第7話−センゴクの決定
『……まあ、どちらにせよ、相手は現在でもう中将だ。新米少尉と接点がある訳じゃない。すぐに結論を下さなくても大丈夫だろう』
そう結論を下して、どう介入可能か、アスラが頭を切り替えた。先送りとも言う。
その足元で、アリスがふわ、とばかりに大きなあくびをした。
そして、アスラがそんな事を考えている正にその頃。
センゴク大将は既に動いていた。
ガープ中将相手にはああ言ったが、この新人は期待出来るとふんだのだ。
悪魔の実の能力者であり、六式使いであり、覇気使いでもある。
環境が環境故に、修行しかする事がなかった、その結果として、基礎はがっちりと組みあがっている。
これだけ揃えば、期待しない方がおかしい。
まず、少尉の階級に関してはすんなり承認が出た。
実の所、海軍としては急速に悪化する海の治安維持の為に、有能な人材は喉から手が出る程欲しい状態が続いている。
3年前の海賊王ゴールド・ロジャーの処刑。
だが、本来海賊時代の終焉を告げる筈の、それはロジャーの死に際の一言で、逆に海賊時代の幕開けを招いてしまった。
『俺の財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の全てをそこにおいてきた!』
ひとつなぎの大秘宝——ワンピースと呼ばれる、それを求めて大勢の海賊達が海原へと漕ぎ出した。
—大海賊時代—
巷では、そんな呼び方すら広がりつつあるぐらい、海賊達は一気に増えた。
酷い例では、海軍から離反して、財宝探しに飛び出した連中までいる。
実の所、ロジャーの財宝が何かは海軍上層部は理解している。それだけに……それを誰かの手に渡す訳にはいかない。情報操作によって、財宝は幻、そんな方向に持っていく事も検討されているが、それには時間がかかる。
当座は人員を増やし、海賊を取り締まっていくしかないのだ。
海賊王ゴールド・ロジャーは死んだが、海賊提督こと金獅子のシキは昨年収監されていたインペルダウンから脱走した。インペルダウン初の失態であり、この事は厳重に秘されているが、ある意味一隻のクルーだけで構成されていたロジャー海賊団よりも危険視され、現在も捜索が続けられている。
また、シキが脱獄後、ぷっつりと消息を絶った現在、最大の大物は白ひげエドワード・ニューゲート。
グラグラの実の地震人間であり、同時に幾つもの海賊を傘下に収める大海賊だ。
この他にもピンキリというか、まだ白ひげのような良識ある海賊はともかく、質の悪い海賊も多数発生している。こうした質の低い海賊はワンピースを目指すのではなく、ただ単に自分達の欲望を満たすべく行動するから余計に性質が悪い事になる。
さて、そんな時代故に海軍は繰り返すようだが、有能な人材を求めており、それ故に鍛え方もなかなかにハードだった。
「さて、これで正式に海兵となるのは決まったが、どうするか」
センゴクは少し考える。
七千万を一蹴したのだ。そんじょそこらの海賊相手なら引けを取るまい。そういう意味では最初からグランドラインを担当する軍艦に配属して問題はあるまい。
その一方で、ガープからの話が気になる。
彼の話を総合すると、おそらく、あのアスラという人物はまだ、人を殺した事がないのだろう。
それは、民間人としてならば良い話だ。
だが、海軍としては、それでは駄目なのだ。
「……荒療治となるが、奴に預けてみるか」
そう呟くと、センゴクは電伝虫を使い、連絡を取る。
『これはこれは、一体何用ですかのう』
すぐに連絡は繋がった。
向こうとしても、急に大将であるセンゴクが連絡してきた事で少し驚いているようだ。
「すまんが、そちらで1人預かってもらいたい」
そう告げ、アスラについて説明する。
ガープ中将が立ち寄った無人島で救出した事。
その島で何年も1人で暮らしていた事。
島にいる前の記憶がない事。
CPを脱走した人間が残した資料を元に生き延び、修行をしていた事。
悪魔の実の能力者である事。
六式使いである事。
覇気使いである事。
最初はわざわざ大将が、1人の少尉の事について電話してきた事に疑問を感じていた様子だったが、全てを語る頃には、電伝虫の向こうの相手も面白そうな口調となっていた。
『成る程、そいつは使えそうですな』
実際、悪魔の実、六式使い、覇気使い、そのいずれか一つであっても、普通の海兵と比べ、遥かに期待が持てるのだ。
「ああ、だが、まだ戦った事はあっても、相手を傷つける、殺すという行為については躊躇いがあるようだ。いや、これまで民間人だったと考えるならば、むしろ良い話なのだが、これから海軍で海賊達との戦いを繰り返していくとなると、それではいかんのだ」
