50話 対複数同時攻撃魔法
俺がヴァリエール家で魔法の訓練を始めてから半年ほど経った。
模擬戦を含めた訓練のお陰で俺の水と風の系統魔法のランクが上がり、それぞれトライアングルとラインになった。
ランクアップしたことで加えることの出来るスペルの数が増えたので新しい魔法のスペルを覚えることにした。
新しく覚えた風の魔法の中には一度に複数の相手に効果があるものなどがあった。
新しい魔法も増え、自分に出来ることを改めて考えているときに、ふとあることに気が付いた。
独り言は自重しないと思いながらも、自分の為に用意された部屋で一人でいるとついつい思ったことをそのまま口に出してしまう。
「そう言えば・・・俺ってほとんど単体攻撃しか出来なかったよな。」
これは俺が火のメイジであるとうことと関係が深い。
火の系統魔法は威力は高いがそのほとんどが基本単体へ攻撃をするもので、複数の相手を想定した魔法は少ない。
土は『ゴーレム生成』で複数を相手に出来るし、水は大量の水が必要だけどあれば可能だし、風は空気操ってるから全体攻撃はお手の物だし『ユビキタス』というチートがあるからな・・・。
系統毎にどんな魔法が複数への同時攻撃、つまり魔法が届く範囲全体への攻撃が出来るのを考えていた。
「全体攻撃か・・・。」
全体攻撃・・・スパロボ的にはMAP兵器か。
ふと、前世のゲームのことが頭に浮かび、その瞬間頭の隅に引っかかりを覚えた。
「・・・ん!?」
“MAP兵器”という言葉である機体が記憶の彼方から疾風のごとく俺の脳裏に浮かんできた。
俺はその機体のとある攻撃方法を魔法で再現出来ないかと考えた。
「うーん、風の魔装機神って言ってるから風の魔法で・・・いやいや、これではただの『ウインド・ブレイク』だな。・・・あ、そうだ!あれを使えば・・・あれでこうして・・・これはいけるかも!」
次の日は水の魔法の訓練だった。
水の魔法は師匠もいるが主にミス・ネートに教わっている。
餅は餅屋ということらしい。
「ヴァルムロートさん、水系統がトライアングルランクになったそうですね。おめでとうございます。では今日からは新しい魔法を教えていくことにしますね。」
という訳で新しい水の魔法を教えてもらった。
水の魔法はランクが上がることに氷系の魔法が増えていっているようだった。
やっぱり水より氷の方が攻撃力が高そうだからだろうか?と思ったのでミス・ネートに聞いたところ「水の状態のままで威力が高い魔法は無い」という返事が返ってきた。
俺はその言葉は本当だろうか?と疑問を持った。
「氷の方が威力が高いか・・・果たしてそうだろうか?」
確かに普通に人やオーク鬼、幻獣などを相手にするなら水より氷の方が威力は高いだろう。
ただの水とただの氷だと、氷の方が硬いし、先を鋭利にして突き刺すことも出来るから殺傷能力は高いだろう。
しかし、ただ氷では金属を貫くのは難しいが、圧縮した水なら金属をも貫くことが出来る。
・・・まあ、その圧縮した水を凍らすことが出来るのなら氷の強度も上がって、金属をぶち抜くことも出来るかもしれないけどね。
ただその際の精神力の消費がどれくらいになるのかは予想が付かないが・・・。
それに氷は一度作ってしまうと一定の威力になるけど、水なら威力をある程度自由に調節することが出来るというのはそこそこ強みではないだろうか。
そんなことを考えていると、またも頭の隅に引っかかる感覚を覚えた。
「・・・ん!?」
“威力を程度自由に調節することが出来る”という言葉でまたとある機体が脳裏に蘇った。
そしてその機体のとある武装と同じようなことが先程自分が考えていたことで出来るのではないかと考えた。
「これは・・・いままでは別々でしか出来なかったけど、同時に出来るのか?・・・まずは腰のところに集めて・・・圧縮の具合を・・・。」
新技の構成を練りつつ日々の魔法や剣術の稽古をこなし、ついに虚無の曜日がやってきた。
虚無の曜日は完全休養日だ。
折角の休みだからとキュルケ達は街に買い物に出かけているのだが、俺はその買い物の誘いを断って1人で特別練習場にやって来た。
どうして普通の練習場ではなくわざわざ少し遠くにある特別練習場の方に来たかというと、ここは四方を壁に囲まれているのでこっそり練習するにはもってこいの場所なのだ。
実家にいたときは近くの森の中で必殺技の研究をやってたから、この特別練習場がその代わりというわけだ。
それに壁に『強化』や『固定化』の魔法とかが何十にもかかっててちょっとやそっとじゃ壊れないから魔法も打ち放題だ。
的には俺は『錬金』が使えないので近くの森から岩や折れた木などを『レビテーション』を使って運び込んだ。
オリジナル魔法のスペルだけはこの一週間机の前でああでもないこうでもないと唸りながら考えてすでにある程度形にはなっているが、まだ完成はしていない。
実際に行なってみて、そこから改善するところを探しながらより良いものに変えていかなくてはいけない。
初めてのことは何でも試行錯誤が大切だ!
