第141話−VSルフィ
モンキー・D・ルフィは原作と異なり、既に実戦に参加している。
その違いの理由は、と言えば、やはり環境の違いとしか言いようがないだろう。
強くなったなってない以前に、原作では周囲に頼れる大人はいなかった。何かミスをした時、それをリカバーしてくれるような者、する事が出来る者がいなかったのだ。
だが、この世界では違う。
ルフィの周囲には海軍本部の要人達が大勢おり、多少の失敗程度なら幾らでもひっくり返してくれる。
さすがに新世界まで行ってしまえば無理だが、東西南北4つの海ならどうにでもなる。
とはいえ、実戦デビューしたばかりの新人が海軍本部中将に勝てれば苦労はしない訳だが。
「おーし!いくぞ、アスラー!」
「何時でも」
ぐるんぐるんと腕を回し、ルフィが声を上げる。
一方、泰然自若と待ち受けるのはアスラだ。
「ゴムゴムのぉ——銃(ピストル)!」
まずは小手調べ!とばかりにルフィが腕を伸ばすが……。
「不用意すぎるな」
まるでその攻撃が来るのが分かっていたかのように体を動かしたアスラは伸びた腕を掴む。
そうして、そのままルフィを振り回し、森へと地面へと叩き込んだ。
「うう〜目が回る……」
もっともそんな事をしたのもルフィの体がゴムという前提があればこそ、だ。
ゴムは打撃には滅法強い、というか無効化する。それは相手が地面であっても変わらない。
が、回転させられた事によって目が回るのまでは防ぎようがない。
とはいえ、アスラは追い討ちをかけるつもりはないから、しばらくするとルフィは頭を振って、気を取り直した。
「くっそー!なら……」
言うなり、ルフィは高速で駆ける。目にも止まらないその速度は【剃】だ。
ちなみにルフィは未だ六式を同時に使う事は出来ないが……逆に言えば、こういう事なら出来る。
「ゴムゴムの銃乱打(ガトリング)!」
全周囲から拳が弾幕となって襲い掛かる……が。
「ふむ、なかなか考えたな」
既にルフィの背後にいたアスラがルフィの頭に手を載せた。
何をしてくるか分かっていれば、付き合う必要もない。
瞬間移動に見えた種は単なる【白銀街道】を用いただけの事。
【見聞色】の覇気。
相手の行動の先読みを可能とする力でもって、ルフィの行動の先の先を読みきり、回避している。
アスラはミホークと異なり、叩きのめすような事はしない。
存分にルフィに技を使わせ、その行動がどうか指摘する。
時折、覇気をまとわずして一撃を加えてはいるが、覇気を使わなければゴムのルフィには通じない。
ルフィもアスラがその気になれば自分に打撃を与えられるのは知っている。逆に言えば、つきあってくれているのが分かる。
存分に今の自分の力を振るい、全力の今の自分を見てもらうつもりで動き続けた。
「だはーっ!もう、駄目だ!」
疲れきったルフィが大の字になって地面に転がっている。
通用はしなかった。
だが、全力は出し切った。そんな満足感があった。
「よーし、次は絶対当てるぞ!とりあえず、腹減ったからメシ!」
しばらくすると、ルフィは起き上がって、走っていった。
「……元気な奴だな、相変わらず。さて……」
アスラが視線を向けると、そこにはサンジが待っていた。
こちらはもう少し本気で相手をしてやるべきか?