『確かにそうですな。それで、儂に預けようと?』
「ああ」
『死ぬかもしれませんが?』
「奴の食った悪魔の実は、メタメタの実、モデル水銀。こと防御に措いては自然系にも匹敵すると謳われる悪魔の実だ。そうそう死ぬ事もあるまい」
『成る程……了解しました。このサカズキ、責任持ってそいつを鍛え上げてさしあげましょう』
……アスラが知らないところで、未来の赤犬大将、現サカズキ中将に預けられる事が既に決定してしまっていた。
「……とりあえず、既にトムズ・ワーカーの海列車開発は進んでると……全線開通と司法船が向うのは何時だったか……」
アスラはと言えば、そんな事を知る由もなく、自分の目的である介入をどう行っていくかを考えていた。
トムズ・ワーカーに関してはまだ最低七年以上あるから、それまでに……ナミの故郷に関しては、ジンベエの七武海入りがアーロンが出て行くきっかけだから、その時期を……という具合にだ。
ルフィの成長は妨害する事になるかもしれないが……だからといって、見過ごせる程人間出来てない、というか、そのまんま何もせずにいたら、この世界に来た意味がない。
「……シャンクスに関しては諦めざるをえないよな。何時フーシャ村に来るか正確な日時なんて分からないし、あ、でもそうすると、アーロンがココヤシ村に何時行くかも正確な日取りがわかんないか……ネズミ大佐が何時あそこに配属になるかとかその辺から分からないかな……」
計画は更に武器に関しても及ぶ。
「……一応武器は自分の能力で生成出来るけど、矢張り大業物とか手に入ったら、ほしいよなあ……あ、でも手に入ったら、きちんと武器の扱い方も練習しないといけないけど、そうなるとあれもこれもってなって……。
でも、原作見る限り、海楼石って加工が難しそうだから、覇気使って武器強化出来るようにしないと……でないと海楼石での銃弾とか普通に作られてるだろうしなあ……ないどころか、スモーカーの十手にしたって結構歪だったし……偶然そういう形になったのを使ってるだけって可能性もあるよな……」
翌日、自身がサカズキ中将に預けられる事が決定した事を伝えられて、内心でムンクの「叫び」の如き気持ちになる事など知りもせず、悩み続けたアスラの計画は、結局、ご飯時なのに悩み続けるアスラに痺れを切らしたアリスに甘噛みされて食堂へ連れて行かれるまで続くことになる
『……まあ、どちらにせよ、相手は現在でもう中将だ。新米少尉と接点がある訳じゃない。すぐに結論を下さなくても大丈夫だろう』
そう結論を下して、どう介入可能か、アスラが頭を切り替えた。先送りとも言う。
その足元で、アリスがふわ、とばかりに大きなあくびをした。
そして、アスラがそんな事を考えている正にその頃。
センゴク大将は既に動いていた。
ガープ中将相手にはああ言ったが、この新人は期待出来るとふんだのだ。
悪魔の実の能力者であり、六式使いであり、覇気使いでもある。
環境が環境故に、修行しかする事がなかった、その結果として、基礎はがっちりと組みあがっている。
これだけ揃えば、期待しない方がおかしい。
まず、少尉の階級に関してはすんなり承認が出た。
実の所、海軍としては急速に悪化する海の治安維持の為に、有能な人材は喉から手が出る程欲しい状態が続いている。
3年前の海賊王ゴールド・ロジャーの処刑。
だが、本来海賊時代の終焉を告げる筈の、それはロジャーの死に際の一言で、逆に海賊時代の幕開けを招いてしまった。
『俺の財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の全てをそこにおいてきた!』
ひとつなぎの大秘宝——ワンピースと呼ばれる、それを求めて大勢の海賊達が海原へと漕ぎ出した。
—大海賊時代—
巷では、そんな呼び方すら広がりつつあるぐらい、海賊達は一気に増えた。
酷い例では、海軍から離反して、財宝探しに飛び出した連中までいる。
実の所、ロジャーの財宝が何かは海軍上層部は理解している。それだけに……それを誰かの手に渡す訳にはいかない。情報操作によって、財宝は幻、そんな方向に持っていく事も検討されているが、それには時間がかかる。
当座は人員を増やし、海賊を取り締まっていくしかないのだ。
海賊王ゴールド・ロジャーは死んだが、海賊提督こと金獅子のシキは昨年収監されていたインペルダウンから脱走した。インペルダウン初の失態であり、この事は厳重に秘されているが、ある意味一隻のクルーだけで構成されていたロジャー海賊団よりも危険視され、現在も捜索が続けられている。
また、シキが脱獄後、ぷっつりと消息を絶った現在、最大の大物は白ひげエドワード・ニューゲート。