「よし!じゃあ、やるぞ!」
そしてオリジナル魔法を練習し始めてから、三週間位経ったある日の魔法の訓練中に突然師匠が俺にこう尋ねてきた。
「ヴァルムロート、あなた1人で新しい魔法を考えているのではなくて?」
俺がこそこそ何かをしていることはバレているとは思ったが、新しい魔法と言われて瞬間的に心拍数が跳ね上がる。
「えっ!?ど、どうしてそう思うのですか?」
確かにここ三週間はオリジナル魔法のことを考えていたけど、それでも普段の訓練の時には真面目に取り組んでいたから変わらないはずなのにどうして分かったんだろう?と疑問に思ったがそれはすぐに解消された。
「キュルケさんがね、この前の虚無の曜日とその前の虚無の曜日にあなたの付き合いが悪くなったからまた1人で何かをやっているんだろうと言っていましたよ。そしてそういう時はその後に新しい魔法を使用していることも聞きました。」
「ああ・・・キュルケからですか。」
さすがキュルケ、俺の行動パターンはお見通しというわけか、と納得してしまった。
しかし付き合い悪くなったと思われていたとは思わなかったので次に買い物に誘われたら付き合おうかなと考えを改めた。
それとも次の虚無の曜日は俺の方から街に誘って何か美味しいものでもご馳走した方がいいのだろうか?・・・なんて考えが頭に浮かんだ。
「それでどうなのですか?何か考えているのかしら?」
「はい。まあ、仰る通りなのですが・・・まだ練習中なのです。」
「そうですか!では1人で休日にこそこそ練習するのではなく魔法の訓練の時に多少時間をさくのでその時に行いなさい。他人に見てもらったほうが自分では気づかない欠点などが分かるかもしれませんよ!」
「わ、分かりました!」
自分では分からない問題点があるかもしれない、という師匠の言うことはもっともな意見だった。
さらに師匠は「休日にきちんと休むのも訓練の内ですわよ。」と続けていた。
俺の身体のことを心配してくれているのかと思い、少し嬉しくなっている自分がいた。
「それでどの系統の魔法について考えたのかしら?」
「今回は風と水の2つ魔法を思いついたのでそれを練習していました。」
「ほう、2つですか。水系統の魔法もあるならミス・ネートも呼ぶことにしましょう。」
ミス・ネートは現在俺達から少し離れた所にいてルイズ達と一緒に魔法の練習を少しずつ始めたカトレアさんの体調を常に観察してくれている。
さらにミス・ネートは水系統の素質の高いカトレアさんにちょくちょくアドバイスをしているということをカトレアさん本人から聞いた。
そのミス・ネートに師匠が声をかけようとしたので俺は慌ててそれを止めた。
「ちょ、ちょっと待って下さい師匠!い、いまから見せるのですか!?」
「ええ。早い方がいいかと思いまして。それに今は風系統の魔法の訓練時間だから、あなたが新しい風系統の魔法を練習するのになんの問題も無くってよ。」
そう言い放つと師匠は俺の制止も聞かずにミス・ネートに声をかけた。
師匠に呼ばれたミス・ネートは「どうかなさいましたか?と、こちらにやって来た。
「何かあったのかしら?」
「どうしたのですか!?お義兄様!」
「あらあら?ヴァルムロートさん、また何かしたのかしら?」
キュルケ達を連れて・・・って、カトレアさん!?またって俺前に何かしましたか?
