第201話−戦略
砂の吹き荒れる中に広がるそれがクロコダイルの視界を遮る。
薄く、広く。けれど、確実に砂嵐の風に巻かれるようにして広がるそれは……。
「……煙?」
次第に煙る中、クロコダイルの右側から飛び出す人影1つ。
そちらへとだが、クロコダイルは右手を向け……押し当てようとして違和感を感じた。
「よう、クロコダイル。お前は砂の自然系(ロギア)だそうだな」
葉巻を2本纏めて咥え、腹を貫通して背からクロコダイルの手を突き出させながら、スモーカーは告げた。
「俺も自然系(ロギア)だ」
次の瞬間覇気を纏い叩き込まれた一撃がクロコダイルを吹き飛ばしいた。
スモーカーが今回の作戦に参加を命じられた時、思わず問い返していた。
いいのか、と。
クロコダイルは王下七武海だ。当然、表立っての干渉は難しい。
無論、確たる証拠があればいい。だが、なければ……?
「いいか、スモーカー。悪法でも法は法だ。奴が法で保護されている以上、それを犯せば、違法行為。罰を受けるのは当然の話だ」
どこか面白そうな笑みを浮かべて言うアスラにスモーカーは困惑気味だった。
違法行為をやれば、罰を受けるというなら、仮にも海軍中将がやらかすのは拙いんじゃないのか?と思ったのだが、続けた言葉に呆れた。
「ならば簡単だ。対策を取ればいい」
スモーカーが呆れたような顔をしているが、アスラからすればむしろ当然の話だ。
アスラはCP長官だ。そこでの仕事では違法行為が列を為している。外交官も似たり寄ったりだ。確かに明確な違法行為はしないものの、密かに情報を集め、場合によっては買収や脅迫で情報を集める事さえある。外交とは言葉を用いた戦争と言ったのは誰だったか。
悪法でも法は法。
法を犯せば罰を受けねばならぬ。
ならば、それ相応の対策を取らねばならない。
違法であると分かっていながら何も対策を取らずに他者を巻き込むのは、それはもう何を言われても仕方がない。それは戦争に無策で挑むようなもの、そんな事をやらかした馬鹿は責められて当然だ。
そうアスラは言っていた。
(……しかも、そんな橋を渡ってまでやらかしておいて、こいつが本命じゃないっていうんだからな)
スモーカーもロブ・ルッチ共々クロコダイルにぶつける。
実はこれは既にルッチも知っていた。
無論、一番良いのはルッチがクロコダイルを仕留める事なのだが、相手が相手だ。上手くいくかは分からない。それならば、それに備えて介入可能な戦力を置いておくべきだが、アスラは他にもやらねばならない事がある。
大将では目立ちすぎる。
故に、煙の自然系能力者であるスモーカーを投入した訳だ。
だが、アスラの狙いはクロコダイルには実は、ない。
無論、クロコダイルを捕縛するべく様々な手を打っているし、証拠固めも順調に行なっている。事実、スモーカーがこうして介入に至ったのも証拠書類を掴んだが故だ。
だが、それでも尚、七武海であるクロコダイルには逃げられる可能性がある。
そこでアスラが目論んだのが、BWの壊滅だ。
……実は捕縛が行なわれているのはオフィサーエージェントに対してだけではない。
フロンティアエージェントにビリオンズ、ミリオンズ。BW構成員2000名に対するCPを挙げた捕縛作戦だ。
クロコダイルは頭脳だ。
頭脳がいちいち動く訳にはいかない。ならば、最悪頭脳たるクロコダイルに逃げられたとしてもすぐに動けるような状況ではなくしてしまえ、とばかりにBWの壊滅作戦が実行に移されつつあった。
クロコダイルが解放されたとしても、その指示を受けて動く者がいなくなれば……さて、クロコダイルが再び動けるまでにどれだけの時間がかかるだろうか?
ただ組織を作るだけならば、クロコダイルの事だ。さして時間はかかるまい。
だが、使える手駒という名の戦力は早々簡単には傘下に入らない。しかも、今度はCPが影に日向に妨害を加える。その隙を縫って組織を立て直し、更にそこから計画を練り直し、実行に移すまで……さて、何年かかるやら。
(ま、俺は俺のやれる事をやるだけだ)
そう頭を切り換えた。
自分が謀略に向いていない事ぐらいは理解している。だが、それだけに自分の可能な事はきっちりこなしていかねばなるまい。
(そういえば……)
あいつなら、どうだろうか?あいつならアスラ中将を助けて謀略を巡らす事が可能だろうか?
ふと、もうじき戻ってくる筈のヒナの顔が脳裏に浮かんだ。
戦争を始めるのなら、その終わりも考えなければならない
当然の事ですが、オハラの場合はそれが出来ていなかったと
総集編が出たので、購入。ワンピースの空島編を読み返しました
いやあ……忘れていた部分も多かったですね
改めて、色々と計画していた事を修正する部分も多かったです