第21話−伝説
開かれたBARの扉。
この辺りは一際人が少ない。まあ、そういう場所を選んで店を構えているのだろうが……。
シャッキーもまた、大海賊の1人だからだ。
そして、BARの中には、シャッキーと思しき女性がカウンターの中に。そしてカウンターには1人の男性がゆっくりとグラスを傾けていた。
その顔は間違いなく、手配書で幾度となく見た顔。
生ける伝説、シルバーズ・レイリー。
SIDEレイリー
久方ぶりにここに戻ってきた。
ロジャーがグランドライン一周を成し遂げ、海賊王と呼ばれるようになり……そして、その命が病で尽きる前にと団を解散して、はや7年余。
ローグタウンでの、あのロジャー最期の言葉から、今の世の中は賑やかになった。
『相棒、俺は死なないぜ?』
別れ際に言われた、あの言葉。
どういう事かと思ったが、死に際の彼の言葉を聞いて、大笑いした。
人は忘れられた時、本当に死ぬのだという。
本来ならば、海軍はあの処刑を持って、海賊が跋扈する時代を終わりにしたかったのだろう。海賊王と呼ばれた男さえ、海軍は捕らえるのだと、最早海賊王とて消え去るだけの存在なのだと……。
だが、あの一言で、その思惑は雲散霧消した。
『俺の財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の全てをそこに置いて来た!』
海賊王ゴールド・ロジャー。
その財宝が未だ不明だったのが、この言葉で世界中の男達に火をつけた。
あれ以来大海賊時代は幕を開けた。
……まあ、私はもう引退した身だ。今では、当時のクルーの大半もどこで何をしているのかも分からん。当時見習いだったシャンクスは既に一端の海賊として名を知られつつあるみたいだが……。
老兵は死なず、ただ消え去るのみ。
コーティング屋のレイさんと呼ばれるようになり、自分達の後に続く海賊達をレッドラインの向こうへと導いてきた。
ある者は名を上げ、またある者は消え……。
そうして、先日また新たなコーティングをしてやったのだが、この海賊は何とも無粋な男だった。要は、コーティング代金を踏み倒そうとしてきた訳だ。まあ、時折海賊の中にはおるな。元気でよろしい。
とはいえ、覇気をぶつけてやったら、船長以下全員気絶してしまいおったからな。連中の財宝を迷惑量込みで全額頂いて、そのまま賭場に向ったのだが、久方ぶりに大勝ちした。
数日をそこで過ごした後、気持ちよくここに帰ってきた訳だが……。
そんな所へ、1人の客が来た。
その服装を見れば、一目瞭然、海軍、それも准将だ。
そういえば、最近この辺りで新しく来た海軍の准将が話題になっておったな。確かアスラ准将とかいったか。結構好意的な意見だった筈だが……まあ、こんな所を1人でうろつけるのだから、結構な腕と思っていたが、成る程、これはなかなか……。
興味本位で軽く覇気を叩きつけてみたが、あっさりと受け流しおった。
「隣いいですか?」
思わず楽しそうな笑みを浮かべて、隣をどうぞ、とばかりに示した。
シャッキーも何やら面白そうな顔をしている。
「なかなか派手にやっておるようじゃないか?新人君」
「いえいえ、昔の貴方には負けますよ、レイリー」
ほ、分かった上でこの態度か。
答えは分かっておるが、敢えて口に出してみる。
「儂を捕まえに来たかね?」
「やめときましょう。貴方がた2人相手にして勝てる気がまるでしませんし、ここじゃ凶悪犯罪者がおえらいさんで御座いとふんぞり返ってるみたいですからね。今更でしょう」
ニヤリと笑って返してきた。
何だか楽しくなって笑い声が洩れた。こやつが言っておるのは、明らかに天竜人の事だろう。
まあ、連中はこうした若い、まだ海軍の正義を信じれる世代からすれば噴飯ものじゃろうからな。
「で、それでは儂に何の用かね?」
そう問いかけると、何やらこやつ懐に手を突っ込んだ。
何を出すのかと思いきや、分厚いメモと筆記用具だ。
それでどうするのかと思いきや……。
「ほう、ロジャーの頃の裏話が聞きたいと?」
「ええ……こういうのは裏話の方が面白い。海軍の方は割かしガープ中将が話してくれるんですが……海賊の、特に海賊王と呼ばれた人の事なんて聞ける人は限られていますからね」
成る程、裏話か。
確かに、表立ってはこう言われていたが、実の所自分達は……そんな事は結構あったな。
まあ、傍目には落ち着いてても、内心はパニック寸前だったなどよくある話だ。
「まあ、今じゃ時効って事だけでもいいから聞かせてほしいんですよ、無論、秘密にしておきますから。……例えば、ゴール・D・ロジャーとポートガス・D・ルージュの馴れ初めとか」
その言葉に一瞬間があいて、それから内心で驚愕した。
何故その事を知っている?