「ヴァルムロートが新しい魔法を考えていたらしいのでそれを今から見せてもらうのですよ。水系統の魔法もあるようなのでミス・ネートの意見も聞きたくて呼びました。」
そう師匠が説明するとキュルケが少し拗ねた顔をこちらに向けた。
「もうダーリンってば、誘っても全然来ないからもしかしたらと思ってたけど、やっぱりこそこそ何かやってたのね!」
「・・・それでヴァルムロートさんはどんな魔法を考えたのかしら?」
拗ねているキュルケを宥めようとしている時にカトレアさんが興味津々といった感じで聞いてきた。
最近習い始めたとはいえカトレアさんも水系統のメイジなので新しい魔法というものが気になるのだろう。
キュルケに次の虚無の曜日は一緒に過ごすと約束して機嫌を直してもらった俺は改めて皆の方を向いた。
「では、まずは風の魔法から行いますね。まだ練習中の魔法なので皆は何か意見があったら遠慮なく言って下さい。」
そしてミス・ネートに『錬金』で俺の数メイル周りに胸位の高さの円柱を幾つか作ってもらい、その台の上にそのへんに落ちていた石と木の枝をそれぞれの円柱に2、3数個ずつ置いた。
「ねえダーリン、今置いた石と枝はなんなの?」
「これ?これは攻撃する的だよ。ただし攻撃するのは石だけだけどね。」
キュルケは俺の言葉に首を傾げていた。
説明するよりも見てもらった方が早いと思い、すぐに皆に離れてもらい、そして念の為に師匠の『エア・シールド』で身を守ってもらうことにした。
「ではいきますよ!いいですか?」
「ええ。いつでも良くてよ!」
俺が準備が出来たことを言うと師匠が少し弾んだ声で答えた。
人にみせるということでいつも練習していた時よりも集中してスペルを唱えた。
数秒後、魔法が発動すると俺の周りにビュウウと強い風が吹いた。
すると周りに作ってもらった台の上から石が風に吹き飛ばされて地面に落ちた。
何本かの木の枝は石と一緒に飛ばされてしまったものの、それでもほとんどの木の枝は台の上に残っていた。
「どうでした?魔法の名前は『サイフラッシュ』とつけようと思います。まあ、まだ未完成なのですが・・・。」
師匠は台の上に残った木の枝と下に落ちた石を見ながら「一見見たところただの『ウインド・ブレイク』に見えましたが、台の上に枝が残っているのは失敗・・・ではなくわざなのよね?」と言った。
キュルケ達は実は石より木の枝の方が重いので残ったのではないか?と言って地面に落ちた石と台に残った木の枝を実際に手に取っていたが、台に残っていた木の枝の方が軽いことにさらに首を傾げていた。
「ええ、師匠が仰るようにわざと枝が残るようにしました。なぜならこの魔法の一番のポイントがこの“攻撃対象の選択”ですから。僕が魔法を使う前に“攻撃するのは石だけ”と言ったのはこういうことだったんです。」
「ねえ、お義兄様!攻撃対象の選択なんてどうしてそのようなことを?こう言っては失礼かもしれませんが、それは面倒ではありませんか?普通に魔法を使った方が楽なのでは?」
「ルイズの言う通りじゃない?どうしてなの?」
ルイズの疑問にキュルケも同意している。
「確かに普通に魔法を使った方が簡単だし単純に威力も上がる。でも戦場などで敵味方が入り乱れている時はそう簡単に魔法はつかえないだろう?」
それに暗殺で街中でしかれられた時に周りに平民がいる状態じゃそうそう魔法も使えないと思う、と心の中で付け加えた。
まあ、普通の貴族だったらもしかしたら平民にお構いなく魔法を使うのかもしれないけどね。
「そうですね・・・。そんな状態で魔法を使ったりしたら味方ごと攻撃してしまうかもしれませんね。」
「そういうこと!そこで使えるのが今回僕が考えたこの“攻撃対象の選択”を行った『サイフラッシュ』なんだ!・・・といっても『ディテクトマジック』で攻撃対象と非攻撃対象とに自動判別して後は非攻撃対象に魔法が届く前にそこだけ避けたりするだけなんだけどね。」
