第199話−布石
呼ばれたCP部隊が次々と気絶したBWの構成員を拘束してゆく。
その中にはロビンの姿もあった。
……彼女はこの後、CPの本部へと運ばれる事になる。
彼女の扱いだが、実の所彼女次第、という所だ。
現在では、ロビンがオハラでクローバー博士らが研究し、解明したという歴史の本文(ポーネグリフ)解析にニコ・ロビンが関わっていなかった事はほぼ確実とされている。もし、知っていたとすれば、それを何も形として表に出さないのはおかしい。如何なる学者であれ、世間一般にその知識を公開するまでは無名であり、すなわち学者としては生まれていないのと同じ事。
クローバー博士らの業績を表に出さないのは、確かに新たに誰も巻き込まない為という可能性はない訳ではないだろうが、もし、このまま彼女が死ねば、クローバー博士らが何を研究し、何を解き明かし、そして何故に死ぬ事になったのかも全てが闇の中だ。
それなのに、何故如何なる形であれ、ロビンは公表しようとしないのか。
……最も可能性の高い答えは、彼女がクローバー博士らの研究を知らない、という事だ。
だからこそ、ロビンの懸賞金は上がる事はなかった。
原作において、麦わらの一味のほぼ全員が多額の懸賞金がかけられる事となったエニエス・ロビー襲撃事件。この事件の後、既に懸賞金がかかっていたルフィやゾロへの懸賞金額が、例えばルフィのケースで1億ベリーから3億ベリーへ、ゾロで6000万から1億2000万へと跳ね上がったのに対して……ロビンの懸賞金額は7900万から8000万の僅か100万のみだ。
何故、彼女はこれ程僅かしか上昇しなかったのか?
その答えは、最初が高すぎたから、だ。
当初は彼女もまた、オハラの学者達が辿り着いた歴史を知る者と判断され、高額の懸賞金がかけられた。だが、後に歴史の本文(ポーネグリフ)を読めるものの、オハラの研究の中身は知らないと判明した。
……こうなると、7900万という額は高すぎる。
諸々の事情によりこの額はそのままだったが、結果として一味が高額になった際に、1人上昇額が小幅という形で調整される事となった。
……話が少々長くなったが、とにかく彼女自身は未だ歴史の本文(ポーネグリフ)を追い求めながらも、実物を目にした事が未だない。
だからこそ、今回捕縛されてもインペルダウンへ直行、ではなく……選択肢があるとも言えるのだが。
そんな事をつらつらと考えるアスラの持つ電伝虫が鳴り出した。
「……私だ」
『チャパパパ、見つけたチャパ』
声を確認した瞬間、アスラの口元に笑みが浮かんだ。
「早かったな」
『クロコダイルは戦略家や策謀家ではあっても、スパイの専門家ではないチャパ』
そう、Mr.2戦に疑念と不安を持ちながらもクマドリのみを派遣した、そして、それが自分ではなくフクロウをレインディナーズ探索に回した理由だ。
アスラもそうだし、クロコダイルもそうだが……CPとBWという組織において彼らは司令官だ。それ以前も海賊であり、海兵だった。スパイのやり方なぞ鍛錬した事などないし、隠し場所1つとってもアスラならば鍵を開ける事は可能だが、どのような所に隠す事が多いのか、といった心理的なものが大きい部類。見つからないよう潜入する手段その他諸々においては大きな差がある。
ましてや、罠などはアスラは完全に『嵌って踏み潰す』事になる。誰にも気づかれずに、などという事はまず不可能だ。
だからこそ、こうした専門家がいる訳だし、潜入に関してはアスラなどより余程役に立つ、という訳だ。
幾つかの事を確認し、アスラは自身が望むものを手に入れた事を確信した。
元より、クロコダイルとニコ・ロビンも出撃し、オフィサーエージェントもその全てが不在のレインディナーズはがらあきだ。
原作を見ても分かるように、オフィサーエージェントとそれ以外とのレベル差は激しい。
フクロウが潜入して情報を漁るのを邪魔する奴も……いや、そもそも気付けるような奴もろくにいなかったようだ。
そうして……。
『今回見つけたものは大体こんな所チャパ』
「よくやった。それを持って直ちにこちらに戻れ」
『分かったチャパ』
必要なものは揃った。
無論、正式にはフクロウが発見したものがこちらに届いて、その内容を確認してから、になるが……。
改めて、電伝虫に今度はアスラよりかける。
「……ああ、私だ。そうだ、計画通りに行っている。出番待ちで悪いが、準備はしておいてくれ」
これであいつの配置も完了……。
さて、これで今度こそチェックメイトだ、クロコダイル。