第28話−赤髪
1年程した頃、俺は東の海へ来ていた。
ルフィとエースを連れて、だ。
サボは、このゴア王国に余りいい思い出がないらしく、来たがらなかったので、今回も留守番だ。
……まあ、実は事情は既に知ってる訳だが。
ゴア王国は東の海でゴミ1つ落ちていない、もっとも美しい町と言われているらしいが……俺から言わせれば、美しいものしか見ようとしない、ゴミの住む町だという気分だ。
確かに、頂点に天竜人を置き、こんな連中が統治する町がもっとも美しいなんて言われるようでは、革命軍のような存在が出てくるのも当然だろう。……原作のワポルもそういえば、ドラム王国の王として暴虐を尽くしていたんだったな。
さて、エースとルフィを連れて来ている理由だが、一言で言ってしまえば、里帰りだ。
エースとルフィをうちで引き取った後の話だが、フーシャ村のスラップ村長とマキノさんの連名で手紙が来た。要は『元気でやっているか』という事に尽きる。確かに、スラップ村長に至ってはモンキー家とはガープ中将以来の付き合いだしな。気にするのもむべなるかな。
という訳で、せめて1年に1度はと里帰りして顔見せに行っている訳だ。
ルフィはというと、最近は『俺は海兵になる!』と言って、ガープ中将が泣いて喜んでた。まあ、息子さんが息子さんだからな……とはいえ、それならとばかりに鍛えようとしたやり方は……原作通りにしかけたので、ガープの孫という事で遊びに来ていたセンゴク元帥とガープ中将で取っ組み合いの喧嘩していた。
さて、フーシャ村に来て、まず最初に目についたのは……一隻の海賊船。
……あの旗って……。
そうか、もうそんな時期だったのか、とふと感慨深い気持ちになった。
……原作を知る者ならば分かるだろう。そう、赤髪のシャンクスだ。
海賊という事で、ルフィが船を睨んではいたし、エースも心配そうに村の様子を見回していたが、当然シャンクスは海賊としては相当にまともな部類なので、村は穏やかなものだ。
多分、酒場「PARTYS BAR」、そうマキノさんがやってる酒場だ。
行ってみると矢張り彼らはいた。
まあ、海軍の軍服にコート姿で登場した自分に警戒の視線を向けてたが、マキノさんからの話を聞いて、「で、俺達を捕らえるかい?『銀虎』」との問いかけに俺が「今は休暇中だ」の一言で断って……そういえば、シャンクスに普通に『銀虎』と呼ばれたな、案外そっちの筋には広まっているのだろうか?とりあえず、一旦落ち着いた。
ちなみに後でこっそり聞いてみたら、海賊の中での要注意人物として名前が挙がってるらしい。
で、しかし、だ。
最初は気のいい奴らだったんで、気が合った。知ってるのかと思って、レイリーさんの話を出したら、シャンクスは元海賊王の船のクルーなだけあって、話も合い……気分よく呑んでいた筈だったのに……。
何故、俺とシャンクスは睨み合っているんでしょうね。
もっとも念の為に言えば、シャンクスの仲間達はニヤニヤ笑いながら見ている、という時点で実はそんなに大した事じゃないのが原因なのは理解してもらえると思う。
事の発端は……まあ、あれだ。ルフィが……悪魔の実を食べてしまったのだよ。
この世界のルフィは原作とは異なり、彼らが一応一億ベリーで売れる実という事で、きちんと取り扱っていた事から、『海賊が大事にしてる物なら奪ってやれ!』ぐらいの感覚だったようだ。
そうして、まあ、こっそり取って開けてみれば中には変な実。首を傾げつつも、齧りついて……余りの拙さにこぼした。
「アスラー、これ物凄くまじい」
と、見せに来て、びっくり仰天したのは、俺とシャンクス。2人して……。
「「そいつを食ったのか!?」」
と、驚いて叫んでしまった。
悪魔の実を食うと泳げなくなると聞いて、泣きそうになったが、俺が『俺も、センゴクさんも、クザンさんも、以前に肩車してくれたボルサリーノさんも皆そうだよ。うちではハンコック達お前の姉さんの3人全員がそうだな』と言ったら、一気に機嫌直した。シャンクス達は次々に出てくる海軍元帥や大将の名前に微妙な表情をしていたが。
なお、悪魔の実は、原作通り、ゴムゴムの実だった。
さて、ここからが問題だった。
この後の2人の会話をざっと見てもらおう。
アスラ(以下ア)「きちんと実の管理ぐらいしておけよ、一応高く売れるんだろうが」
