第十一歩
現在私は一人の少女に続いて屋上という名の戦場にやってきた。
はっきり言おう。
もう怖くて仕方がない。
力の差も圧倒的である。
例えるなら魔人○ウに相対するクリ○ンだ。
もはや戦闘にすらならない。
あったらそのまま食べられてしまう。
それにはっきり言って、すでにこちらに勝てる要素なんてない。
この学校になのはの仲間がいないとも限らない。
最悪戦闘になってなのはを倒しても、なのはの仲間に後ろからやられて終わる。
脱出経路は非常口と、私の後ろの入り口。
非常口に向かうにはなのはを突破しなきゃいけない。
しかし、入口に逃げれば安全かと言われればそうではない。
校舎内に入っては袋叩きにあってしまうかもしれない。
生き残るすべはただ一つ。
なのはをごまかし続けること。
そうとわかれば行動開始だ。
「ところでなのはさん。
話って何?」
声をかけると少し驚いた反応を示した。
多分こっちから声をかけたのが意外だったのだろう。
本当に今になって思う。
これが別の少女で告白だったらよかったのに。
「えっとね。
ちょっと聞きたいことがあるの。」
聞きたいこと。
これで言質を取られたら俺は終わりだということか。
「裕也君に私なにかしたかな?」
?
質問の真意が読めない。
何かの思考誘導の一種なのだろうか?
「自分は何かされた記憶はないけどなんで?」
「そうなの?
いつも私が話しかけたときすごく怯えた眼をしていたから。
隣の席だし。
やっぱりそういうのは悲しいから・・・。」
なのはの目的は理解できた。
確実に聞き出すために嘘をつきづらいような雰囲気を作るだすための誘導。
なのはは策士のようだ。
だがちゃんと警戒していた自分は決して引っかからない。
「そうだったんだ。
ごめんね。
そんなことしてるつもりはなかったんだけど。
実は、昔近所になのはに似たお姉さんがいたんだけど、その人が怖い人だったんだ。
きっとそのせいだね。
あはははは。」
ちゃんと笑顔も浮かべ平生を装う。
今の状態でできるごまかしは自分にはこれで限度だ。
そしてそんななのははため息をついて
「そうなんだ。
そんなことがあったんなら慣れるまで時間かかるかもしれないけどこれから仲良くしようね。
じゃあまた明日ね。」
ただそう告げた。
「うん。
じゃあまた明日ね。」
今回もごまかしきれたようだ。
話は終了だと思いその場で学校内の人間の幻術を解いて、撤収する。
それをなのはは見送るように軽く手を振ってくれた。
これでしばらくは確実に生き残ることができるだろう。
そして、このときは気付くことはなかった。
今回の出来事がきっかけであんなことが起きるなんて。