「コモンスペルを使ったらこんなことが出来るのですね。」
ルイズは素直に感心しているようだ。
「『ディテクトマジック』のこの機能を使えばどの魔法でも“攻撃対象の選択”は可能になるはすです・・・理論的には。」
「それって私でも“攻撃対象の選択”が出来るということ!?」
キュルケが少し興奮したように聞いてきた。
まあ、コモンスペルを付けただけと言えば簡単そうに聞こえるかもしれないが、一つの魔法のスペルとしては出来は今一つなのだ。
なにが今一つなのかというと、『サイフラッシュ』のスペルを普通の言葉で簡単に表すとこうなる。
“『ディテクトマジック』発動・索敵範囲内の攻撃対象を設定・索敵範囲内の非攻撃対象を設定・使用魔法『ウインド・ブレイク』・発動範囲は自身の周囲・攻撃対象を攻撃かつ非攻撃対象への攻撃を回避もしくは魔法の一部解除・魔法発動”
この攻撃対象とか非攻撃対象に設定するのはがあいまいだとちゃんと識別してくれないというのがあるが、何か工夫をしてちゃんとしてやれば問題はず・・・なのだが。
その工夫が思いつかないから出来としては今一つなんだよね。
「ああ。出来るはずだ・・・理論的には、ね。」
ただこの『ディテクトマジック』で判別した後にその部分だけ避けたり、魔法を一部解除したりすればどの魔法でも可能のはず!使用魔法を変えてやればいいだけだからね。
と、まあ理論的にはそうなんだけど・・・風以外の系統魔法があまり上手くいかないんだよね。あれかな?避けると部分解除の違いかな?
風はその威力の割に自由に進行方向を変更出来るんだけど、水は風よりも質量があるせいか上手く避けられないし・・・まあこれは要練習だな。
火は避けても余波の熱風とかであまり避けたことになってない。
・・・まあ、そもそも魔法の部分解除すること自体、俺自身があまり上手くないというのも問題の一つかもしれない。
練習したら少しは上達するんだろうけど・・・部分解除は昔から一応練習しているんだけど、なかなか上達しないんだよな。
今は魔法の完成第一なので一番うまくいっている風の系統魔法で練習しているところだ。
師匠が落ちた枝を拾いながら、
「しかし“攻撃対象の選択”もまだ完全ではないようですね。ここがまだ未完成という理由かしら?」
「その通りです、師匠。まずはこの石と木の枝という異なる2つのものの選択を完璧にしてから、さらに選択するものを増やすつもりです。」
「そうですか。では今度からは風系統の訓練の最後の方に時間をとって行うことにしましょう。風魔法の動かし方なら指導出来るでしょう。」
「分かりました!お願いします!」
「あの、それで私はどうして呼ばれたのでしょうか?」
今見せたのが風魔法だったので完全に蚊帳の外という状態だったミス・ネートがおずおずとそう聞いてきた。
「ヴァルムロートが考えたのは風以外にも水も考えたらしいですから、あなたに意見を聞こうかと思って。じゃあ、ヴァルムロートお願いね。」
「はい。では次に水魔法の方をお見せします。すみませんがミス・ネートまた『錬金』をお願いします。今度は頑丈な金属の板を作ってください。」
ミス・ネートは分かりましたと言って、俺達から離れた所に厚さ数サントの鉄の板を『錬金』した。
「では今からこの鉄の板を貫通させます。」
俺は先程とは異なるスペルを唱えた。
すると俺の腰の両側に水が集まり、大きくなったかと思うと圧縮されて小さくなる、それを数回繰り返し最終的にハンドボールくらいの大きさで落ち着いた。
そして右側の水の玉の一部にほんの僅かな針の穴位のイメージ——実際はもう少し大きな穴だったが——で穴を開け、すぐさまそれを閉じた。