シャンクス(以下シ)「すまん。まあ、実を食ってしまったのは気にしないから、それで水に流しておいてくれ」
ア「いや、気にするも何も、お前達の管理不注意だろうが」
シ「(むか)悪魔の実を食べたのは気にしないと言ってるんだから、細かい事を気にするな」
ア「(むっ)何が細かい事だ。重大な事だろうが」
シ「ケツの穴の小さい野郎だ(ぼそ」
ア「ケツを広げられた経験があるのか、ホモ野郎(ぼそ」
シ・ア「「………なんだとこの野郎!」」
後で落ち着いて考えてみると、シャンクスと2人して、『何であんな事でイラついて喧嘩したんだろうな?』と首を捻る事になった程あっさりとこうなった。
まあ、だからこそ、周囲の連中も笑っていられたんだろう。
可能性としては2人共結構酒が入ってたという事なのだろうが……いかんな、以後少し酒は控える事にするか、と決める事になった。
さて、こんな場所に空気を読まずに入ってきた奴らがいた。
バキ!と扉を蹴破って入ってきた男達……。
「おれ達は山賊だ。——が、…別に店を荒らしに来た訳じゃねェ。酒を売ってくれ、樽で10個ほど」
もう分かる人には分かっただろう。山賊ヒグマだ。
とはいえ、全員その時は俺とシャンクスに注目していて、誰もそいつには注意も払わない。
「おい、手前ら……「「うるせえ!」」……っ!手前ら、俺を無視するとはいい度胸だ!こいつを見ろ!」
そう言って、懐から賞金首の証である手配書を取り出す。額は原作の通り、800万ベリー。確かに、最弱の海とも呼ばれる東の海では高額の部類に入る……例えば、コビーが捕まっていた海賊『金棒のアルビダ』の賞金額が500万ベリーだったから、確かに当人としては自分が賞金首としては一流だと思い込むのも分からんでもない。だが、なあ……。
「あんな事言ってるぞ、相手してやったら、億越えの海賊君」
「賞金首なら、お前が捕まえたらどうだ、天竜人の小間使い。ああ、すまんすまん、海軍本部少将殿だったな」
億越え!?海軍本部少将!?とか言う声が横から聞こえるが無視だ無視。
まあ、実際シャンクスにかかった賞金額は億をとうに超えている。さすが未来の四皇にして、この時代に措いても世界最強と謳われる剣士、王下七武海のミホークのライバルなだけはある。
とはいえ、こうした事も後から冷静になって考えたから思いつけた訳で……この時はどうなったかというと。
「「……表に出ろ、この野郎」」
本当に、酒は呑んでも呑まれるもんじゃないね。
そして、村に被害が出ないよう俺達は移動した。何の気なしに、他の連中もゾロゾロとついてきている。
その中には山賊連中もいた。
俺達が「覚悟はいいか?」「はっ、手前こそ遺書の準備は出来てるんだろうな?」とか言い合ってる所へ、さっきのヒグマの奴が俺達の言葉がはったりだと思ったのか……。
「手前ら!俺を無視するんじゃ……!」
ああ、もう……。
「「……ごちゃごちゃうるせえな」」
2人して殺気を込めてギロリと睨んだ途端に、真っ青になって震えだしたが、もう止まる筈がない。
「「勝負の……」」
俺は握り拳を固め、シャンクスは腰の剣を抜き……。
「「邪魔だあ!」」
ぶっ飛ばした。
ちなみに、海まで飛んでった奴は、海に落ちた所を近海のヌシにぱっくり美味しく頂かれてしまうのだが……。
この後、俺達は盛大な喧嘩を繰り広げたのだった。
で、だ。
運動すれば、酒も抜ける。
久方ぶりに覇気こそ入れていないものの、思い切り喧嘩して、体動かして……。息が切れて、ちったあ冷静になってきた。
ふと横を見ると、何時の間に集まってきたのか、村人も海賊も、ルフィやエースも混じって俺達の喧嘩を肴に酒盛りしてやがった。
「……なあ、シャンクス」
「……なんだ」
「……俺達何でこんな喧嘩してたんだろうな」
「……聞くな」
ああ、もう、自棄になって2人で飲みなおしたよ。ルフィもエースも俺に倒せなかったのかと文句言ってくるし、海賊……ラッキー・ルウやヤソップからは『なんでえ、もう終わりかよ』『おい、賭けは引き分けみてえだぞ』とか言ってくるし……散々だった。
まあ、お陰でシャンクスとは、仲が良くなったのは救いではあったと言っておこう。原作と違って腕を失うという事もなかったし。
……決してそうでも思わないとやってられない気分だったという事はないからな?
