第十歩
sideなのは
昨日はテストのことでいろいろあって話すことはできなかった。
しかし、今日はそんなことはない。
だからすぐに行動に移し私は声をかけた。
「ちょっとお話いいかな?」
そう声をかけたとき裕也君は以前のように若干私に恐怖に染まった眼を向けてくる。
しかし、断られることはなく素直についてきてくれた。
今になって思うと、放課後に男の子を呼んで話すというのはまるで告白ではないかと思えてきてしまう。
もちろんそんなことはないのだがそう思うとやはりちょっと恥ずかしい。
だから私は恥ずかしさを紛らわせるように裕也君に話しかけた。
「そういえば、裕也君はテスト何点だった?
先生の反応だと国語以外はかなり良かったみたいだけど。
私は国語と社会追試になっちゃったけど。」
話題が見つからなかったのでこの話題で話す。
実のところ隣だったので点数をのぞいてみようと思ったのだが、返してもらった後すぐ鞄にしまっていて、ちょっと気になっていたのだ。
「国語はあんな状況だし、点数は周りに見せたから知ってるかもしれないけど、他は結構よかったよ。
点数は先生の発表してた上位点の中にあったから想像してみて。」
先生の反応からよかったのだろうと思っていたが、発表した中でということは90点以上ということ。
裕也君は頭がいいようだ。
しかし、今の裕也君は何かを探るような顔をしている。
なぜだろう?
まあそれも踏まえて後で聞けばいいのだが。
「そっか。
裕也君は頭いいんだね。
私の友達にも頭いい子がいるの。
アリサちゃんって子なんだけど同じクラスだからわかるよね。
その子もすっごく頭がいいんだよ。
だからよく勉強見てもらってるの。」
アリサちゃんの名前を聞いたときに何か思案するるそぶりを見せる裕也君。
きっとアリサちゃんがどれぐらいなのか想像でもしているんだろう。
今思うと、私の周りって結構頭のいい人多いんじゃないだろうか。
アリサちゃんも頭いいし、すずかちゃんも頭がいい。
クロノ君やユーノ君もすごく頭がいい。
私も理数系はできるが国語は並みかちょっとした。
ちょっと自信なくしそうになる。
すると裕也君が声をかけてくる。
「高町さん。
ところで今どこ向かってるの?」
そういえば場所を伝えるのを忘れていた。
確かにどこに向かってるのかがわからなかったら不安だろう。
反省しよう。
「ん?
屋上だよ?
それと私のことはなのはでいいよ。
お隣さんだしね。」
「わかった。
ありがとう。」
そう答えるとまた表情が変わった。
この表情を例えるなら、戦場に行く覚悟を決めた武装局員ような顔をしている。
私本当にこの子に何かしてないか不安になってきた。
割と切実に。