第181話−裏の決戦
「さて……こっちは抑えたよぉ〜?後は君次第だねぇ〜…」
さすがにこの状況で戦闘は起きない、起きようがない。
こそこそと少将が逃げ出すのを密かに確認しながら、黄猿はそれを追おうとはしなかった。
既にあの少将が何者なのかは確認が出来ている。
だが、情報どおりならば、あの少将もどきは変身能力がある。それはこの大群衆の中ではそれこそ誰にばけたのか分からなくなる。
むしろ、さっさと逃げてもらって、単独になってもらった方がいい。
だが、そうなると今度は黄猿が対応する訳にはいかなくなる。まあ、とりあえず……自分はコブラ王と共にこれ以上の騒乱が起きない事に力を注ぐとしよう。
「……ふん、まさか海軍本部大将とはな」
クロコダイルはそれを両軍が睨み合っていた現場から少し離れた今は枯れたオアシス(ユバではない)で聞いた。
自身も最後の一手の為にと動き出していたが、とんだ邪魔が入ったものだ。
本来ならば、双方が激突している所へ自身が堂々と介入して、戦乱を止めるつもりだったのだが……。さすがに、海軍も大将が止めて尚動くとは思えない。
国王自らが出張ってきたアラバスタ王国に関しては何をかいわんや、だ。
「やむをえんか、まあ種自体が潰された訳ではない……」
そう呟いて踵を返そうとしたクロコダイルの前に立ちはだかった人物がいた。
本来ならば、この地にいるはずのない人物が。
「……どうした、Mr.6、何故ここにいる」
「この瞬間を待っていた」
だが、その言葉と共に放たれた拳に、クロコダイルは砂として再生しながら冷たい視線を向けた。
「……何のつもりだ?」
「俺は地位なぞどうでもいい。……Mr.0、クロコダイル。あんたと戦いたかった。今なら、今なら他のメンバーが全員各地に散らばっている。今なら邪魔が入る事なく、あんたと戦える」
そう告げ、構えを取るMr.6の姿を睨みながら、クロコダイルは脳裏で考えを巡らせた。
……成る程、そういう事か。
どうやらこの男もまた、海軍の手先だったのだろう。
(……潜入工作、となるとこいつもCP9辺りか)
海軍自身が暗殺を行なえば、騒動も起きるだろう。
途中で世界政府直々の妨害が入りかねない。
だが、クロコダイルの抱える組織の内部の人間が、となればどうだろうか?
それはクロコダイルの管理不行届けでしかない。
真実がどうかはこの際問題ではない。そういう事に出来れば、それでいい。
実際、Mr.6ことロブ・ルッチが立ち向かっているのはその通りの理由からだ。無論、ルッチ自身からすれば先に言った事も嘘ではないのだが。
(案外、こいつは気に入ってたんだがな)
まあ、仕方あるまい。
他の奴と違い、Mr.1同様淡々と任務をこなす姿勢がクロコダイルからすればお気に入りだった。
だからこそ、オフィサーエージェントに準じる扱いをしていたのだが……。
そう考えるクロコダイルの目の前で、Mr.6がその姿を変えてゆく。
「獣人系か」
獣人系悪魔の実ネコネコの実モデル豹。
それがMr.6ことロブ・ルッチの食った悪魔の実だ。
こんなものを今まで隠してきたのか、そう思う。
と、同時に長らく忘れていた感覚。以前にアスラ中将とやりあった時にも感じた心のうずきが湧き上がってくる。結局の所、自分は後方で策を巡らすだけではなく、大将だてらに前に出るのも好きなのだろう。
「いいだろう、相手をしてやる」
口元に笑みを浮かべ、クロコダイルは構えた。
これと同じ光景はBW(バロックワークス)の組織内部で起こっていた。
既にクマドリの報告で2人同時に相手をするのは厳しい事は理解していた。
それ故に……。
Mr.1の前にはジャブラがいた。
ミス・ダブルフィンガー経営のスパイダーズカフェの前では赴いたカリファが。
Mr.2に対してはクマドリが向かったが、これは相手の怪我がまだ治りきっていないという事を把握しての事だ。
Mr.3に関してはカクが。
こちらは到着と同時にミス・ゴールデンウィークを逸早く制圧した。
更にフクロウはこの隙にレインディナーズへと潜入を図り……。
そして……。
「まさか、こんな仕事を頼まれるとはな」
Mr.4とミス・メリークリスマスの前にはサボとゾロが。
Mr.5とミス・バレンタインの前にはエースとブルックが立ちはだかっていた……。
「ヨホホホホ、貴方達のお仲間が私どもの仲間に手を出したお返しに参らせて頂きましたよ」