グラグラの実の地震人間であり、同時に幾つもの海賊を傘下に収める大海賊だ。
この他にもピンキリというか、まだ白ひげのような良識ある海賊はともかく、質の悪い海賊も多数発生している。こうした質の低い海賊はワンピースを目指すのではなく、ただ単に自分達の欲望を満たすべく行動するから余計に性質が悪い事になる。
さて、そんな時代故に海軍は繰り返すようだが、有能な人材を求めており、それ故に鍛え方もなかなかにハードだった。
「さて、これで正式に海兵となるのは決まったが、どうするか」
センゴクは少し考える。
七千万を一蹴したのだ。そんじょそこらの海賊相手なら引けを取るまい。そういう意味では最初からグランドラインを担当する軍艦に配属して問題はあるまい。
その一方で、ガープからの話が気になる。
彼の話を総合すると、おそらく、あのアスラという人物はまだ、人を殺した事がないのだろう。
それは、民間人としてならば良い話だ。
だが、海軍としては、それでは駄目なのだ。
「……荒療治となるが、奴に預けてみるか」
そう呟くと、センゴクは電伝虫を使い、連絡を取る。
『これはこれは、一体何用ですかのう』
すぐに連絡は繋がった。
向こうとしても、急に大将であるセンゴクが連絡してきた事で少し驚いているようだ。
「すまんが、そちらで1人預かってもらいたい」
そう告げ、アスラについて説明する。
ガープ中将が立ち寄った無人島で救出した事。
その島で何年も1人で暮らしていた事。
島にいる前の記憶がない事。
CPを脱走した人間が残した資料を元に生き延び、修行をしていた事。
悪魔の実の能力者である事。
六式使いである事。
覇気使いである事。
最初はわざわざ大将が、1人の少尉の事について電話してきた事に疑問を感じていた様子だったが、全てを語る頃には、電伝虫の向こうの相手も面白そうな口調となっていた。
『成る程、そいつは使えそうですな』
実際、悪魔の実、六式使い、覇気使い、そのいずれか一つであっても、普通の海兵と比べ、遥かに期待が持てるのだ。
「ああ、だが、まだ戦った事はあっても、相手を傷つける、殺すという行為については躊躇いがあるようだ。いや、これまで民間人だったと考えるならば、むしろ良い話なのだが、これから海軍で海賊達との戦いを繰り返していくとなると、それではいかんのだ」
『確かにそうですな。それで、儂に預けようと?』
「ああ」
『死ぬかもしれませんが?』
「奴の食った悪魔の実は、メタメタの実、モデル水銀。こと防御に措いては自然系にも匹敵すると謳われる悪魔の実だ。そうそう死ぬ事もあるまい」
『成る程……了解しました。このサカズキ、責任持ってそいつを鍛え上げてさしあげましょう』
……アスラが知らないところで、未来の赤犬大将、現サカズキ中将に預けられる事が既に決定してしまっていた。
「……とりあえず、既にトムズ・ワーカーの海列車開発は進んでると……全線開通と司法船が向うのは何時だったか……」
アスラはと言えば、そんな事を知る由もなく、自分の目的である介入をどう行っていくかを考えていた。
トムズ・ワーカーに関してはまだ最低七年以上あるから、それまでに……ナミの故郷に関しては、ジンベエの七武海入りがアーロンが出て行くきっかけだから、その時期を……という具合にだ。
ルフィの成長は妨害する事になるかもしれないが……だからといって、見過ごせる程人間出来てない、というか、そのまんま何もせずにいたら、この世界に来た意味がない。
「……シャンクスに関しては諦めざるをえないよな。何時フーシャ村に来るか正確な日時なんて分からないし、あ、でもそうすると、アーロンがココヤシ村に何時行くかも正確な日取りがわかんないか……ネズミ大佐が何時あそこに配属になるかとかその辺から分からないかな……」
計画は更に武器に関しても及ぶ。
「……一応武器は自分の能力で生成出来るけど、矢張り大業物とか手に入ったら、ほしいよなあ……あ、でも手に入ったら、きちんと武器の扱い方も練習しないといけないけど、そうなるとあれもこれもってなって……。
でも、原作見る限り、海楼石って加工が難しそうだから、覇気使って武器強化出来るようにしないと……でないと海楼石での銃弾とか普通に作られてるだろうしなあ……ないどころか、スモーカーの十手にしたって結構歪だったし……偶然そういう形になったのを使ってるだけって可能性もあるよな……」
翌日、自身がサカズキ中将に預けられる事が決定した事を伝えられて、内心でムンクの「叫び」の如き気持ちになる事など知りもせず、悩み続けたアスラの計画は、結局、ご飯時なのに悩み続けるアスラに痺れを切らしたアリスに甘噛みされて食堂へ連れて行かれるまで続くことになる