第47話−日常編3
「ふう」
私は一仕事終えて、一息ついた。
私の名前はナミ。
東の海ココヤシ村のベルメールさんの娘で、一時的に魚人海賊団アーロン一味の幹部になり、今は海軍の測量士な12歳だ。
アーロンがアスラ本部中将によってやられて、逮捕された後、私はココヤシ村を離れ、海軍本部マリンフォードへとやって来た。それ自体は別に気にしていない。
事情は村の人も今や知っているとはいえ、矢張りわだかまりのある人もいるだろうし、逆に申し訳ないという気持ちを持っている人もいるだろう。ゲンさんなら黙って頭をくしゃくしゃにして、それで終わりにしてくれるだろう。ノジコなら『信じてたから』と笑って、何時もと同じに振舞ってくれるだろう。
けれど、殆どの人とはどうしても、良い方向か悪い方向かはさておき、関係は変わってしまった。
……何が言いたいかと言うと、居辛いのだ、今のココヤシ村は。
とはいえ、幾等海軍本部中将とはいえ、そう簡単に測量室入りになれるのかと疑問に思ってはいた。
が、実際にはマリンフォード到着後、ナミを連れて測量室に直行、責任者としばらく話しているとすんなり決定していた。
後で知った事だが、アスラ中将は事務方のトップに近い人だそうで、当然測量室にとっても幾つか間接的に役職を挟んだ上の上な立場の人らしい。
そりゃあ、すぐ許可も下りる訳よね……許可出すの自分なんだもの。
とりあえず、私の肩のアーロン一味の入れ墨はそこに新たに入れ墨を加える事で、全く別の形に変わった。これがアーロン一味の入れ墨だったなんて、入れてた事を知ってる人でも分からないだろう。
測量室の人達は親切だった。
どうも私に関しては、育ての親を殺された後、残った姉や知り合いを助ける為に海賊に協力する事になっていた女の子、という事になっているらしい。……うん、嘘じゃないわね……。
そのせいで、大変だっただろう、と可愛がられている。
照れ臭いのはあるけれど、それ以上にさすが、世界政府の海軍本部マリンフォード所属の測量士の人達。
私の腕も決して悪いものじゃないのは、アーロンが保証していたけれど、ここの人達は凄い。私が1枚仕上げる間に、何枚も仕上げて、しかも私より綺麗だ。正に職人芸。素直に尊敬出来る技術者達だ。
覚えはいい、と褒められているけれど、全然追いつけた気がしない。でも、だからこそ目指す価値がある。
一応数年後には選択する事になる予定なんだけど……何を?と言われたなら、ココヤシ村に帰るか、このまま海軍の一員となって測量室に所属するか、という事だ。無論、私がそれまでに測量室の一員となるに十分な技術を持っている事が、前提だけれど。
ただまあ、もし選べたなら、このままここで働きたいな……。
さて、一仕事終えて、時計を確認すると、もうじき16時だった。
私は一応見習い扱いだが、年齢が年齢って事で定時、すなわち17時には遅くとも帰るように決められている。今日は少し早いが、これからもう一作業すると、確実に17時を過ぎてしまう。
海図を提出した所、時間を考えて、もう上がるよう言われたので、お言葉に甘える事にする。
「それじゃ、区切りがついたんで、今日はこれで失礼します」
「ああ、気をつけて帰るんだぞ〜」
皆に挨拶して、私は家路につく。
今、私はアスラ中将の家に厄介になっている。海軍本部マリンフォードで誰かに襲撃されるとも思えなかったのだが、さすがに、12歳の女の子に1人暮らしさせる訳にはいかない、って事になったらしい。まあ、もっともな話ではある。
いいんだろうか?とも思ったけれど、アスラ中将曰く。
『1人やそこら増えても同じだ』
との事。ついてみれば、賑やかな家。
その後子供が増えた結果、今ではナミも含めて常に10人+1匹が暮らしている家だ。ハンコックさんも最初私が連れられて行った時は眉を潜めていたけれど、アスラ中将が何やら話した後は、至極穏やかで優しげな様子になった。
というか、こっちのが素だって事は、すぐに分かったけれど。
「ただいま〜」
最初は恥ずかしかった言葉だけど今ではすっかり慣れた。
「おかえり、おやつあるわよ」
「みゃ〜♪」
「ナミおねえちゃん、おかえり〜」
口々に迎えてくれる今の家族。
私はベルメールさんの事を忘れるつもりはない。
彼女は確かに本当の産みの母ではないのかもしれない。だが、それがどうした。あの人は私にとっては紛れもなく母だった。
その事を私がアスラ中将の家に住む事になった時、ハンコックさんに言ったら。
『そうか、良い母上だったじゃな』
と凄く綺麗な笑顔で微笑まれた。
……同じ女性なのに、真っ赤になって俯いてしまった。
アスラ中将にも言った。
『ああ、忘れないでいてあげろよ?人が本当に死ぬ時は、その人の事が忘れ去られた時だって言うからな』
そう言って、頭を撫でられた。
だから私は忘れない。
けれど、アスラ中将もハンコックさんも私はノジコと同じく家族だと思っている。わざわざ口にはしないけど。ただ、私の感覚的に言えば、お父さんとお母さんって言うよりは少し年の離れたお兄ちゃんとお姉ちゃんって感じだろうか。……2人とも格好よくて、凄く綺麗なんだもの。ハンコックさんなんて、2人も子供を産んだとは思えない。私もあんな大人の女性になりたいなあ……。
そんな風にぼんやりと考えていると……。
「ナミ〜、食わないなら、それ俺がもらっていいか?」
「空気読みなさいよ、バカルフィ!」
物憂げな私の様子を気にもせず、私の前に置かれたおやつに指を咥えて『くれ』と言い出すルフィに、うがーーーーっと思わず吼えてしまう。
全く、この食い意地の張ったバカは……!エースにサボも笑ってんじゃないわよ!
穏やかな、ある日の出来事だった。
アンケートを行ないたいと思いまして……
先だって、非難轟々になっていたクロスですが、私なりのクロスさせた、同じ場面での話しを番外編として書くかどうか迷っています
無論、伝龍さんの同意が得られたら、の話ですが、設定を見ていると、あちらの主人公にも結構隙もあるようなので、かなり展開とラストは異なる事になりそうです
私なりの展開を読んでみたいと思われる方は感想のラストにYESのYを
いや、もうあの話関連はいいよ、と思われる方はラストにNを入れて下さい
よろしくお願いします