1年程した頃、俺は東の海へ来ていた。
ルフィとエースを連れて、だ。
サボは、このゴア王国に余りいい思い出がないらしく、来たがらなかったので、今回も留守番だ。
……まあ、実は事情は既に知ってる訳だが。
ゴア王国は東の海でゴミ1つ落ちていない、もっとも美しい町と言われているらしいが……俺から言わせれば、美しいものしか見ようとしない、ゴミの住む町だという気分だ。
確かに、頂点に天竜人を置き、こんな連中が統治する町がもっとも美しいなんて言われるようでは、革命軍のような存在が出てくるのも当然だろう。……原作のワポルもそういえば、ドラム王国の王として暴虐を尽くしていたんだったな。
さて、エースとルフィを連れて来ている理由だが、一言で言ってしまえば、里帰りだ。
エースとルフィをうちで引き取った後の話だが、フーシャ村のスラップ村長とマキノさんの連名で手紙が来た。要は『元気でやっているか』という事に尽きる。確かに、スラップ村長に至ってはモンキー家とはガープ中将以来の付き合いだしな。気にするのもむべなるかな。
という訳で、せめて1年に1度はと里帰りして顔見せに行っている訳だ。
ルフィはというと、最近は『俺は海兵になる!』と言って、ガープ中将が泣いて喜んでた。まあ、息子さんが息子さんだからな……とはいえ、それならとばかりに鍛えようとしたやり方は……原作通りにしかけたので、ガープの孫という事で遊びに来ていたセンゴク元帥とガープ中将で取っ組み合いの喧嘩していた。
さて、フーシャ村に来て、まず最初に目についたのは……一隻の海賊船。
……あの旗って……。
そうか、もうそんな時期だったのか、とふと感慨深い気持ちになった。
……原作を知る者ならば分かるだろう。そう、赤髪のシャンクスだ。
海賊という事で、ルフィが船を睨んではいたし、エースも心配そうに村の様子を見回していたが、当然シャンクスは海賊としては相当にまともな部類なので、村は穏やかなものだ。
多分、酒場「PARTYS BAR」、そうマキノさんがやってる酒場だ。
行ってみると矢張り彼らはいた。
まあ、海軍の軍服にコート姿で登場した自分に警戒の視線を向けてたが、マキノさんからの話を聞いて、「で、俺達を捕らえるかい?『銀虎』」との問いかけに俺が「今は休暇中だ」の一言で断って……そういえば、シャンクスに普通に『銀虎』と呼ばれたな、案外そっちの筋には広まっているのだろうか?とりあえず、一旦落ち着いた。
ちなみに後でこっそり聞いてみたら、海賊の中での要注意人物として名前が挙がってるらしい。
で、しかし、だ。
最初は気のいい奴らだったんで、気が合った。知ってるのかと思って、レイリーさんの話を出したら、シャンクスは元海賊王の船のクルーなだけあって、話も合い……気分よく呑んでいた筈だったのに……。
何故、俺とシャンクスは睨み合っているんでしょうね。
もっとも念の為に言えば、シャンクスの仲間達はニヤニヤ笑いながら見ている、という時点で実はそんなに大した事じゃないのが原因なのは理解してもらえると思う。
事の発端は……まあ、あれだ。ルフィが……悪魔の実を食べてしまったのだよ。
この世界のルフィは原作とは異なり、彼らが一応一億ベリーで売れる実という事で、きちんと取り扱っていた事から、『海賊が大事にしてる物なら奪ってやれ!』ぐらいの感覚だったようだ。
そうして、まあ、こっそり取って開けてみれば中には変な実。首を傾げつつも、齧りついて……余りの拙さにこぼした。
「アスラー、これ物凄くまじい」
と、見せに来て、びっくり仰天したのは、俺とシャンクス。2人して……。
「「そいつを食ったのか!?」」
と、驚いて叫んでしまった。
悪魔の実を食うと泳げなくなると聞いて、泣きそうになったが、俺が『俺も、センゴクさんも、クザンさんも、以前に肩車してくれたボルサリーノさんも皆そうだよ。うちではハンコック達お前の姉さんの3人全員がそうだな』と言ったら、一気に機嫌直した。シャンクス達は次々に出てくる海軍元帥や大将の名前に微妙な表情をしていたが。
なお、悪魔の実は、原作通り、ゴムゴムの実だった。
さて、ここからが問題だった。
この後の2人の会話をざっと見てもらおう。
アスラ(以下ア)「きちんと実の管理ぐらいしておけよ、一応高く売れるんだろうが」