一瞬開けたその穴の部分から鉄板に向かって勢い良く水が飛び出した。
ガン!という音が鉄板から聞こえたかと思うと、鉄板にくぼみが出来ていた。
そして同じように数度水を発射させると、ガンガンガゴッと鉄板に水が当たった音が響いた。
鉄板に水が当たった音が変わった所で俺は魔法を止めた。
目を凝らすと水で濡れた鉄板に小さな穴が開いているのを確認することが出来る。
「驚きました!まさか水で鉄に穴を開けることが出来るなんて!」
皆は水が鉄を貫通して穴を開けることが出来ることに驚いていた。
「ヴァルムロートさん、この魔法はこれで終わりなのかしら?」
さすがカトレアさんはニュータイプ並に鋭いね。
「皆、もう一度攻撃するので鉄の板から離れて下さい。」
俺がそう注意すると皆鉄板から離れた。
そして今度は左側の数サントの大きさの穴を開けて、水を発射した。
するとガァァン!という大きな音と共に先程はびくともしなかった鉄板が根元から折れ曲がった。
「・・・と、このように高い貫通力を持った攻撃と高い破壊力を持った攻撃を同時に操ることが出来る魔法です。名前は『ヴェスミー』とつける予定です。」
名前の元ネタはもちろんガンダムに出てくるF91というMSの武器『ヴェスバー』からだ。
“ヴァリアブル・スピード・水鉄砲(V・S・M)”で圧縮の違いにより発射するときの水の速さを変えている。
今までのランクでも出来ないことはなかったと思うが今回トライアングルになったことで両脇で同時に使うことに成功したんだ。
「さらにこんなことも出来ます!」
俺は左右の水の玉に穴を開けたり閉じたりを繰り返した。
すると小さな水の弾がまるでマシンガンのように発射された。
皆目の前を通り過ぎるたくさんの水の弾に言葉を無くしていた。
・・・あれ?やりすぎたかな?
「・・・なるほど。確かにすごい攻撃力を持っていますね。しかし右から貫通力の高いもの、左からは破壊力の高いものと撃ち分けているようですが、もし相手がそれに気づけば簡単に対策を取られてしまいますよ?」
そんなんだよね。
今はまだ左右で別々にしているけど、目指すところはどちらからでも撃つことが出来るようになることだ。
ただこれは練習不足からくる問題だと思うので俺自身そんなに重要視してはいない。
「はい。僕のそこがこの魔法の欠点だと考えているので、今後も練習して左右どちらからでも撃てるようにします!」
「それがいいでしょう。ミス・ネート、水の訓練の時に指導をお願いしますわよ。」
「はい。分かりました。」
こうして俺のオリジナル魔法の開発は公に行うこととなった。
手伝ってくれるのはとても助かるのだけど、影で練習して本番でいきなり見せて驚かせることが出来なくなるのは残念だな。
「・・・ねえ、ヴァルムロートさん。どうして腰のところに水を集めるのですか?」
カトレアさんが不思議そうに聞いてきた。
当然といえば当然の質問なのだが、俺はその質問に目が泳いでしまった。
「え、あ、えーと・・・特別な意味はないですね。言ってしまえば、様式美のようなものですかね。」
俺にはこれしか言えなかった。
<次回予告>
ヴァリエール家に来てから、魔法の訓練、メイジとしての剣術の特訓、週末の師匠との模擬戦、休日のオリジナル魔法の研究と確実にメイジとしてレベルアップしていると思う。
・・・え?ちっとも休んでないって?
いやいや、俺も休む時には休んでいるよ。
ちょうど屋敷の裏手に大きな湖があるし、前世で趣味だった釣りとかしたいよね。
あ、キュルケ達にこれまでの埋め合わせをしないといけないな。何がいいかな?
そう言えば、メイドさんが今町であるものが噂になってるって言ってたような・・・
第51話『湖の畔で』
次は9/25頃までの更新を目指して頑張ります。