第137話−後始末と組み合わせ
近くの無人島へと彼らは降り立った。
クリーク達は賞金のある面々だけ捕縛され、今はメルクリウス号の牢屋の中だ。
別にアスラは賞金が貰える訳ではないので、エース達に引き渡しても構わないのだが、何しろ数が多い。総数53隻に及ぶ海賊艦隊の全てを捕らえるには到底人手が足りない。
『多分逃げたのもいるだろうなあ』
と思うのだが、確認する術がない。
考えてもみてほしい、1隻平均100人としても5300人だ。この内、誰が死んで、誰が逃げて、誰が捕らえられたのか。手配書がある相手ならまだしも、下っ端となればどうにもならない。
船本体は全滅したとはいえ、ボートまで全滅したとは思えない事でもあるし……。
とりあえずの対処として、懸賞金のかかった者は前述の通り、残りは唯一残った海賊艦隊旗艦のガレオン船に可能な限りは乗せて、残りは海兵によって別の岩礁の島へ。周辺の支部に連絡を取って、複数の支部から移送の船が集結する事になっている。
この辺りの細かい事は下の者がやる、というか、アスラは元々休暇中だ。
部下に任せて本来の予定を果たす事にした。
「さて、それでは模擬戦を始める」
今回の組み合わせは簡単だ。
素手かそうでないか。
なので、アスラとはエース、ルフィ、サンジが。
ミホークとはサボ、ゾロ、たしぎが挑むという形になる。
今こうして、並んでいるがここまで色々あった。
まず最初は、たしぎだった。
ミホークの背負う最上大業物、黒刀『夜』。
一目見た瞬間、魂を奪われたようにふらふらと近づき、ミホークの後ろに回ってうっとりした瞳で見詰めていた。ミホークも気付いてはいたのだが、殺気もなし、この程度の腕なら例え背後から襲ってきたとして相手にもならぬと放置していた為に起きた事だった。
そして、いざこうなってしまうと、なまじ放置していただけに今更「見るな」とも言えず、結果非常に珍しい光景が展開される事になった。
たしぎとて、相手は王下七武海にして、世界最高の剣豪。
海賊ではあるが、犯罪者ではなく、悪党でもない。
さすがに手を出す馬鹿さ加減は先程までの光景で存分に思い知っていた事もあり、堪能した後残念そうではあったが、割と素直に離れた。
続いては、サンジだった。
メルクリウス号に乗り込んで、最初に目にしたのはハンコックだった。
原作の彼女も確かに美しいのだろう。
だが、元より世界最高の美女と謳われる程の資質を持つ女性が、不安なく暮らせる環境を持ち、愛し愛される日々を送っていたらどうなるか……その答えが目の前にあった。
「生まれる前から愛してました!」
完全に目がハートマークになって、ハンコックにどこから取り出したのか、花束を捧げているサンジがいた。
そうして次の瞬間……エースとサボとルフィにとっ捕まって引きずられていった。
「やめろって!」
「今すぐそいつを引っ込めろ!」
「死ぬぞ!」
真剣な表情で押さえ込もうとする3人だったが……。
素晴らしい美女を目の当たりにしたサンジはそれを振り切って動こうとして……。
「みゃ」
アリスに押し潰された。
正確には、「おいたは駄目よ?」とばかりに前脚で押さえ込まれた。
これが普通の獣ならサンジは振り切れたかもしれない。
だが、相手は六式を取得した、海軍本部の将官クラスとも真っ向やり合える巨大な虎だ。力も体格も技術も経験も全てがサンジより格上な相手では、サンジとてどうにもならなかった。
動けずジタバタと暴れているサンジに、エース達が口々に言う。
ハンコックが子供もいる人妻である事や、海軍本部中将たるアスラの奥さんである事などだ。
だが……。
「俺はあんたに勝負を申し込む!」
『『『『『なんでー?』』』』』
血涙を流しながら、アスラに指を突きつけるサンジの姿に、エース、サボ、ゾロ、たしぎにルフィまで加えた面子が一斉に何でそうなる、とばかりに内心でツッコミを入れていた。
そういう訳で、本来はコックという事もあり模擬戦には参加しない筈だったサンジが何故か、対アスラ戦に参加していたりする。
そうして、遂に模擬戦が幕を開ける。