「グオオオオオオ!!!」
俺に切りつけられたオーク鬼は痛さをあまり見せず、むしろ先ほどよりもさらに殺気の隠った目を俺に向けた。
「うそ!まじかよ!」
『ブレイド』でオーク鬼に切りつけた部分は少し切れて血が出るくらいで、まったく致命傷やましては怯ませることもできず、ただオーク鬼を怒らせただけだった。
「ここから離れ、いてっ!」
足を挫いていて、しゃがんでいる状態からうまく立ち上がることができなくて、もたもたしてしまった。
“今”の俺では『ブレイド』をうまく扱いきれないことは薄々分かってはいた。
そもそも『ブレイド』の切れ味は普通の剣並なのでオーク鬼に対して一撃で致命傷与えることは出来ない。
オーク鬼が以外と足が速いようなので逃げることも出来ない。
『フライ』や『レビテーション』を使って空に逃げることも考えたが、恐らく上昇中にオーク鬼に叩き落されるのがオチだろう。
『フレイム・ボール』ならば数秒で発動出来るが、すぐ死ぬわけではないのでこの距離ではその間に反撃されてやられる可能性もある。
しかも、最悪自分の魔法の爆風に巻き込まれる可能性もあった。
そんなことをオーク鬼が俺の方に体を向けている短い間に考えたが、その答えが出る前にオーク鬼が俺に攻撃しようとしていた。
「くっ、俺はこんな所で殺られるのか・・・」
動きが鈍くなった俺にオーク鬼が今度こそ俺を仕留めようと棍棒を振り上げた。
わざわざ転生した先の人生がこんなところで終わるのか?
・・・否!断じて否!
俺の第二の人生はまだまだ始まったばかりだ!こんな所で終われるわけがない!
死中に活あり、どんなに絶望的でも最後まであきらめなければ可能性は0じゃないんだ!
そう自分に言って折れかけた心を切り替えた。
接近戦の『ブレイド』が効かなくたって俺にはまだもう一つ接近戦用の魔法があったじゃないか!
俺はオーク鬼に杖を向けながらスペルをこれまでに無いくらい早口で唱えた。
「『フランベルグ』!」
俺はありったけの精神力を詰め込んで『フランベルグ』を発動した。
杖の先から巨大な赤い光の剣が形成され、それは眼前まで迫ったオーク鬼の棍棒を消滅させ、その延長線上にあったオーク鬼の上半身も消し去っていた。
「あは、は・・・。すごい、ぜ・・・お、れ・・・。」
2年ぶりに使用した『フランベルグ』の激しい精神力消費とオーク鬼を倒したことによる緊張の糸が切れたことで俺は気絶してしまった。
次に俺が目を覚ましたのは村の村長の家のベットの上だった。
腕の痛みと足の捻挫はすでに治っていたので水のメイジの人が治してくれたんだろう。
起きて部屋を出たら、レイナル先生やカズハット兵士長がいて、すっごく謝罪された。
でも、先生や兵士長がいままで俺を鍛えてくれなかったら、死んでたかもしれない、というか死んでたから、「これからも俺を鍛えてほしい」と言ってこの場は収まった。
でも、2人が「今まで以上の訓練でヴァルムロート様を最強に・・・」とか話し合っていたので今後の魔法と剣の訓練が少し怖くなった。
父さんには「戦場では最後まで気を抜くな!」と怒られた。
その後に「1人でオーク鬼に勝つとはもう一人前のメイジだな!」と褒めてくれた。
村は祝勝会みたいなのが開かれていて、村の人達にとても感謝された。
その間、なぜか俺の二つ名が『炎剣』になっており、「炎剣のヴァルムロート様」とか言われた。
翌日の朝、村を出発し、途中の町で1泊し、次の日にようやく家に帰れた。
家に帰って、父さんが皆に討伐のことを話した。
俺がオーク鬼に襲われて、それでも『ブレイド』を使ってオーク鬼の棍棒を防いだり、『フランベルグ』でオーク鬼を半分消し飛ばしたことを話していた。
俺はあの時、かなりの間オーク鬼と戦っていたような感覚だったが、父さんの話から察するには十秒にも満たない時間だったようだ。
あれか、人間が危機状態に陥った時に時間がゆっくり進むように感じるってやつか?
その話を聞いた母さん達は「次はもっと周りに気を配りなさい。」とか言われ、姉さん達は「オーク鬼を1人で倒すなんて、すごいわね!」と褒められ、キュルケからは「ダーリンはやっぱり凄いわね!でも、そのうち私も絶対に付いて行くからね!」と宣言された。
父さんは「次はもっと兵士を増やして・・・」とかキュルケがくるときのことを考えているようだった。
あと、俺の二つ名になった『炎剣』はなかなか良い評価だった。
ツェルプストー家は火の系統が得意な家系だから二つ名に『炎』が付いてるのが良いし、『剣』っていうのも強さを表しているみたいで良いらしい。
『炎剣』って、十中八九『フランベルグ』から来てるんだろうな。
それにしても・・・あの時に使った『フランベルグ』は昔よりも精神力の消費が激しかったようだけど、あんなものだったけ?
読んで頂きありがとうございます。
今回は討伐の話で初戦闘シーンですね。
まあ、戦闘シーンといっても短いものですが。
ヴァルが最初から『フランベルグ』を使わなかったのは封印してから2年間全く使用しなかったのですっかり忘れていたせいです。
今回の話は規制事項が魔法名だけでなくヴァルの心情にも出ていたので改変に少し悩みました。
やっぱり某機動戦士が使えないのは残念ですね・・・。
ご意見・ご感想があれば良ければ書いてみて下さい。