第九歩
現在私は非常に焦っている。
原因はただ1つ。
目の前の少女なのはだ。
この少女はただ一言。
「ちょっとお話いいかな」
そう私に告げた。
断るのも不自然なので私はなのはについていき、校舎内のどこかに移動している。
通常の場合、この流れから想像されるのは2択だ。
告白とかつあげ。
しかし、私にとって、現在のこの状況はそんな生易しい状況じゃない。
呼び出したのがなのはではなかったなら、それも期待した。
呼び出したのがなのはなのが問題なのだ。
以前私は、この少女がなにかすごいピンク色のビームで敵を吹き飛ばしているのを目撃してしまっている。
もし、今になって、何かの機器に映っていて、それが私だとわかったのだとしたら、この後行われるのは間違いなく口封じ。
しかし、いきなりの攻撃ではないことから、確定してはいないのだろう。
だが、最悪あのビームが私に向けられるのだ。
あれがどんなものかはわからないが、今思い出すとあれは熱線ではないことはあきらかだ。
あんな膨大な熱線を放って無事なはずがない。
だが、特大の水しぶきが上がっていたことから、あれには物理的ダメージが存在するのだろう。
まあどっちにしろ自分には防ぐ手立てはない。
だから、自分にできることは一つ。
相手が武装した場合は、建物内で最悪起きても不自然じゃない程度で、最悪の幻術をかけ、それを理由に逃走すること。
もし、こちらが迎撃態勢を取ったなら、私は絶対に助からない。
あちらの仲間の構成がわからない。
だが、絶対に単体ではないのは確かだ。
つまり、なのはとの敵対は不特定多数の敵に命を狙われることと同義なのだ。
いくら狙われないように、周りに幻術をかけても相手の顔がわからないうえ、発動してから30分の発動不可ともいえる時間がある。
完全な詰み。
今はこの学校になのはの仲間がいないことを願うことしかできない。
いやできたとしても被害が出ないように、周りに近づけないように幻術をかけるだけ。
「そういえば、裕也君はテスト何点だった?
先生の反応だと国語以外はかなり良かったみたいだけど。
私は国語と社会追試になっちゃったけど。」
こちらに笑顔で聞いてくるなのは。
真意はわからないが今は刺激するわけにはいかないので答える。
「国語はあんな状況だし、点数は周りに見せたから知ってるかもしれないけど、他は結構よかったよ。
点数は先生の発表してた上位点の中にあったから想像してみて。」
その点数は伏せる。
あたりまえだ。
追試と言っている人間に100点だったなんて言って刺激するなんて今の状況では自殺行為だ。
「そっか。
裕也君は頭いいんだ。
私の友達にも頭いい子がいるの。
アリサちゃんって子なんだけど同じクラスだからわかるよね。
そのこも・・・・・・・・・・。」
なんとなく真意は分かった。
おそらく私の品定め。
そしてほかに分かったのは、アリサ。
つまり『アリサ・バニングス』は最悪なのはの仲間であるということ。
そうなると普段なのはと一緒にいる『八神はやて』『フェイト・T・ハラオウン』『月村すずか』はなのはの仲間の可能性が高い。
だが普段一緒にいるだけで仲間だと断定はできない。
けどこれからは、この5人の動向は注意しておく必要がありそうだ。
「高町さん。
ところで今どこ向かってるの?」
「ん?
屋上だよ?」
「わかった。
ありがとう。」
戦場は屋上のようだ。
それを聞いた私はなのは以外の学校内の人間に幻術をかけるのだった。
被害者をださないために。