ガープが話したか?……いや、あの男はああ見えて、存外に口が堅い。話すべきではないと判断した事は断じて話すまい。……そもそも話して、奴の立場がよくなるような話ではないのだ。
「ああ、エースは元気ですよ。今はマリンフォードの俺の家にいます……ガープさんの鍛え方が無茶苦茶でねえ」
……一瞬、人質代わりにでもする気かと思ったが、気配からして、どうやら本気でその気はなさそうだ。
あくまで、引き取った一人の子として、語っている。……まあ、ガープの無茶苦茶ぶりには笑わせてもらったし、同時にガープらしいとも思った。
しかし、1つ確認の意味を込めて、尋ねてみる。
「しかし、君はエースの事を海軍に突き出そうと思ったりはしないのかね?海軍は今でも完全に諦めた訳ではないのだろう?」
そう、そうすれば、彼自身の出世には大きな鍵になる筈だが?
さて?
「何故です?……別にロジャーがどうしようが、エースには何の責任もないでしょう?親は親、子は子。エースが世界に何をしたんです?」
それを聞いて思わず笑ってしまった。
久方ぶりに、白ひげのような物言いを聞けた。
シャッキーも笑いを堪えているようだ。
「ふむ、良かろう。そうだな、それじゃまずは……」
シャッキーが用意した酒とつまみを目の前の……アスラ准将に出す。
それを見ながら、その晩は久方ぶりに昔に、ロジャーが生きていた頃に思いを馳せた。
開かれたBARの扉。
この辺りは一際人が少ない。まあ、そういう場所を選んで店を構えているのだろうが……。
シャッキーもまた、大海賊の1人だからだ。
そして、BARの中には、シャッキーと思しき女性がカウンターの中に。そしてカウンターには1人の男性がゆっくりとグラスを傾けていた。
その顔は間違いなく、手配書で幾度となく見た顔。
生ける伝説、シルバーズ・レイリー。
SIDEレイリー
久方ぶりにここに戻ってきた。
ロジャーがグランドライン一周を成し遂げ、海賊王と呼ばれるようになり……そして、その命が病で尽きる前にと団を解散して、はや7年余。
ローグタウンでの、あのロジャー最期の言葉から、今の世の中は賑やかになった。
『相棒、俺は死なないぜ?』
別れ際に言われた、あの言葉。
どういう事かと思ったが、死に際の彼の言葉を聞いて、大笑いした。
人は忘れられた時、本当に死ぬのだという。
本来ならば、海軍はあの処刑を持って、海賊が跋扈する時代を終わりにしたかったのだろう。海賊王と呼ばれた男さえ、海軍は捕らえるのだと、最早海賊王とて消え去るだけの存在なのだと……。
だが、あの一言で、その思惑は雲散霧消した。
『俺の財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の全てをそこに置いて来た!』
海賊王ゴールド・ロジャー。
その財宝が未だ不明だったのが、この言葉で世界中の男達に火をつけた。
あれ以来大海賊時代は幕を開けた。
……まあ、私はもう引退した身だ。今では、当時のクルーの大半もどこで何をしているのかも分からん。当時見習いだったシャンクスは既に一端の海賊として名を知られつつあるみたいだが……。
老兵は死なず、ただ消え去るのみ。
コーティング屋のレイさんと呼ばれるようになり、自分達の後に続く海賊達をレッドラインの向こうへと導いてきた。
ある者は名を上げ、またある者は消え……。
そうして、先日また新たなコーティングをしてやったのだが、この海賊は何とも無粋な男だった。要は、コーティング代金を踏み倒そうとしてきた訳だ。まあ、時折海賊の中にはおるな。元気でよろしい。
とはいえ、覇気をぶつけてやったら、船長以下全員気絶してしまいおったからな。連中の財宝を迷惑量込みで全額頂いて、そのまま賭場に向ったのだが、久方ぶりに大勝ちした。