シャンクス(以下シ)「すまん。まあ、実を食ってしまったのは気にしないから、それで水に流しておいてくれ」
ア「いや、気にするも何も、お前達の管理不注意だろうが」
シ「(むか)悪魔の実を食べたのは気にしないと言ってるんだから、細かい事を気にするな」
ア「(むっ)何が細かい事だ。重大な事だろうが」
シ「ケツの穴の小さい野郎だ(ぼそ」
ア「ケツを広げられた経験があるのか、ホモ野郎(ぼそ」
シ・ア「「………なんだとこの野郎!」」
後で落ち着いて考えてみると、シャンクスと2人して、『何であんな事でイラついて喧嘩したんだろうな?』と首を捻る事になった程あっさりとこうなった。
まあ、だからこそ、周囲の連中も笑っていられたんだろう。
可能性としては2人共結構酒が入ってたという事なのだろうが……いかんな、以後少し酒は控える事にするか、と決める事になった。
さて、こんな場所に空気を読まずに入ってきた奴らがいた。
バキ!と扉を蹴破って入ってきた男達……。
「おれ達は山賊だ。——が、…別に店を荒らしに来た訳じゃねェ。酒を売ってくれ、樽で10個ほど」
もう分かる人には分かっただろう。山賊ヒグマだ。
とはいえ、全員その時は俺とシャンクスに注目していて、誰もそいつには注意も払わない。
「おい、手前ら……「「うるせえ!」」……っ!手前ら、俺を無視するとはいい度胸だ!こいつを見ろ!」
そう言って、懐から賞金首の証である手配書を取り出す。額は原作の通り、800万ベリー。確かに、最弱の海とも呼ばれる東の海では高額の部類に入る……例えば、コビーが捕まっていた海賊『金棒のアルビダ』の賞金額が500万ベリーだったから、確かに当人としては自分が賞金首としては一流だと思い込むのも分からんでもない。だが、なあ……。
「あんな事言ってるぞ、相手してやったら、億越えの海賊君」
「賞金首なら、お前が捕まえたらどうだ、天竜人の小間使い。ああ、すまんすまん、海軍本部少将殿だったな」
億越え!?海軍本部少将!?とか言う声が横から聞こえるが無視だ無視。
まあ、実際シャンクスにかかった賞金額は億をとうに超えている。さすが未来の四皇にして、この時代に措いても世界最強と謳われる剣士、王下七武海のミホークのライバルなだけはある。
とはいえ、こうした事も後から冷静になって考えたから思いつけた訳で……この時はどうなったかというと。
「「……表に出ろ、この野郎」」
本当に、酒は呑んでも呑まれるもんじゃないね。
そして、村に被害が出ないよう俺達は移動した。何の気なしに、他の連中もゾロゾロとついてきている。
その中には山賊連中もいた。
俺達が「覚悟はいいか?」「はっ、手前こそ遺書の準備は出来てるんだろうな?」とか言い合ってる所へ、さっきのヒグマの奴が俺達の言葉がはったりだと思ったのか……。
「手前ら!俺を無視するんじゃ……!」
ああ、もう……。
「「……ごちゃごちゃうるせえな」」
2人して殺気を込めてギロリと睨んだ途端に、真っ青になって震えだしたが、もう止まる筈がない。
「「勝負の……」」
俺は握り拳を固め、シャンクスは腰の剣を抜き……。
「「邪魔だあ!」」
ぶっ飛ばした。
ちなみに、海まで飛んでった奴は、海に落ちた所を近海のヌシにぱっくり美味しく頂かれてしまうのだが……。
この後、俺達は盛大な喧嘩を繰り広げたのだった。
で、だ。
運動すれば、酒も抜ける。
久方ぶりに覇気こそ入れていないものの、思い切り喧嘩して、体動かして……。息が切れて、ちったあ冷静になってきた。
ふと横を見ると、何時の間に集まってきたのか、村人も海賊も、ルフィやエースも混じって俺達の喧嘩を肴に酒盛りしてやがった。
「……なあ、シャンクス」
「……なんだ」
「……俺達何でこんな喧嘩してたんだろうな」
「……聞くな」
ああ、もう、自棄になって2人で飲みなおしたよ。ルフィもエースも俺に倒せなかったのかと文句言ってくるし、海賊……ラッキー・ルウやヤソップからは『なんでえ、もう終わりかよ』『おい、賭けは引き分けみてえだぞ』とか言ってくるし……散々だった。
まあ、お陰でシャンクスとは、仲が良くなったのは救いではあったと言っておこう。原作と違って腕を失うという事もなかったし。
……決してそうでも思わないとやってられない気分だったという事はないからな?