数日をそこで過ごした後、気持ちよくここに帰ってきた訳だが……。
そんな所へ、1人の客が来た。
その服装を見れば、一目瞭然、海軍、それも准将だ。
そういえば、最近この辺りで新しく来た海軍の准将が話題になっておったな。確かアスラ准将とかいったか。結構好意的な意見だった筈だが……まあ、こんな所を1人でうろつけるのだから、結構な腕と思っていたが、成る程、これはなかなか……。
興味本位で軽く覇気を叩きつけてみたが、あっさりと受け流しおった。
「隣いいですか?」
思わず楽しそうな笑みを浮かべて、隣をどうぞ、とばかりに示した。
シャッキーも何やら面白そうな顔をしている。
「なかなか派手にやっておるようじゃないか?新人君」
「いえいえ、昔の貴方には負けますよ、レイリー」
ほ、分かった上でこの態度か。
答えは分かっておるが、敢えて口に出してみる。
「儂を捕まえに来たかね?」
「やめときましょう。貴方がた2人相手にして勝てる気がまるでしませんし、ここじゃ凶悪犯罪者がおえらいさんで御座いとふんぞり返ってるみたいですからね。今更でしょう」
ニヤリと笑って返してきた。
何だか楽しくなって笑い声が洩れた。こやつが言っておるのは、明らかに天竜人の事だろう。
まあ、連中はこうした若い、まだ海軍の正義を信じれる世代からすれば噴飯ものじゃろうからな。
「で、それでは儂に何の用かね?」
そう問いかけると、何やらこやつ懐に手を突っ込んだ。
何を出すのかと思いきや、分厚いメモと筆記用具だ。
それでどうするのかと思いきや……。
「ほう、ロジャーの頃の裏話が聞きたいと?」
「ええ……こういうのは裏話の方が面白い。海軍の方は割かしガープ中将が話してくれるんですが……海賊の、特に海賊王と呼ばれた人の事なんて聞ける人は限られていますからね」
成る程、裏話か。
確かに、表立ってはこう言われていたが、実の所自分達は……そんな事は結構あったな。
まあ、傍目には落ち着いてても、内心はパニック寸前だったなどよくある話だ。
「まあ、今じゃ時効って事だけでもいいから聞かせてほしいんですよ、無論、秘密にしておきますから。……例えば、ゴール・D・ロジャーとポートガス・D・ルージュの馴れ初めとか」
その言葉に一瞬間があいて、それから内心で驚愕した。
何故その事を知っている?
ガープが話したか?……いや、あの男はああ見えて、存外に口が堅い。話すべきではないと判断した事は断じて話すまい。……そもそも話して、奴の立場がよくなるような話ではないのだ。
「ああ、エースは元気ですよ。今はマリンフォードの俺の家にいます……ガープさんの鍛え方が無茶苦茶でねえ」
……一瞬、人質代わりにでもする気かと思ったが、気配からして、どうやら本気でその気はなさそうだ。
あくまで、引き取った一人の子として、語っている。……まあ、ガープの無茶苦茶ぶりには笑わせてもらったし、同時にガープらしいとも思った。
しかし、1つ確認の意味を込めて、尋ねてみる。
「しかし、君はエースの事を海軍に突き出そうと思ったりはしないのかね?海軍は今でも完全に諦めた訳ではないのだろう?」
そう、そうすれば、彼自身の出世には大きな鍵になる筈だが?
さて?
「何故です?……別にロジャーがどうしようが、エースには何の責任もないでしょう?親は親、子は子。エースが世界に何をしたんです?」
それを聞いて思わず笑ってしまった。
久方ぶりに、白ひげのような物言いを聞けた。
シャッキーも笑いを堪えているようだ。
「ふむ、良かろう。そうだな、それじゃまずは……」
シャッキーが用意した酒とつまみを目の前の……アスラ准将に出す。
それを見ながら、その晩は久方ぶりに昔に、ロジャーが生きていた頃に思いを馳せた。